神奈川ネットワーク運動
神奈川ネットワーク運動(かながわネットワークうんどう)(略称:NET)は、神奈川県の地域政党である。
生活クラブ生協組合員らを中心とする、1980年の「合成洗剤追放対策委員会の設置及び運営に関する条例」制定の直接請求運動をきっかけに活動を開始した政治団体で、現在では神奈川県内で広く活動し、「代理人」と自称する所属議員を県内各地の議会に送っている。
概要
現在、神奈川県議会議員1名、横浜市議会議員1名、その他の市町村議会議員18名の計20人が活動している[1]。下部組織として29の地域ネットを持つ(横浜市で活動する8つの地域ネットの上部組織である横浜コミュニティネットを含めた数である)。なお、地域ネットは横浜市・川崎市の神奈川県東部や座間市・大和市などの県央部、それに鎌倉市・逗子市などの三浦半島に多数の組織と一定の支持基盤を持つが、県西部の西湘地域では、平塚市と二宮町という限られたエリアで活動するのみである[1]。
議員を職業化しないために、議員の任期は2期までに限る「ローテーション制」を実施している[2][3]。また、三期(10年以上)で議員年金の支給対象となるため、「市民感覚とかけ離れ優遇された議員年金」に対し、「年金を受け取る側ではなく、税金を有効に使ってもらいたい市民の立場で」反対する運動を続けている。「議員年金の廃止」を求める請願署名は過去に国会で全会一致で否決され続けてきたが、この運動が起こした世論の高まりもあって、2006年に国会での年金制度を定めた国会議員互助年金法は廃止、2011年には制度そのものの破綻が予見されたという理由で地方議会議員の年金も廃止された[4]。
2001年には、「市民が自分たちの暮らす街の政治に関わり、政策をつくり、政治を動かしていくのがあたり前の世の中を『市民社会』と呼びたい」として、議員や市民の個人寄付を原資に「市民社会チャレンジ基金」を創設し、「女性」や「市民」による地域政治団体やNPOの創設、政策作成を目的として対象に22期(2011年)まで助成を行った。今後については一旦休止してこれまでの活動の検証を行なうとしている[5]。
2005年には「NET憲章[1]」を発表し、市民民主主義による政治参加や生活者の政治の実施を掲げて、カンパ・ボランティアなどでの活動・議員報酬のネットへの寄付・2期8年でのローテーション制といった政治姿勢や、議会改革・地方分権・人権や環境の尊重・「新しい公共」の拡大・男女間の性別格差(「ジェンダー格差」)の解消・「人間の安全保障」の重視による平和ネットワークの拡大と在日米軍強化への反対などを定めた「主要テーマ」を発表した。この他、現在の活動目的として政治献金における企業・団体献金の廃止と個人献金への移行、地産地消活動の推進や「携帯電話基地局等設置条例」[6]の制定などを掲げている。なお、他の生活者ネット系の組織と同様に議員は全員女性となっている。
他党との関係では、政策面での類似点が多い社会民主党と友好関係にあり、地方議会議員選挙ではネット公認候補を社民党が推薦する一方[7]、衆議院議員選挙では神奈川県内で活動していた同党の阿部知子を推薦して当選させていた。しかし2012年12月4日公示・12月16日投票の第46回衆議院議員総選挙を前に阿部が社民党を離党して日本未来の党に参加すると、同運動に参加する県内各地のネットワーク系団体は大半が比例区では日本未来の党、小選挙区では同党から立候補した各候補を推薦・支持した[8]が、 日本未来の党は大敗し、同運動系の推薦候補は阿部と民主党の後藤祐一が比例区で復活当選したにとどまった。
沿革
1980年、生活クラブ生協を中心に22万人分の署名を集めた「合成洗剤追放」の請願を横浜市、川崎市、藤沢市、座間市、大和市、海老名市、鎌倉市の県内7市に直接請求したものの、全市で否決された[9]。その審議過程において、議会および議員達の無関心ぶりや審議の不透明さへの不満などから、「自分達の代表を議会へ送ろう」という運動につながっていった。1983年の第10回統一地方選挙で、川崎市議会議員選挙に、川崎市宮前区から寺田悦子が立候補し、初当選。運動を更に推進していくための政党組織の連合体として、1984年7月1日、「神奈川ネットワーク運動」が結成された。1991年の第12回統一地方選挙では神奈川県議会に初の議席を獲得[10]、その後も徐々に議員(「代理人」)を増やし、1999年(第14回)と2003年(第15回)の統一地方選挙ではともに各選挙合計で39人の当選者を出した。なお、2004年には横浜市会に所属する6人が独立しネットワーク横浜を結成している[11]。
2011年4月に行われた第17回統一地方選挙では、県全体の地方議会で計10議席を減らした。県議会ではそれまで横浜市議だった同会代表の若林智子[12]、横浜市会では若林に代わって立候補した丸岡伊津子[13]がどちらも青葉区で当選してそれぞれ1議席を確保したのにとどまり、川崎市、相模原市、横須賀市などの市議会では議席を失った。神奈川県知事選では開成町元町長である露木順一の推薦を3月23日に決定[14]したが、民主、自民、公明3党の県組織が推薦する元フジテレビキャスターの黒岩祐治に敗れた[15]。統一地方選挙の結果を受け、「厳しい選挙結果であったが、今後も生活の課題に沿った活動を継続する」と機関誌で発表した[16]。
役員
- 代表
- 若林智子(神奈川県議会議員)
- 事務局長
- 前田多賀子(厚木市民自治を目指す会)
- 政策部長
- 牧嶋とよ子(神奈川ネットワーク運動 ・座間市民ネット)
出典[17]。
注記
関連項目
外部リンク
テンプレート:Pref-stub- ↑ 1.0 1.1 神奈川ネットワーク運動 議員・地域ネット(2011年8月14日閲覧)
- ↑ 同運動と共に全国市民政治ネットワークに参加し、政策面での共通性も高い東京・生活者ネットワークや市民ネットワーク千葉県は3期までの再選を認めている。
- ↑ ただし、市議会から県議会へのくら替えをして議員を続けたケースはある。また、川崎市高津区選出の猪股美恵のように、最初はネット所属議員として当選した後、ローテーション制による引退を拒否してネットを離脱した例もある。無所属となった猪股は2011年に6期目の当選を果たした。
- ↑ 既に掛金を払っていた現職議員に対する年金支給は今後も実施される。
- ↑ 市民社会チャレンジ基金 神奈川ネットワーク運動公式サイト2011年8月14日閲覧
- ↑ 携帯電話の普及と共に増加した基地局の設置については、景観保全の他、基地局周辺での電磁波公害を理由にした周辺住民の反対運動がしばしば発生している。
- ↑ 阿部知子公式サイト「対談集」内、第40回「植木ゆう子さんと語る~地方分権時代の県政~」、2014年5月2日閲覧。ネット所属で藤沢市議だった植木との対談。
- ↑ 例外的に民主党とその候補を支持した団体もある。出典:神奈川ネットワーク運動2012年12月3日付、「2012年衆議院議員選挙、各地域ネットで候補者の推薦・支持を決定」、2014年5月2日閲覧。
- ↑ 当時は合成洗剤に含まれるリン酸塩が水質悪化の原因という理由で、強い反対運動が起こっていた。
- ↑ 横浜市緑区で渡辺光子が当選し、1議席を獲得。同選挙では寺田も川崎市宮前区から立候補したが、落選した。
- ↑ 同組織は所属議員が全員落選した2011年に解散。
- ↑ 若林は1961年、広島県広島市出身。同市の比治山女子短期大学卒業後、1986年から横浜市に在住。2002年から神奈川ネットワーク運動・青葉代表、2003年から横浜市会議員。政治活動では「若林ともこ」と自ら表記。出典:同運動内の若林の個人ページ[2]、「プロフィール」。
- ↑ 政治活動では「丸岡いつこ」と自ら表記。
- ↑ 神奈川県知事選 露木順一さんの推薦を決定。2011年3月23日
- ↑ 知事選:黒岩氏、「知名度」戦略が奏功し大勝/神奈川 2011年4月11日 カナロコ 神奈川新聞社 2011年8月14日閲覧
- ↑ 神奈川ネット情報紙 No.308 2011.5.15号2011年8月14日閲覧
- ↑ 神奈川ネットワーク運動 役員・収支報告。2014年4月18日閲覧