温帯夏雨気候
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温帯夏雨気候(おんたいかうきこう)とはケッペンの気候区分における気候区のひとつで温帯に属する。温暖冬季少雨気候(おんだんとうきしょううきこう)ともいう。記号はCwa,Cwb,CwcでCは温帯、wは冬季乾燥(wintertrocken)を示す。
アリソフの気候区分では気候帯4-4.亜熱帯東岸気候に相当する[1]。
目次
特徴
夏は降水量が多く高温湿潤となるも、冬には乾燥した気候になるのが特徴。亜寒帯との境界部を除けば冬の寒さはあまり厳しくない。また、緯度的にはサバナ気候地帯に相当するが標高が高いためにこの気候になっている地域では、夏は比較的冷涼である。
樹木は低緯度では照葉樹、高緯度、高地では落葉樹、針葉樹もみられる。
条件
- 最寒月平均気温が-3℃以上18℃未満。
- 最暖月平均気温が10℃以上。
- 年平均降水量が乾燥限界以上。
- 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多雨月降水量。
さらに、最暖月平均気温によって次の3つに分けられる。
- Cwa - 最暖月平均気温が22℃以上。
- Cwb - 最暖月平均気温が10℃以上22℃未満かつ月平均気温10℃以上の月が4か月以上。
- Cwc - 最暖月平均気温が10℃以上22℃未満かつ月平均気温10℃以上の月が3か月以下。
Cwcはごく限られた地域のみに点在する。
分布
分布地域
日本での分布地域
温帯夏雨気候に属する観測地点が存在するのは以下の市町村である。
この気候に属するおもな都市
- ソウル(韓国、中緯度地方のため、冬の寒さは厳しい。かつては亜寒帯冬季少雨気候に分類されていた[2])
- 香港
- 昆明(中国、低緯度だが海抜1892mの高原のため熱帯に入らない)
- 青島(中国、中緯度地方のため、冬の寒さは厳しい)
- ハノイ(ベトナム)
- グワーハーティー(インド)
- アラハバード(インド)
- アディスアベバ(エチオピア、低緯度だが標高2400mの高原のため熱帯に入らない)
- ナイロビ(ケニア、低緯度だが標高1795mの高原のため熱帯に入らない)
- ハラーレ(ジンバブエ)
- アンタナナリボ(マダガスカル)
- プレトリア(南アフリカ)
- コルドバ(アルゼンチン)
- クスコ(ペルー)
- メキシコシティ(メキシコ)
- マセル(レソト)
気候の特徴
香港・広州などサバナ気候 - 温暖湿潤気候への移行部では、いわゆる亜熱帯の気候を呈する事が多い。モンスーンの影響を強く受ける地域で夏は海洋からの暖かく湿った風と熱帯低気圧の影響で高温多雨となる一方、冬は大陸からの暖かく乾燥した風の影響で温暖少雨となる。
年降水量は1000 - 2000mmと多い。雨季と乾季の区別はサバナ気候のように明瞭ではなく、段階的に移り変わることが多い。
低緯度では高地、中緯度では内陸部となることが多いため他の気候に比べ日較差は大きいほうである。比較的緯度が高い地域(亜寒帯冬季少雨(夏雨)気候(Dw)への移行部)では、低緯度地域に比べ冬の寒さが厳しい。
土壌と植生の特徴
農業の特徴
- アジア(華南・広東やベトナム・ミャンマー北部)では米の二期作が行われている。
- 農業の生産性が高く、米、綿花、茶、とうもろこしなどの栽培が盛ん。
- 南アメリカやアフリカでは、冬の乾燥に強い芋・豆類の生産も盛ん。
脚注
参考文献
- 矢澤大二『気候地域論考―その思潮と展開―』古今書院、1989年11月20日、738pp. ISBN 4-7722-1113-6