ホンオフェ
テンプレート:Infobox ホンオフェ(洪魚膾、こうぎょかい、홍어회)は韓国料理のひとつ。ガンギエイ(洪魚:ホンオ、こうぎょ、홍어)の刺身、あるいは切り身を壷などに入れて発酵を促進させたものである。朝鮮半島南部ではカオリフェとも呼ばれる。
解説
エイの肉を壺等に入れて冷暗所に置き、10日ほど発酵させるとエイの持つ尿素などが加水分解されてアンモニアが発生し、ホンオフェが出来上がる[1]。
韓国全羅南道の港町である木浦地域の郷土料理で、壷に入れたガンギエイの切り身を漬け込み、4日ほど発酵させたものである。プサン、ソウルなどでも食べることはできるが、全羅南道以外で供されるものの多くはエイの切り身(フェ、刺身)であり[2]、身に軟骨が付いていてコリコリとした食感を楽しみ、さっぱりとしたものが多い。全羅南道木浦の本場ものは凄まじいアンモニア臭がし、涙を流しながら食べることになる。口に入れた後にマッコリで流し込むのが通の楽しみかたとされる。
マッコリはタクチュ(濁酒、だくしゅ탁주、どぶろく)ともいい、熟成させたホンオフェとマッコリの相性が良いため、一緒に食べるのが通とされ、ホンタク(洪濁、こうだく홍탁)と呼ばれるようになった。また、ホンオフェと豚肉、キムチを一緒に包んで食べることをサマプ(三合、さんごう삼합)という。ただ、長く口の中に入れておくとアンモニアによって口内粘膜がただれてしまうこともあるので注意が必要である。発酵させればさせるほど身が柔らかくなり、美味とされる。なお、そのアンモニア臭から外国人や初心者には敬遠されるが、韓国では高級食品のひとつであり、朝鮮半島南部のホンオフェの本場では結婚式など冠婚葬祭に欠かせないごちそうである[3]。
ホンオフェに類似したアンモニア臭が強い発酵食品としては、アイスランドで作られるテンプレート:仮リンク(Hákarl)が存在し、これはニシオンデンザメやウバザメの肉を数か月間熟成させたものである。
臭いの強さ
近来の日本で製作されるバラエティ番組で「臭い食品」を取り扱う際に、シュールストレミングにも匹敵するアジアの臭い食品としてしばしば登場する。日本テレビ制作のバラエティ番組『ワールド☆レコーズ』2004年7月4日放送分では取材陣が木浦に赴き、宴席でふるまわれたホンオフェを喜んで口に入れた現地の男性が、涙を流しながら食べている様子を描写し、「食べた人にしかわからない爽快な刺激があるのだというが」と説明している。同番組の司会者である内村光良は隔離されたブースで匂いを嗅ぐなり「ションベンだよ、ションベン」と話し、口には入れたものの呑み込むことができなかった[4]。
作家岩井志麻子はMXテレビ制作の報道番組『5時に夢中』で「ホンタクだったか、これがもろにオシッコの臭いなのね。これ食べた夫とだけはチュウはできない。愛を試されますね」と評している。[5]
ホンオフェの強烈な臭いは世界有数、アジア最大とされており、口に入れた状態で深呼吸すると失神寸前になるといわれている[1]。また、臭いの強さは納豆の14倍、キビヤックの5倍であるとされる。
2010年3月29日(初回)の放送の『DON!』で「世界一臭い刺身」として出題され、レギュラー陣はトイレの臭いがするなどと発言した。
作り方
ホンオフェは葬儀などの人が集まる祭事で振舞われることが多い。こうした事から、ホンオフェの発酵を促進するために堆肥を利用する仕込みが考案された。伝統的な方法では、エイの切り身を入れた瓶をワラや松の葉を発酵させた堆肥の上に置く。堆肥の発酵熱によりエイの発酵が進む。
ホンオの特産地フクサンド(黒山島、こくさんとう)の販売業者は、発酵のさせ方を以下のように説明している[6]。
- 瓶の底に4個程度の石を平たく敷く。
- 石の上にワラや松葉を3cm程度敷く。
- ガンギエイ表面のつるつるした液体が溜まった「コブ」を残した状態で切り、そのエイの切り身を密着させずにまばらに散らして置く(黒山島産ガンギエイの皮にある「コブ」には発酵バクテリアが多く、これを残すことで独特の味付けになる)。
- ワラや松葉をかぶせるように3cm程度敷き、エイの層とワラや松葉の層を交互に積み重ねる。
- 瓶口にビニールをかぶせ、輪ゴムでしっかり密閉する。
- 暖かい日は日陰で2 - 3日程度、寒い時は7日程度発酵させる(気温や日照具合によって調節する)。
- 毎日定期的に匂いを確認し、適度に漬かった段階で取り出す。冷蔵庫で保管することで長期保存が可能になる。