欧州宇宙機関
テンプレート:Redirect テンプレート:Infobox 研究所 欧州宇宙機関(おうしゅううちゅうきかん、テンプレート:Lang-en-short, ESA)は、ヨーロッパ各国が共同で設立した、宇宙開発・研究機関である。設立参加国は当初10か国、現在は19か国が参加し、2000人を超えるスタッフがいる。
本部はフランスに置かれ、その活動でもフランス国立宇宙センター (CNES) が重要な役割を果たし、ドイツ・イタリアがそれに次ぐ地位を占める。主な射場としてフランス領ギアナのギアナ宇宙センターを用いている。
人工衛星打上げロケットのアリアンシリーズを開発し、アリアンスペース社(商用打上げを実施)を通じて世界の民間衛星打ち上げ実績の約半分を占める。過去に宇宙開発などで存在感を放ったソビエト連邦の後継国のロシアを既に抜いており、スペースシャトル、デルタ、アトラスといった有力な打ち上げ手段を持つアメリカと肩を並べる存在まで成長をした。
ESA は欧州連合と密接な協力関係を有しているが、欧州連合の専門機関ではない。リスボン条約によって修正された欧州連合の機能に関する条約の第189条第3項では、「欧州連合は欧州宇宙機関とのあいだにあらゆる適切な関係を築く」と規定されている。
歴史
西欧諸国では、当初は個々の国、特にイギリスやフランスで独自に宇宙開発を行っていたが、それでは米ソの熾烈な競争から生まれる成果に対抗できないため、欧州共同の開発計画が組織された。まず1964年に欧州ロケット開発機構 (European Launcher Development Organization; ELDO) を設立し、打上ロケット(ヨーロッパ1およびヨーロッパ2)の開発を進めるが、難航した。また、欧州宇宙研究機構 (European Space Research Organization; ESRO) では、打上はアメリカに依頼することで、探査機や人工衛星の研究開発を行っていた。しかし、より効果的な宇宙開発計画の実現を目指して、1975年、欧州各国は ESA を設立するとともに、新しい打上ロケットとしてアリアンの開発を推進し、1979年にアリアン1ロケット初の打上に成功、以後アリアンスペースを設立して打上ビジネスに参入し、アリアン2、アリアン3、アリアン4、アリアン5を開発した。
また、人工衛星による地球観測や、惑星など太陽系内の天体観測のための探査機の研究開発にも力を入れ、アメリカ航空宇宙局(NASA) との共同研究も行っている。
ESA は有人宇宙船を有しておらず、有人宇宙飛行を行なっていない。1970年代よりスペースシャトルのような再利用打上機を検討し、1987年からはエルメスを計画した。1995年就役を目指し、エルメス打上げにも利用できるアリアン5も開発した。しかし、冷戦の終結や開発費用の問題により、エルメスはキャンセルされた。2000年代には CSTS による輸送も検討されたが、これも中止されている。国際宇宙ステーションへの有人宇宙飛行にはスペースシャトルやソユーズを利用して参加している。
主力のアリアンを補完する中・小型衛星用の打上げシステムとして、低軌道用のヴェガの開発も行い2012年から運用を開始した。
参加国
上記以外にハンガリー、ポーランド、ルーマニアとスロベニアが協力国 (ECS: European Cooporating State) として加わり、キプロス、ラトビア、スロバキア、トルコ、ウクライナが協力協定に調印している。またカナダは1979年から特別協力国の地位を持つ。カナダ宇宙庁は ESA の意思決定に参画している[2]。
予算
ESA の予算は2005年度は29億7700万ユーロ、2006年は29億400万ユーロであった[3]。ESA の予算の大部分はロケットの開発である(22%の予算がロケットにつぎ込まれており、有人飛行が次に多い)。2005年は負担額の大きい3か国が全体の3分の2を負担しており、その内訳はフランス (29.3%)、ドイツ (22.7%)、イタリア (14.2%) である[4]。
2005年12月に行われた予算編成会議では重要な会合が持たれた。ロシアのクリーペル計画では5000万ユーロと言う莫大な予算をつぎ込む事への抵抗感と、ロシアの宇宙開発の後押しをするべきではないと言う意見から予算は認められなかった[5]。
参加国 | 必須 Contr. |
選択 Contr. |
計 (単位:百万€.) |
計 (%) |
---|---|---|---|---|
テンプレート:Flagicon フランス | 15.63% | 31.55% | 778.8 | 27.97% |
テンプレート:Flagicon ドイツ | 23.41% | 21.45% | 614.8 | 22.08% |
テンプレート:Flagicon イタリア | 12.88% | 14.59% | 397.9 | 14.29% |
テンプレート:Flagicon イギリス | 16.93% | 5.91% | 239.3 | 8.59% |
テンプレート:Flagicon ベルギー | 2.83% | 7.37% | 167.4 | 6.34% |
テンプレート:Flagicon スペイン | 6.87% | 5.76% | 169.0 | 6.07% |
テンプレート:Flagicon スイス | 3.40% | 3.49% | 97.3 | 3.49% |
テンプレート:Flagicon オランダ | 4.43% | 2.87% | 90.9 | 3.26% |
テンプレート:Flagicon スウェーデン | 2.61% | 2.11% | 62.5 | 2.25% |
テンプレート:Flagicon オーストリア | 2.26% | 0.87% | 33.7 | 1.21% |
テンプレート:Flagicon ノルウェー | 1.70% | 1.02% | 33.2 | 1.19% |
テンプレート:Flagicon デンマーク | 1.82% | 0.78% | 28.8 | 1.03% |
テンプレート:Flagicon フィンランド | 1.37% | 0.54% | 20.7 | 0.74% |
テンプレート:Flagicon アイルランド | 0.95% | 0.30% | 12.8 | 0.46% |
テンプレート:Flagicon ポルトガル | 1.40% | 0.21% | 12.7 | 0.45% |
テンプレート:Flagicon ギリシャ | 1.50% | 0.12% | 12.5 | 0.43% |
テンプレート:Flagicon ルクセンブルク | 0.21% | 0.13% | 4.2 | 0.15% |
- ESA の予算のうち 5% はカナダなどの第3者・機関から拠出される。
宇宙計画
実施済
- スペースラブ - スペースシャトル搭載の宇宙実験室。1983年-1998年実施。日本の向井千秋も搭乗。
- ジオット - ハレー彗星探査機。1985年-1986年。
- ハッブル宇宙望遠鏡 - アメリカ航空宇宙局 (NASA) との共同開発。1990年-。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が後継機として計画中。
- ユリシーズ - 太陽極軌道観測機。NASAとの共同開発で1990年打上げ。
- SOHO - 太陽・太陽圏観測衛星。NASA との共同開発。1995年-
- ホイヘンス - NASA の土星探査機カッシーニから土星の衛星タイタンに降下。1997年打上げ。2004年降下、探査成功。
- アルテミス - 通信技術試験衛星。2001年打上げ
- インテグラル - ガンマ線観測衛星。2002年打上げ。
- マーズ・エクスプレス 火星探査機。2003年初に打ち上げ、年末に火星に到着した。
- ロゼッタ - 彗星探査機。2004年打上げ。
- ビーナス・エクスプレス - 金星探査機。2005年打ち上げ。
- 国際宇宙ステーション - 実験棟コロンバスの提供。
- 国際宇宙ステーションへの無人宇宙補給機 - 欧州補給機の打上げ。
- COROT - 太陽系外惑星探査衛星。2006年12月27日打ち上げ、トランジット法による太陽系外惑星探査専門衛星。
- プランク衛星 - アメリカ航空宇宙局が打ち上げ観測に成功したWMAP衛星の後継観測衛星。アリアン5型の大きさを活用して、太陽-地球系のL2点に静止した大型衛星で観測的宇宙論観測を行う。
- ハーシェル宇宙望遠鏡 - 波長60から670µmの赤外線を観測、口径3.5m。2009年5月14日にプランク衛星と相乗りで打ち上げ。
- 国際宇宙ステーション - 観測用モジュールキューポラ (ISS)の提供。
計画中
- ガリレオ - 欧州版GPS。構築中、2019年までに完成予定。
- オーロラ計画 - 有人・無人太陽系探査計画。当初、2030年までの火星有人飛行が目的とされた。
- LISA - 重力波宇宙望遠鏡。2010年にテスト衛星LISA パスファインダーを打ち上げ、2015年に本衛星を打ち上げ観測を行う。2009年現在、NASA と共同開発中。
- EJSM - 木星探査計画。NASAと共同。
- ベピコロンボ - 水星探査機。日本の宇宙航空研究開発機構との共同開発。ESA 側では、水星面の撮像を行う探査機の開発及び打ち上げロケットの確保・管制などを実施。2014年打ち上げ予定。
- SWARM (人工衛星) - 地球観測衛星。地球磁気圏データ収集を同型衛星3基の連携でおこなう。2013年の打ち上げ予定。
計画中止
- エルメス - 再利用可能な有人宇宙往還機。欧州版スペースシャトルだったが、計画中止。
- EUSO計画 - 実験棟コロンバスに設置予定だった高エネルギー線観測用望遠鏡。ESA中心で日米と共同開発していたがESAは脱退、現在は日本中心の体制に改められ継続中。
- ダーウィン - 3機の宇宙望遠鏡を編隊飛行させて太陽系外惑星の観測を行う計画。2015年以降の打ち上げを予定していたが、開発を行わないことが決定された。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
テンプレート:Space-stub テンプレート:欧州宇宙機関
テンプレート:宇宙機関- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ http://www.esa.int/esaCP/Pr_39_2000_p_EN.html
- ↑ ESA Portal - ESA and the EU
- ↑ Figures regarding the ESA budget and the three biggest contributors to it. [1]
- ↑ ESA Portal - ESA and the EU