根二乗平均速度
テンプレート:複数の問題 根二乗平均速度(こんにじょうへいきんそくど、テンプレート:Lang-en-short)とは、速度の絶対値の二乗平均平方根、すなわち速度の大きさの二乗 v 2 の統計集団平均 <math>\langle v^2 \rangle</math> の平方根 <math>\sqrt{\langle v^2 \rangle}</math> である。 ここで速度 v の大きさ v は v の内積によって定められる。
- <math>v = |\boldsymbol{v}| := \sqrt{\boldsymbol{v} \cdot \boldsymbol{v}}\,.</math>
根二乗平均速度は気体分子運動論などの議論において現れる。
速度の分散 <math>|\sigma(\boldsymbol{v})|^2</math> は速度の平均 <math>\langle\boldsymbol{v}\rangle</math> と速度の二乗平均 <math>\langle v^2 \rangle</math> を用いて以下のように書き表すことができる。
- <math>|\sigma(\boldsymbol{v})|^2
=\langle v^2 \rangle - \langle\boldsymbol{v}\rangle \cdot \langle\boldsymbol{v}\rangle\,.</math>
もしも速度の平均 <math>\langle \boldsymbol{v} \rangle</math> が 0 ならば、二乗平均 <math>\langle v^2 \rangle</math> は分散と一致する。 このとき根二乗平均速度 <math>\sqrt{\langle v^2 \rangle}</math> は速度のゆらぎの大きさ <math>|\sigma(\boldsymbol{v})|</math> に等しい。
- <math>\sqrt{\langle v^2 \rangle} = |\sigma(\boldsymbol{v})| \quad (\langle \boldsymbol{v} \rangle = \boldsymbol{0}).</math>
従って根二乗平均速度から、巨視的な流れがないような系において、熱的なゆらぎに起因する速度の大きさを評価することができる。
例
気体分子運動論
気体分子運動論における、単原子分子の二乗平均速度は次のように表される。
- <math>\sqrt{\langle v^2 \rangle} = \sqrt\frac{3RT}{M}\,.</math>
ここで、R ≈ 8.314 J/(K · mol) は気体定数、T は熱力学温度、M は分子量である。 ボルツマン定数 k B ≈ 1.381 × 10-23 J/K とアヴォガドロ定数 N A ≈ 6.022 × 1023 /mol, および分子質量 m を用いると、ボルツマン定数と分子量の定義より、
- <math>R = k_\mathrm{B}N_\mathrm{A},\quad M = mN_\mathrm{A}</math>
という関係が成り立つので、以下のように書き直される。
- <math>\sqrt{\langle v^2 \rangle} = \sqrt\frac{3k_\mathrm{B}T}{m}\,.</math>
この関係から直ちに、1 単原子分子が持つ平均の運動エネルギーは温度に比例することが分かる。
- <math>\langle \frac{1}{2}mv^2 \rangle = \frac{3}{2}k_\mathrm{B}T\,.</math>
導出
単原子分子の理想気体の内部エネルギー U (T ) は以下の関係を満たす。
- <math>U(T)={3 \over 2} nRT\,.~~ \cdots ~~ (1)</math>
ここで n は系のモル数である。これをボルツマン定数 k B と気体分子の個数 N を用いて書き直せば、n = N/N A なので、
- <math>U(T)={3 \over 2} Nk_\mathrm{B}T ~~ \cdots ~~ (2)</math>
となる。理想気体の持つエネルギーは気体分子の持つエネルギーの総和に等しく、気体分子の持つエネルギーは運動エネルギーのみなので、次の関係を満たす。
- <math>U(T)=N\langle\frac{1}{2}mv^2\rangle\,.~~ \cdots ~~ (3)</math>
(2), (3) の右辺同士を比較すれば、
- <math>N\langle\frac{1}{2}mv^2\rangle = {3 \over 2} Nk_\mathrm{B}T</math>
より、根二乗平均速度と温度の関係式が得られる。
- <math>\sqrt{\langle v^2\rangle} = \sqrt\frac{3k_\mathrm{B}T}{m}\,.~~\cdots~~(4)</math>