延髄斬り
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延髄斬り(えんずいぎり)は、プロレスで用いられる技で、アントニオ猪木が考案した蹴り技の一種。延髄切り、延髄蹴りとも表記される。
概要
この技を用いる最も有名なプロレスラーはアントニオ猪木であり、またこの技の考案者でもある。
立っている対戦相手の横や斜め後ろに立ち、その場でジャンプして、相手の後頭部めがけて自らの片足を伸ばしながら回してキックを行う。選手によって挙動に差があるが(後述)、使用者代表格で考案者のアントニオ猪木はジャンプの頂点で蹴りを繰り出す。
技名は、相手の後頭部を蹴る動きが、後頭部にある延髄を切り裂くように見えることから。
元々は、モハメド・アリとの試合で用いる予定で考案され、公開スパーリングでこの技を目の当たりにしたアリ陣営がルール変更を強要したという逸話がある。そのためアリとの対戦では使用が禁じられたが、その後のプロレスの試合や異種格闘技戦で頻繁に用いた。そのため延髄斬りは猪木の代名詞の1つとなっており、かつて猪木が政治活動をしていた際には「消費税に延髄斬り」などとキャッチフレーズにも用いられていた。ワールドプロレスリングが生中継だった時代には「8時45分に猪木の延髄斬りで試合が終わる」とファンの語り草になっていた。しかしその一方でオールドファンの中には「生中継の終了時間に間に合わせるための瞬間芸」と揶揄する声も少なからずあったようである。
日本以外のプロレスでも多く用いられる技であり、また技の呼び方も "Enzuigiri"と、日本語がそのまま用いられている。日本で猪木と対戦したバッドニュース・アレンはWWFマットで「ゲットー・ブラスター」の名称で使用していた。
亜流
- 天龍式
- 猪木はジャンプの頂点で蹴りを繰り出すのに対し、天龍源一郎は斜め後方から相手の片肩を掴み、そこを支点としてジャンプして旋回しながら蹴りを後頭部に向けて放つ。また、肩を掴まずに同様のフォームで繰り出すことも多い。田上明がこのフォームで使用。
- これはアメリカのNWAミッドアトランティック地区へ武者修行に行っていた1980年代初頭、新日本プロレスの興行から帰って来たレスラー達から「猪木が妙なキックを使う」と言う話を聞き、当時若手だった天龍が興味を持ったことに端を発する(マスクド・スーパースターに放った延髄斬りをブラックジャック・マリガンに評価され、使用するようになったという)。猪木に比べジャンプ力に劣るため自己流にアレンジを加えた結果とも、「後頭部に跳び蹴りを当てる技」という漠然とした情報しか得られなかったことから違いが生まれたともいわれているが、詳細は不明。ただし若手時代の天龍は猪木ほどの高さは無いものの「跳び蹴り式」の延髄斬りも見せており、少なくともまず「肩掴み式」ありきではなかったものと思われる。
- また、その時期の天龍は相手の背後から走り込んで放つ(体勢的にはレッグラリアートに近い)独特の延髄斬りも使用していた。
- スイクル・デス
- 齋藤彰俊の延髄斬りは「スイクル・デス」という固有の名称が付いており、モーションも全身を大きく使ったダイナミックなものである。応用技でランニング式がある。
この他にも、ジャンプの上昇中に二段蹴りのように足を振り上げて繰り出す選手もいる。
派生技
- キャッチ式延髄斬り
- 相手に自分の蹴りがキャッチされた状態から、掴まれた足を軸にしてもう片方の足で延髄斬りを浴びせる。小川良成などのジュニアヘビー級の選手が使う事が多いが、ヘビー級でも山崎一夫や橋本真也など蹴り技を得意とする選手が見せる事がある。
- シャイニング延髄斬り
- シャイニング・ウィザードのように相手の膝を踏み台にして延髄斬りを浴びせる。ミラノコレクションA.T.等が得意としている。
- ステップ式延髄斬り
- キャッチ式の応用で、シャイニング式の類似型(シャイニング式よりこちらの方が古い)。前屈みで立っている相手の腹部へ片足を乗せてから繰り出す延髄斬り。アメリカではラウンドハウスキックとも呼ばれる。
- 三角跳び式延髄斬り
- コーナーポストを駆け上るようにジャンプし、オーバーヘッドキックに似た体勢、もしくは横からの体勢で延髄斬りを浴びせる。主な使い手は望月成晃、輝優優、藤本つかさ(ビーナスシュート)など。三角蹴りとも呼ばれる。
- ダイビング式延髄斬り
- コーナーポストの上からジャンプして延髄斬りを浴びせる。主な使い手は輝優優、山田敏代など。猪木も使用していた時期があったのだが、通常の延髄斬りのインパクトには及ばず得意技として愛用するまでには至らなかった(本人も自覚していたのか、ダイビング延髄斬りを当てた直後に通常の延髄斬りでフォローした事がある)。
- 延髄ニールキック
- 通常の延髄斬りとは異なり、相手の後頭部にニールキック(跳び後ろ回し蹴り)を当てる技。主な使い手は初代タイガーマスク(佐山聡)やザ・グレート・サスケ、太陽ケアなど。中嶋勝彦はデスロールの名で使用している。佐山聡曰く「力加減が効かない難しい技」であるとの事。
- ジャンピング・ハイキック
- 川田利明が使用。走ってくる相手に対するカウンターとしても使用される。後頭部ではなく、顔面や側頭部を狙った延髄斬り。土方隆司は、ランニング式も使用。