岳南鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Redirect テンプレート:Infobox 岳南鉄道株式会社(がくなんてつどう、テンプレート:Lang-en-short)は、静岡県富士市今泉1丁目17番39号に本社を置く企業富士急グループの一社。ゴルフ場事業、不動産事業、物品販売事業を行っている。

かつては鉄道およびバス事業(乗合、貸切)も行っていたが、バス事業については富士急グループの富士急静岡バスに移管し撤退した。また、鉄道事業についても貨物輸送の廃止に伴い収益が悪くなったことから、2013年(平成25年)4月に、新たに設立した子会社の岳南電車株式会社(がくなんでんしゃ、Gakunan Electric Train)に移管した[1]。本稿では岳南電車株式会社についてもあわせて記述する。

沿革

テンプレート:Main2

事業

ゴルフ場事業

ゴルフ場事業については、連結子会社である表富士観光株式会社が大富士ゴルフ場を経営している。ゴルフ場事業部門は、鉄道事業収入が減少傾向にある近年、岳南鉄道の各事業部門の中で最も多くの営業収益(売上高)を上げている部門であり、2011年3月期(2010年度)の有価証券報告書によれば、同期のゴルフ場事業の営業収益は3億1,649万4,000円と、岳南鉄道全体の連結売上高の約53%を占めるとともに、同年度の鉄道事業収入2億1,080万8,000円のほぼ1.5倍の収益を上げている。ただし近年では、プレー客が減少傾向にあることもあってか営業利益段階で損失を計上することもある[2]

大富士ゴルフ場
静岡県内では3番目のゴルフ場として開設。富士市今宮にあり、富士山と駿河湾を望む。自然の地形を巧みに活かし、全18コースに愛称がついているのが特徴的。

不動産事業

不動産事業部門では土地物件の賃貸営業を行っており、岳南鉄道株式会社において安定した収入源となっている。また、営業利益率がきわめて高いことも特徴である[3]

物品販売事業

物品販売事業部門では、様々な物品の販売を行っている。有価証券報告書などにおいては、「その他事業」に分類されていることもある。

岳南電車

テンプレート:Infobox 岳南電車株式会社は、岳南鉄道株式会社から移管された岳南鉄道線1路線を運営している。近年では経営移管前から旅客収入・貨物収入とも減少傾向にあり、主に旅客運送の面でイベント列車の運行や多客時の増結運行によるサービスの向上などに努めているが、毎年連続して数千万円の営業赤字(営業損失)を計上している。最も直近の決算期である2011年3月期の有価証券報告書によれば、2010年度の営業赤字は6,263万8千円となっている。

2014年7月18日、2014年度(第10回)の「日本夜景遺産」に、鉄道領域として初めて認定された。また、「懐かしい駅の明かりや工場夜景など貴重な夜景が沿線全体に存在する」として、路線・駅舎・車両など、鉄道施設全体という広範囲での認定も初めて[4][5]

路線

車両

2013年現在に至るまで、電車・電気機関車共に他社からの譲受車両で占められている。輸送量の急激な減少に伴い、1981年当時は電車12両・電気機関車7両在籍していた保有車両が、2006年には電車5両・電気機関車4両(うち1両休車)と減少している。

現有車両(電車)

いずれも元京王3000系中間車の先頭車化改造車である。

  • 7000形(モハ7001・7002・7003)
  • 8000形(モハ8001-クハ8101)

現有車両(電気機関車)

  • ED40形(2代) - 松本電気鉄道(現・アルピコ交通)がダム建設資材輸送列車の牽引用途に新製した電気機関車で、資材輸送列車の運行終了と同時に岳南鉄道へ譲渡されたものである。2両在籍している。吉原-比奈間の貨物輸送に、主力として用いられている。
  • ED50形 - 1928年川崎造船製の元上田温泉電軌(現上田電鉄)の機関車で、名古屋鉄道を経て入線したもの。1両在籍している。比奈構内の入換と、各引込線、専用線への小運転に用いられている。定期運用を持つ電気機関車としては日本国内最古参級である。
  • ED29形 - 1927年日本車輌製の元豊川鉄道買収機である。現在も休車として岳南富士岡駅構内に留置されている。

旧在籍形式(電車)

かつては木造車の鋼体化車や元小田急車などの雑多な旧型車で占められていた。老朽車を1両単位で置き換えていたこと、その置き換えの際に場当たり的に形式車号が決定されていたため、形式車号と実車の相関性が希薄であること、台車などの振り替えも頻繁に行われていたことから、その内容や変遷はきわめて複雑である。なお、鋼体化車や小田急車入線以前は木造車が大勢を占め、中には前面5枚窓の富岩鉄道買収国電払い下げ車なども在籍していた。

初期の木造車グループ
  • モハ101 1949年に駿豆鉄道よりモハ101を購入。元は国鉄モニ3012。1961年に鋼体化しモハ1103となる。
  • モハ102 モハ101と共に1949年に駿豆鉄道よりモハ102を購入。元は国鉄モニ3013。1953年制御車化してクハ102となる。1963年廃車解体。
  • モハ106 1949年に西武鉄道よりサハ106(元武蔵野鉄道1924年梅鉢製)を購入。1960年に鋼体化しステンレス車モハ1105となる。
  • クハ1210 1949年に西武鉄道よりクハ1210(1890年新橋工場製)を購入。元は国鉄の客車で履歴は国鉄ホユニ5067[7]→武蔵野鉄道クハ122→西武鉄道クハ1210。1968年廃車。
  • モハ38 1951年に駿豆鉄道モハ38を購入。1963年に鋼体化しモハ1106となる。
  • モハ201 1953年に国鉄より元伊那電気鉄道デハ204(1923年汽車会社製)を購入。1959年に鋼体化しモハ1101となる。
  • クハ21 1953年国鉄より元富岩鉄道セミボ21[8](1928年日本車輌製 半鋼製車)を購入。1968年廃車。
  • モハ601 1957年に富士山麓電気鉄道よりモハ20を借入後購入。元は国鉄モヤ4001。1960年に鋼体化しモハ1102となる。
  • クハ2101 鋼体化により余剰になったモハ38の車体を使用して制御車を製作
鋼体化車・元小田急車

テンプレート:See also

既存の木造車の機器を流用して車体を新製したものと、小田急から車体・台車を譲受して一部を電装したものに大別される。5000系導入まで使用された。

鋼体化車
既存の木造車の機器を流用して車体を新製したもの。
元小田急車
元小田急のHB車・ABF車。電動車の本来の主電動機は4000形に転用されたため車体・台車のみを譲受し、主電動機は国鉄中古品などを装備していた。これに関連して台車の振り替えが頻繁に行われていた。

クハ1107・2601は1100形鋼体化グループが搭載していたゼネラル・エレクトリック社系で国鉄の制式電車用制御器であったCS5系電空カム軸式制御器に連結対応する改造が行われており、それ以外の旧小田急車はウェスティングハウス・エレクトリック社のライセンシーであった三菱電機が製作したABF系単位スイッチ式制御器を搭載していて相互に制御シーケンスの互換性がなかったため、これらの混用・総括制御は不能であった。モハ1103・1105はラッシュ時に他のCS系2編成に増結され、3両編成でも使用された。即ち、最大3両編成3列車と予備1編成を組成していたことになり、この当時、通勤・通学客を中心に未だ多くの旅客需要があったことを窺わせる。1981年当時の5000形による置換直前の編成を以下に示す。

  • 国鉄形CS5系主制御器グループ - モハ1101+クハ2601, モハ1103+モハ1105, モハ1106+クハ1107 →吉原
  • 三菱ABF系主制御器グループ - モハ1108-クハ2106+モハ1603, モハ1602-サハ1955-モハ1905 →吉原

クハ1107・モハ1602・クハ2106・サハ1955の廃車体(台車無し)が比奈駅付近で倉庫として2011年夏ごろまで使用されていた。

5000系

テンプレート:Main

ファイル:Gakunan RW EC 5000 2.jpg
5000系 吉原駅 1981年頃

雑多な従来形式を淘汰するため、東急5000系を導入したもの。7000形導入後も予備車が残っていたが、8000形導入に伴い全車廃車された。

  • 5000系(モハ5000・クハ5100)

旧在籍形式(電気機関車)

  • ED40形(初代)- ED4012・ED4013の2両が在籍。元国鉄のアプトED40形で、駿豆鉄道を経て開業時に譲受。
  • デキ1形(デキ1, 2) - 2両在籍。元宇部鉄道デキ1形。独国AEG社製の凸型二軸機で、国鉄を経て入線した。1969年の昇圧時に昇圧対応工事の対象から外され、廃車となった。
  • デキ3形(デキ3) - 元駿豆鉄道デキ1形。駿豆鉄道が開業した時に用意した凸型木造電機。軽量であったため、主に沿線の引込線、専用線の入換に従事していたという。
  • ED30形(ED3011→ED301) - 1953年に竣工した帝國車輛工業製で岳南鉄道唯一の自社発注車で、蒲鉾の様な深い屋根が特徴であった。
  • ED31形(ED311) - ED40形(初代)と同様、元国鉄のアプト機ED40形に由来する車両であるが、駿豆鉄道時代に大改造が実施され、片運転台かつ1電動機サイドロッド駆動という特殊構造から、デッキ付両運転台でDT10台車を装着する一般的な機関車になっていた。
  • ED27形(ED271) - 元南武鉄道1002。国鉄を経て入線した。自重が50.6tで岳南鉄道で最も重く、定格出力も最大(700kW)を記録した機関車であった。
  • ED10形(ED103) - 1949年日立製作所製の大井川鉄道E10形。定格速度(34.7km/h)と定格引張力(6,160kg)のバランスが良く、本線貨物列車牽引の主力機として運用された。岳南鉄道の貨物削減後、大井川鉄道へ再譲渡され、SL急行補機等として使用されていたが、2003年以降千頭駅構内にて休車中。
  • ED28形(ED281) - 1930年川崎車両製の元小田急ED1021である。自重50.0tでED27形に次いで重く、箱型車体に船舶用といわれる丸窓が並ぶ車体が大きな特徴であった。
  • ED32形(ED321) - 1927年三菱電機製で、ウェスティングハウスタイプの凸型機である。伊那電気鉄道から国鉄買収を経て当線に入線した。比較的小型の凸型機であるが、パンタグラフを2基搭載していた。

乗車券

岳南鉄道では、有人駅である吉原駅、吉原本町駅、岳南原田駅、岳南富士岡駅の窓口において硬券を販売している。自社の岳南鉄道線内および岳南鉄道線とJR線をまたいで利用する乗車券がある。後者は静岡県内まで・名古屋市内までのJR東海道本線の主な駅、東京山手線内ゆきの硬券切符も取り扱っている。吉原駅では、JR線のみの硬券も発売している。

一日乗車券

全線1日フリー乗車券を発売しており、平日用は大人720円・小人360円、土休日用は大人410円・小人210円となっている(2014年4月1日改定)。吉原 - 岳南江尾間(往復720円)や、吉原駅 - 吉原本町間(往復420円)のような短区間の往復運賃と比較しても安価な価格設定である。なお、土休日用に限り、岳南電車有人駅窓口だけでなくアピタ富士吉原店サービスカウンターでも販売している。また、一日乗車券とは別に、期間中の任意の一日が乗り放題の「夏休みこどもフリーパス」が児童の夏季休暇中に小人200円で販売されている。

記念切符

2011年現在、販売しているものは以下のとおり。

  • 岳南鉄道機関車まつり2009開催記念 全駅乗車券セット
  • 創立60周年記念全駅硬券入場券セット
  • 鈴川改称50周年記念 入場券・乗車券セット - 1956年に鈴川駅が吉原駅に改称されてから50周年を記念。
  • 岳南鉄道沿線赤がえるまつり記念全線1日フリー乗車券 - 「赤がえる」とは、「青ガエル」と呼ばれた元東急5000系(初代)で、赤色塗装となった5000系電車の通称。

グッズ

  • 全駅駅名看板キーホルダー
  • 全駅駅名看板携帯ストラップ
  • 岳南電茶

企画

脚注・出典

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:富士急グループ

en:Gakunan Railway Line
  1. 1.0 1.1 テンプレート:Cite news
  2. 金融庁が提供する電子開示システム「EDINET」で閲覧可能な過去の有価証券報告書(最も古いもので2007年3月期分)によれば、2007年3月期以降大富士ゴルフ場の利用客は毎年減少していることが解る。また、ゴルフ場事業部門は2009年3月期と2010年3月期には2期連続で営業赤字となっている。
  3. 例えば2010年度の営業収益は5,654万8,000円であるのに対し、営業利益は4,898万4,000円と営業利益率は86%超を記録している。(2011年3月期の有価証券報告書による。)
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite news
  6. 国土交通省監修『鉄道要覧』では路線名が記されていないが、岳南電車では自社公式ウェブサイト内において路線名を「岳南鉄道線」と表記している。
  7. 製造当初の形式不明
  8. 21号電車形式図『最新電動客車明細表及型式図集』(国立国会図書館近代デジタルライブラリー)