基幹バス (名古屋市)
基幹バス(きかんバス)とは、名古屋市交通局(名古屋市営バス)と名鉄バスが運行する基幹バス路線の一つである。名古屋市交通局が運行する基幹バスには2007年まで「ミッキー」の愛称がついていた(基幹バスの「幹」から)が、現在は外されている。現在2系統ある。英語ではKey Route Busと表記し、地下鉄のLED車内案内の他、最近では引山、茶屋ヶ坂などのバス停でも見られる。
目次
特徴
- ダイヤの間隔はほぼ地下鉄並みに設定されている。(昼間:栄発着が10分間隔で名古屋駅発着が20分間隔、朝:4分間隔、夕方:5分間隔)
- 停留所の間隔を通常の系統より長くする。
- 通常の系統と比較して2 - 3倍の距離
- 月 - 金はバスレーン規制を行う。(バス専用規制時間:7:00 - 9:00)
- レーンの区分をはっきりさせるためのカラー舗装
- 規制時間帯は監視カメラと道路情報掲示板によって、バスレーンを走る一般車両に対して警告を行う
以上により、表定速度を向上させることを目標とする。
歴史
1974年の名古屋市電の全廃以降、当時の名古屋市は東京と比較すると軌道系交通路線網の密度が低いことや幅員の大きい幹線道路などがあり、「自動車型都市」とも言われるほど乗用車の利用率が高く[1]、道路混雑が激しいため、早い時期から公共交通機関を優先するための対策を検討していた[1]。「基幹バス」の構想は、1979年5月に名古屋市総合交通計画研究会が提案したもので、鉄道や地下鉄と同等の公共基幹路線という位置づけとして、地下鉄計画路線の実現まで代替交通機関として整備するか[1]、地下鉄計画は存在しないが機関的交通機関の必要な地区に整備する[1]、という2種類の方向性が考えられていた。
この交通システムの理想は、道路中央部に専用車線と停留所を設置し[1]、停留所間隔は地下鉄並みに800 mから1 km程度[1]とした上で、バス優先信号を採用することで交差点での停止をなくす[1]などの対応策により、表定速度の目標値を25 km/hに設定した[1]ものである。
この構想には次の路線が含まれていた。
- 東郊線(現在の基幹1号系統)
- 新出来町線(現在の基幹2号系統)
- 志段味線(栄 - 志段味・一部は現在のゆとりーとライン)
- 楠町線(栄 - 楠町)
- 富田町線(金山 - 富田)
- 南陽町線(熱田 - 福田)
- 金城埠頭線(高畑 - 金城埠頭・現在のあおなみ線にほぼ並行)
- 山手通線(本山 - 新瑞橋・現在の名古屋市営地下鉄名城線の一部)
これを受けて、まず1982年3月に東郊線10.5 kmの運行を開始した。東郊線では平均停留所間隔は750 m[1]で、道路の幅員も40 mと余裕があり[1]、さらに鉄道との連絡箇所も多く需要が見込まれるという理由で選定された[1]。ただし、道路中央には都市高速道路が通っているなどの理由から、中央走行式の採用は見送られた[2]。
なお、この半年後にあたる同年9月には、一般バス路線の中で運行便数の充実や冷房化などの重点政策を図る路線を「幹線バス」と定義づけ、基幹路線のバックアップ機能を強化する方針となった[2]。
システム導入後3年間の東郊線の状況は、表定速度が13 km/hから17 km/hに向上(平均所要時間では48分から37分に改善)[2]、利用者は60 %(パーセント)増加した[2]上、1986年の営業係数(100円の収入を得るための支出額)は77.2となった[2]。
基幹バスシステムの導入効果が明らかになった1985年4月には、さらに理想に近い基幹バス路線として新出来町線を開設した。新出来町線では停留所間隔は650 mで[2]、道路の幅員は一部で24.5mと余裕がない箇所もあった[2]が、市営地下鉄東山線と名鉄瀬戸線の中間に位置し、鉄道網に恵まれない地区を経由するため、整備効果と需要はともに多いものと見込まれた[2]。また、新出来町線では名古屋鉄道(当時)のバスと相互乗り入れとした。
システム導入後1年間の新出来町線は、表定速度が14.5 km/hから19.9 km/hに向上(平均所要時間では50分から34分に改善)[2]、1986年の営業係数は87.6で黒字となった[2]。
導入後の名古屋市が効果測定調査を行なった結果、基幹バスを「良かった」と考える利用者が83 %となっていた[2]が、沿道住民からの評価も「良かった」が50 %となった上[2]、自家用車のドライバーからも「良かった」という評価が38 %(ドライバーからの「良くない」という評価は25 %)を占めていた[2]。
基幹1号系統(東郊線)
テンプレート:Double image aside 基幹1号系統は、1982年3月28日開通。名古屋市交通局が運行しており、名古屋市中区の栄と南区の笠寺駅、星崎、鳴尾車庫バス停を結ぶ。大部分の区間では道路中央に名古屋高速道路の橋脚が存在するため、中央走行方式は断念され、バスレーンは道路の端に設置されている。バス停は一般バスと同じ施設を使用し、一部のバス停には停車しないことで速達性を確保している。このため、基幹1号が停車するバス停には次に停車するバス停の表示が基幹バスと一般バスのものに分けて表示されている。また、運行担当営業所は終点でもある鳴尾営業所であり、全便ノンステップバスによる運行である。
また、高速1号系統で運用するノンステップバスも、送り込み(車庫への回送を兼ねての営業運転)で投入されている。この車は一般バス塗色なので、基幹バスとして運行する場合は前面に「基幹バス」というバスマスクによる大きな表示がされ、入口扉の横にも「基幹バス」というサボが取り付けられる。
運行系統
- 栄 - 鳴尾車庫
- 栄 - 星崎
- 栄 - 笠寺駅
廃止・変更路線
- 栄 - 総合体育館(2003年の再編で廃止。栄 - 笠寺駅に変更)
基幹2号系統(新出来町線)・名鉄バス本地ヶ原線
基幹バス新出来町線(きかん-しんできまちせん)は、名古屋市営バス・名鉄バスが運行する路線である。
概要
名古屋市営バスが基幹2号系統・新出来町線として、名鉄バス(当時は名古屋鉄道)が本地ヶ原線として1985年4月30日開通。バスレーンが道路の中央にある(中央走行方式)のが特徴(桜通大津交差点 - 引山バスターミナル)。名古屋市営バスは名古屋駅と名東区の猪高車庫、千種区の光ヶ丘、また栄(オアシス21)と名東区の引山(引山バスターミナル)、守山区の四軒家、名鉄バスはさらに尾張旭市を経て瀬戸市の菱野団地等を結ぶ。
名鉄バスセンター - 尾張旭向ヶ丘および名鉄バスセンター - 瀬戸駅前の系統は名鉄瀬戸線と一部競合するが、並行はしていない。所要時間や運賃は瀬戸線の方が圧倒的に有利である。
運行系統
栄バス停は市バスはオアシス21内のバスターミナル、名鉄バスは大津通の栄交差点付近の路上にある。
市バス基幹2号
名鉄バス本地ヶ原線
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 三軒家
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 藤が丘
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 長久手車庫
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 尾張旭向ヶ丘(晴丘経由とみどりヶ丘経由の2つの経路がある)
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 菱野団地
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 瀬戸駅前
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 愛知医科大学病院
過去に存在した運用区間
<市バス>
- 栄 - 自由ヶ丘(現・千種台中学校、2003年の再編で廃止)
- 名古屋駅 - 自由ヶ丘(現・千種台中学校、2003年の再編で光ヶ丘まで延長)
- 栄 - 猪高車庫(2003年の再編で廃止)
<名鉄バス>
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 本地
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 瀬戸駅前 - 赤津
- 名鉄バスセンター - 栄 - 引山 - 岩作 - 愛知青少年公園(休日のみ)
- このうちの、瀬戸駅前 - 赤津、長久手役場前 - 愛知青少年公園が、基幹バス路線の完全に無くなった区間である。
路線変更
2003年12月13日に地下鉄名城線(4号線)開業に伴うダイヤ改正で名古屋市営バスが運行する区間が三軒家まで延長。2004年3月1日に四軒家まで再延長され、現在に至る。ただし、引山 - 四軒家間は出入庫時の運行であるため、便数は少なく特定の時間に集中している。
なお、定期券の相互利用区間は変わっていない。料金も三軒家から先の部分について両社局ともに変更もされていないため、料金格差も出来てしまった(栄 - 四軒家間では、市バス200円に対し、名鉄バスは360円と大きな差がある)。
注意点
栄 - 引山は名古屋市交通局と名鉄バスによる共同運行区間となっているため、以下の点に留意する必要がある。
- 市バス・名鉄バスとも「後乗り前降り、運賃後払い」制になっている。名古屋市交通局で運賃後払い路線は本路線とゆとりーとライン志段味線のみ。
- 運賃の支払方法、使用できる乗車カードなどについても一部異なる。
- 市バス・名鉄バスの双方で、manaca(およびこれと相互利用が可能なICカード)を利用できる(2012年2月までは共通カード利用システム「トランパス」により、プリペイドカード(ユリカ、SFパノラマカード、あおなみカード)も利用できた。また、名古屋市交通局・名鉄バス双方発行の昼間割引バスカードでも、相互乗車可能であった(但し名鉄バス発行の普通バスカードは名鉄バスのみ有効[3]であった)。どちらかのみに有効の乗車券、カードを所持する乗客の誤乗車を防ぐため、市営バスの前面には「市営」、後扉には「市バス」、名鉄バスの後扉には名鉄バスの社章のステッカーが貼られている)。名古屋市が発行するドニチエコきっぷ等の一日乗車券類に関しては、名鉄バスでは共用運行区間内でも利用できない。名鉄バスの定期券に関しては栄 - 引山の区間内を指定する定期券に限り、どちらの運行便でも乗車が可能である。なお、市バスの全線定期券では栄‐引山間および名鉄バスセンターで乗降する場合に限り、どちらの運行便でも乗車が可能である。
- 市バスの場合、全区間均一料金のため乗車時の整理券発行はなく、下車時に運賃を支払う。運賃箱に乗車料金以上の金額を投入した場合お釣りが出る。
- 名鉄バスの場合、名鉄バスセンター - 三軒家間以外は均一料金でないため、乗車時に整理券を受け取る必要がある。ICカードは乗車時にリーダーに触れる必要がある。運賃箱に乗車料金以上の金額を投入した場合お釣りが出ないため、予め併設の両替機で両替しておく必要がある(下車時にも両替可能だが下車時間が延びる原因になっている)。トラブル防止のため、料金箱の周りに注意書きのシールを貼っている場合がある。
- 栄 - 引山間は共通の停留所であるが、栄のバス停のみ位置が異なる。市バスはオアシス21内のバスターミナルであるが、名鉄バスは大津通の路上にある。引山 - 四軒家間では同一名の停留所でもバス停の位置が異なる。
- 市バスの名古屋駅方向行きは猪高車庫・光ヶ丘発のみで桜通大津から分岐するため栄を通らない。また同じく市バスの四軒家・引山方面からの便は栄行きしかないので、乗り換え無しで名古屋駅まで行きたい場合は名鉄バスに乗る必要がある。名鉄バスは栄から矢場町、白川公園、下広井(若宮大通)を経由して名古屋駅にある名鉄バスセンターへ至る。
- 尚、市役所停留所では栄・名古屋駅方面行きのみ平日朝ラッシュ時間帯、交通局職員が運賃箱を持参して精算を行っている(この際は市バスでは前後両側のドアが開く)が、名鉄バスのmanaca定期券はこの運賃箱では処理できないため、バス車内の運賃箱にタッチする必要がある(停留所にも注意書きがある)。
中央走行方式の道路では、限られた道路幅を有効に活用するため[4]、道路中央の安全地帯(バス停留所)は交差点をはさんでほぼ中央に位置し[4]、交差点の中央では、バスレーンは左側に湾曲させている[4]。交差点における各車線の進行方向指定は、4車線道路で一般的な「←・↑・↑・→」ではなく、「←・↑・→・↑」であるが、この状態では右折車がバスレーン(直進車線)と交差してしまうため、ほとんどの交差点が方向別に完全分離した矢印信号となっている。
車両
テンプレート:Double image aside この路線は中央走行方式に伴う停留所の構造(バス停付近でバスレーンが大きく湾曲している)により、ノンステップバスの導入はされていなかったが、平成19年度に名古屋市交通局が日野自動車製といすゞ自動車製の大型ノンステップバスを順次導入している。2008年4月改正後では、朝の時間帯を除き、毎時1 - 2本程度がノンステップバスによる運行となっている。 名鉄バスはバリアフリー対応車両として、当初はワンステップバスを導入していたが、名古屋市交通局に続いて三菱ふそう製ノンステップバス(エコハイブリッドバス)を導入し、2008年4月から使用開始している。これはハイブリッドシステムを搭載するなど、環境に配慮した車両であるが、座席数が多いため通路が狭く、立客の多い朝夕のラッシュには他の車両と比べ混雑や乗降時間が増大するなどの欠点がある。試験的に導入した4台は全て水色の塗色だが、他は青、橙、黄、黄緑、緑、紫などがある。ハイブリッドシステムが複雑なゆえに車輌故障等が頻発し、平成25年度新車導入のノンステップバスへの置き換えで、津島営業所等への転属も始まっている。
- Nagoya city kikanbus KF-68.jpg
名古屋市営バス 基幹2 三菱ふそう エアロスターM(現在廃車済み)
- KC-HU2MMCA.JPG
基幹2 日野ブルーリボン(現在廃車済み)
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名鉄バス基幹色 ニューエアロスター(現在津島営業所所属)
脚注
関連項目
参考文献
- バス・ジャパン7号「特集:都市新バス」(1988年1月1日発行・バス・ジャパン刊行会)ISBN 4795277621