千年女優
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テンプレート:Infobox Film 『千年女優』(せんねんじょゆう)は、2002年の日本のアニメ映画。監督は今敏。
キャッチコピーは「その愛は狂気にも似ている」。
あらすじ
芸能界を引退して久しい伝説の大女優・藤原千代子は、自分の所属していた映画会社「銀映」の古い撮影所が老朽化によって取り壊されることについてのインタビューの依頼を承諾し、それまで一切受けなかった取材に30年ぶりに応じた。千代子のファンだった立花源也は、カメラマンの井田恭二と共にインタビュアーとして千代子の家を訪れるが、立花はインタビューの前に千代子に小さな箱を渡す。その中に入っていたのは、古めかしい鍵だった。そして鍵を手に取った千代子は、鍵を見つめながら小声で呟いた。
「一番大切なものを開ける鍵…」
少しずつ自分の過去を語りだす千代子。しかし千代子の話が進むにつれて、彼女の半生の記憶と映画の世界が段々と混じりあっていく…。
登場人物
- 藤原 千代子
- 声 - 荘司美代子(70代)、小山茉美(20~40代)、折笠富美子(10~20代)
- 本作の主人公。映画会社「銀映」の看板女優で、日本映画史上にその名を残す大女優。関東大震災が発生した日に生まれる。
- 女学生だった頃に鍵の君との運命的な出会いを果たし、彼との再会を夢見て「銀映」に入る。入社後は数多くの作品に主演として出演し、日本映画界のスターに登り詰めたが、ある作品の撮影中に突然失踪しそのまま引退してしまう。
- 以後30年間人前に姿を現すことはなかったが、立花からの依頼を受けインタビューに応じる。インタビューの際、立花から無くしたはずの鍵を渡され、鍵の君との思い出を語る。
- 鍵の君が身に付けていた鍵を、彼と自分を繋ぐものとして大切にしていた。
- 立花 源也
- 声 - 飯塚昭三、佐藤政道(青年期)
- 60歳。映像制作会社「VISUAL STUDIO LOTUS」の社長。若い頃は「銀映」に所属していた。千代子の熱烈なファンであり、彼女に対する暴言は許さない。
- 「銀映」の撮影所閉鎖の際、千代子の半生を辿るドキュメンタリーの制作を企画し、彼女を取材する。「銀映」時代に千代子が無くした鍵を大切に保管しており、取材の際に鍵を千代子に渡す。
- 幻想世界(千代子の半生と映画が混ざり合った世界)に積極的に介入し、千代子を手助けする役として登場する。
- 井田 恭二
- 声 - 小野坂昌也
- 28歳。「VISUAL STUDIO LOTUS」のカメラマン。千代子については「昔有名だった女優」程度の認識しかない。
- 立花と違い幻想世界に介入する気はなく、終始傍観者としてカメラを回すが、結局は幻想世界で起こる出来事に巻き込まれてしまう。
- 島尾 詠子
- 声 - 津田匠子
- 千代子が入社する以前の「銀映」の看板女優。千代子のライバル役として数多くの作品に共演するが、彼女の若さと純真さに嫉妬するようになる。
- 幻想世界では、鍵の君を探す千代子を妨害する役として登場する。
- 大滝 諄一
- 声 - 鈴置洋孝
- 「銀映」専務の甥。後に監督に昇格する。部下の立花を頻繁に怒鳴っていたため、立花からは苦手意識を持たれていた。
- 叔父がスカウトした千代子に興味を示し積極的にアプローチするが、常に袖にされている。鍵を無くして動揺する千代子にアプローチし、結婚する。
- 鍵の君
- 声 - 山寺宏一
- 絵描きの青年。千代子が想いを寄せる相手。
- 思想犯として追われていた所を千代子に助けられ、家の倉にかくまわれる。捜査の手が迫る中、千代子に「約束の場所」での再会を誓い別れる。
- 傷の男
- 声 - 津嘉山正種
- 官憲。左の頬に傷がある男。思想犯の取締りを担当し、鍵の君を付け狙う。
- 幻想世界では、千代子と鍵の君を引き裂く役として登場する。
スタッフ
- 原案・脚本・キャラクターデザイン・監督:今敏
- 脚本:村井さだゆき
- 演出:松尾衡
- キャラクターデザイン・作画監督:本田雄
- 作画監督:井上俊之、濱洲英喜、小西賢一、古屋勝悟
- 美術監督:池信孝
- 色彩設計:橋本賢
- 撮影監督:白井久男
- 編集:寺内聡
- 音響監督:三間雅文
- 音楽:平沢進
- 制作プロデューサー:岩瀬安輝、諸澤昌男
- プロデューサー:真木太郎
- 制作:ジェンコ、マッドハウス
- 配給:クロックワークス
- 製作:「千年女優」製作委員会(角川書店、WOWOW、クロックワークス、バンダイビジュアル、ジェンコ)
キャスト
- 藤原千代子(70代):荘司美代子
- 藤原千代子(20~40代):小山茉美
- 藤原千代子(10~20代):折笠富美子
- 立花源也:飯塚昭三
- 立花源也(青年期):佐藤政道
- 井田恭二:小野坂昌也
- 島尾詠子:津田匠子
- 大滝諄一:鈴置洋孝
- 美濃:片岡富枝
- 番頭:石森達幸
- 銀映専務:徳丸完
- 千代子の母:京田尚子
- 鍵の君:山寺宏一
- 傷の男:津嘉山正種
- その他:小形満、麻生智久、遊佐浩二、肥後誠、坂口候一、志村知幸、木村亜希子、サエキトモ、野島裕史、浅野るり、大中寛子、園部好徳、大黒優美子
主題歌
- 「ロタティオン[LOTUS-2]」
- 作詞・作曲・編曲:平沢進
受賞歴
- 第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞(『千と千尋の神隠し』と同時受賞)
- 第6回ファンタジア国際映画祭・最優秀アニメーション作品賞&芸術的革新賞
- 第33回シッチェス・カタロニア国際映画祭・最優秀アジア映画作品賞
- 2003年度東京アニメアワード・劇場映画部門最優秀作品賞
- 第57回毎日映画コンクール・大藤信郎賞
- 第8回アニメーション神戸作品賞・劇場部門
備考
- 作品世界が、現在・過去・未来、と時空を越えた“入れ子構造”となっており、絢爛たる輪廻転生譚となっている。
- 主人公の藤原千代子は日本映画黄金時代の女優原節子をモデルにしている。また一部シーンは黒澤明監督の「蜘蛛巣城」を元にしている。[1]
- 主題歌が「LOTUS-2」であるように、物語中では蓮をモチーフにしたものや蓮そのものが何度か登場するが、蓮とは仏教、ヒンズー教などにおいて転生や出生などの類に縁のあるものである。
- サウンドトラックに使われた「Lotus Gate(Landscape-1)」は、もともと平沢進がユニット“旬”名義で発表した『フラクタル幾何学』の理論を援用した楽曲で、『千年女優』の“入れ子構造”性に底通した作品となっている。テンプレート:要出典
- 2008年2月27日にとちぎテレビで地上波初放送された。2011年8月27日にテレビ北海道でも放送。2011年12月31日にテレビ静岡で放送。
関連文献
- 『千年女優画報 -- Millennial actress special edition』 マッドハウス・発行、河出書房新社・発売 2002年10月 ISBN 4-309-90511-0
- 『KON’S TONE―「千年女優」への道』、晶文社、2002年9月 ISBN-10: ISBN 479496546X、ISBN-13:ISBN 978-4-794-96546-2
演劇版
関西を中心に活動する女性5人の劇団『TAKE IT EASY!』により舞台化。主人公である藤原千代子他、主要キャストやサブキャストなど200以上に渡るキャラクターを五人の役者が入れ替わりながら演じる「入れ子キャスティング」という手法で全編が構成された。
- 原作:今敏
- 脚本・演出:末満健一(ピースピット)
- 音楽:和田俊輔(デス電所)
- 出演(初演):清水かおり、中村真利亜、前渕さなえ、山根千佳、松村里美(大阪) / 立花明依(愛知)
- 出演(再演):清水かおり、中村真利亜、前渕さなえ、山根千佳、立花明依
- プロデューサー:水口美佳 企画制作:TAKE IT EASY!
- 協力:マッドハウス 「千年女優」製作委員会
- 2009年1月 大阪公演 梅田・HEP HALL
- 2009年5月 愛知公演・長久手文化の家 森のホール(一時間の短縮version)
- 2011年1~5月 大阪 HEP HALL・東京シアターグリーン・福岡 ぽんプラザホール・大阪 シアター・ドラマシティにて再演
- 主題歌「アパンナカ」
- 劇中歌「数え歌 無限千年回廊」「いろは唄 乙女千年疾走」
- 作詞:末満健一 作曲:和田俊輔 歌:TAKE IT EASY!
参考資料
- 今敏の公式サイトより海外からのメールインタビュー
- TAKE IT EASY!×末満健一「千年女優」特設ページ -- 演劇版