上橋菜穂子
テンプレート:Infobox 作家 上橋 菜穂子(うえはし なほこ、1962年7月15日 - )は、東京都生まれの児童文学作家、ファンタジー作家、SF作家、文化人類学者。日本児童文学者協会会員。父は洋画家の上橋薫[1]。
香蘭女学校中学校・高等学校[2]を経て、立教大学文学部史学科卒業、同大学院博士課程(後期課程)単位取得退学。後に博士(文学)(立教大学、2007年)。女子栄養大学助手、武蔵野女子短期大学非常勤講師、川村学園女子大学講師を経て、同大学児童教育学科教授、2012年10月には、特任教授として教育学部児童教育学科で児童文学を担当している[3]。
目次
経歴
幼児から父方の祖母から、多くの民話を聞いて成長する。また両親は多くの本を読んでくれ、母からは『モモちゃんとプー』、『もじゃもじゃペーター』そして父からは『西遊記』、『水滸伝』。初めて自分で選んだ本は『王様の剣』だった。多くの物語を読むとともに幼い時から物語を作ることを目指していた。[4]
母方の祖母の家が野尻湖にあったが、小学校5、6年で、1962年野尻湖の化石の第1次発掘でのナウマンゾウとヤベオオツノジカの化石発見について、自由研究で調査文章を書く。また、野尻の山で木の葉の化石や、手の跡のある縄文土器を見つけ、自分もみんなも、やがては消え、物だけがこうして残る寂しさを感じ、時空を小学生で思うようになる。[4]
高校生のとき英国へ21日間学習旅行に行き、ルーシー・M・ボストンを訪問し古い英国の屋敷と生活を知る[4]。また文化人類学者シオドーラ・クローバー『イシ 二つの世界を生きたインディアンの物語』を読み、白人の中に先住文化民が1人残されたことを知り、異文化への孤立に衝撃を受ける[4]。高校2年の文化祭で、原作・脚本・出演の西欧中世悲劇『双子星座』を自主上演し、片桐はいり、も初舞台となる[2]。また、同学年で旺文社の文芸コンクールで『天の槍』を書き佳作となる[2]。高校3年では漫画家になろうとしていたが再度かわり作家を目指す[4]。
大学は史学科だったが、山口昌男『アフリカの神話的世界』でアフリカ神話に衝撃を受け、文化人類学を学び、大学院に進む[4]。アボリジニの研究でオーストラリアで、インターンシップで、ボランティアで小学校の日本文化の先生となったのをはじめに、長年にわたりフィールドワークを行い食事や労働を共にした。この経験は小説の作風にも大きな影響を及ぼしている。『守り人シリーズ』は中央アジアの民俗の見聞が大きいと上橋自身は述べている。
1989年、『精霊の木』で児童文学作家としてデビューする。1991年に刊行した『月の森に、カミよ眠れ』で翌年、日本児童文学者協会新人賞を受賞し、同時期の荻原規子やたつみや章と並んで日本古代を題材とした日本的ファンタジーの書き手として注目を浴びる。
1996年『精霊の守り人』で独自の異世界を舞台にした女用心棒を主人公にしたハイ・ファンタジー作品を発表する。同作で、野間児童文芸新人賞・産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞する。2008年6月には、英訳も出版された。以後、『守り人シリーズ』として書き継いでいくことになる。『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2002年には『守り人シリーズ』で第25回巌谷小波文芸賞を受賞する。『神の守り人』で小学館児童出版文化賞を受賞する。
また再び古き日本を舞台にした『狐笛のかなた』で野間児童文芸賞受賞、産経児童出版文化賞推薦作品となる。
『精霊の守り人』、『獣の奏者』(アニメ番組名『獣の奏者エリン』)のアニメ化の際は企画段階から、監修者として参加している。『獣の奏者』では、この時の製作者側の詳細な質問に答える中で、主人公が再度自分の中で動き出すとともに物語に謎と続きがあることがわかり、『III 探求編』と『IV 完結編』が生まれた。
ファンとの交流を大切にしており、サイン会・講演会なども頻繁に行う。
博士学位論文は、「ヤマジー : ある「地方のアボリジニ」のエスニック・アイデンティティの明確化と維持について」である。
文学賞受賞歴・候補歴等
- 1992年『月の森に、カミよ眠れ』- 日本児童文学者協会新人賞
- 1996年『精霊の守り人』- 第34回野間児童文芸新人賞
- 1997年 第44回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞
- 2000年『闇の守り人』- 第40回日本児童文学者協会賞
- 2002年『守り人シリーズ』- 第25回巌谷小波文芸賞
- 2003年『神の守り人 来訪編、帰還編』- 第52回小学館児童出版文化賞
- 2004年『狐笛のかなた』- 第42回野間児童文芸賞受賞、第51回 産経児童出版文化賞推薦作品
- 2009年『Moribito: Guardian of the Spirit』(『精霊の守り人』英訳版)- The Batchelder Award。
- 2014年3月24日 - 国際アンデルセン賞作家賞[6][7][8]
著作リスト
- 『精霊の木』(偕成社)※デビュー作
- 『月の森に、カミよ眠れ』(偕成社)
- 初版(1991年、ISBN 978-4037208103) - 現在は絶版。挿絵:金成泰三、表紙絵:上橋薫(父親)
- 新版(2000年、ISBN 978-4036524303) - 挿絵・表紙絵:篠崎正喜
- 『狐笛のかなた』
守り人シリーズ・旅人シリーズ
- 『精霊の守り人』
- 初版(偕成社、1996年7月、ISBN 978-4035401506) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2006年11月、ISBN 978-4037500207)
- 新潮社文庫版(2007年3月、ISBN 978-4101302720)
- 英語版『Guardian Of The Spirit(Moribito) Arthur a Levine』(ISBN 978-0545005425)
- 『闇の守り人』
- 初版(偕成社、1999年1月、ISBN 978-4035402107) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2006年11月、ISBN 978-4037500306)
- 文庫版(新潮社、2007年6月、ISBN 978-4-10-1302737)
- 2007年4月、NHKFM「青春アドベンチャー」枠で、ラジオドラマ放送。
- 『夢の守り人』
- 初版(偕成社、2000年5月、ISBN 978-4035402305) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2007年7月、ISBN 978-4-03-7500405)
- 文庫版(新潮社、2007年12月、ISBN 978-4101302737)
- 『虚空の旅人』
- 初版(偕成社、2001年7月、ISBN 978-4035402701) - 挿絵は佐竹美保が担当。
- 軽装版(偕成社、2007年9月、ISBN 978-4-03-7500504)
- 文庫版(新潮社、2008年7月、ISBN 978-4101302751)
- 『神の守り人 <上> 来訪編』
- 初版(偕成社、2003年1月、ISBN 978-4035402800) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2008年2月、ISBN 978-4037500603)
- 文庫版(新潮社、2009年8月、ISBN 978-4101302768)
- 『神の守り人 <下> 帰還編』
- 初版(偕成社、2003年1月、ISBN 978-4035402909) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2008年2月、ISBN 978-4037500702)
- 文庫版(新潮社、2009年8月、ISBN 978-4101302775)
- 『蒼路の旅人』
- 初版(偕成社、2005年4月、ISBN 978-4035403104) - 挿絵は佐竹美保が担当。
- 軽装版(偕成社、2008年7月、ISBN 978-4037500801)
- 文庫版(新潮社、2010年8月、ISBN 978-4101302799)
- 『天と地の守り人 <第1部> ロタ王国編』
- 初版(偕成社、2006年11月、ISBN 978-4035403203) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2008年9月、ISBN 978-4037500900)
- 文庫版(新潮社、2011年5月、ISBN 978-4101302805)
- 『天と地の守り人 <第2部> カンバル王国編』
- 初版(偕成社、2007年1月、ISBN 978-4035403302) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2008年11月、ISBN 978-4037501006)
- 文庫版(新潮社、2011年5月、ISBN 978-4101302812)
- 『天と地の守り人 <第3部> 新ヨゴ皇国編』
- 初版(偕成社、2007年2月、ISBN 978-4035403401) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2009年1月、ISBN 978-4037501105)
- 文庫版(新潮社、2011年5月、ISBN 978-4101302829)
- 『流れ行く者 守り人短篇集』
- 初版(偕成社、2008年4月、ISBN 978-4035403609) - 挿絵は二木真希子が担当。
- 軽装版(偕成社、2011年5月、ISBN 978-4037501303)
- 文庫版(新潮社、2013年8月、ISBN 978-4101302836)
- 『<守り人>のすべて 守り人シリーズ完全ガイド』- 短編『春の光』が収載
- (偕成社、2011年6月、ISBN 978-4037501402)
- 『炎路を行く者 -守り人作品集-』
- 初版(偕成社、2012年1月、ISBN 978-4035403807) - 挿絵は二木真希子と佐竹美保が担当。
獣の奏者
テンプレート:Main 単行本・文庫・青い鳥文庫・電子書籍の4形態で出版されている。紙媒体は全て講談社から発売。
単行本版の装画は浅野隆広、装丁は坂川栄治+田中久子(坂川事務所)。文庫本版の装画は原島順、装丁は樋口真嗣。
- 『I 闘蛇編』
- 単行本版(2006年11月21日、ISBN 978-4062137003)
- 文庫版(2009年8月、ISBN 978-4062764469)
- 『II 王獣編』
- 単行本版(2006年11月21日、ISBN 978-4062137010)
- 文庫版(2009年8月、ISBN 978-4062764476)
- 『III 探求編』
- 単行本版(2009年8月11日、ISBN 978-4062156325)
- 文庫版(2012年8月、ISBN 978-4062773447)
- 『IV 完結編』
- 単行本版(2009年8月11日、ISBN 978-4062156332)
- 文庫版(2012年8月、ISBN 978-4062773454)
- 『獣の奏者 外伝 刹那』
- 単行本版(2010年9月7日、ISBN 978-4062164399)
- 文庫版(2013年10月16日、ISBN 978-4-06-277660-8) - 短編「綿毛」加筆収録
- 青い鳥文庫版
- 『I 闘蛇編』『II 王獣編』『Ⅲ探究編』『Ⅳ完結編』の内容をそれぞれ2巻ずつ8冊に分冊。
- <1〜4><5〜8>をそれぞれ2ヶ月間隔で刊行した。
- 挿絵は武本糸会が担当。
- 『獣の奏者 <1>』(闘蛇編 上)(2008年11月14日、ISBN 978-4062850568)
- 『獣の奏者 <2>』(闘蛇編 下)(2009年1月15日、ISBN 978-4062850698)
- 『獣の奏者 <3>』(王獣編 上)(2009年3月15日、ISBN 978-4062850766)
- 『獣の奏者 <4>』(王獣編 下)(2009年5月15日、ISBN 978-4062850926)
- 『獣の奏者 <5>』(探究編 上)(2011年4月15日、ISBN 978-4062852104)
- 『獣の奏者 <6>』(探究編 下)(2011年6月10日、ISBN 978-4062852197)
- 『獣の奏者 <7>』(完結編 上)(2011年8月12日、ISBN 978-4062852234)
- 『獣の奏者 <8>』(完結編 下)(2011年10月9日、ISBN 978-4062852494)
- 電子書籍版
- iOSアプリ形式
- 『I 闘蛇編』の序章のみ試読可能な"ガワ"をインストール後、アプリ内で各巻を購入・ダウンロードするカートリッジ方式。
- 2013年5月現在、『I 闘蛇編』『II 王獣編』のみ購入可能。
- ePub形式(iBookstore)
- 2013年3月より、I〜Ⅳ巻の一斉取り扱い開始。
- ドットブック形式(WindowsOS・iOS・AndriodOS対応)
- 2012年10月現在、電子文庫パブリほかにて『IV完結編』まで購入可能。
エッセイ他
- 『バルサの食卓』 チーム北海道 共著 (新潮文庫 2009年8月 ISBN 978-4101302782)
- 『隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民』(ちくま文庫 2010年9月 ISBN 978-4480427274)
- 『物語ること、生きること』(講談社 2013年10月 ISBN 978-4062185684)インタビュー・構成・文:瀧晴巳
- 『明日は、いずこの空の下』(講談社 2014年9月予定 ISBN未定)
メディア・ミックス
漫画
- 『月刊少年シリウス』連載。
- 作画:武本糸会。
- 『獣の奏者 <1>』(2009年5月22日、ISBN 978-4063731767)
- 『獣の奏者 <2>』(2009年12月22日、ISBN 978-4063731996)
- 『獣の奏者 <3>』(2010年9月9日、ISBN 978-4063762365)
- 『獣の奏者 <4>』(2011年4月8日、ISBN 978-4063762617)
- 『獣の奏者 <5>』(2011年11月9日、ISBN 978-4063763072)
- 『獣の奏者 <6>』(2012年6月8日、ISBN 978-4063763409)
- 『獣の奏者 <7>』(2013年05月09日、ISBN 978-4-06-3763997)
- 『精霊の守り人』作画:藤原カムイ(スクウェア・エニックス、月刊少年ガンガン、2007年4月号 - 2008年8月号)ガンガンコミックス 全3巻、ガンガンコミックスデラックス(愛蔵版)全1巻
ラジオドラマ
- 『精霊の守り人』2006年8月、NHKFM「青春アドベンチャー」枠でラジオドラマ放送(2007年4月に再放送)
アニメ
関連文献
- 雑誌「ユリイカ」 2007年6月号 特集*上橋菜穂子〈守り人〉がひらく世界 青土社 対談「上橋菜穂子×荻原規子」ISBN 978-4791701629
- 物語のかなた―上橋菜穂子の世界 (日本児童文化史叢書 44) 藤本英二 久山社 2010年2月 ISBN 978-4906563357
- 「守り人」のすべて 守り人シリーズ完全ガイド 2011年6月 偕成社 短編『春の光』所収 本人との対談:佐藤多佳子、翻訳家:平野キャシー ISBN 978-4037501402