ユーロビート
ユーロビート (EUROBEAT) とは、主に電子楽器を使用したダンス・ミュージックの一種である。
目次
概要
ユーロビートは、主にシンセサイザー等の電子楽器を多用した、4/4拍子で、120〜160BPM前後の速いテンポの楽曲のものが多いことが挙げられる。元は欧州のハイ・エナジー、イタリアで大量に生産された『イタロ・ディスコ』に端を発しているものの、1980年代後半に日本に持ち込まれて以来、日本のみで独自の発展を遂げているダンス・ミュージックである。
歴史
諸外国でのユーロビートの起こり
ユーロビートは、ハイ・エナジーと呼ばれていたジャンルの音楽から発展した。この音楽が「ユーロビート」と呼ばれるようになったきっかけのひとつとして、1985年12月、英国の音楽雑誌「レコード・ミラー」が、「ハイエナジー・チャート」の名称を「ユーロビート・チャート」に変更したことが挙げられる。この改名は、テンポが速く、ポップな作品が増加したため[1] といわれている。なお、「ユーロビート・チャート」は、1987年、再度「ハイエナジー・チャート」に名称を戻した。
この時期、ユーロビートは有名プロデューサーによって大量生産されていた。初期には、イギリスのプロダクションチームである、PWLのストック・エイトキン・ウォーターマン(Stock/Aitken/Waterman)が一大勢力を誇り、カイリー・ミノーグ、リック・アストリー、デッド・オア・アライヴ、メル&キムなどが彼らのプロデュースにより、1980年代中頃より世界的なヒット曲を出していた。その後、イタリア出身のM.Farina/G.Crivellente/F.FadingerによるユニットF.C.F.らによって多数のアーティスト、ヒット曲が輩出されている。
しかしながら、ステレオタイプな楽曲が飽きられ[1]、日本以外では、次第にブームが収束していった。
日本での発展
一方、日本では、1980年代後半から1990年代前半にかけて「ザッツ・ユーロビート」というコンピレーションCDがアルファレコードから発売され、ブームに火を点けるとともに、ユーロビートの名称が定着した。同シリーズはVol.44まで続き、今ではユーロビートの古典的存在となっている。また、同時期には、他社からも「ユーロビート・ファンタジー」(ポニー・キャニオン)、「ベスト・ディスコ」(ビクター)というシリーズが発売され、ディスコ・ブームとともにユーロビートは、日本で一世を風靡した。
この時期、荻野目洋子(「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」)や、長山洋子(「ヴィーナス」)、BaBe(「Give Me Up」)、Wink(「愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜」、「涙をみせないで 〜Boys Don't Cry〜」)などのアイドルがカバー曲を発表している。
その後、エイベックスから「スーパーユーロビート」(1990年〜)「ユーロビートフラッシュ」(1995年〜1999年)、「ユーロマッハ!」(1999年〜2002年)というコンピレーションCDシリーズが発売され始め、「スーパーユーロビート」は現在でも続いている長寿シリーズとなっている。松浦勝人が直接イタリアのユーロビート・レーベルと契約し商業的な成功に導いたが、前述のとおり世界的にユーロビート全体の人気は落ち目な為、これらのレーベルの作品は、現在ほとんど日本国内で消費されているのみであり、日本国内でのみ人気のあるジャンルをイタリアのレーベルが長年に亘って制作しつづけるという珍しい現象が起きている[2]。
現在では、いわゆる洋楽であるにもかかわらず、日本国内のみで発売されているコンピレーション盤がほとんどである。
音楽的特徴
テンプレート:出典の明記 多くのユーロビートの楽曲にはボーカリストによる歌唱が入っており、ギターとボーカル以外は、すべて打ち込みで作られる。4/4拍子であり、120〜160前後のテンポである。また、歌唱のない部分に8小節の「シンセリフ」と呼ばれるシンセサイザーによる印象的なフレーズが存在し、Aメロ、Bメロ、サビと同格に扱われ、曲中で繰り返し現れる。これが、ユーロビートの最大の特徴であり、その出来が曲の評価を決めるほどの重要な要素でもある。さらに、曲の構成(流れ)が次のように作られることが多く、曲によってほとんど差異がない。「イントロ(16〜24小節前後)→シンセリフ(8小節)→Aメロ(8小節)→Bメロ(8小節)→サビ(8または16小節)→シンセリフ(8小節)→Aメロ(8小節)→Bメロ(8小節)→サビ(8または16小節)→……」である。
80年代ユーロビートと90年代ユーロビートには多少の差異がみられる。前者は、BPM120〜135程度でサウンドもシンプルなのに対して、後者は、テンポがかなり速く(BPM150〜160程度)、シンセサイザーの高音が際立っている。
他ジャンルとの混同
テンプレート:未検証 ユーロビートは、他ジャンルとの混同が多いジャンルである。特に、四つ打ちのダンス・ミュージックで歌入りのものは、ユーロビートと混同されやすく、さらに、打ち込みで作られたダンス・ミュージック調の楽曲であれば、すべて同一視される光景も見られる。この現象は、ユーロビートという言葉が、ダンス・ミュージックの各ジャンル名の中で、社会的に最も認知されていることの表れと考えられる。もっとも、ジャンル形成初期のユーロビートは、ジャンルの特徴が現在ほどはっきりしておらず、他ジャンルとの差異も曖昧であったが、近年においては、前述のようにはっきりと確立していると言える。
各所への展開
テンプレート:未検証 1980年代中期から全国展開したNOVA21グループの高級ディスコ「マハラジャ」「キング&クイーン」で主要ジャンルとしてヘビープレイされ、ユーロビート=ディスコの曲と認知され、注目されるようになった。その後、ディスコではパラパラと呼ばれるダンススタイルで使われる音楽として定着しているが、オール・ジャンルのイベントでも80's以外ではユーロビートはほとんどかからず、アンダーグラウンドな位置づけである。
TVアニメ『頭文字D』では、初期作品から最終作のFinal Stageまでクルマ同士のバトルシーンでユーロビートが使われており、新たなリスナー層を開拓。モータースポーツシーンでも、SUPER GTのオフィシャルBGMに起用されるなど、車社会へと浸透していった。
ユーロビート制作レーベルは人の流動が激しく(日本の文化で例えるならITベンチャー企業のようなもの)、分子化による新レーベルの設立や作家人によるレーベル間の移籍などが頻繁である。近年ではDELTA等が代表的な例である。
主要なアーティストと代表作
1980年代
- MICHAEL FORTUNATI
- GIVE ME UP
- INTO THE NIGHT
- GIOCH DI FORTUNA
- DANCE WITH ME
- HIRO
- LANA PELLAY
- PISTOL IN MY POCKET
- PAUL LEKAKIS
- BOOM BOOM (Let's go back to my room)
- EDDY HUNTINGTON
- MEET MY FRIEND
- RICK ASTLEY
- NEVER GONNA GIVE YOU UP
- TOGETHER FOREVER
- MARK FARINA
- GUNFIRE
- RUSSIAN
- CHA CHA CHA CHA
- ALEPH
- FLY TO ME
- FIRE ON THE MOON
- BAD POWER
- DOCTOR
- BIG BROTHER
- F.C.F.
- BAD DESIRE
- SAMURAI
- BIG MATCH
- KING KONG & THE D'JUNGLE GIRLS
- LIES
- BOOM BOOM DOLLARS
- WALKIE TALKIE
- KYLIE MINOGUE
- I SHOULD BE SO LUCKY
- COO COO
- UPSIDE DOWN
- MELA
- HELP ME
- FINZY KONTINI
- CHA CHA CHA
1990年代以降
SUPER EUROBEATの項も参照のこと。
- DAVE RODGERS
- MUSIC FOR THE PEOPLE
- TAKE ME HIGHER
- SPACE BOY
- KINGDOM OF ROCK
- NORMA SHEFFIELD
- (IT'S) FOR YOUR EYES
- DOMINO
- TORA TORA TORA
- I WANNA DANCE
- MICKEY MOUSE MARCH (Eurobeat Version)
- MEGA NRG MAN
- SEVENTIES
- KING & QUEEN
- KING AND QUEEN
- HE-HEY DANCIN'
- VIRGINELLE
- FANTASY
- LIKE A VIRGIN
- LOLITA
- TRY ME
- DREAMIN' OF YOU
- MARKO POLO
- MONEY GO!
- BABY QUEEN SEVENTEEN
- NIKO
- CHERRY
- YESTERDAY
- FASTWAY
- NUMBER ONE
- BAZOOKA GIRL
- Velfarre 2000
- NUAGE
- SUNDAY
- BABY GET MY FIRE TONITE
- GO 2
- NOT FOR SALE
主な製作レーベル
1980年代
1990年代以降
- A-BEAT C
- DELTA MUSIC INDUSTRY
- TIME RECORDS
- SCP MUSIC (旧DOUBLE)
- HI-NRG ATTACK
- BOOM BOOM BEAT (THE SAIFAM GROUP)
- ASIA RECORDS (THE SAIFAM GROUP)
- VIBRATION (系列レーベルにEnergy Revolution、Eurobeat Mastersがある)
- SinclaireStyle
- GO GO'S MUSIC
- DIMA MUSIC
- AKYR MUSIC
- BLAST!
- HI-SITE
- Eurogrooves (TIME RECORDSから分化したレーベル)
- SUN FIRE RECORDS (A-BEAT Cの事実上の後継レーベル)
J-EURO
概要
日本語のユーロビートのことである。もとは、「海外のユーロビートを日本人歌手が日本語カバーしたもの」を指していたが、後に出現した「J-POPのユーロビート・リミックス」や「日本人作家によるオリジナルの日本語ユーロビート」も、J-EUROと表現されるようになった。英語のユーロビートと同じく、コンピレーション盤も多く制作されている。また、デビュー直後のアイドル歌手の作品として使われることが多い。
代表作品
海外のユーロビートを日本人歌手が日本語カバーしたもの
- レモンエンジェル
- 「第一級恋愛罪」 - Bananarama 'Love In The First Degree'
- 「BOY'S TOY」 - Sinitta 'Toy Boy'
- 杉本彩
- 「BOYS」 - Sabrina Salerno 'Boys(Summertime Love)'
- 長山洋子
- 「ヴィーナス」 - Bananarama 'Venus'
- 荻野目洋子
- 「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」 - Angie Gold 'Eat You Up'
- Wink
- 「愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜」 - Kylie Minogue 'Turn It Into Love'
- 「涙をみせないで 〜Boys Don't Cry〜」 - Moulin Rouge 'Boys Don't Cry'
- 安室奈美恵
- 「Try Me 〜私を信じて〜」 - Lolita 'Try Me'
- 「太陽のSEASON」 - Veronica Sales 'Season'
- 「Stop the music」 - Sophie 'Stop the Music'
- MAX
- 「TORA TORA TORA」 - Domino 'Tora Tora Tora'
- 「Seventies」 - Mega NRG Man 'Seventies'
- 「GET MY LOVE!」 - Dolly Pop 'Take My Gum'
- V6
- 「MUSIC FOR THE PEOPLE」 - Dave Rodgers & Jennifer Batten 'Music for the People'
- 「MADE IN JAPAN」 - Dave Rodgers 'Made in Japan'
- 「TAKE ME HIGHER」 - Dave Rodgers 'Take Me Higher'
- 「Be Yourself!」 - Dave Rodgers 'Kingdom of Rock'
- D&D
- 「Love is a melody」 - Helena 'Melodies of Love'
- 「Shape Up Love」 - Cherry 'Round and Round'
- 「Brand New Love」- Drama 'Love for Sale'
- Folder5
- 「Believe」 - Lolita 'Dreaming of You'
- 「Liar」 - Norma Sheffield 'If You Wanna Stay'
- 「Ready!」 - Lolita 'Baby One Baby Two'
- 「Amazing Love」 - Rose 'A Song For You'
- 「It's Up To You」 - Vanessa 'You Light My Fantasy'
- 「Heart Beat」 - Go Go Girls 'The Melody Is In Your Heart'
- HINOIチーム
- 「IKE IKE」 - Tri-Star 'IKE IKE'
- 「KING KONG」 - E-ROTIC 'KING KONG'
- 「NIGHT OF FIRE」 - NIGHT OF FIRE 'NIKO
- 「STICKY TRICKY AND BANG」 - STICKY TRICKY AND BANG 'STICKY TRICKY AND BANG(STICKY, TRICKY AND BANG)'
- 「NOW AND FOREVER」 - NOW AND FOREVER 'VALERY SCOTT'
- 「Dancin' & Dreamin'」 - Dancin' & Dreamin' 'IRENE (DANCIN' BABY)'
J-POPのユーロビート・リミックス
- シングル
- TRF
- 「だぁ!だぁ!だぁ!」SEB プレゼンツ BOY MEETS GIRL with TRF
- アルバム
- THE ALFEE
- 浜崎あゆみ
- MAX
- globe
- dream(現・Dream)
- 『SUPER EUROBEAT presents EURO "dream" land』
- m.o.v.e
- Every Little Thing
日本人作家によるオリジナルのユーロビート
- Hitomi Sakuma(サクマヒトミ)
- 「CHANGE MY WORLD」
- NAGISA
- 「MELODY」
- 「VOICE-2-VOICE」
- 「UP!」
- 「STEP U,darling」
- m.o.v.e
主な収録先
DJ向けにレコード盤が制作される場合もあるが、一般向けには、CDへの収録がほとんどである。1990年代初頭まで、またはブーム時にはアーティストごとのCDが発売されることもあるが、通常はコンピレーションCDに収録されることが多い。以下は、シリーズ化された主なコンピレーションCDである。
- ALABIANCA DANCE
- Best Disco
- BEST OF EUROBEAT DISCO HITS
- DANCE PANIC! presents EURO PANIC!
- EURO
- EUROBEAT BOX
- EUROBEAT FANTASY
- EUROBEAT FLASH
- LOVE PARA2
- MAHARAJA NIGHT presents HI-NRG REVOLUTION
- PARA PARA HI-BPM EUROBEAT
- SUPER EUROBEAT
- SUPER EUROBEAT presents EUROMACH
- That's EUROBEAT
- That's EUROBEAT NOW
- TWINSTAR PARA PARA SUMMIT
- VIP MEGA EUROSTAR
脚注・参考文献
関連項目
- Hi-NRG
- SUPER EUROBEAT
- パラパラ
- マハラジャ
- ジュリアナ東京
- イベント系サークル
- ストック・エイトキン・ウォーターマン
- 頭文字D
- ダンスマニア
- 前田尚紀 (ミュージシャン)
- SUPER GT
- ハウス
- fripSide
- I've
- m.o.v.e