マスゲーム
マスゲームとは、多人数が集まって体操やダンスなどを一斉に行う集団演技である。同調性の高い動作を行うことを特徴とする。集団体操[1]とも言う。合同体操(徒手体操、ラジオ体操等)を演技化したものと言える。
概要
テンプレート:出典の明記 集団における連帯性の高さを来場者に示すパフォーマンスとして、学校の運動会・体育祭の種目で行われることが多く、また日本で毎年各都道府県を持ち回りで開催される国民体育大会や、大型のスポーツイベントや現代のオリンピックの開会式・閉会式、国際博覧会のイベントなどの集団遊技として行なわれている。
また、工場においても集団体操は行われていた[2]。
マスゲームで行なわれる演技は多岐にわたり、整列や円陣などの態勢で体操(器械体操、組体操、新体操、バトントワリングなど)や様々なジャンルのダンス、民族舞踏、人文字を作るなどが典型的であるが、オリンピックなどの大規模なマスゲームでは、巨大ディスプレイなどの大道具や様々な小道具を使い、ストーリーを持たせた大規模なものとなることもある。
本来は競技場内で行う身体デモンストレーションを意味するが、広義では観客席に並んだフリップボードを持った観客がタイミングに合わせてフリップの内容を変えるパフォーマンスや、観客席でタイミングに合わせて立ち上がるウェーブ、プロ野球の観客席のビニール傘やジェット風船などの演出も含まれる。
マスゲーム[3]はドイツ語のMassenturnenが語源であり[4]、多人数を表す「マス」 (mass) と「ゲーム」 (game) を合わせた和製英語であったが[5]、北朝鮮(日本のマスゲームを見て自国で行うようになった)で行われるアリラン祭のイメージが世界中に浸透した影響で、最近では用語が国際化しつつある[6]。
数百人ないし数千人ものの大人数を動員するマスゲームは有償では人件費や交通費が大きな問題となるため、多くの場合無報酬で長期間に渡り練習会に参加できる会場に近い学校の生徒やその関係者の校内活動、協力企業の慈善活動や市民のボランティアなどの協力により行なわれるデモンストレーションである。 しかし一部の国家や団体の強権的な指導の下で強制的に行われるイベントのマスゲームのように国威発揚や団体のイメージアップで行なわれるものもあり、一概にあてはまるものでもない。
各国のマスゲーム
ドイツ
19世紀、効率の良い体操指導法として、号令によって一斉に体操する合同体操が普及し、それがマッセンツルネンと呼ばれた[4]。体操の有意義さを訴え、体操を普及させるためのツールとして、見せ物としてのマスゲームが発展した[4]。そして、そのマスゲームが旧チェコスロバキア、オーストリア、スイスなどの外国にも広がっていった[4]。
日本
日本の学校教育として行われる場合、服装は基本的に体操服に裸足という格好が多いが、何かの踊りなどと組み合わせる場合はその踊りに合わせたユニフォームを着る事がある。特に裸足である理由は分からない。また、統一性を高めるため、体操帽はクラスに関係なく赤か白のどちらかに合わせるほか、脱げる事を考えて最初からかぶらない学校もある。学校によっては、男子が上半身裸になって行う場合もある。この種目は生徒よりも指導する先生の方が練習に積極的である事が多い。
今日マスゲームは全体主義につながるとのイメージが浸透しテンプレート:要出典、学校教育においても取り上げられる機会は減っているが、一部の高校では現在でも甲子園大会の応援(人文字なども)に活用している。また、創価学会など一部の宗教団体において、信仰の成果として多数の来賓の前で大々的に行われることもある。
「マスゲーム」は、脳科学・認知科学・生態学・人類学の分野で、集団演奏・合唱、集団競技、集団啓発訓練(行進、あいさつ運動)、集会(自己啓発集会、車座的総括集会)、合目的組織運営(会社組織・合議制組合組織・官僚組織)、集団儀礼(宗教儀礼、共同体儀礼)、社会慣行(通勤、賃金獲得行動、生産消費行動)など同様のフラクタルな様式として分析される傾向があることから、そこから派生して論じられることがある。経済人類学・行動経済学なども同様である。
朝鮮民主主義人民共和国
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で行われる人文字を使ったマスゲームは、10万人を動員して1時間半にわたって行われるなど、特に大規模なことで有名である。13から14の部に分割され、それぞれ金日成の誕生や日本による植民地支配に対する抵抗の歴史などを主題に持つ[6]。
2004年、BBC制作のドキュメンタリー映画『ヒョンスンの放課後』ではマスゲームに参加することになった少女ヒョンスンの姿が伝えられ、世界中で高い評価を得た。この映画の監督のダニエル・ゴードンはCNNの Insight の中で、マスゲームは一人の失敗が全体の大きな失敗を引き起こすということを実感させ、チームワークと全体主義を教え込むために行われているのだと述べている[6]。北朝鮮を訪れていた国務長官マデレーン・オルブライト(クリントン政権下)がマスゲームを「驚愕した/すばらしい(amazing)」と讃えたところ、『ワシントン・ポスト』により「国務長官は(人権に関わる)こうした問題にまったく言及しなかった。これはアメリカの威信を損なうものである。もっと明確に人権問題について語るべきであった」と厳しく批判された[7]。
大韓民国
大韓民国では1972年10月の維新クーデター後、「維新体制」と呼ばれる第四共和国時代に朴正煕大統領を表現するマスゲームが行われた。
欧米
ルーマニアのチャウシェスク政権やティトーのユーゴスラヴィアといった社会主義国によって行われていたものが北朝鮮におけるマスゲームの先駆とされる。
欧米の農業祭などでの行事として、馬に乗って行われるものもある[8]。ルールに従って馬を操り、統制の取れた動きを演じる。スペインのセビリア祭のものが有名[9]。