ドクウツギ
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ドクウツギ(毒空木、Coriaria japonica)はドクウツギ科ドクウツギ属の落葉低木である)。トリカブト、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされる[1]テンプレート:出典無効。
解説
北海道・本州(近畿以北)の山地、河川敷、海岸の荒地などに自生する。高さ1mから2m程度。花期は4から5月。実は約1cm程度であり、初めは赤く、熟すと黒紫色になる。コリアミルチン、ツチン(Tutin)などの有毒成分を含む有毒植物。人が食べると痙攣・呼吸困難に陥り、場合によっては死に至る。茎や葉も有毒である。果実には甘みがあるといい、昔は農村で子供が食べ死亡する事故が多かった(イチロベゴロシ=一郎兵衛殺しなどの方言名もある)ため、ドクウツギ刈りが行われた。充分に黒熟した果実は毒成分がほとんど抜けているともいわれているが、安全性が確認されていないので絶対に食べてはいけない。
古赤道分布論の基礎
ドクウツギはまた、植物学者の前川文夫が古赤道分布論の基礎のひとつとしたことでも知られている。ドクウツギの仲間は、日本では中北部の一属一種のみだが、近似種が十種ばかりあって、国外ではアジアでは台湾、中国内陸部からヒマラヤに、オセアニアではニューギニアとニュージーランドに、それに南アメリカの南部と北部の太平洋側、そしてヨーロッパの西部に分布がある。このように、極めて飛び離れた隔離分布をしており、これと西シベリアの化石種を併せて、前川はこれが白亜紀頃の赤道に沿った分布であると考えた。白亜紀の赤道に沿って分布していた種が、その後の気候の変化の中で、寒くなりすぎた地域で絶滅したため、このような、世界中を点々とするような分布が生じたのだというわけである。