テープレコーダー

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Revox PR99 Mk II、1/4インチ・テープ・レコーダー
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STUDER A820 Master 2 Track Recorder
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STUDER A80 Master 2 Track Recorder, Mastering Version

テープレコーダーテンプレート:Lang-en-short)は、磁気テープなどのテープ状の記録媒体に、信号記録(および再生)する装置である。普通、磁気テープに磁気記録の形で電気信号を記録する。

特に、音響機器録音再生機器)としてのそれを指し、他をビデオテープレコーダデータレコーダなどと区別して呼ぶことが多く、以下では主に音響機器について述べる。特にコンピュータ補助記憶装置は、音響用の流用(データレコーダなど)などの場合を除いてテープレコーダーとは呼ばない。

テープのベースには、ポリエステルなどのプラスチックフィルムが使われる。ポリエステル以前にはアセテートが使われた。初期にはが用いられたこともある。

音響機器の名称としては、スピーカーやパワーアンプなどが付いて単体で音が出たり、小型のもの(録音機能を持ったテープメディアのウォークマンのようなもの)などを指し、オープンリール(オープンデッキ)の機器、ミニコンポなどで他の音響機器を通して音を出す機器などはテープデッキコンパクトカセットなどのカセットテープではカセットデッキとも)と区別することもある。また、ラジカセなどほかと一体となった機器において、テープ装置の部分だけを指す場合にもデッキと言う(1台でダビングのできるラジカセの「ダブルデッキ」など)。

日本では時に略してテレコと呼ばれることがあった[1]

長所・短所

体積当たりのデータ密度が高く、信号の録音・消去が容易で、長時間録音に適するという長所がある。またアナログテープレコーダや一部の固定ヘッドデジタルテープレコーダでは、テープを直接切断して編集する「手切り編集」(電子編集に対する用語)も可能である。

一方で欠点も存在する。経年により磁性層の劣化、テープの伸び・切断などが起きやすい。また連続したテープを巻き取って行く構造上、ランダムアクセスが難しく、一部を再生する場合でも時間をかけての早送り・巻き戻しを必要とする。特にデジタル化と相性が悪い。

このため20世紀末以降は、後続の新技術 (ハードディスクレコーダ、MDレコーダやICレコーダーなどランダムアクセスが容易なデバイス) に道を譲りつつある。ディスク等は管理領域が論理的・物理的に壊れると内容が事実上全て失われるのに対し、テープは生き残った部分だけでも再生できる利点があるものの、この特長が生かされるのはよほど特異なケースに限られる。

方式

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オープンリール方式のテープレコーダー(SONY)
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オープンリール方式でありながら持ち運び可能なタイプ( ナグラTYPE3)
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コンポーネントタイプのコンパクトカセットテープデッキ
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手前がマイクロカセット方式のテープレコーダー
S-VHSHi8などのテープを用いたマルチトラックレコーダで単体で8~12トラックの録音再生が可能な機種をいう。必要に応じて同期用のケーブルで複数台をリンクして使うことにより同期を保ったままトラック数を拡張できた。ADATDTRS等の規格がある。デジタルオーディオワークステーション(DAW)を始めとするハードディスクレコーダの台頭により姿を消しつつある。テープ以外にMOなどのメディアを使用した物があるがテープ以外のメディアはマルチトラックレコーダの項を参照されたい。

歴史

テンプレート:See also メディアを帯磁させることで音声信号を記録する磁気録音方式自体は、1888年にアメリカ人オバリン・スミスが最初に着想しているが、システムとして実用化された最初は、デンマークの発明家ヴォルデマール・ポールセン(1869年-1942年)が1898年に完成させた、メディアにピアノ線を利用した磁気録音式ワイヤーレコーダー「テレグラフォン(Telegraphon)」である。

テレグラフォンに始まる磁気録音ワイヤーレコーダーは、人間の声を聴き取りうる実用水準で録音でき、一定の長時間録音も可能であったが、音質向上の困難さやワイヤー伸びの問題などを伴い、一般的なものとはならず、テープレコーダーが実用水準に達するまでの約半世紀の間、ごく限られた範囲で用いられたに過ぎなかった。簡易な録音機としてはトーマス・エジソン発明の蝋管レコードの系譜に属する機械録音装置「ディクタフォン」が第二次世界大戦以前の主流であった。

磁気記録の媒体を、より扱いやすく耐久性のあるプラスチックテープにしたのは、ドイツ人技術者フリッツ・フロイマー(Fritz Pfleumer 1881年-1945年)で、1928年にこれを利用したテープレコーダーの原型を完成した。以後電機メーカーAEGの手で改良され、1935年に「マグネトフォン(Magnetophon)」の名で市販されたものの、音質が悪かった。

その後、化学メーカーBASF社の協力によるテープ材質の改良(アセテート樹脂)と、1938年の永井健三五十嵐悌二による交流バイアス方式の発明で、1939年~1941年までに音質が飛躍的に改善され、実用に耐える長時間高音質録音が可能となった。

この結果、テープレコーダーは第二次世界大戦中のドイツにおいて、政治宣伝・対敵宣撫放送用のメディアとして大いに活用された。アドルフ・ヒトラーの長大な演説[2]クラシック音楽を、レコード針等の雑音・ディスク交換による中断などなしにいつでも連続録音・再生できることは、放送用メディアとしての非常な利便性であった。ラジオ放送用としてフルトヴェングラー指揮によるベルリン・フィルの演奏もテープ録音され、貴重な歴史的音源となっている[3]。この過程では、複数トラックを分離して同時録音できる特徴を活かし、ステレオ録音もすでに試みられていたという。

軍用特殊用途として特筆されるのは、ドイツ海軍潜水艦Uボートの多くにテープレコーダーが搭載されたことである。潜水艦が発信する通信電波は敵方に自らの潜伏位置を知らせてしまう危険を伴う。そこで通信内容をテープレコーダで一旦録音し、それを早送り再生して送信した。これで無線交信時間が最小限となり、また傍受されても敵には内容解読が困難になる。第二次世界大戦後、この高速再生通信のアイデアは世界各国の軍用・外交・諜報の分野で情報秘匿通信に広く用いられるようになった。[4]

ドイツの敗戦後、テープ録音技術がアメリカに移転され、民生用途に広く転用されるようになった。1947年には3M社が磁気録音テープを発売した。1948年のLPレコード開発と相前後して、高音質へのニーズが高まり、レコード会社は高音質化と長時間録音実現のため、相次いでテープレコーダーを導入する。各国の放送局でもその利便性を買われ、同時期から長時間放送や音声取材の手段として活用されるようになり、特に取材ではポータブル・テープレコーダーが広く用いられた。

以後テープレコーダーはLP・EPレコードと並ぶメディアの形態として、レコード制作会社や放送局だけでなく、個人・家庭でも容易に録音・再生ができる特性から一般化した。

日本では1950年に東京通信工業(現・ソニー)が紙テープ式のモデルを発売したのが最初である。なお、ソニーでは長い間「テープコーダー」(Tapecorder)と呼んでいた(登録商標だった(登録番号?))。1950年代の日本の民間放送の勃興と相前後して、ソニーは取材用の可搬型のものも先んじて開発、デンスケの商標は同社の業務用ないしそれに準じるレベルの携帯レコーダーに使われ続けている。これが放送用に普及した当時、「デンスケ」の呼称は関係者の間でポータブル機を一般に指すものとして、テンプレート:仮リンクなど他社の製品も含めて呼ばれた。このため、現代において「当時のポータブルテープレコーダー」を指して、たとえば「私はあの時デンスケを担いで取材していました」のように使われることがある。

一般への普及

テープレコーダーは、人々の生活に多く影響を与えた。この機械の登場により、人々は音楽を録音したり、自分や家族の声を録音したりした。1960年代に開発されたカートリッジ式のコンパクトカセット普及と、これを組み込んだ一体型ラジオ(ラジオカセットレコーダー、ラジカセ)の出現で、ラジオやテレビの番組も容易に録音可能となり、またテープや録音再生ヘッドの性能向上やノイズリダクション技術などによる音質改善と相まって、一時はラジオの音楽番組を録音する「エアチェック」というカルチャーが広まった時期もあった。他にも、小ささを活かして自分で録音したテープを外出中携帯型プレーヤーで聴く、モバイルオーディオというスタイルを生みだし、定着させた。

近年ではICレコーダーにとって代わられることも多いが、個人レベルでの会議録音などでは現在も使われることがある。会議の音声などを起こすことは2000年代でも一般にテープ起こしと呼ばれる。

脚注

  1. 歌詞やセリフの前後を取り違えること、運送業者が荷物の伝票を貼り間違えることなども「テレコ」と呼ばれ、カセットテープのA面/B面を取り違えることが語源という誤解があるが、全く無関係である。(参照: 語源由来辞典 - テレコ
  2. 放送を聴いても生か録音か判断できず、総統の行動を秘匿するのに役立ったという。
  3. その貴重な録音テープの一部は、第二次大戦終結後にテープレコーダーシステム共々ソビエト連邦に収奪され、ソ連から発売された海賊盤の音源に使われた。
  4. 1979年のイラン革命ではこの方法を使い、ホメイニ師(亡命中)の音声を国際電話で国内の支持者に伝えた。

関連項目