ティマイオス

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テンプレート:Dialogues of Platoティマイオス』(テンプレート:Lang-el-shortテンプレート:Lang-la-short)は、古代ギリシア哲学者プラトンの後期対話篇の1つであり、また、そこに登場する人物の名称。副題は「自然[1]について」。

アトランティス伝説、世界の創造、リゾーマタ(古典的元素)、医学などについて記されている。自然を論じた書としてはプラトン唯一のもので、神話的な説話を多く含む。後世へ大きな影響を与えた書である。プラトンは、『ティマイオス』と未完の『クリティアス』、未筆の『ヘルモクラテス』を三部作として構想していたという。

構成

登場人物

年代・場面設定

年代不詳。アテナイにあるクリティアスの家にて。

アテナイを訪れ、クリティアスの家に滞在しているティマイオス、ヘルモクラテスらの元に、ソクラテスが訪れるところから話は始まる。前日、ソクラテスは彼らをもてなしており、今日は代わりに彼らがソクラテスにご馳走してくれる約束があったらしい。

ソクラテスは前日話してくれるよう頼んだ話に言及する。皆で前日に話した国家論についておさらいした後、クリティアスがアトランティス話に軽く言及しつつも、彼らの打ち合わせ通り、順番を譲ってまずはティマイオスが話を始める。

内容

  • 政治体制を論じた『国家』の一部の内容[3]を受ける形で、対話が始まる。冒頭にクリティアスという人物がアトランティス伝説について語る。次いで、ティマイオスという人物が宇宙の創造、宇宙は無限か否か、四元素について、人間の身体についてなどを説いてゆく。
    • アトランティスの伝説については、『ティマイオス』の続編である『クリティアス』でさらに説明が続く(ただし、『クリティアス』は中断している)。
  • 創造者「デミウルゴス」について説明されている。デミウルゴス(テンプレート:Lang-el-short)のギリシア語の原義は工匠、建築家である。イデアを見て、模倣しながら現実界(物質世界)を作る存在として、デミウルゴスの名を挙げている(善なる存在と捉えられている)。現実界はデミウルゴスが創造したイデアの似姿(エイコーン)である。
    • 「範型」としてのイデアという思想はプラトン中期のイデア論とは異なっているとされる。
  • )・空気)の4つのリゾーマタ(テンプレート:Lang-el-short 、「本」の意)が説かれる(後世にいう四元素説)。それぞれのリゾーマタは正多面体であり、その形状によって運動の性質や他のリゾーマタとの親和性が決まる。たとえば火は正四面体であり、最も軽く、鋭い。水は正二十面体、空気は正八面体である。これに対して土は正六面体であり、運動することが最も遅い。自然の諸物はリゾーマタがまざりあうことによって形成されているとした。

影響

フィロン

アレクサンドリアのフィロンはギリシア思想に由来するロゴスイデア論の概念をユダヤ教思想の理解に初めて取り込んだ。フィロンはプラトンの著作とくに『ティマイオス』に影響を受け、「デミウルゴス」の存在を「神」に置き換え、旧約聖書とプラトン哲学が調和的であると考えた。フィロンはプラトンを「ギリシアのモーセ」と呼んで、プラトンの思想にモーセが影響を与えたと考えた。 フィロンの著作は、初期キリスト教と教父たちの思想、いわゆるアレクサンドリア学派にも大きな影響を与えている。

オリゲネス

オリゲネスは初期キリスト教神学者、いわゆるギリシア教父でアレクサンドリア学派といわれるグループの代表的存在。オリゲネスの世界観や歴史観は新プラトン主義(ネオプラトニズム)の影響を強く受けたものであった。プラトンの『ティマイオス』と旧約聖書の「創世記」の世界創造の記述を融合しようとし、「創造とは神が無に自分の存在を分かち与えたことである」と唱えた。死後異端の疑惑をかけられた。

グノーシス主義

グノーシス主義はヘレニズムの思想的・宗教的シュンクレティズムのなかから生まれた「精神の姿勢」としての世界観的な宗教であるが、であるこの世とである永遠の世界を対立させて考える二元論宗教である。悪の世界すなわちこの世は物質の世界であり、善である超越的世界はプラトーンの概念ではイデアーの世界に当たる。 グノーシス主義は、何故、悪である物質世界が存在するのかを説明するため、『ティマイオス』の創造神話を援用し、愚かで傲慢な下級の神であるデーミウルゴスが不完全な世界を創造した為であるとした。イデアー界に当たる超越的な世界は、アイオーンから構成されるプレーローマ世界というが、人間はプレーローマに起源のある「(プネウマ、テンプレート:Lang-el-short)」をうちに持つ存在であるが故に、グノーシス(智慧)の認識を通じて、永遠の世界へと帰還し救済されるとした。

シモーヌ・ペトルマンによれば、プラトーンの哲学がそもそも二元論で、グノーシス主義に通じた思想である(また「グノーシス主義とは何か」という定義からすると、広義のグノーシス主義となる)。

カルキディウス

カルキディウス(Calcidius 4世紀後半-5世紀初)は『ティマイオス』の一部をラテン語訳し、注釈書を著した。『ティマイオス』はプラトンの著作のうち、中世西ヨーロッパに知られていた数少ない著作の一つである[4]

シャルトル学派

12世紀フランスシャルトル学派の中で『ティマイオス』(カルキディウス訳)が再評価され、注釈書が作られている。

日本語訳文献

  • プラトン全集6(角川書店、1974年)
  • プラトン全集12(岩波書店、1975年)
  • 中世思想原典集成8 シャルトル学派(上智大学中世思想研究所編、平凡社)

脚注

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関連項目

テンプレート:Wikisourcelang テンプレート:Wikisourcelang

外部リンク

  1. ピュシス」(テンプレート:Lang-el-short、physis)の訳語
  2. プラトン全集12 岩波書店 pp255-256
  3. 概ね『国家』II-Vの内容に相当。
  4. 中世ヨーロッパで読むことができたプラトンの著作は『ティマイオス』(部分)、『メノン』、『パイドン』であった(澤井繁男「イタリア・ルネサンス」講談社現代新書P20)