スマート (自動車)

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ファイル:Den Haag SmartCenter.jpg
旧スマート・センター 現在は別会社のオフィスとなっている(オランダハーグ

スマート(smart)は、ドイツベーブリンゲンを本部とし、主に小型車を製造・販売する自動車メーカー、また同社が製造・販売する自動車ブランドである。ダイムラーAGの完全子会社。製造拠点はフランスモゼル県ハンバッハにある。2008年度の日本での新規登録台数は1,111台である[1]

概要

スマートは、2人乗りのマイクロカーを生産・販売することを発案したスイスの時計会社・スウォッチが、ダイムラー・ベンツ(当時)をパートナーとして開始された自動車事業である。スウォッチは当初、小型車を得意とするフォルクスワーゲンとの提携を企図したが実現せず、自動車事業の経験がないスウォッチと、小型車市販の実績がないダイムラー・ベンツ、という組み合わせでの企画となった。

1994年、二社合弁によりMCC(Micro Car Corporation )が設立され、フランスモゼル県ハンバッハには、製造工場が建設された。1998年、オリジナルモデルである「シティクーペ」(後の「フォーツークーペ」)が発売されたが、走行中に横転する問題が発覚し、設計を根本的に改善するために多額の費用が掛かった。この際、ダイムラー・ベンツの出資比率が、設立時の51%から81%にまで引き上げられている[1]。設立以降、スマート事業は12年に渡って赤字が続き、創始者であったスウォッチは完全に撤退した。2006年夏までの損失の累計は36億ドルに達すると報告されており[2]、ダイムラー・AG自体も事業から撤退するのではとの憶測が絶えなかった[3]

苦境のさなか、2007年春には「フォーツー」がモデルチェンジし第2世代へと移行した。

他方、消費者の間でガソリン価格の高騰と地球環境への配慮から低燃費車志向が高まり、小型車の需要が見込まれている現状にある。このような情勢の中、2007年度にスマート事業はようやく黒字へ転換、2008年度も黒字となった。[4]

2008年1月には、これまで実現していなかったアメリカでの正規販売が開始された。米国向けのフォーツーは衝突安全基準を満たすために全長が約15cm延長されており、販売価格は11,590ドル(約135万円)~となる[5]

安全基準は初期型には及ばないが、他のメルセデスの車種と同水準のものが適用され、小型車でありながら大型車と同様の衝突安全性を誇る。

名称の由来

「smart」の名称は、創業時のパートナーであったスウォッチ(Swatch )の「S」と、メルセデス・ベンツMercedes-Benz )の「M」に、「芸術」(art )を組み合わせ、英語の「smart(洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な、などの意味を持つ)」にかけたものである。

歴史

  • 1994年: ダイムラー・ベンツ51%、スウォッチ49%の出資比率でMCC設立。[6]
  • 1995年 - コンセプトモデル「スウォッチカー」が発表される。
  • 1997年 - 「スマートシティークーペ」が欧州で発売。
  • 1998年 - ダイムラー・ベンツが合併によりダイムラー・クライスラーとなる。
  • 1998年 - スマート・ジャパン(並行輸入業者)が日本での独自販売を開始。
  • 2000年 - MCCからスウォッチが完全撤退し、ダイムラー・クライスラーの100%子会社となる。
  • 2000年 - ダイムラー・クライスラー日本が日本での正規販売を開始。[7]
  • 2002年9月 - 会社名を「MCC」から「smart」に変更
  • 2004年 - 三菱自動車とのパートナーシップによる「スマートフォーフォー」を発売(2006年に製造終了)。また、従来の2人乗りモデルを「フォーツー」に改称。
  • 2007年4月 - 第2世代スマート・フォーツーの販売が欧州で開始される。
  • 2007年10月24日 - 第2世代スマート・フォーツー日本発売。
  • 2007年11月1日 - ダイムラー・クライスラー日本がメルセデス・ベンツ日本となる。
  • 2010年4月1日 - 日本国内の全てのメルセデス・ベンツ正規ディーラーでの取り扱いを開始。

車種一覧

日本で販売されたモデル

※ブラバス仕様車、クロスブレードを除く限定販売車・特別仕様車はこの中に含まないものとする。
※欧州等、日本国外におけるモデルの仕様や変遷については、他言語リンク先を参照のこと。

フォーツークーペ

ボディサイズは、全長2560mm・全幅1515mm・全高1550mm。乗車定員2名。車重は750kgで、599cc/55psの直列3気筒エンジンを搭載。変速機は、6速シーケンシャルシフトのセミオートマチックトランスミッション

  • 1997年
    • シティークーペ (city-coupé) として欧州で発売開始。
  • 1998モデル
    • スマートクーペ (smart coupe) として並行輸入したものが販売されていた。軽自動車として登録された個体も多く存在する。
  • 2000モデル
    • 12月に、スマートクーペとして、正規販売が開始される。左ハンドルのみ。(日本では標準装備のタコメータ・時計がオプション装備に変更された)
  • 2001年10月24日発売モデル
    • 英国仕様の右ハンドル車をベースに日本向けに右ハンドル仕様も発売。
  • 2002年8月27日発売モデル
    • ライト形状が涙目仕様に変更。ボディもカラーが3色増え、内装などにもマイナーチェンジがはかられた。出力も55PSから61PSへ。燃料タンクも22Lから33Lに変更された。
  • 2003年8月25日発売モデル
    • エンジンが598ccから698ccに変更。またヒルスタートアシスト機能が搭載された。ボディのロゴマークも変更。
  • 2004年5月24日発売モデル
ファイル:Smart fortwo micro hybrid drive.jpg
フォーツークーペ(2007年)
  • 2007年10月24日発売モデル
    • 「第2世代」と呼称される、フルモデルチェンジされた新型。欧州では2007年4月に発売された。ボディサイズは、全長2720mm・全幅1560mm・全高1540mm。衝突安全基準強化のため全長180mm・全幅45mmそれぞれ大型化し、車重も40kg増加した。エンジンは三菱製の3B21直列3気筒DOHC12バルブ・999cc/71psに変更されてパワーアップし、変速機は5速のマニュアルモード付オートマチックトランスミッションを搭載する。第1世代の大きな特徴でもあった円形をモチーフとしたインテリアデザインは直線を主体としたものに変更されたが、エクステリアデザインは一目でsmartとわかるものとなっている。ユーザーへの引渡しは2008年1月を予定している。
    • これまでロールバーの様に頑丈だったトリディオンセーフティセルだが、このモデルから柔らかくなった。確認方法セルを指で押す。
    • 標準型で天井がポリカーボネートで、内側に幕を引いて直射日光を遮る方式であり、転倒時の安全性や車上荒らしからの防犯性を備えながら実質的にカブリオと同様の開放感が味わえるようになっている。ポリカーボネートを使ったグラスルーフとしては量産車として世界最大サイズ。
    • 抜群の安全性とブランド・イメージに支えられ、廉価な価格帯でありながら、高所得層のセカンドカーや単身者ディンクスのファーストカーとしての需要がある。
    • 中国の自動車メーカー双環汽車が明らかにデザインを似せたと言える程デザインが酷似している「ノーブル」(NOBLE)と言う小型車を製造販売しており、中国国内ではフロントに1.1ℓエンジンを搭載した前輪駆動車である事や4人乗りである事を理由に独自のデザインと判断され、販売が続けられている。その一方、スマートの親会社ダイムラーAGは「「フランクフルトモーターショー」に出展したら法的手段に出る」と表明している。本家とデザインの違いは、ヘッドライトが丸い事だけである。
  • 2012年5月24日発売モデル
    • フロントグリルを大型化。また最廉価グレードを159万円に設定(約25万円の値下げ)。
    • 同時に電気自動車「フォーツー・クーペ エレクトリック・ドライブ」も発表し、予約受付を開始。同年内に発売する予定。

フォーツーカブリオ

  • 2000年
    • 欧州市場でシティーカブリオ (city-cabrio) として発売開始。
  • 2001年5月29日発売モデル
    • スマートカブリオとして販売。TRITOPという電動オープントップを設けた。他のモデルより補強が施されている。
  • 2002年9月30日発売モデル
    • エンジンの最高出力を40kW(55PS)から45kW(61PS)にパワーアップし、燃費、加速性能も向上した。また、燃料タンクの容量を22Lから33Lに拡大した。ボディカラーを5色追加し、メーターをホワイトメーターに変更し、トップを車外から操作できるようにし、装備面の充実を図っている。
  • 2003年8月25日発売モデル
    • ヒルスタートアシスト機能とESP(Electric Stabilizing Program)を搭載し、エンジン排気量を598ccから698ccに拡大した。
  • 2004年5月24日発売モデル
    • 名称を現名称に変更。EPSを搭載し、エンジン回転数計と時計を装備した。
  • 2008年12月発売モデル

スマートK/フォーツーK

ファイル:Smart k.jpg
smart k(2002年)
  • 2001年10月24日発売モデル
    • smart kとして販売。タイヤサイズ、フェンダー等の変更により1515mmだった全幅を日本の軽自動車規格に合わせ1470mmとしたモデル。更にグラスルーフ、ホイルカバー、車載工具、タイヤパンクキット、三角表示板、トノカバーなどが省かれている。
  • 2002年8月27日発売モデル
    • クーペ同様ライト形状、内装、燃料タンク容量のマイナーチェンジが行われた。エンジンパワーに変更は無し。
  • 2003年8月25日発売モデル
    • クーペ同様にヒルスタートアシスト機能が搭載され、ロゴマークも変更。ESPとBASが標準装備された。エンジンパワーに変更は無し。
  • 2004年5月24日発売モデル
    • クーペ同様に車名変更。フロントのタイヤサイズが変更され、安定性が高まった。EPS(電動パワーステアリング)がオプションで選択できるようになったが、タコメーター、時計もオプションのまま。

クーペのエンジンが598ccから698ccに変更され、軽自動車規格に合致しなくなった。そのため2004年11月をもって生産終了した。

ロードスター

ファイル:2004.smart.roadster.arp.jpg
ロードスター(2003年)
ファイル:Smart Coupe.jpg
ロードスタークーペブラバス(2004年)

第58回フランクフルト国際モーターショー(1999)に「ロードスター」コンセプトモデルを発表。パリサロン2002で「スマート・ロードスター」「スマート・ロードスタークーペ」をワールドプレミア。

  • 2003年9月24日発売モデル
    • スポーツタイプの車種。エンジンは同時期フォーツーと同じ直列3気筒698ccターボだが最高出力は60kW(82PS)へ強化されている。ルーフは電動ソフトトップが標準となっている。

ロードスタークーペ

  • 2003年9月24日発売モデル
    • ロードスターのリアトランク部分がグラスドームとなったモデル。これによりロードスターと比べ荷室容量は大きく改善している。またグラスドームは車内と繋がっており、車内から上着やカバンを置くことが出来るなど利便性が向上している。グラスドームの分若干の車重が増加している。ルーフはロードスターとは違い左右2分割式のディタッチャブルハードトップである。

ブラバス

  • 2003年8月25日発売モデル
    • 「スマートクーペブラバス」と「スマートカブリオブラバス」を追加発売。専用の内外装を施し、チューンアップされたエンジンを搭載、サイズアップされたタイヤとホイールを装着。また装備面での充実を図った。
  • 2004年6月24日発売モデル
    • 「スマートフォーツークーペブラバス」、「スマートフォーツーカブリオブラバス」、「スマートロードスターブラバス」、「スマートロードスタークーペブラバス」の4モデルを計180台の限定発売という形で導入。全モデルともチューンアップされたエンジンを搭載し、専用の内外装が与えられ、サイズアップしたタイヤ・ホイールを装着。フォーツーブラバス系には車速感知機能付きのドアロックとフロントワイパーを装備、ロードスターブラバス系にはスポーツサスペンションが装着された。
  • 2008年7月23日発売モデル
    • 「スマートフォーツークーペブラバスエクスクルーシブ」を140台の限定販売という形で導入。2007年にモデルチェンジした2代目フォーツークーペをベースに、ターボの装着やクラッチ容量の拡大、足回りへのチューニングを施すなどして走行性能を高めている。外装、内装とも専用デザインとなる。

クロスブレード

ファイル:Smart crossblade1.jpg
クロスブレード(2003年)

第71回ジュネーブモーターショー(2001年2月)と第35回東京モーターショー(2001年10月)に、show car(コンセプトモデル)として出展された。cabrioをベースに ルーフ / フロントウィンドウ / ドア を取り去ったフルオープンモデルで、幌も持たないために室内は防水対策が施されている。コンセプトモデルのデザインをほぼ継承(細部は異なっている)して、2,000台が限定生産された。BRABUSモデルと同様にチューンされ、195/40R16(前)と215/35R16(後)というワイドタイヤを装着している。

  • 2002年5月(型式認定用)
    • 型式認定用に正規輸入され、横浜と神戸で開催されたダイムラー・クライスラー・エクスペリエンスに展示された。広報用としても出版社各社に貸出が行われた。
  • 2002年5月16日発売
    • 限定販売25台。
    • 2002年10月デリバリー開始。
    • 2002年6月30日までを予約受付期間とし、抽選販売の形態が採用された。
  • 2003年1月10日発売
    • 限定販売34台。
    • 2003年3月デリバリー開始。
    • 抽選ではなく、通常の販売形態であった。また、フロントの「smart」ステッカーが「C>」の3Dタイプのマークに、リアは三角マークのないステッカーに、それぞれ変更された(画像参照)。

フォーフォー

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表

第59回フランクフルト国際モーターショー(2001)に4人乗りのコンセプトモデル「smart tridion 4」を発表。第60回フランクフルト国際モーターショー(2003)でワールドプレミア。欧州では翌年の2004年4月から、日本では同年9月から販売が開始された。 日本の小型乗用車・三菱・コルトとは、プラットフォームを共用する姉妹車である。製造も、オランダボルンにある三菱自動車工場(NedCar)にて同時に行われていた。販売不振のため2006年に製造終了となり、わずか3年という短命に終わった。

エクステリアは、フォーツークーペと同じく、トリディオンセーフティセルと樹脂製ボディパネルから構成されるツートーンカラーが特徴。トリディオンセーフティセル3色/ボディパネル10色の多彩なカラーバリエーションを揃え、3種類のルーフ(ソリッド、パノラミックグラスルーフ、電動ガラス・スライディングルーフ)が用意された。

エンジンは、ダイムラー・クライスラー三菱自動車がドイツに設立したMDCパワー社が開発・生産した1.3Lと1.5Lの直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、最高出力はそれぞれ95馬力/109馬力の高出力を発生。クリープ現象に近いクロール機能付電子制御6速AT(マニュアル切替式)トランスミッション「ソフタッチプラス(softouch plus)」との組合せになる。この変速機はメルセデス・ベンツウニモグで用いられた技術を応用したもので、3段の主変速機と2段の副変速機を組み合わせ、3×2=6段としている。これにより、小さなエンジン出力を有効に使うための多段化と、変速機のコンパクト化を両立しているが、電子制御によりドライバーは一般的なATと同様の感覚で操作できるようになっていた。

安全面では、滑りやすい路面状況や危険回避時の車両安定性を飛躍的に高めるESPR(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)、緊急制動時にすばやく最大制動力を発揮させるBAS(ブレーキアシスト)、デュアル&サイドエアバッグ、ABS等を全車に標準装備している。

  • 2004年9月6日発売モデル
    • 5ドアハッチバックモデル。「フォーフォー1.3」と「フォーフォー1.5」の2グレード。
  • 2005年2月28日発売モデル
    • ラインナップに「フォーフォー1.3パッション」を加えた。フォーフォー1.3をベースに、コンフォートパッケージ以外の内外装の装備をフォーフォー1.5と同等としたモデル。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:自動車
  1. [2]
  2. [3]
  3. [4]
  4. [5]
  5. smart's fortwo aiming for big U.S. sales 『MSNBC』 2007年11月21日
  6. [6]
  7. [7]