スクランブル
テンプレート:国際化 スクランブル(テンプレート:Lang-en)とは、軍用機の緊急発進を意味する軍事用語である。スクランブルに備えた待機任務をアラート任務と称する。戦闘機の緊急発進がよく知られているが、偵察機、哨戒機、救難機等の軍用機も緊急発進を実施する。
航空自衛隊のスクランブル
航空自衛隊のスクランブルとは、主に対領空侵犯措置での戦闘機の緊急発進を指す。 過去5年以内のスクランブルの件数と対象国を表す。
年度 | 緊急発進件数 | ロシア | 中国 | 北朝鮮 | 台湾 | その他 |
平成24年度 | 567回 | 248回 | 306回 | 0回 | 1回 | 12回 |
平成23年度 | 425回 | 247回 | 156回 | 0回 | 5回 | 17回 |
平成22年度 | 386回 | 264回 | 96回 | 0回 | 7回 | 19回 |
平成21年度 | 299回 | 197回 | 38回 | 8回 | 25回 | 31回 |
平成20年度 | 237回 | 193回 | 31回 | 0回 | 7回 | 6回 |
航空自衛隊では日本国の防空識別圏をレーダーサイト、早期警戒機、空中警戒管制機により24時間体制で監視している。国籍不明機が領空侵犯する恐れがあれば戦闘機F-15、F-2、F-4EJ改が、緊急発進して自衛隊法84条に基づき対領空侵犯措置を実施する。日本国周辺では、ロシア軍の示威飛行が年間を通じて実施されており、近年は中国軍の行動も活発化している。航空自衛隊の戦闘機がスクランブルする基地は、北海道千歳基地、青森県三沢基地、茨城県百里基地、石川県小松基地、福岡県築城基地、宮崎県新田原基地、沖縄県那覇基地の7基地である。
対象航空機の接近が事前に察知できるならば、スクランブル用の戦闘機を事前に上空待機させる場合がある。これをCAP(キャップ):COMBAT AIR PATROL 戦闘空中哨戒という。
スクランブル機の武装は、短射程ミサイルとバルカン砲である。情勢により中射程ミサイルを、増強する場合もある。現在までに1件、対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件で威嚇射撃を実施した。国籍不明機は仮想敵国の航空機とは限らず、飛行計画が未提出の民間機や、アメリカ軍機、気球などの浮遊物、ラジコン機の場合もある。
民間航空機が緊急事態に陥った場合や、大規模災害発生時も戦闘機が緊急発進して情報収集を行なう。日本航空123便墜落事故では、2機のF-4EJ戦闘機が遭難機の捜索を実施し、中国民航機ハイジャック事件では、F-1支援戦闘機がハイジャック機を福岡空港までエスコートした。
UH-60J救難ヘリコプターとU-125A捜索機は、24時間体制で救難待機をしている。また、偵察航空隊は、大規模災害発生時に緊急発進をして、被災地の情報収集を実施する。
海上自衛隊のスクランブル
海上自衛隊の護衛艦では艦載哨戒ヘリが、航空基地では哨戒機が24時間体制でアラート任務に就いている。
海上自衛隊では、哨戒機、護衛艦、潜水艦、音響測定艦、電子戦機を駆使して、日本周辺海域の哨戒(パトロール)を実施している。哨戒任務での対象目標は、潜水艦、艦艇、不審船、弾道ミサイル等である。日本国周辺海域で不審な目標を探知したならば、目視により識別し、撮影画像を上級司令部に伝送する。また、増援の哨戒機を緊急発進させ、艦艇も緊急出港して継続的な監視体制に移行する。哨戒任務で収集した情報は統合幕僚監部のホ-ムページで公表される。哨戒任務では通常、武装をしていないが、状況に応じて対艦ミサイル、対潜爆弾、機関銃、ミサイル防御装置等を搭載する。現在までに1件、能登半島沖不審船事件で威嚇射撃を実施した。潜水艦の探知情報を公表した例は、漢級原子力潜水艦領海侵犯事件がある。
海上自衛隊の護衛艦の基地は、青森県大湊基地、神奈川県横須賀基地、京都府舞鶴基地、広島県呉基地、長崎県佐世保基地の5基地であり、哨戒機の基地は青森県八戸基地、神奈川県厚木基地、山口県岩国基地、鹿児島県鹿屋基地、沖縄県那覇基地の5基地である。
日本周辺海域で近隣諸国が軍事演習を実施する場合は、日本国政府から海上自衛隊に監視任務が命令される。この場合、航空会社に対しては国土交通省からNOTAMが、船舶に対しては海上保安庁から航行警報が発出される。
また海上保安庁の要請により、遭難船舶や不審船の捜索も行う。不審船の対処は、海上保安庁の管轄であるが、対処不能な場合には、海上自衛隊が海上警備行動を実施する。
災害派遣の要請を受けた場合は、救難飛行艇US-1、US-2、救難ヘリUH-60J等の救難飛行隊が緊急発進して、主に洋上と離島地域の救助に発進する。
関連項目
- 防空識別圏
- 領空侵犯
- 報道発表2013 | 統合幕僚監部 - 防衛省統合幕僚監部報道発表資料