ジム・コマンド

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ジム・コマンド (GM COMMAND) は、OVA機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』などに登場する架空の兵器

地球連邦軍が開発した量産型モビルスーツ (MS) である。

本項では、ジム・コマンドのバリエーションについても記述する。

概要

短期間でMSを最前線へ配備するために、基本設計を無視する[1]形で廉価版として生産されていたRGM-79 ジム前期量産型(または先行量産型[2][1])に代わるものとして、基本設計により忠実な機種の数々が一年戦争終盤に開発され、主に後期生産型と呼ばれた。その一種がジム・コマンドである。本機のスペックは数値の上ではガンダムと同等以上のものを持っているが、これらの設定の誕生経緯には紆余曲折があり、登場当初の劇中では生かされず、『0080』本編では従来のジム同様、ヤラレ役となっている(この件については統合整備計画の項も参照)。前期量産型との大きな差異として、頭部・胸部に代表される外部装甲やランドセルの形状と、レーザー通信機の搭載による通信機能の向上が挙げられる。またビームサーベルの形状や取り付け位置、シールドの形状も変更されている。

ジム・コマンドという名称は、主に指揮官用として配備されたためという説があるが、詳細は不明である。

バリエーション

ジム寒冷地仕様

OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する地球連邦軍が開発した量産型MS。 テンプレート:機動兵器 連邦軍の量産型MS・ジムの後期生産型に分類される。拠点防衛用として北極基地などの地球上の寒冷地へ配備された。胴体部や腕部、脚部などのアウトラインはジム・コマンドシリーズと共通する部分が多い。ただし、頭部は頬部ダクトがある他は前期量産型のものに近く、またバックパックはジム改と同型、肘及び膝関節にも前期量産型と同じくフィールドモーターを内蔵した蝶番のモールドがある。

寒冷地用のチューンとして、機体各所には既存の車両や航空機の運用ノウハウに基づいた氷結対策、防寒処理が施されている。また荒天が数日にもわたって続く事の多い寒冷地における部隊の生存性を確保するため、一年戦争時の地上用モビルスーツとしては破格の通信能力を持つ[3]

白色と黒色に彩色されており、イギリスのステン短機関銃に似た円筒形の本体と左へ突き出したフォアグリップ兼用マガジンが特徴的な専用のマシンガンを武装とする。また、前期量産型のものと同形の六角形シールド(十文字の紋章は省略されている)も設定画稿が用意されたが、アニメのストーリー中では全く登場しなかった。これは後述のRGM-79Gジムコマンドや、RX-78NT-1でも同様で、これらの機体はシールドの設定画がありながら劇中では全く使用せずに終わっている。

そもそも本機が開発された経緯は、ホワイトベース隊のガンダムによる寒冷地でのテストが行われなかったことにより、前倒しで実験機を配備する必要があったためだとされるテンプレート:要出典。本来はジム・コマンドシリーズのバリエーションとして生産される予定であったが、開発が早められた都合上フレームのみが流用され、ジム・コマンドシリーズのプロトタイプという意味も与えられた。

劇中での活躍
『0080』第1話冒頭で、北極基地を襲撃したジオン軍サイクロプス隊のMSに応戦すべく多数の機体が登場した。ジオン軍熟練パイロットが操縦するハイゴッグには圧倒され多くの被害を出すものの、シャトル発射阻止のため突出してきたハイゴッグ1機を撃破し、シャトル防衛には成功している。登場する機体のうち、1機、もしくは2機がジム・コマンドが携行するブルパップ・マシンガンを装備している[4]
寒冷地仕様としてではない本機が登場する作品もあり、漫画『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』では、D型=対ドム用性能向上型として登場し、塗装は後述のGS型と同じものと、それをパワード・ジムの様なオレンジ系に変更したものがある。また、ゲーム『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』では、ジムの性能向上型として登場し、名称はRGM-79G ジム・コマンドになっている。
デザイン
デザインは出渕裕が担当した。当初はアクア・ジムとしてデザインされていた。『0080』製作当初、第1話冒頭に登場するジムは、初代『機動戦士ガンダム』に登場したジム(大河原邦男:画)の外見をリファインしただけのものであり、設定上は塗装のみ寒冷地用に塗り直されている同一のものとされていた。しかし『0080』第1巻が発売される直前になって、このジムは初代に登場したジムそのものではなく、性能向上されたものであるという設定に変更された。
『0080』発表当時は、バンダイからインジェクションプラモデルキットは発売されず、2003年7月にはハイグレード・ユニバーサルセンチュリー (HGUC)シリーズで1/144スケールのキットが発売された。


ジム・コマンド

テンプレート:機動兵器 OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ほかに登場する、地球連邦軍の量産型MS。ジム・コマンド コロニー戦仕様と呼称することもある。ジム・コマンドシリーズの標準タイプであり、いわば地上戦仕様に位置する機体であるが、本機が開発された頃には地球上での戦闘は収束に向かっていた為、主に宇宙の拠点防衛用として配備された。クリーム色と黒色に彩色された機種はスペースコロニー内とその周辺での活動を主としたコロニー戦仕様機として運用された。このカラーリングはコロニー守備隊の制式カラーとして、RGM-119 ジェムズガンなどにも採用されている。主武装として、コロニー壁面を破損しないようビーム兵器ではなく実体弾式のブルパップ型マシンガン=90mmジムマシンガン(型式番号HWF GMG・MG79-90mm)を装備している。この武器は後に制作された映像作品『第08MS小隊』『0083』『MS IGLOO』に登場した初期型ジムやジム改も装備している。

書籍『MS ERA 0001〜0080 ガンダム戦場写真集』には、ジオン軍によって鹵獲使用されている機体が登場し、シールドは六角形の初期型、カラーリングはザク系のグリーンとなっている。

設定の変遷
OVA『機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争』に登場し、こんにち「ジムコマンド」として知られるモビルスーツのデザインは、『月刊ニュータイプ』(角川書店)等の関連メディア上での第一報ではRGM-79「ジム」と同一の機体であり、そのリファインデザインであるとされていた[5]。劇中の脚本でも、登場人物たちは皆単に「ジム」と呼んでおり、また性能的にこれといって特筆されるような描写も無い。しかしながら、バンダイによるプラモデル商品化を迎えるにあたり、RGM-79G/GSはRGM-79とは別の機体であるということになり、「ジムコマンド」という固有機種名を与えられた。ただ、この時点でも「ジムコマンド」はRGM-79ジムと同時期〜大戦最末期に活躍したバリエーションに過ぎず、原型機よりもとりたてて高性能な機体というわけではなかった。『ENTERTAINMENT BIBLE.1機動戦士ガンダムMS大図鑑』(バンダイ・1991)では、原型のRGM-79と比べ「性能等に決定的な差は無い」「武装と外観以外に特別な改修はされていない」とある。また、プラモデル『1/144ジムコマンド』付属解説書(バンダイ)では、その開発目的について「次期量産機のデータを得るために、装甲形状の改良、ジェネレータのチューンナップを施した」のだと記されている。
ところが、同じシリーズのプラモデル『RGM-79GSジムコマンド宇宙用』の解説書では、RGM-79Gの性能に関する記述が、凡百のそれとするものではなくなってくる。「初期生産型とくらべると格段に能力が向上」「試作機であるRXナンバーの機体と比べても遜色のないもの」とある。さらにジムコマンドのキャラクターイメージを一変させたのは、『アナザー・センチュリー・クロニクル Vol.2 機動戦士ガンダム 一年戦争全史 U.C.0079-0080【下】』(学研・2007)である。同書はノーマルな「RGM-79ジム」のことを、低コスト化がたたって「定格性能を発揮できず耐久性にも欠ける」「粗悪品」であると記述し、「調整しだいで」なら公国軍MSと互角の近接戦も可能、という水準の機体であるとした。そして、その「粗悪品」たるRGM-79に対して設計本来の高性能を実現した「RGM-79ジム後期量産型」なる機体群の設定を新たに創作。RGM-79Gジムコマンド系やRGM-79Cジム改系の機種はその「RGM-79ジム後期量産型」を構成する派生機種なのだとした。ただ、『アナザー・センチュリー・クロニクル Vol.2 機動戦士ガンダム 一年戦争全史 U.C.0079-0080【下】』は「編集部」の名で目次末尾に「注」を入れており、同書の内容について、「公式設定とは異なる、あるいは設定を大幅に拡大解釈したものも含まれていますが、これらはあくまで本書のみの二次創作であり、オリジナル作品の内容をなんら規定・否定するものではありません」とことわっている。
劇中での活躍
『0080』第1話で、中立コロニー群サイド6・リボーコロニーの内部に威力偵察で進入したジオン軍のMS部隊を迎撃する姿が描かれている。映像中ではザク改に数機が撃墜される一方、戦果はバーナード・ワイズマン操縦のザク改に損害を与え放棄させたのみである。その後、第6話(劇中時間で約2週間経過)において故障したザクを修理するために、バーニィにパーツ取りされる本機の残骸が登場する。
第4話で連邦軍の強襲揚陸艦グレイファントムから出撃した機体は、本機と同様のカラーリング(クリーム色と黒色)のジム・スナイパーIIである。脚部の形状から判別出来る。
ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』では、後述の宇宙戦仕様のGS型と同じ塗装が施された機体が登場。バックパックの形状や寒冷地仕様のD型のものに似たシールド等、細部が異なる。ユウ・カジマ第11独立機械化混成部隊所属機[6]のほか、ムービー中で撃破された機体が何機か存在する。
デザイン
デザインは出渕裕。製作当時の表記は「ジムコマンド」。ジム・コマンドについては、もともとジムの改良型としてデザインされている。準備稿での名称は「ジムコマンドカスタム」であり、コマンド部隊向けの改修機として考えられていたようである。


ジム・コマンド宇宙戦仕様

OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する、地球連邦軍の量産型MS。 テンプレート:機動兵器 広範囲の宇宙空間での戦闘用として配備された。本体の外観について、背部のランドセルが姿勢制御バーニアの数が増加された型に置換されている以外はコロニー戦仕様機との大きな差異はない。白色と赤色に彩色されており、高威力のビーム・ガンを装備している。旧型に比べて威力は向上しているが、連射性は劣るとされる[7]。また標準的な90㎜ブルパップ・マシンガンを装備した機体もある[8]

劇中での活躍
『0080』第2話で、中立コロニー群サイド6・リボーコロニー周辺宙域にてジオン軍のMS部隊と戦闘する姿が描かれている。ザク改をビームサーベルで撃破する一方、ゲルググJ(イェーガー)リック・ドムIIに撃墜されている。
OVA『機動戦士ガンダム戦記 アバンタイトル』の連邦軍の主人公ユーグ・クーロは本機を駆ってア・バオア・クー攻防戦に参加した。この中でリック・ドムゲルググキャノンらを次々と撃破し、ビグロをも撃墜する姿が描かれている。この映像は本来は高性能と設定された本機が、初めて設定通りの活躍をしたものとなっている。
ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』の主人公ユウ・カジマは、蒼く塗装された機体を駆ってア・バオア・クー攻防戦に参加したといわれている。ただし原作であるゲームのエンディング画面に映っているのは通常タイプのジムである。
デザイン
デザインは出渕裕。
一部のゲーム等の作品ではコロニー戦仕様カラーに塗られたGS型が存在する。ゲーム『ガンダム無双』シリーズでは『0080』から唯一、単独で参戦している。


ジム・コマンド宇宙用(改良型)

漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』に登場する、地球連邦軍の量産型MS。ジム・コマンド(外宇宙戦仕様)と呼称することもある(型式番号:RGM-79GS)。

ジム・コマンドの外宇宙戦仕様機。外装の変更やバーニアの強化のほか、OSにはアムロ・レイの操縦データがインプットされており射撃に対する回避性能が向上されている。宇宙世紀0081年にアクシズにて発生した地球連邦小惑星機動艦隊襲撃事件において投入された。

ジム・コマンド "ハンマーヘッド"

ジム・コマンド "ハンマーヘッド" (GM COMMAND HAMMER HEAD) は、漫画『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』に収載されている「It's a wonderful world」に登場する、地球連邦軍の試作型MS。

ガンダムタイプの頭部を持つRGM-79GSの実験機で、機体はトリコロールで彩色されている。具体的な機体性能および実験目的は不明。なお、「ハンマーヘッド」の由来は、やや迫り出した額の形状からくると思われる。建設中のコロニー内での試験運用中に墜落事故が発生し、察知したジオン軍の襲撃にあうが、宇宙空間に不慣れな正規パイロットのフジ・ミカ曹長に代わり民間人のダリー・ニエル・ガンズが搭乗、これを撃退している。

ジム・コマンド・ライトアーマー

ジム・コマンド・ライトアーマー (GM COMMAND LIGHT ARMOR) は、バンダイのプラモデルキット『1/144 RGM-79GS ジム・コマンド宇宙用』の組立説明書に登場する、地球連邦軍の量産型MS(型式番号:RGM-79GL)。

RGM-79L ジム・ライトアーマー同様、ジム・コマンドを軽量化することでの機動性の向上が図られ、運用方法も一撃離脱戦法に限定されている。また、カラーリングも踏襲されておりオレンジと白の彩色となっている。

元の『1/144 ジム・コマンド宇宙用』の組立説明書掲載の画稿には「ライトアーマー」とのみ記載されており、画稿そのものもジム・コマンドとの共通項が少ない(頬部ダクトやオプチカルシーカーがない、胴体部の形状など)。2007年2月発売の『ガンダムウォー』第18弾「戦慄の兵威」においてカード化された際に「ジム・コマンド・ライトアーマー」の名称と「RGM-79GL」の型式番号が付記されている。

バンダイの1/144プラモデル『ポケットの中の戦争』シリーズの付属解説書の見開き右側に掲載されているMSは、『ポケットの中の戦争』以前のデザインのリファイン元が存在しないケンプファーを除き、全て大河原邦男がデザインした旧『機動戦士ガンダム』及び『MSV』のMSのディテールアップ画稿であり、「初期量産型」や「前期量産型」等、機種名の接尾語を掲げて紹介している。『1/144 RGM-79GS ジム・コマンド宇宙用』の解説書に掲載されている「ライトアーマー」もまた即ち「ジム」「ライトアーマー」に他ならない。しかし、一部でこれがジムコマンドのバリエーションである新型機と誤認され、ガンダムウォー』第18弾「戦慄の兵威」にて「ジム・コマンド・ライトアーマー」なる新MSが誕生してしまった。

ジム・スナイパーII

テンプレート:Main

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:宇宙世紀
  1. 1.0 1.1 機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』より。
  2. 陸戦型ジムなどの「先行量産型ジム」とは別物。
  3. プラモデル『HGUC 1/144 RGM-79D ジム寒冷地仕様』取扱解説書より。
  4. 『0080』第1話、シャトルが脱出した直後のシーンで、頭部を失って炎上するRGM-79Dが装備している。
  5. ただし、『ポケットの中の戦争』の他のMSとは、制作者サイドでははじめからリファインではなく改良機という認識だったとされる点が異なる。
  6. ただし漫画版ではユウがブルー専任になった後にD型ジムの後継として配備された。
  7. バンダイ製、ジム・コマンド宇宙用プラスチックモデル説明書(1989年発売)
  8. 『0080』2話の戦闘で、港湾施設の警護するRGM-79GSが装備している。