コーナーキューブ
コーナーキューブは、光や電波を反射する性質を持った3枚の平面の板を互いに直角に組み合わせ、立方体の頂点型にした装置である。コーナーキューブ・リフレクタ。
平面の板は、光ならば鏡やガラス内面(プリズム)、電波なら金属板である。その内側に入射した光や電波は、平面で3回の反射を繰り返し結果、元来た方向へ帰る。
反射原理により、コーナーキューブ・ミラーやコーナーキューブ・プリズムとも呼ぶ。
原理
簡単のため2次元の場合を考える。2枚の鏡を直角に組み合わせる。光が θ の入射角で鏡に入ると同じ角度 θ で出る。すなわち光は 2θ 曲がる。それが2枚目の鏡に入る角度は R -θ(R = π / 2、すなわち直角)で、出る角度も R -θ なので、2R - 2θ 曲がる。合計すると 2θ + 2R - 2θ、すなわち 2R となり、元来た方向へ戻る。
3次元、すなわち鏡3枚の場合はやや複雑だが2次元の場合と基本的に同じであり、上下左右どちらからの光も元の方向に戻る。この性質を再帰性反射という。
応用
身近には、道路や車両に取り付けられている反射板がある。小さなコーナーキューブを多数並べたもので、プラスチック製が多い。夜間、それ自体は発光しないが、自動車のヘッドライトなどを受けて反射し、路肩や分離帯、他の車両の位置を運転者に知らせる。通常、道路用は黄色、車両用は前方が黄色で後方は赤と黄色である(車両は半分より前から赤い光を出してはいけない)。
自転車では、後部の他、ペダルや車輪のスポークについていることもある。自動車ではコーナーキューブ・プリズムとして、テールランプやブレーキランプのレンズと兼用になっていることが多い。点灯走行中は必要ないが、駐車などで消灯時に必要となる。
より高い精度のものは測量に用いられる。キューブも単体でガラス製が多い。レーザー光を当てその帰ってくるまでの時間から長さを測定する。遠距離の例では、アポロ宇宙船(11号、14号、15号)が月面にコーナーキューブによるレーザー反射鏡を設置しており、地球からレーザーを発射して月までの距離の測定に用いられている。また、1986年8月14日にH-Iロケット1号機で打ち上げられたEGS(愛称「あじさい」)は多数のコーナーキューブを直径2.15mの球面に配置した測地衛星(受動式)である。
電波では、1mほどのアルミ箔を貼った板でコーナーキューブをつくりスペースシャトルから地表を測量したことがある。(Shuttle Radar Topography Mission)
リバーサルミラー
コーナーキューブの原理を応用したものにリバーサルミラーがある。これは直角に組み合わせた2枚の鏡である。通常の鏡は左右が逆転(正確には前後が逆転)して見えるが、リバーサルミラーでは左右を保ったままで自らの像が映る(他人の目やカメラに映るままの姿が見える)。
「#原理」にある、2次元コーナーキューブでの光の軌跡を見ればわかるように、このような鏡では右の鏡に入射した光が左の鏡から出ていき、逆に左の鏡に入射した光は右の鏡から出てくる。このため前後と左右の両方が反転し、結果的に対象を客観的に見た映像が得られる。
なお、リバーサルミラーは美容用として簡単に入手できるが、右手を動かすと向かって左の手が動くなど、一見して反転して見え、また、我々の多くは普段用いる左右逆転した鏡の像に慣れており、またそれを参考にして化粧をしたり顔面の無意識の補正を行っているため、リバーサルミラーに映る像を見ると強い違和感を覚える。特に、通常の鏡像では気付かなかった顔面・頭部の歪みを感じることが多い。
同じ機能の装置
ガラス球に対しても光がコーナーキューブと同様の再帰性反射をする。微細なガラスビーズを塗料に混ぜることで暗闇でも明るい交通標識や安全目的の衣類に用いられる。また、その明るさを生かして映写機などのスクリーンに使用される場合もある(ビーズスクリーン)。