アルカイカム・エスペラントム
テンプレート:出典の明記 アルカイカム・エスペラントム(Arcaicam Esperantom)は、マヌエル・ハルヴェリク(Manuel Halvelik, 本名: Kamiel Vanhulle, 1925年4月14日 - )が人工言語であるエスペラントをもとに、あたかも「エスペラントの古語」に見えるように創ったエスペラントの派生言語の一つである。言語の名前は、アルカイカム・エスペラントムで「古風エスペラント」を意味する。ハルヴェリクはこの言語に関する著作『Arcaicam Esperantom』を1969年に出版し、この架空言語を世に問うた。
目次
概要
エスペラントは創られてから約120年という短い歴史ゆえに、エスペラント作家たちは古風な文を書く手段をあまり持っておらず、使われなくなった古い表現方法とか、プラ-エスペラントを使っていた。しかし、それに飽き足らぬハルヴェリクは、あたかも現在のエスペラントの古語のように見える言語を創ることにした。ヨーロッパ系言語では進化の過程で格が無くなり、前置詞が使われる傾向があるので、ハルヴェリクは逆に前置詞の使用頻度を少なくし、格変化を追加して古語に見えるようにした。また、エスペラントには無い動詞の人称変化も持ち込んだ。一つの動詞に於いて、一人称、二人称、三人称それぞれに単数形と複数形があるので、全てで6通りの人称変化がある。
与格と属格の格変化が追加されているので(エスペラントの格変化は主格と対格の二つのみ)、ラテン語のような文章を直訳するのが容易になっている。
エスペラントからアルカイカム・エスペラントムへの翻訳
エスペラントの文をアルカイカム・エスペラントムに翻訳するには、以下のように文字表記とエス文中で頻繁に使う品詞語尾などを置き換える。
この言語の名前、Arcaicam EsperantomはArkaika Esperanto(古風なエスペラント)を以下の法則に従って変換したものである。また、ウィキペディア(エス語ではVikipedio)を同様に変換すると、Wiquipediomとなる。
文字表記
エスペラントの綴りをアルカイカム・エスペラントにするには以下のように置き換える。
- c → tz
- ĉ → ch
- f → ph
- ĝ → gh
- ĥ → qh
- j → y
- ĵ → j
- k → qu または c
- ŝ → sh
- ŭ → u または w
- v → w
- "aŭ" →"aù"
- "eŭ" →"eù"
- "dz" →"zz"
- "ks" →"x"
- "kv" →"cù"
人称代名詞
()内は同義のエスペラント
単数 | 複数 | |
1人称 | mihi - 私 (mi) | nos - 私たち (ni) |
2人称 | tu - 君 (vi) | wos - 君たち (vi) |
3人称 | eshi - 彼女 (ŝi) lui - 彼 (li) eghi - それ(ĝi) |
ilui - 彼等 (ili) sihi - 彼女等 (ili) |
動詞
不定形は-i を-ir に置き換えるが、語幹の最後の文字が-eまたは-i の時はar に置き換える。エスペラントのesti(~である)はestir となり、krii (叫ぶ)はcriarとなる。 インド・ヨーロッパ語族の言語には人称変化があることが多い。エスペラントには人称変化が無いが、アルカイカム・エスペラントは人称変化をつけている。これにより、主語を省略できる。
lernir(学ぶ)を例として現在人称変化を示す。
単数 | 複数 | |
1人称 | -ams (lernams) | -aims (lernaims) |
2人称 | -as (lernas) | -ais (lernais) |
3人称 | -at (lernat) | -ait (lernait) |
- 過去形は -is → -ims (lernims)
- 未来形は -os → -oms (lernoms)
- 命令形は -u (lernu)でそのままだが、複数では -uy (lernuy)
品詞語尾
- -o → om (名詞)
- -oj → oy (名詞の複数)
- -on はそのまま (名詞の対格)
- -ojn → -oyn (名詞の対格・複数)
- -e → -œ (名詞、形容詞、前置詞等の、他の品詞から派生した、「派生」副詞)
- -aŭ → -ez (baldaŭなど-aŭで終わる副詞)
- -a → -am (形容詞)
- -aj → -ay (形容詞の複数)
- 与格は前置詞 al の代わりに接尾辞 -odをつける (例: al domo → domod)
- 複数形の場合は -oydをつける(例: al domoj → domoyd)
- 属格は前置詞de の代わりに接尾辞 -esをつける (例: de domo → domes)
- 複数形の場合は -eysをつける(例: de domoj → domeys)
相関詞
- -a → -am (性質・様子)
- -am → -ahem (時)
- ĉi → chey (近接・普遍)
- -e → -oe (場所)
- ki- → cuy (疑問・関係)
- nen- → nemy (否定)
- -o → -om (物・事)
- -om → -ohem (数量)
- ti- → ity- (指示)
冠詞
エスペラントには定冠詞 la があるが、アルカイカム・エスペラントムには無い。また、エスペラントには無い不定冠詞(英語の a や an に相当)の unn がある。
その他
英 and に相当する接続詞 kaj は ed 、前置詞及び接頭辞の en は in に置換される。
例
- Tempo fuĝas. → Tempom phughat. -- (時は逃げ去る) オウィディウス
- Amo ĉion venkas. → Amom cheyon wencat. -- (愛はすべてに勝る) ウェルギリウス
- Tiel pasas la Gloro de la Mondo. → Ityel pasat Mondes Glorom. -- (かくして世の栄光は移りゆく) トマス・ア・ケンピス
- Mi venis, mi vidis, mi venkis. → Wenims, widims, wenquims. -- (来た、見た、勝った) ガイウス・ユリウス・カエサル
翻訳例
ここでは「主の祈り」を参考例に挙げる。エスペラントの原文はPatro Niaを参照
Patrom noses, cuyu estas en chielom Estu sanctiguitam Tues nomom. Venu Tues regnom, plenumighu Tues volom, Patrom noses, cuyu estas en chielom cuyel en chielo, ityel ankez sur terom. Panon noses cheyutagan donu nosod hodiez. Cay pardonu nosod nies shuldoyn, cuyel ankez nos pardonaims shuldantoyd noses. Cay ne conducu nosoyn en tenton, sed liberigu nosoyn malbones. Amen