渚にて (小説)
テンプレート:Portal 『渚にて』(なぎさにて、テンプレート:Lang-en-short)は、ネビル・シュートによって、1957年に書かれた小説である。
1959年にスタンリー・クレイマー監督、グレゴリー・ペック主演で映画化された。2000年にはテレビ映画化された(邦題は『エンド・オブ・ザ・ワールド』)。
あらすじ
第三次世界大戦が勃発。核爆弾(コバルト爆弾)による放射能汚染で北半球が全滅する。生き残ったアメリカ海軍の原子力潜水艦(スキップジャック級原子力潜水艦)スコーピオン号が、南半球のオーストラリアメルボルンに寄港する。
全滅したと思われたアメリカ合衆国のシアトル付近から謎のモールス信号が断続的に発信されて来る。スコーピオン号艦長のドワイト・ライオネル・タワーズ アメリカ海軍中佐以下、オーストラリア科学工業研究所の研究員ジョン・S・オスボーン、オーストラリア海軍少佐ピーター・ホームズらはスコーピオン号に乗り込み、発信源と推定されるワシントン州ピュージェット・サウンドのサンタ・マリア島にあるアメリカ海軍通信学校へ調査に向かう。
しかし、サンダーストローム中尉が防護服を着て上陸し調査した結果、モールス信号は蝶番から外れた窓枠の下にあった倒れたコカコーラの空き瓶が風に揺られて電鍵を叩いていたことによることがわかり、スコーピオン号はメルボルンに帰還する。
汚染が徐々に南下している事も確認され、人類の滅亡が避けられないと認識される。多くの市民は、南下して延命することを選択せず、自宅での薬物による積極的安楽死を望み、薬剤が配給される。人々は、死を覚悟しながらも残された人生を楽しむ。やがてメルボルンにも大気中の放射能濃度上昇により放射線に被曝し急性放射線症におかされた患者が出始める。病で苦しみ始めた人から薬を服用し始め、徐々に街が寂れていく。その中、タワーズ艦長(ブリスベンのアメリカ海軍から前任者退任と兼任指令電報によりアメリカ海軍艦隊司令長官(アメリカ合衆国海軍長官)に昇進)はオーストラリアでの死を望まず、あくまでもアメリカ海軍の軍人としての死を望み、同様の選択をした乗組員と共にスコーピオン号をオーストラリアの領海外で自沈させることを選んだ。
時代背景
映画では言及されていないが、小説ではアルバニアによるナポリ爆撃をきっかけとする、エジプト軍のソビエト連邦製長距離爆撃機Il626型によるアメリカ合衆国のワシントンとイギリスのロンドンへの爆撃が戦争の発端として描かれている。これは当時のスエズ動乱(第二次中東戦争)に関連していると思われる。「エンド・オブ・ザ・ワールド」では中華人民共和国による台湾封鎖を引き金にして第三次世界大戦が勃発することになっており、アメリカ合衆国からのメッセージもモールス信号ではなく文字化けした電子メールである。
作品の大部分はオーストラリア南端の都市メルボルンで展開される。シュートはその死の一年前に製作された映画を、原作から大幅に変更されたために嫌っていたと言われている。
本作は核兵器がもたらした放射性物質によって被曝してゆく人々の物語でもあるが、実際の放射線障害とは明らかに違った描写が見受けられる箇所があり、また、登場人物の被曝や放射線障害に対する認識も一種の伝染病のように考えていると感じられる。
日本語訳
- 『渚にて』木下秀夫訳 文藝春秋新社 1958年6月
- 『渚にて 人類最後の日』井上勇訳 創元SF文庫 1965年9月
- 『渚にて』山路勝之訳 篠崎書林 1976年
- 『渚にて 人類最後の日』(新訳版)佐藤龍雄訳 東京創元社 2009年4月30日
映画
テンプレート:Infobox Film 1959年にスタンリー・クレイマー監督、グレゴリー・ペック主演で映画化された。モノクロ作品。
第17回ゴールデングローブ賞作曲賞(映画部門、アーネスト・ゴールド)と第14回英国アカデミー賞監督賞(スタンリー・クレイマー)、日本でも第11回ブルーリボン賞外国作品賞を受賞した。
- キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
ドワイト・ライオネル・タワーズ中佐 | グレゴリー・ペック | 城達也 |
モイラ・デヴィッドソン | エヴァ・ガードナー | 翠準子 |
ジュリアン・オズボーン博士 | フレッド・アステア | 梶哲也 |
ピーター・ホームズ少佐 | アンソニー・パーキンス | 北原隆 |
メアリー・ホームズ | ドナ・アンダーソン | 山崎左渡子 |
関連項目
- T・S・エリオット - 1925年の詩The Hollow Men[1]が引用されており[2]、原題もそこにある"on this beach"に由来する。
- 復活の日
- 世界大戦争 (いくつかのシーンで共通点がある)