ナタ・デ・ココ
ナタ・デ・ココ(スペイン語:nata de coco)は、ココナッツの汁を発酵させたゲル状のもので、フィリピン発祥の伝統食品。
スペイン語で「ナタ」とは「(液体表面上の)皮膜」の意味であり、「ナタ・デ・ココ」は「ココナッツの上澄み皮膜」を意味する[1]。
ココナッツの実の内部に含まれるココナッツ水と呼ばれる液体に酢酸菌の一種であるアセトバクター・キシリナム(ナタ菌)を加えて発酵させると表面からジュースが凝固してゆくので、一定の厚みになったところでさいの目に切り食用に供する。このゲル状物質はほとんど菌の合成するセルロースから成る[2]。寒天に近い外観ながら、独特の歯ごたえがある食感をもち、カロリーが低く食物繊維が多いのでダイエット食や特定保健用食品[3]としても利用されている[4][5]。
日本での流行
日本では食品会社のフジッコが初めて菌を持ち帰り、幾度かの実験を繰り返してデザート用に適した形で商品化し、独特の食感でヒットした。[6]テンプレート:出典無効
日本においては、1970年代後半にデルモンテ社がフルーツ缶に入れたのが最初とされる[4]。1992年7月に大手ファミリーレストランチェーンのデニーズがメニューに加え、それが1993年春以降にマスコミで大きく取り上げられたことにより大流行した[5]。缶詰や瓶詰として単独で売られるようになった他、今では各種食品、飲料と組み合わせて、デザートや菓子として売られている。
食用以外での利用
以前からナタ・デ・ココと同じものである産膜性の酢酸菌の生産するセルロース・ゲルは、均質なセルロース・コロイドのゲルであることから、スピーカーのコーン紙としてなどハイテク素材としての用途が模索されてきた[7]。
近年ではナタ・デ・ココの成分の99%が水分、残りの1%がセルロースナノ繊維であることに着目し、水分を飛ばして乾燥したナタ・デ・ココの繊維質に合成樹脂を浸透させ、有機ELディスプレイの透明基板として使う研究が注目されている。既存のガラス製パネルでは不可能だった、石英ガラス並みの低熱膨張性かつフレキシブルな折り曲げ可能な薄型ディスプレイが再生産可能な植物材料から製造でき、さらにガラス製パネルよりも安価に製造可能な事から、薄型ディスプレイのコスト削減に繋がる可能性がある[8][9]。
出典
テンプレート:Reflistテンプレート:Food-stub- ↑ 『現代用語の基礎知識 1994』 自由国民社編、1,370頁
- ↑ コラム 第97回 ナタデココの秘密 - ドール・フード・カンパニー、2004年4月13日(2012年4月25日閲覧)
- ↑ 厚生労働省:保健機能食品・健康食品関連情報(2012年4月25日閲覧)
- ↑ 4.0 4.1 『現代用語の基礎知識 1994』 1,056頁
- ↑ 5.0 5.1 『読売年鑑 1994』 読売新聞社編、257頁。
- ↑ フジッコのあゆみ - フジッコ(2012年9月1日閲覧)
- ↑ 酢酸菌に学ぶ材料設計 - 積水化学工業(2012年4月25日閲覧)
- ↑ ナタデココ、次世代の薄型ディスプレー基板に活用 - 朝日新聞社、2005年2月20日(2012年4月25日閲覧)
- ↑ 京都大学 ニュースリリース 2005年1月25日 低熱膨張透明基板について - 京都大学(2012年4月25日閲覧)