詰碁
詰碁(つめご)とは、囲碁の部分的な死活を問う問題のこと。将棋の詰将棋に対応するもの。
概要
白黒の石が置かれた囲碁の盤面の一部(まれには全部)と、手番(「白番」、「白先」もしくは「黒番」、「黒先」)が示され、どのように打てば自分の石を生きにもちこめるか、または相手の石を殺すことができるか、すなわち死活を考えるものである。
いくつも詰碁を解き、パターンを覚えておけば、実戦に類似した形が生じた場合に短時間で対応できるようになる。また読みの力を養う絶好のトレーニングともなるため、囲碁の上達には欠かせない。このため、多数の詰碁問題集が市販されている。
なお詰碁という用語は、死活のからむ問題に用いられる。死活に関係なく、局所的な得を図るような問題は手筋問題といわれる。
たとえば黒番で黒の石を生かす問題は「黒先活(くろせんいき)」、白の石を殺す問題は「黒先白死(くろせんしろし)」という(白番の場合は、「白先活(しろせんいき)」、「白先黒死(しろせんくろし)」)。また、最善の手順を尽くすとコウになる問題もあり、それらは「黒先コウ」「白先コウ」という。詰碁の問題集では結果(たとえば「黒先コウ」)まで書いているものもあるが、「黒先」か「白先」のみが示されていることの方が多い。結果が書かれていないものでは、最善の結果になる手を答える。たとえば黒先の問題で、白の無条件死になる手順と、コウになる手順があったとすると、無条件死の手順を示さなければ正解とならない。
詰碁の難易度は様々で、初級者でもすぐ解けるものから、プロ棋士が何日もかかるような難問もある。「3分で解ければ初段」などと、棋力の目安のついた問題などもある。
例題
自分の石を生かす問題と相手の石を殺す問題[1]。共に黒先。
問題 1: | 問題 2: |
解答
解答 1: テンプレート:碁盤 9x9 1が「二の一」と呼ばれる急所であり、ここを白に打たれると眼ができない。
解答 2:
テンプレート:碁盤 9x9
3 の後、ダメヅマリにより白は a に打つことができない(まとめて取られてしまう)。初手が 2 なら白 1 黒 3 白 a で白が活きる。2手目が 3 なら黒 2 で欠け眼になる。
歴史
詰碁は、囲碁の死活を独立させたもので、古くから棋書の一部として存在した。中でも元に成立した『玄玄碁経(げんげんごきょう)』(1349年)が有名。明時代には『官子譜(かんずふ)』が作られた。この時代には詰碁を「珍瓏(ちんろう)」と呼んでいる。また中国ではヨセを官子と呼ぶ。(「詰碁」の語はおそらく「詰将棋」の影響によって日本で作られたと考えられる。囲碁の死活には「詰める」という言葉を使わないため)中国では詰碁という言葉は用いられず「死活問題集」「攻防問題集」「手筋問題集」「官子(ヨセ)問題集」「布局問題集」という用語が使われてきた。
日本では、1713年、井上道節因碩により『囲碁発陽論』が作られた。これは難解なことで有名だが、作成当時は井上家門外不出の書とされていた。1812年には林元美により『碁経衆妙(ごきょうしゅうみょう)』が出版された。
近代になると、職業棋士が、雑誌、新聞などで継続的に詰碁を発表するようになる。有名な詰碁作家として前田陳爾、橋本宇太郎、呉清源、加田克司、石榑郁郎、石田章、張栩らがいる。また数は多くないがアマチュアの作家(塚本惠一ら)も活躍している。
詰碁名作ベストテン
詰碁名作ベストテンは、前田陳爾が昭和47年に『棋道』誌に連載したエッセー(『詰碁の神様 前田陳爾傑作集2』に再録)。
となっている。
その他
現在は「珍瓏」といえば、盤面の全体を使った問題を指す。「珍瓏」では「この石が取れるか?」といった条件付きの問題も認められていて、定められた石をアタリの連続で(主にシチョウを使って)追うものもある。中山典之が多くの作品を発表している。
脚注
関連項目
参考文献
事典類
- 趙治勲『基本死活事典』全2巻 日本棋院 1984-85年
- 『新・早わかり 死活小事典』日本棋院 1993年
- 瀬越憲作『詰碁辞典(改訂版) 』日本貿易出版 1971年
- 関山利一、利夫『傑作詰碁辞典』誠文堂新光社 1975年(改訂版 2010年)
- 橋本昌二『名作詰碁辞典 玄玄碁経と発陽論』誠文堂新光社 1976年
- 加藤正夫『死活小辞典』誠文堂新光社 1984年
- 江場弘樹『基本死活辞典』エフエー出版 1992年
現代の代表的詰碁作家の作品集
- 『前田陳爾』(100万人の詰碁1)講談社 1983年
- 『橋本宇太郎』(100万人の詰碁2)講談社 1983年
- 『呉清源』(100万人の詰碁3)講談社 1983年
- 『加田克司詰碁教室』(ゴ・スーパーブックス15)日本棋院 1971年
- 『石榑郁郎傑作詰碁選』三一書房 1996年
- 佐藤直男『棋力アップ さわやか詰碁』誠文堂新光社 1999年
- 『秀行創作詰碁傑作集』日本棋院 1980年
- 『坂田 珠玉詰碁』誠文堂新光社 1995年
- 『石田章 詰碁傑作選 ~基本手筋の反復練習~ (マイコミ囲碁ブックス) 』2007年
- 『張栩の特選詰碁』日本棋院 2008年
- 塚本恵一『読むだけで強くなる 詰碁の鉄人』毎日コミュニケーションズ 2007年
入門書
- 『藤沢秀行詰碁教室 初級編』読売新聞社 1980年
- 『藤沢秀行詰碁教室 中・上級編』読売新聞社 1980年
- 『前田初級詰碁』東京創元社
- 『前田中級詰碁』東京創元社
- 『前田上級詰碁』東京創元社
- 『囲碁次の一手〈2 初・中級編〉初・中級詰碁』角川文庫
- 『囲碁次の一手〈5 上級編〉上級詰碁』角川文庫
- 『詰碁ジョイブックス』全10巻 日本棋院