SM分離
SM分離（エスエムぶんり）は、日本国有鉄道（国鉄）が行った首都圏における通勤路線の輸送量増大プロジェクトである「通勤五方面作戦」の一環として、1980年10月1日から開始した国鉄東海道本線において、横須賀線直通列車の別線化による系統別の路線分離である。
概要
かつては東海道線をそのまま走行する熱海方面の列車と、途中大船駅で横須賀線へ直通する電車の2系統の列車は東京駅 - 大船駅間において同じ線路（東海道本線旅客線）を共用して運行していたが、通勤ラッシュによる混雑が日を追うごとに深刻化し、増発を繰り返した結果、輸送力が限界に達した。そのため、国鉄は同旅客線とおおむね併走する東海道貨物線を転用して横須賀線電車の運転を行なわせることで輸送力の増大を狙った。
横須賀線の列車は品川駅 - 鶴見駅間において、従来の旅客線と離れた新鶴見操車場（現新鶴見信号場）を経由する品鶴線と称するルートを経由するようにし、同ルート上に旅客用駅として新川崎駅を設置した[1]。
鶴見駅 - 大船駅間は東海道線と併走するため、一部の駅で駅舎の工事が行われ、横浜駅は駅ビルと東急東横線の駅を移設するなどしてホームの幅員を増やし、保土ヶ谷駅ではそれまで横須賀線電車のみ停車していた東海道線ホームを廃止して、旧貨物線上に横須賀線ホームが設置された。また、新清水谷戸トンネルを抜けた保土ヶ谷 - 戸塚間の戸塚区品濃町に横須賀線電車のみが停車する東戸塚駅を新設した。戸塚駅では旧貨物線上に横須賀線・東海道線上りホームを設置し、旧東海道線・横須賀線上下ホームは東海道線・横須賀線下りホームとなった。大船駅では旧貨物線上に東海道線上りホームを設置し、旧東海道線上りホームは東海道線下りホームとなった。また従来の東海道線下り列車は横須賀線上りホーム（副本線）と下りホーム（本線）のいずれかから発車していたが、東海道線下り線の移設により横須賀線のみが発着するようになった。そのため現在でも横須賀線ホームは東海道線の藤沢方面へ線路が繋がっている。
内陸側に横須賀線、海側に東海道本線旅客線の線路別複々線で建設されたが、戸塚駅では方向別複々線を採用し、東海道本線列車と横須賀線電車の同一ホームでの対面乗り換えを可能にした。この線路の配置は戸塚駅の手前で横須賀線の下り線が東海道本線旅客線をオーバークロスし海側に出て、戸塚駅を出た後で、横須賀線上り線がオーバークロスする。そのため大船駅では再び路線別のホームとなる。
東海道貨物線を横須賀線に転用するにあたり、京浜間の貨物線再配置も同時に進められ、東戸塚駅 - 大船駅間は旅客線に沿って新たに貨物用の複線を敷設し、東海道線列車・横須賀線電車と併せて三複線とした。東戸塚以東は市街化が進み線増が困難なため、北方に迂回する貨物新線が建設された。この線路は長大トンネルで保土ヶ谷の丘陵地帯を抜け、相鉄本線上星川駅付近を経て貨物専用の横浜羽沢駅、その先は横浜線大口駅付近・京急本線生麦駅付近を経て、鶴見駅で根岸線方面からの貨物線（高島線）と合流する。鶴見駅からは、新鶴見・武蔵野貨物線方面、または川崎貨物経由東京貨物ターミナル駅方面に向かう。この鉄道の恩恵を直接受けない横浜市神奈川区の住民によってこの貨物線建設反対運動が起こり、新貨物線の開通が遅れ、さらには当事業にも影響した。
総武快速線の延長運転は、1976年10月1日から千葉駅 - 品川駅間で行われていたが、SM分離と同時に品川駅から久里浜駅まで直通運転区間を延伸した。
名称の由来
SM分離の「S」・「M」とは、それぞれ横須賀線電車と東海道本線の熱海方面の普通列車（中距離電車）を示す。日本国有鉄道における電車列車の運行管理番号は「○○○○M」と、4桁までの数字にM（MotorのM）を付けて表すことが多いが、この線区では東海道本線・横須賀線列車が交互に運行されるため、横須賀線列車についてはMに代えて横須賀線（通称、スカ線）を意味するSを付けて表示していた。
脚注
関連項目
- 系統分離
- 二重路線名
- 系統分離・二重路線名
