ファイザー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テンプレート:Infobox ファイザー(Pfizer Inc.)は、世界売上1位の米国の製薬会社である。株式がダウ平均株価の構成銘柄に選ばれている。ニューヨーク・マンハッタンのグランド・セントラル駅に程近いミッドタウン東部に本社ビルを所有している。
本項ではその日本法人、ファイザー株式会社についても併せて記述する。
沿革[1]
- 1849年 - テンプレート:仮リンクらによってニューヨークで創業。南北戦争時の北軍の医薬品はほとんどファイザーが製造した。[2]
- 1949年 - 抗生物質テラマイシンの開発によってファイザーは最初の成功を収めた。
- 1970年 - 社名をチャールズ・ファイザー&カンパニー・インクから、ファイザー・インクに改めた。
- 1982年 - 抗炎症剤フェルデンが売り上げ10億ドルを突破するファイザー初のブロックバスターに成長、巨大企業への礎を築いた。
- 1990年代 - 積極的な大型買収を繰り返し、アトルバスタチン(商品名リピトール)、抗うつ薬ゾロフト、勃起不全薬クエン酸シルデナフィル(商品名バイアグラ)、抗炎症剤セレブレックスなどを抱える巨大企業に成長する。
- 2000年 - アメリカのワーナー・ランバート社(医薬品のテンプレート:仮リンク、カプセル剤のカプスゲル、カミソリのシック、含嗽剤のリステリン、お菓子のアダムス(現クラフトフーヅ キャンディ・ガム菓子部門)、観賞魚製品のテトラ・ベルケ(現テトラ)などを保有)を買収。
- 2003年 - さらにアメリカのファルマシア社を買収し、世界最大の製薬会社となった。有力な新薬を会社ごと買収して収益を上げる手法は「ファイザーモデル」とも呼ばれ、1990年代から進んだ製薬業界再編の旗頭となった。
- 2006年 - 「Working for a healthier world (より健康な世界の実現のために)」という世界統一の企業スローガンが発表された。
- 2008年 - 「Working together for a healthier world」と、「共に」という文言が追加された。
- 2009年1月 - アメリカのワイス社を約680億ドルで買収することを発表、買収手続きを同年10月までに完了した。
- 2010年 - ロゴマークを一新[3]。
研究開発には毎年9000億円近くが使われているが、ファイザー本体からの新薬は1998年のバイアグラ以来登場しておらず、2006年には超大型新薬になると期待されたトルセトラピブの臨床試験も失敗した。稼ぎ頭であるリピトールの特許切れ(2011年)を間近に控え、経営体制の見直しを余儀なくされているのが現状である。これにより、後述のように日本法人を含めて世界規模でのリストラが進められている。
日本法人
ファイザー株式会社(Pfizer Japan Inc.)は、米ファイザーの日本法人である。本社は、東京都渋谷区代々木3-22-7(新宿文化クイントビル)に所在する。
沿革[4]
- 1953年 - 田辺製薬(現在の田辺三菱製薬)との合弁によって、ファイザー田邊を設立し日本へ進出した。当時の主力製品テラマイシン(抗生物質)などの販売を開始するも、テラマイシン国産品の増産が出来ず当時の厚生省の方針によって合弁契約の解消を迫られた。
- 1955年6月 - 台糖ファイザーを設立。台糖(現在の三井製糖)が独自のペニシリンの培養技術をもって発売していた一方で、パートナーとして外国の医薬品メーカーとの提携を模索しており、当時のファイザーと利害が一致。1955年にファイザー田邊の田辺製薬持ち株分を台糖へ譲渡し、台糖ファイザーが誕生(実際は後に社名変更を実施)した。
- 1950年~1970年代 - 当時は外為法の規制によって、外国の製薬会社は日本の大手製薬会社との合弁会社を通して、自社製品を合弁先である日本の製薬会社によって販売していたが、台糖ファイザーは当初から独自にMR(医薬情報担当者)を多く雇用し、自社で納入・販売先を開拓してきた。そのため多くのMRを擁していることが特徴である。
- また合併や自社開発により、扱う製品数が多くなったこともあり、現在では全国に約2,400人のMR(国内最大級)がいる。
- 1983年 - 米ファイザーの完全子会社となった。
- 1989年 - 日本法人の社名をファイザー製薬株式会社に社名変更した。
- 2003年 - 米ファイザー (Pfizer Inc.) が2000年に米ワーナー・ランバート、2003年に米ファルマシア を買収したのに併せて、日本法人もそれぞれ事業を統合した。ファルマシア日本法人との事業統合を機に、ファイザー製薬株式会社より現在のファイザー株式会社へ商号変更(社名変更)した。
- なお、ワーナー・ランバートの菓子ブランド「アダムス」(リカルデント、ホールズ、メントスなど)はキャドバリージャパンへ譲渡した。また旧ファイザー、旧ワーナー・ランバート、旧ファルマシアでそれぞれ展開してきた一般用医薬品ブランド(アネトン、リステリン、ニコレット、ブラックス、バイシンなど)もジョンソン・エンド・ジョンソンに譲渡した。
- また、すでにワーナー・ランバートに合併されていたドイツの観賞魚用品メーカー・旧テトラベルケ社(のちの同社テトラ事業部)も、独立している(MBO)。このほか、安全剃刀の世界ブランド・シックも電池関連メーカー・エナジャイザーグループに売却した。
- 2007年7月 - 医薬営業部門を対象とした先着電話受付リストラを実施し、本社・MRを含む約700名が早期退職した。愛知県の中央研究所は閉鎖となり、その中の研究員約70名がEBOにより研究所施設を利用した新会社「ラクオリア創薬株式会社」を2008年7月に設立、独立した。
- 2008年 - 日本法人設立55周年を記念してCMが制作され、楽曲には中孝介の「風よ」が起用された。
- 2010年6月1日 - 2009年10月の米ファイザーの米ワイス社買収に伴い、日本法人もワイス社日本法人と事業統合した。
主要商品
- ノルバスク®(アムロジピン) - 長時間作用型カルシウム拮抗薬。高血圧・狭心症治療薬。
- カルデナリン® (ドキサゾシン) - アドレナリンαブロッカーであり高血圧治療薬。
- リピトール®(アトルバスタチン) - 旧ワーナー・ランバートの製品でHMG-CoA還元酵素阻害薬。
- 2004年度では世界の上位銘柄一位となり、ファイザーのワーナー・ランバート買収資金がリピトールの売上で充分に回収出来た、とされている。日本ではアステラス製薬(旧山之内製薬)が共同販売を行っている。
- カデュエット® (アムロジピンとアトルバスタチンの合剤)
- ジスロマック®(アジスロマイシン) - マクロライド系抗菌薬。
- ユナシン-S®(スルバクタム・アンピシリン) - 注射用ペニシリン系抗菌薬
- スルペラゾン®(スルバクタム・セフォペラゾン) - 注射用セフェム系βラクタマーゼ阻害剤配合抗菌薬
- ザイボックス®(リネゾリド) - VREおよびMRSAに効果を持つ抗菌薬
- ハルシオン®(トリアゾラム) - 旧アップジョン社が開発。睡眠導入剤として有名。
- ジェイゾロフト®(セルトラリン) - 世界110カ国で発売されているSSRI
- セレコックス®(セレコキシブ) - 世界100カ国以上で発売されているCOX-2選択性の非ステロイド性消炎・鎮痛剤 (NSAID)。リピトール同様、日本ではアステラス製薬が製造し、共同販売も行っている。旧ファルマシア開発。
- ポンタール®(メフェナム酸) - 旧ワーナー・ランバートの製品で鎮痛・消炎・解熱剤。日本では第一三共(旧三共)が製造し、共同販売も行っている。
- バイアグラ®(シルデナフィル) - ED治療薬。
- ソラナックス®(アルプラゾラム) - 緩和精神安定剤、抗不安薬の一種。旧アップジョン社が開発。
- ガバペン®(ガバペンチン) - 抗てんかん薬。
- チャンピックス®(バレニクリン) - 経口禁煙補助薬。ニコチン受容体部分作動薬。
- キサラタン®(ラタノプロスト) - 緑内障・高眼圧症治療剤。PGF2α誘導体。
- ザラカム®(ラタノプロスト+チモロール) - 緑内障・高眼圧症治療剤。キサラタンとチモロールの配合剤。
- スーテント® (スニチニブ) - 腎細胞癌治療薬、GIST消化管間質腫瘍治療薬、チロシンキナーゼ阻害薬
- リリカ® (プレガバリン) - 末梢性神経障害性疼痛治療薬(発売当初は帯状疱疹後神経痛治療薬であった)。神経接合部のカルシウムチャネル阻害剤。(日本ではエーザイと共同販売)
旧ワイス社製品
- エンブレル® (エタネルセプト) - 関節リウマチ治療薬、TNF-α/βを標的とした分子標的治療薬
- リウマトレックス® (メソトレキセート) - 関節リウマチ治療薬、DMARDs
- ミノマイシン® (ミノサイクリン) - テトラサイクリン系抗生物質
- ラパミューン(シロリムス) - 免疫抑制剤だが日本では未認可。
- トーリセル® (テムシロリムス) - 腎細胞癌治療薬、mTOR阻害薬
合併後に承認された製品
- インライタ® (アキシチニブ) - 腎細胞癌治療薬、
- ザーコリ® (クリゾチニブ) - 非小細胞肺癌治療薬、チロシンキナーゼ阻害剤
- デトルシトール(酒石酸トルテロジン) - 過活動膀胱治療薬
- トビエース (フェソテロジンフマル酸塩) - 過活動膀胱治療薬
- ゼルヤンツ(トファシチニブクエン酸塩) - 関節リウマチ治療薬、ヤヌスキナーゼ阻害薬。
かつて取り扱っていた製品
脚注
外部リンク
- Pfizer Inc. グローバルサイト
- ファイザー 日本法人サイト
- こころのひまわり うつ病(鬱病)の情報サイト
- NTG40.jp 緑内障啓発サイト
- ED-info.net EDの理解とバイアグラの適正使用サイト
- すぐ禁煙.jp お医者さんと禁煙をサポートするサイト
- ↑ ファイザー社(米国本社)の歴史
- ↑ ファイザー株式会社 - 50年の歩み
- ↑ 実際は楕円形のマークに傾斜が掛かり、アルファベットのファイザーの文字の書体が変更された程度であった。
- ↑ ファイザー株式会社(日本法人)の歴史