観賞魚
観賞魚(かんしょうぎょ、鑑賞魚とも)とは、人間に憩いを与えるために水槽や庭に設けた池などでペットとして飼育される魚類の総称である。
魚は水域で採集すれば入手できるが、居住域以外の魚を入手するには観賞魚専門店やペットショップの観賞魚コーナーで購入する必要がある。食用に古くから漁獲され、また養殖されてきた魚の美麗な変異個体を選抜したものに金魚や錦鯉があり、また熱帯地方には多種多彩な観賞価値の高い美麗であったり珍奇な形態をした魚が多く、熱帯魚の呼称で古くから観賞魚の主要なジャンルを構成してきた。
大きく淡水魚と海水魚に分けられるが、海水魚の方が飼育が難しい。また、淡水魚でも人工的に作られた金魚・錦鯉などは野生種と区別される。
飼育方法
巨大な錦鯉などは庭に池を作り飼育するが、その他は水槽で飼うのが一般的である。
水槽に必要な設備
- 底砂
- 必ず必要というわけではないが、多くの場合はあった方が望ましい。水草を植える土台であり、底砂の種類・色などで変化を楽しむと同時に魚の見栄えをよくする。また、微生物を繁殖させてエサの残りや枯死した水草、魚などの排泄物などを分解させる。大磯砂が最もポピュラーであるが、大磯砂の採取は既に禁じられており現在流通する物は類似品である。水質管理を徹底する場合には逆に用いられないこともある。
- 水草
- 見栄えをよくする他に、観賞魚のストレスの軽減につながる場合がある。また、産卵に水草などを必要とする魚種もある。二酸化炭素と酸素の循環にも役立つ。魚ではなく水草を重視した水草水槽というものもある。主に芝生の様に敷き詰める前景草と後景草にわけられる。
- 光合成のために二酸化炭素の人工的添加が必要な場合も多い。また、観賞魚が水草を食べてしまう場合もあり、どの水草が適しているかは品種によりさまざまであるので、観賞魚店や経験者の意見を仰ぐとよい。
- 濾過装置(フィルター)
- 底面式・水中エアーリフト式フィルター(通称=ブクブク)・上部式・外掛式・外部式など多くの種類があり、エアーポンプを兼ねるものもある。魚の大きさや飼育密度により何が適しているとは一概にはいえないが、やり過ぎても害はないので、多少大きめのろ過装置を設置するのが理想的である。条件が許す限り複数のろ過装置を設置してもよい。
- 水槽内の飼育水に大量の酸素を供給する性質のろ過装置もあるが、生物ろ過には大量の酸素を消費することから、水槽内の溶存酸素量が著しく減った状態にならないような構成が好ましい。また、ろ過装置のろ材に繁殖する硝化菌が魚の排泄する毒性の強いアンモニア(ニトロソモナス)を亜硝酸(ニトロバクター)に変え、さらに亜硝酸を比較的無害な硝酸塩に代謝する。これらのバクテリアの死滅・減少や水質の急激な変化を避けるため、ろ過装置の掃除・洗浄と水替えを同時に行わない方がよい。
- 水
- ろ過装置は万能ではなく、排泄物から生成される硝酸塩の分解は確立されていない。その為に飼育水は徐々に酸性化し徐々に有害化してくる。そのため定期的に水替えする必要があるが、逆に急激な水質の変化で魚へのストレスやろ過バクテリアの死滅の危険もありことから、換水は少量ずつ頻度を多くすることが理想である。しかし高頻度は現実的でないため、一般的には3分の1から2分の1くらいの換水を行うようにして頻度を決めるほうが良い。
- 観賞魚飼育に使用する水は消毒された水道水を使いたいが、水道水には塩素などが含まれるため、人間にとってほとんど無害でも魚にとっては毒となる。水道水を一晩程度汲み置きしておくのが一般的だが、すぐ使用する場合は中和剤を用いてそれらを無害化する必要がある。
- 海水魚と淡水魚で好むpHが異なる。淡水魚は基本的に中性を好むが、海水魚は塩類(塩化ナトリウムのほか、いわゆる海水の「にがり」である塩化マグネシウムなども含んだ人工海水の素)を添加して、pHを慎重に調整する必要がある。
- エアーポンプ
- 酸素を大量に消費する品種(特に金魚)や飼育密度の場合、エアーポンプで空気を送り込む必要がある。ただ、水草を傷める場合があり、適度な飼育密度を保つのが無難。上部式ろ過装置や外掛式ろ過装置は水の循環時に酸素を取り込むが、密閉式の外部式ろ過装置は酸素供給をしないため、必要に応じて使用する。
- ヒーター・サーモスタット
- 種類にもよるが、飼育地よりも暖かい地域に生息する生物を飼育するためには必須である。保温によって変温動物である魚のストレスを減らし長期間の飼育が可能となり、採餌量を一定させ餌の管理も楽になる。
- 冷却装置・逆サーモスタット
- 上記ヒーターと逆の用途、主に夏場の高水温を下げるために用いる。温帯魚のみならず熱帯魚であっても、高水温に弱い種には利用が推奨される。専用製品の水槽クーラーは安定した環境を作りやすいが高コストである。送風ファンは手軽に導入できる反面、著効は得られにくく安定環境を維持するにも手間がかかる。
- 照明
- 水草の光合成のためにある程度の光量が必要で、足りない部分を補う。また、魚の色合いを良く演出する形式のものもある。消費電力でも優れる蛍光灯で構わないが、より適した色調に調整された専用のものも販売されている。メタルハライドランプはより自然光に近いが、消費電力が大きく一般的ではない。
- 餌
- 低価格で取り扱いが簡易な人工飼料が多く流通している。生き餌・冷凍生き餌の方が生体の食いつきは良いが、価格や保存などの面で人工飼料に劣ることと、栄養面での偏りが懸念される問題がある。
日常の管理
- 水温計での水温のチェック。
- 適度なエサやり。水温や水質に応じた適度なエサやりが必要。金魚のように胃のない魚の場合、消化不良で急死する場合もある。
- 排泄物が分解される結果、水槽の水は酸性に傾きがちになるため、一週間から二週間に一回は水替えをする。
- ろ過装置の定期的なチェック。怠ると目詰まりを起こしてろ過能力が低下し、魚に悪影響をおよぼすため、ろ材の洗浄または交換、ろ過装置本体の洗浄などが必要である。
混泳
一つの水槽で多くの種類の魚を飼うことを混合飼育、または混泳(こんえい)と呼ぶ。複数種が泳ぎまわる水槽は見栄えが良いとされるが、混泳にあたっては魚種の選定に注意が必要である。
どう猛な魚の場合、他の魚を食べてしまったり、口先などで突いてストレスで殺してしまう場合がある。同じサイズの魚同士であれば大抵の場合食べられてしまうことは滅多にないが、魚のひれや鱗を好んで食べる魚(スケールイーター)、共食いする魚、同種で激しく争う魚(ベタなど)もおり、それぞれの魚の習性をよく把握する必要がある。また、相性がよい場合でも、エサの食べかたに差がでてしまうので、余り大きさが異なる魚は一緒に入れない方が良い。
一般に観賞用として好まれる魚は遊泳性が強く、水面や水中を漂っているエサを食べるが、底面に落ちてしまったエサを上手に食べることができないため、これがたまって腐敗し水質を悪化させることがある。付着藻類を好んで食べるプレコストムスやアルジーイーター、底面性の魚(コリドラス等の小型のナマズやドジョウの仲間など)を一緒に飼育して水槽の環境維持に役立てることもできる。しかしこれらの魚もゴミを食べている訳ではないので、全体に必要な量の餌の投入が必要であり、場合によっては底面性の魚専用のエサを使用する。またこのような役割を「スカベンジャー」ともいうが、これを小型のエビ類や巻貝類(タンクメイトともいう)に割り振る事で、さらに多様な雰囲気をかもし出すことも可能である。ただしエビ類は捕食されたり、脱皮直後に他の魚につつかれ死ぬ危険もある。
混泳の場合はとかく食性が同じ物であっても、その活発さの違いから、一定の強弱関係が発生しやすい。しかしその一方で、緊張がないと全体に散漫に散ってしまう小型魚に緊張感を与えるため、非常に活発な魚を極少量だけ混泳させるケースも見られる。いずれにせよ習性を熟知しないことには混泳させる事がむずかしいため、他の混泳例を参考にするか、すでにいくつかの水槽を持っていて、問題があればすぐに別々にできる体勢が整っている場合にのみ、これに挑戦されることがすすめられる。
たいていの混泳例では、水面近くを好む物と、水槽の中ほどを好む物、底面にいることを好む物といった具合に住み分けが出来る形を作る。