軸受
軸受(じくうけ、英語:bearing)とは機械要素のひとつで、回転や往復運動する相手部品に接して荷重を受け、軸などを支持する部品である。俗に「メタル」と呼ばれるすべり軸受(平軸受)や玉軸受(ボールベアリング)やローラーベアリングなどの転がり軸受などがある。幅広い機械製品で利用され、不可欠な部品のため「機械産業の米」とも呼ばれる[1]。
軸を正確かつ滑らかに回転させるために使用される。摩擦によるエネルギー損失や発熱を減少させ、部品の焼きつきを防ぐことが求められる。輸送機械を始め各種機械に多用されるが、それに限らず回転する部分がある機器には必ず存在する。
なお日本語では「ベアリング」というとボールベアリングやローラーベアリングのみを連想しがちだが、軸受全般の事を言う。これは第二次世界大戦後に軍需技術の民需転用で急速に普及したことなどの影響も見られる。
日本は精密ベアリングの製造で世界のトップクラスの技術を持っており、世界のベアリング生産における日本企業のシェアは3分の1を超えると言われている。これは軸受鋼の品質だけではなく、高性能な工具鋼などの材料的優位性も寄与している。
分類
構造からの分類
- 転がり軸受
- すべり軸受
- 磁気軸受
- 回転部分を磁気で支える。無重量状態を利用し、宇宙空間にある人工衛星で使用されている。
- 流体軸受
- オイルのような流体を使った軸受。流体を使用した分、傷つきにくい性質を持つ。
受ける荷重種類の分類
その他の特徴による呼び方
歴史
軸受の原理の最古の実例としては、古代エジプトでそりの下に丸太を使った例がある[2]。同じく古代エジプトの絵に火起こしに軸受を使っている様子が描かれたものがある[3]。
復元された軸受の最古の例としては、ローマ時代のネミ湖の船の遺物として見つかった回転テーブルの軸受け用の木製の玉がある。このローマ船は紀元40年ごろ沈んだ[4][5]。
軸受は輪軸の固定にも使われる。この場合に使われるのはすべり軸受で、輪軸で物を引っ張る際に軸が回転する長さより摩擦する長さを短くすることで、摩擦を大幅に軽減させる。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、ころ軸受の絵を1500年ごろに描いており、これが世界初とされている。しかし、そのような軸受の絵を最初に出版したのは Agostino Ramelli で、1588年にころ軸受とスラスト軸受の絵を掲載した本を出版している[2]。玉軸受には、玉同士が擦れあって追加の摩擦を生じるという問題があるが、それぞれの玉をかごに入れて互いに擦れないようにすれば問題を避けることができる。このような技法を採用した玉軸受は、1600年にガリレオが記述しているのが最初である。しかし、そのような玉軸受はその後も長年作ることができなかった。玉軸受用の玉を挟む輪(レース)の最初の特許は、1794年、カーマーゼンの Philip Vaughan が取得した。
世界初の実用的なころ軸受を発明したのは時計職人のジョン・ハリソンで、1740年代中ごろにH3という時計を作ったときのことだった。このときは非常に限られた振動的な動きに対する軸受だったが、後にハリソンは完全に回転する軸を固定する軸受も作っている。
玉軸受に関する最初の特許は1869年8月3日、パリの自転車職人 Jules Suriray が取得したものとされている。この軸受は、1869年11月に行われた世界初の自転車ロードレース(Paris-Rouen)で優勝した James Moore が乗っていた自転車に使われた[6]。
Friedrich Fischer は1883年、同じ大きさで真円のボールを製造できる機械を開発し、これが軸受製造の産業化に一役買うことになった。
19世紀の発明家 Henry Timken は1898年に円すいころ軸受の特許を取得した。翌年、その発明品を製造するための会社を起こした。その会社は Timken Company として軸受を中心とした各種製品を販売している。
現代的な自動調心式の玉軸受は、軸受製造企業SKFのスヴェン・ヴィンクヴィストが1907年に開発し、スウェーデンの特許第25406号を取得している。
Erich Franke は1934年、ワイヤレース式の転がり軸受(wire race bearing)を発明し、特許を取得した。彼は接触面積を可能な限り小さくすることに取り組み、それを軸受けを囲んでいる部分にまで適用した。第二次世界大戦後、彼は Gerhard Heydrich と共に Franke & Heydrich KG という会社を創業した(現在の Franke GmbH)。
初期のすべり軸受と転がり軸受は木材で作られていたが、セラミックス、サファイア、ガラスなども使われ、最近では銅、青銅などの金属、セラミックス、プラスチック(例えば、ナイロン、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、UHMWPE)などもよく使われる。腕時計などでは、軸受に複雑な機構を使えないため、合成コランダム(人造ルビー・または人造サファイア)などの硬度が高い宝石(人工貴石)を使って磨耗を防いで精度を維持している。いわゆる「石数」は軸受としての宝石数を意味する。古い材質でも高い耐久性を示すことがある。例えば、古い水車では木製の軸受けが使われているが、水が冷却と潤滑の役目を果たすため、今も機能し続けている。
今日では、超高速回転用軸受が歯科用の機械で使われたり、航空宇宙用ベアリングがマーズ・エクスプロレーション・ローバーで使われたりするなど、軸受は様々な用途で使われている。
主要ベアリングメーカー
- THK
- ジェイテクト(豊田工機と光洋精工が合併)←ブランド名は「Koyo」。主要販売会社に光洋販売株式会社がある。
- 日本精工
- ミネベア
- NTN
- 不二越
- 大同メタル工業
- 大豊工業
- 日本トムソン
- SKF
- シェフラーグループ (INA, FAG)
- TIMKEN
2006年のベアリング完成品の国内販売金額は約7,000億円。企業別のシェアは日本精工34%、ジェイテクト28%、NTN27%、不二越6%となっている。
脚注
関連項目
外部リンク
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 2.0 2.1 テンプレート:Citation
- ↑ テンプレート:Citation
- ↑ Purtell, John (1999/2001). Project Diana, chapter 10:
- ↑ テンプレート:Citation
- ↑ Bicycle History, Chronology of the Growth of Bicycling and the Development of Bicycle Technology by David Mozer