サファイア
サファイア(Sapphire、蒼玉(青玉))は、コランダム(Al2O3、酸化アルミニウム)の変種で、ダイヤモンドに次ぐ硬度の赤色以外の色の宝石。9月の誕生石。
語源は「青色」を意味するラテン語の「sapphirus」、ギリシャ語の「sappheiros」に由来する。
概要
サファイアはコランダムのうち宝石としての価値があり、かつ色が赤でないものをいう。不純物の違いで濃赤色を呈するものはルビー(不純物:クロム)となる。
「青玉(蒼玉)」という和名があるように、一般に濃紺あるいは青紫色をしたもの(不純物:鉄、チタン)と考えられているが、濃赤色以外のあらゆる色、例えば黄色や茶色、薄紅色などのものもサファイアである。
また、かつて青色のサファイアは、油絵に使われる青の顔料だった。
工業的に生産される単結晶コランダムもサファイアと呼ばれる(この場合、サファイアガラスなどと呼ばれる事があるが、サファイアは結晶質であるため、本来の意味のガラスではない)。
ミッドナイトブルーサファイアと称されて流通しているサファイアがあるが、これは、インクブルーサファイアの色合いを呼び変えたものである。
色・特殊効果など
ルビーの濃赤色や、サファイアのメインカラーである濃紺~青紫色以外のものは、ファンシーカラーサファイアと呼ばれる。
ファンシーカラーサファイアのなかでも、ピンクがかったオレンジ色をしたものを特に「パパラチア(Padparadscha。蓮の花のつぼみの色の意)」と呼ぶ。
なかには、光を当てて眺めたときに六条の光を生ずるものがある。これはスターサファイアと呼ばれ、珍重される(スター効果)。これはサファイアの中に針状のインクルージョン(多くの場合は二酸化チタンであるルチル)が含まれ、単一光源の下で6放射の星型の輝きを生じるためである。スターサファイアの価値はカラットだけでなく、地色の美しさや星型の輝きの強さなどにも依る。
また、アレキサンドライトのように光源によって色が変わるものもあり、カラーチェンジサファイア(但し、アレキサンドライトほどのカラーチェンジはない)と呼ばれ、こちらも希少価値がある。
歴史
サファイアは東洋から古代のヨーロッパに伝わった。トラヤヌス帝(ローマ)の時代以降にはインドとの交易が盛んになり、サファイアについての信仰も中世にかけて広まった。インドでは元々、ヒンズー教徒の間でサファイアは不幸をもたらす不吉な石とされていた。しかしインドの仏教徒の間では異なり、宝石の中でも特に尊重された。
キリスト教では、中世から司教の叙任のしるしとしてサファイアなどを付けた指輪が与えられ、人差指にはめるならわしがあった。マルボドゥスの「宝石誌」では、サファイアが指輪の宝石にふさわしいとされているのも、この反映だと見られる。
産地
主にタイ王国、ミャンマー、カシミール地方、スリランカ、マダガスカル、オーストラリアなどで採掘される。産地により色の濃淡が異なり、色の良し悪しにより価値が上下する。
カシミール産のブルーサファイアはコーンフラワーブルーと呼ばれ、市場での評価が高い。
人造法
テンプレート:See also 宝飾品として市場に供給されているルビー・サファイア等のコランダムは、その殆どが人為的な加熱処理(約500℃ - 1,600℃)によって鮮やかな色彩や内部的に汚れの少ない状態に変化させられたものである。
非加熱なのか加熱処理されているかの判定は、国際的にも認知されている国内大手宝石鑑別機関が種々の装置を駆使し、殆どの場合判別可能である。判定方法としては、一般的な拡大検査による内部特徴の観察の他、宝石鉱物表面の粒子を高周波プラズマでイオン化し、質量を分析することによって生成環境を知る方法・細く絞ったレーザー光線を走査し、宝石鉱物内部の構造や欠陥を画像としてとらえる方法・宝石鉱物表面に赤外レーザーを照射した後の蒸発した気体粒子の電気的変化に伴って放出される放射光線の波長を調べ、元素分析を行う方法・ラマン効果(物質に単色光を照射した時、その散乱光の内に物質ごとの特有な波長の光が含まれる現象)を利用して物質の同定や分子構造を解析する方法等々がある。
産業での用途
人造の単結晶のコランダムは、高い硬度から腕時計の風防や軸受け、レコード針などに用いられる。また、絶縁性がよく、熱伝導率もよいため、半導体の基板(シリコン オン サファイア:silicon on sapphire:SOS)として利用されることもある。
石言葉
- 慈愛
- 誠実
- 貞操
- 高潔
- 徳望
- 心の成長
参考文献
- 春山行夫『春山行夫の博物誌Ⅳ 宝石1』平凡社
関連項目
外部リンク
- Sapphire (mindat.org) テンプレート:En icon