ステアーAUG
テンプレート:Infobox ステアーAUG(Steyr AUG)は、オーストリアのシュタイアー・マンリヒャー(Steyr Mannlicher)社がオーストリア軍向けに開発したアサルトライフルである。AUGはアルメー・ウニヴェルザール・ゲヴェーア(Armee Universal Gewehr、軍用汎用小銃の意)の頭文字に由来する市販名。
シュタイアー・ダイムラー・プフ社のStG58(FN FALのライセンス生産品)の後継として、1977年にオーストリア連邦軍歩兵用小銃にStG 77(Sturmgewehr 77)の制式名で採用される。
SF的な外観を持つこの銃は、それまでの軍用銃と異なるいくつかの革新的試みがなされていた。
目次
特徴
AUGは、作動機構をトリガー(引き金)よりも後方に置くブルパップ方式を採用している。ブルパップ方式は、銃身を短くすることなく銃を小型化することが可能で、また、薬室をグリップより後方に配置することにより反動を制御し易くなり、集弾性が向上する利点を持っている。
AUGの最大の特徴として、強化プラスチックにより形成されたグリップ・銃床一体のボディが挙げられる。それまで部分的にしか使用されなかったプラスチック部品を大幅に取り入れることにより、同じくブルパップ方式を採用しているSA80などと比べて軽量化に成功している。 また、銃全体が7個ほどのモジュール・パーツで構成されているため、モジュール・パーツを交換することにより要求される様々な用途に応じた火器となり、兵士教育の短縮化・簡略化を可能としている。例えば、銃身をピストル弾用に、ボルト機構をブローバック用に交換すれば短機関銃に、621mmの重銃身にバイポッド(二脚)、42発マガジンを取り付ければ軽機関銃相当の銃(分隊支援火器)になる。
AUGはショートストロークガスピストンを持ち、発射ガスの圧力を受けたピストンはカムを介してボルトの閉鎖を解く。ボルトは7個のマイクロロッキングラグを持つ。セミオート(単射)とフルオート(連射)を切り替えるためのセレクタが存在しておらず、切り替えは引き金の引き加減で行う。引き金を浅く引くとセミオート、深く引くとフルオートになる。セーフティは独立していて、銃把を握った手の親指付近にクロスボルトタイプのセーフティボタンが配置されている。グリップ前部には折り畳み可能なバーティカルグリップが取り付けられている。マガジンには半透明のプラスチックを使用しており、マガジンを装填したまま残弾確認が可能になっている。
現在シュタイアー・マンリヒャー社はAUGの製造権を放棄しており、その後はナイフメーカーのマイクロテック・ナイフ(Microtech Knives)社が製造権を買い取り、子会社のMSAR(マイクロテック・スモール・アームズ・リサーチ)社を設立。ボルトフォアードアシストを追加し各部分を改良したバージョンのSTG-556シリーズを生産・販売をしている。
ブルパップ方式の欠点と対処
AUGは、照門と照星の間隔が短くなる欠点を解消するために、1.5倍率オプティカルスコープを標準装備することで照準精度を確保している。このスコープはスワロフスキーグループの光学機器メーカーが製造・供給している。スコープの上にはスコープ破損時に使うための非常用アイアンサイトが用意されている。
排莢の問題については、排莢口の部品の向きを入れ替えることで薬莢の排出方向を変更できるようにして左利き射手への対応をしている。ただし戦闘中の状況によっては(負傷など)、右撃ちと左撃ちの切り替え(スイッチ)を状況によって素早く行うことが求められるため、(すなわち利き手は引き金を引くだけに用いるため、必ずしも利き手で銃把を握る必要はない)いかに容易に排出方向を変えられるといっても瞬間的な操作には対応できないという問題は残っている。
バリエーション
- ステアーAUG A1
- 最初のモデル。携行ハンドルも兼ねる1.5倍率オプティカルスコープを標準装備している。使用弾薬は5.56x45mm NATO弾(SS109)。
- ステアーAUG A2
- A1のオプティカルスコープを廃止し、ピカティニー・レールを搭載したモデル。
- ステアーAUG A3
- オーストラリア国防軍とニュージーランド軍からの要請で、NATO基準の光学システム(暗視装置など)を搭載できるようモジュールマウントを装着したA2の発展型。6.8×43mm SPCの使用テストが行われていたが、その後中止された。その後ボルト・ストップ機能を追加したモデルが主流となった。
- ステアーAUG A3 SA USA
- シュタイヤーアームズが製造するA3のセミオートモデル。
- ステアーAUG Pスペシャルレシーバー
- P型に光学機器搭載用のマウントを装備したモデル。
- ステアーAUG 9mm(またはAUG SMG、AUGパラ)
- 9mm弾を使用する短機関銃モデル。
- ステアーAUG M203
- 銃身の下にM203 グレネードランチャーを取り付けたモデル。
- ステアーAUG LSW
- ステアーAUGのLSW(Light Support Weapon、軽支援火器)モデル。
- ステアーAUG HBAR
- 重銃身を装備したHBAR(Heavy-Barreled Automatic Rifle、重銃身自動ライフル)モデル。多くの軽機関銃と違いクローズボルト方式。
- ステアーAUG HBAR-T
- HBARをもとにして作られた狙撃銃モデル。
- ステアーAUG LMG
- HBARをもとにつくられたLMG(Light machine gun、軽機関銃)モデル。オープンボルト方式。4倍率のオプティカルスコープがつけられている。
- ステアーAUG LMG-T
- Pスペシャルレシーバー同様のマウントが装着されたLMG。
- ステアーAUG Z
- オートマチック(連射)機構を取り除いたA2。民間用モデル。
- ステアーUSR
- 米国財務省アルコール・タバコ・火器・爆発物取締局(BATFE)向けのA2。
- F88
- オーストラリアでライセンス生産されたモデル。オーストラリア国防軍とニュージーランド軍が使用中。
クローン品
現在、既にAUGの特許は失効しており、シュタイアー社の許諾なしにクローン製造することが可能となった。
- MSAR STG-556
- アメリカのMSAR(マイクロテック・スモール・アームズ・リサーチ)社がAUGのA1モデルをコピーし、小改良(ボルト・ストップ機能追加など)を施した上でアメリカのニーズに合わせたもの。フルオート射撃が可能な軍・警察用モデルと、セミオート射撃限定の一般民間市場販売向けスポーティー・モデルの二種類が存在する。使用弾薬(口径)は5.56x45mm NATO弾(.223レミントン)であり、E3 モデルはM16系のSTANAG マガジンが流用可能となっている(製造中止)。
- MSAR STG-E4(XM17 E4)
- STG-556の次世代発展型として開発されたアサルトライフル。使用弾薬(口径)は基本の5.56x45mm NATO弾の他に7.62x39mm、5.45x39mm、6.8×43mm SPCがある。
- TPD AXR
- TPD(タクティカル・デザイン・デベロップメント)USA社がAUGをコピーし、STG-556と同様M16系STANAG マガジンを流用可能にしたものだが、こちらはA2モデルをコピーしたため照準器は付属せず、好みの物を取り付けられる(製造中止)。
- 使用弾薬(口径)は5.56x45mm、6.8×43mm SPCの二種類であり、それぞれの弾薬に適応する従来のAUG用マガジンもある。
使用国
- F88として使用。
- GSG-9が使用。
- F88として使用。
- テンプレート:Flagicon アイルランド
- テンプレート:Flagicon サウジアラビア
- テンプレート:Flagicon チュニジア
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- テンプレート:Flagicon イギリス
- SASが使用。
- アルピニが使用。
登場作品
映画・ドラマ
- シーズン3「エネミー・ライン」でSAS隊員が使用。
- 『TIME/タイム』
- 時間監視局(タイムキーパー)のエージェントが使用。
- 『恋人はスナイパー』
- 主人公の王凱歌(第1作目)・范火清(第2作目)で使用。
- 『コマンドー』
- アリアスがメイトリックスとの一騎打ちで使用。
- シューターがサプレッサーを装着したものを使用。
- SAS隊員が男のバンパイアへ発砲。
- 『ダイ・ハード』
- カールが使用。
- 『ニキータ』
- 主人公ニキータが狙撃任務の際に使用する。サプレッサーを装備、右撃ちモード。狙撃場所のホテルの部屋の各所にアセンブリーごとに分解され隠されたAUGを、アンヌ・パリロー扮するニキータがランジェリー姿のまま慣れた手つきで組み立て任務を遂行する。
- 『レモ/第1の挑戦』
- 軍需産業が欠陥を隠蔽しつつ正式採用を企む小銃AR60として登場。
漫画・アニメ
- 『うぽって!!』
- あぐちゃんがAUG A1を使用(あぐちゃん自身がAUG A1の擬人化キャラでもある)。
- 第11話「中川君のお宅拝見」でテロリストの1人がAUG、第279話「燃える炎のロボット警官」で犯人がAUG Paraをそれぞれ使用。
- 『ゴルゴ13』
- 100巻「傑作・アサルトライフル」にてサビーヌ兄弟の兄が、SPコミックス104巻「バイオニック・ソルジャー」にてライリーが使用。
- 『スプリガン』
- 主人公のライバル、暁巌が使用。主人公のG3と好対照をなす。
- 『代紋TAKE2』
- 傭兵が東京でのテロに使用。
- トージョをはじめとするココ分隊の一部メンバーがAUG A1を使用。
ゲーム
- 練習ステージおよび本編のファーストミッションなどで相手側の特殊部隊員や警護兵が使用。
- ドライ対アイン戦でドライが使用。また、ドライの愛銃でもある。
- AUG A1が登場。
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- 軽機関銃としてAUG HBARが登場。
- アサルトライフルとしてA3が登場。
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- オンラインの突撃兵にてA3モデルを使用可能。
- DLCのClose Quartersを当てるとオンラインの突撃兵にてA3モデルを使用可能。
- オンラインの突撃兵でAUG A3を使用可能。
- アサルトライフルとして登場。
- AUG A3の初期型が登場。続編の『レインボーシックス ベガス 2』でもサブマシンガンの「AUG PARA」として登場
小説
- 久宇舞弥が使用。
- 連続爆弾テログループ「ローズダスト」のスナイパーである真野留美が使用する。左利きのため排莢口を左に設定している。
脚注
関連項目
- 小銃・自動小銃等一覧
- 68式歩槍 - 台湾がAUGを基に開発したモデル。
- FA-MAS
- FN F2000
- L85
- Kbk wz. 2005 Jantar