Su-25 (航空機)
Su-25(スホーイ25、スホイ25;(ロシア語:Су-25スー・ドヴァーッツァチ・ピャーチ)は、ソ連のスホーイ設計局が開発した攻撃機(シュトゥルモヴィーク)である。ソ連での愛称はグラーチュ(Грач:ミヤマガラス。ロシアやウクライナに生息する小型のカラスの仲間)。北大西洋条約機構(NATO)の使用したNATOコードネームは「フロッグフット」(Frogfoot)であった。
概要
A-10攻撃機と同じような攻撃機の必要性を感じたソ連が、スホーイ設計局とヤコヴレフ設計局、イリューシン設計局(Il-102を開発)に対して開発競争を行わせ、スホーイ設計局が開発した機体を採用した。
近接支援用の亜音速航空機であるために、主翼は直線翼に近く、前縁の後退角は19度、後縁の後退角はつけられていない。主翼配置は肩翼でエンジンも主翼付け根にあり、A-10の競争試作機であるYA-9と大まかなレイアウトが似ている。シンプルな構造により高い信頼性を備え、最大搭載状態でも最大5Gの機動が可能である。
固定兵装はAO-17A 30mm 2砲身機関砲1門、装弾数は250発。最大4,400kgまで爆弾などを搭載できる。搭載エンジンは推力44.18kNのツマンスキー R-195 ターボジェットエンジン。また、操縦席をチタン合金で補強し、徹底的な防御手段を講じている。アフガニスタン侵攻の初期にはアメリカがムジャーヒディーンに提供したスティンガーミサイルによる撃墜が相次いだため、両エンジンの間にチタン板を入れて片方のエンジンが被弾してももう片方のエンジンが影響を受けないように改修した結果、重装甲による高い生存性を証明した(改修後の機体はスティンガーミサイルによる撃墜はないとも言われている)。
ソ連時代のSu-25は主にトビリシで製造されていたが、グルジア共和国の独立後もグルジアの首都となったトビリシで製造が続けられていた。グルジアとロシアはアブハジアや南オセチアなどを巡って対立状態にあるが、グルジアはSu-25をロシアに輸出し、ロシアはそれをグルジアなど、カフカースやザカフカース方面に配備するという皮肉な現状がある。特に、グルジア共和国独立時の紛争では同じ「赤い星」をつけたロシア、グルジア、アブハジア各軍のSu-25が互いの陣営や町を攻撃しあうという状況が生じたといわれ、誤認射撃による撃墜も何件か起きている。
配備
Su-25は、2010年代の現在、依然としてロシアでは主力攻撃機として用いられており、その他ウクライナやベラルーシなど旧ソ連諸国の他、アフリカや中東の数ヶ国で使用されている。コートジボワールでは、単座型のSu-25も保有している。ヨーロッパでは、ブルガリアとマケドニア共和国が2005年の時点で主力機のひとつとして運用されている一方チェコとスロバキアではすでに退役している。
実戦
実戦活動としては、ソ連のアフガニスタンへの侵攻やアブハジアの紛争の他、中央アジア各地での内戦、南オセチア紛争、アルメニアなどザカフカース方面での紛争などで使用されている。コートジボワールでは、保有する2機のSu-25UBが同国に駐留するフランス軍の基地を攻撃したとしてフランス軍によって少なくとも1機が破壊された。2014年、イラクでは国内のスンニ派武装勢力(ISIS)の攻勢を抑える切り札としてロシアよりSu-25を購入。これはフセイン政権時代に同機を運用していたパイロットの再起用をにらんだものであった[1]。
派生型
- Su-25
- ソ連型の主生産型。1978年から1989年の間に582機がグルジア・ソビエト共和国で製造された。"Klyon"レーザー目標捕捉/追尾システムによりレーザー誘導式のミサイル及び誘導爆弾の運用が可能で、弾着点連続表示による爆撃も行える。しかしながらテレビ画面は装備しておらず、A-10とは異なりTV画像誘導ミサイルは運用できない。また、HUDは装備されておらず、MiG-27と同系列のASP-17反射式照準器がコックピット正面に存在する。
- Su-25UT(Su-28)
- 1987年に初飛行。複座練習機。1機のみの試作。
- Su-25UTG
- 1989年に初飛行。艦上練習機。15機の生産機はロシアとウクライナとで分けられた。
- ウクライナは1994年に3機をロシアのSu-25UBと交換、2007年に中国に1機を売却[2]、2011年に最後の1機をエストニアを通じて米国に売却している[3]。
- Su-25BM
- 1990年にトビリシで初飛行。標的曳航機。
- Su-25T
- 1984年に初飛行。テレビ画像誘導ミサイルが運用可能になりHUDを装備するようになった。1990年に量産型8機が製造され、試作機を含めた製作数は20機以下。Su-25Tプログラムは2000年に正式に中止された[4]。
- Su-25TK
- Su-25Tの輸出型。
- Su-25TM(Su-39)
- 1991年に初飛行。複座型から開発された全天候型対戦車攻撃機で、後部座席のかわりに新しい電子機器を搭載している。コックピットの近代化、兵装搭載力の向上が図られている。また、赤外線暗視装置とレーザー測遠機、高解像度のTVカメラを組み合わせた新型照準システム「SOLT-25」が搭載され、ヘルメットマウント照準システムも装備されている。そのほか、高性能の小型レーダーであるコピヨー25(槍)を胴体下のポッドに搭載し、これにより4目標の同時攻撃能力を実現したほか、R-73やR-77のような空対空ミサイル、Kh-31やKh-35のような空対艦ミサイルのの運用能力を獲得している。将来的にはAESAレーダーの搭載も検討されているとされる[5]。ロシア空軍は2008年に8機を受領した。
- Su-25SM
- 1999年に初飛行したロシアのSu-25のアップグレードプログラム。Su-25TやSu-25TMが高価過ぎるために立案された。コックピットは一部がMFDとなりグラス化された。2013年2月に10機がロシア空軍の南部拠点に配備され[6]、運用訓練が行われている[7]。
- Su-25KMスコルピオーン
- 2001年に初飛行したグルジアのТАМ(Тбилавиамшени - Тблисский авиазавод)とイスラエルのエルビットシステムが共同開発した改良型。コックピットはカラーMFD3枚で構成されるグラスコックピットとなっている。
性能・主要諸元
- 乗員:1名
- 全長:15.36m
- 全幅:14.36m
- 全高:4.8m
- 翼面積:33.7m²
- 空虚重量:9,500kg
- 最大離陸重量・17,600kg
- エンジン:R-195×2基
- 推力:44.13kN×1
- 最大速度:950km/h
- 航続距離:2,500km
- 実用上昇限度:7,000m
兵装
- 固定武装
- 空対地ロケット
- GSh-23L 23mm連装機関砲 SPPU-22
- 250kg爆弾
- FAB-250
- KAB-250L/Kr
- 500kg爆弾
- FAB-500
- KAB-500L/Kr
運用国・地域
- ソ連:各型
- ロシア:各型
- ウクライナ:Su-25/UB
- ベラルーシ:Su-25/UB
- アルメニア:Su-25/UB
- アブハジア:Su-25/UB
- ウズベキスタン:Su-25/UB
- カザフスタン:Su-25/UB
- トルクメニスタン:Su-25/UB
- アゼルバイジャン:Su-25/UB
- グルジア:各型
- チェコスロバキア:Su-25K/UBK
- チェコ:Su-25K/UBK
- スロバキア:Su-25K/UBK
- マケドニア:Su-25/UB
- アンゴラ:Su-25/UB
- ペルー:Su-25/UB
- コートジボワール:Su-25/UB
- コンゴ民主共和国:Su-25/UB
- イラン:Su-25K/UBK
- イラク:Su-25K/UBK
- ガンビア
- Su-25/UB
- エチオピア:Su-25TK/UBK
- 朝鮮民主主義人民共和国:Su-25K
関連項目
注
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ 国連軍備登録制度(United Nations Register of Conventional Arms) Ukraine-2007-Exports
[1] - ↑ [2]
- ↑ [3]
- ↑ ВВС России получат новейший штурмовик
- ↑ [4]
- ↑ [5]