情報処理
情報処理(じょうほうしょり、テンプレート:Lang-en-short)は既存の情報を加工することによって、より付加価値の高い情報を新たに生み出すことである。情報処理学会設立時に、Information Processing を直訳して誕生した用語である。
定義
情報処理に関する定義としては、日本の情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)の第2条第1項において、『「情報処理」とは、電子計算機(計数型のものに限る。)を使用して、情報につき計算、検索その他これらに類する処理を行なうことをいう。』(一部抜粋)という規定が見られる。ここで「計数型」と限っている理由は、電子式アナログコンピュータ(オペアンプ)を除くためである。
このほかにも、日本では、日本工業規格 (JIS) の『情報処理用語-基本用語』 (Glossary of terms used in information processing-Fundamental terms)(規格番号: JISX0001、原版: ISO/IEC 2382-1) における定義や、各種の学会で発表されている定義などもある。
軍事技術の応用分野でもあり、情報戦、電子戦といった現代戦において、中核をなす技術である。
概要
一般的に情報処理は、「情報を加工する工程」に対して何らかの情報(データと呼ばれるようなものも含む)を投入し、投入された情報を加工処理し、結果として生み出された付加価値の高い情報を活用するという一連の流れを有する。多くの情報を高速に扱えることから「情報を加工する工程」におけるコンピュータの活用が現代では日常的に見られる。
日本においては、独立行政法人情報処理推進機構(IPA、旧・情報処理振興事業協会)や社団法人情報処理学会(IPSJ)などを通じて、情報処理に関する行事や情報処理にかかわる研究成果の発表なども行われている。また、日本には、国家試験として情報処理技術者試験も設けられており、情報処理を担う人材が形成されることの振興が図られている。
似た言葉に、英語のData processing(しばしばDPと略される)、日本語では「データ処理」がある。これは大型コンピュータ等によるデータの処理を指して使われた言葉である。情報処理をおこなうシステムを情報処理システムという。情報処理の技術を情報技術という。情報処理に関連する学術分野としては、計算機科学・情報科学・情報学・情報工学などがある。
情報処理の例としては、ウィキペディアの編纂も該当し、ボランティアによる情報の集約、インターネット環境によるアクセスの提供、編集という情報の加工処理、次世代への有益な情報を継承していくことでの情報活用への展開などの要素も見られ、広義の情報処理の一例と考えることも可能である。
Information Processing という用語の由来
一般に Information Processing とは何らかの観測可能な形での情報の変化(処理)である。すなわち、岩の落下による位置情報の変化からデジタルコンピュータシステムによるテキストファイルの印刷まで、宇宙で起こるあらゆる事象を描写するプロセスである。テキストファイルの印刷の例で言えば、コンピュータは何らかのデジタル情報を紙の上の文書という形式に変化させる。クロード・シャノンは、 Information Processing を「潜在的情報から明示的情報への変換」と定義した。情報が潜在的か明示的かは、あいまい度(equivocation; 送信側で送った情報の不確実な度合い)、散布度(dissipation; 受信側が受け取った内容を送信側が確認できない不確実性)、伝送情報量(transiformation; あいまい度から散布度を引いた量、すなわち保持された情報量)で定義される。
認知心理学では、Information Processing とは人間の思考を理解するという目標へのアプローチである。1940年代から1950年代に使われるようになった。このアプローチでは、認識を脳という「ハードウェア」上で「精神」という「ソフトウェア」が動作して処理しているものとみなす。心理学における Information Processing 的アプローチは、(完全に同義とは言えないが)心理学における認知主義や哲学における機能主義に密接に関連している。Information Processing は逐次的なモデルも並列的なモデルもあるし、集中的なモデルも分散的なモデルもある。並列分散処理モデルは1980年代中期にコネクショニズムとして一般化した。なお、そういった脳のモデルが提唱される以前の1950年代初期のことであるが、フリードリヒ・ハイエクが『ニューラルネットの原理を初めて提唱した科学者として「再発見」されている』という主張がある[1]。
このようなことから、日本で使われている情報処理という用語を Information Processing に直訳しても理解されないことが多いため、注意が必要である。英語では Computing (コンピューティング)が比較的近い。
情報処理に関する検定試験
特に「情報処理」の名称を冠した試験としては、次のものがある。
- 情報処理技術者試験
- 情報処理活用能力検定 (J検)
- 財団法人専修学校教育振興会が主催・実施している。前身の試験は、情報処理能力認定試験である。かつては、社会教育法(昭和24律第207号)の第3条に基づく形の「青少年及び成人の学習活動に係る知識・技能審査事業」として文部科学省が認定していた。
- 情報処理技能検定試験
- 日本情報処理検定協会が主催・実施している。
- 全商情報処理検定
- 全国商業高等学校協会(全商)が主催・実施している。
誌名
情報処理学会の学会誌の名称は『情報処理』である。