内破音
内破音(ないはおん、テンプレート:Lang-en)とは、無開放閉鎖音(むかいほうへいさおん、unreleased stop)とも称し、閉鎖音において調音器官を密着させる閉鎖を行った後、それをしばらく持続する子音で、破裂音のような閉鎖のすぐ後の開放が行われない。いわば、唇、舌先、舌の付け根、または喉で息の流れを止める発音である。国際音声記号では同じ調音位置の破裂音の記号の上に [ ̚ ]をつけて、表記する。
概要
内破音は調音器官を密着させる閉鎖を行った後、すぐに音が聞こえる開放が行われないため、英語ではno audible releaseとも呼ばれる。
日本語の破裂音の前の促音や、アイヌ語、朝鮮語、呉語、閩南語、台湾語、客家語、広東語などの華南を中心に分布する中国語の諸方言、チワン語、ベトナム語、マレー語、インドネシア語、タイ語など、多くの東アジアの言語の音節末子音に見られる。英語においても語末や二重子音中の前の破裂音が実際には内破音として現れることがある。
例:
日本語: 一本 [ ip̚poɴ]
広東語: 滑 [ waːt̚˸]
ベトナム語: khách [ xac̚] '客'
マレー語: tidak [ tidak̚] (否定の副詞)
上海語: 勿 [ fɦaʔ] (否定の副詞)
表記法
国際音声記号では同じ調音位置の破裂音の記号の上に [ ̚ ]をつけて、[ p̚](両唇内破音)、 [ t̚](歯茎内破音)、[ c̚](硬口蓋内破音)、[ k̚](軟口蓋内破音) のように表記される。但し、声門の場合は声門破裂音の[ʔ]のまま使われている。
一般に破裂音が音節の最初に現れるのに対して、内破音が音節の最後に現れるという違いがあり、書き分けなくとも音節中の位置で分かるため、破裂音と同じ文字で書くことを正書法とする場合が多い。ローマ字表記のマレー語、ベトナム語、朝鮮語のハングルなどはこれに当たる。広東語など、中国語の方言の発音表記に用いるローマ字もこの方法を使うことが多いが、中国では広東省教育部門式の広東語ピンインのように無気音を表すb、d、gを使う例もある。
アイヌ語では「[[小書きプ|テンプレート:JIS2004フォント]]」、「[[小書きト|テンプレート:JIS2004フォント]]」または「ッ」、「[[小書きク|テンプレート:JIS2004フォント]]」のように片仮名を小書きして表記される。
日本語では片仮名の「ッ」や平仮名の「っ」で表記されている音に相当するが、調音位置の書き分けは行われない。
入破音との違い
内破音(implosive)と入破音(にゅうはおん、implosive)は英語での呼称は同じであるが、入破音は非肺臓気流音の一種であって、口から息を吸い込む方向で発音される子音である。両者はまったく異なる音であり、無関係である。このため、内破音の方を無開放閉鎖音(unreleased stop)と呼び換えて明確に区別する事も行われる。