銃砲刀剣類所持等取締法
テンプレート:Ambox テンプレート:Amboxテンプレート:DMC テンプレート:Infobox 銃砲刀剣類所持等取締法(じゅうほうとうけんるいしょじとうとりしまりほう、昭和33年3月10日法律第6号)は、銃砲・刀剣類の取締りを目的とした日本の法律である。略称は銃刀法。1958年3月10日公布、同年4月1日施行。
目次
概要
制定当時の題名は「等」の位置が異なる「銃砲刀剣類等所持取締法」であったが、1965年7月15日の改正法施行により現在の題名となった。銃砲刀剣類の所持を原則として禁止し、これらを使った凶悪犯罪を未然に防止することを目的とする。銃砲・刀剣類の所持許可を与える者を限定し、許可を得た者に対しても銃砲・刀剣類の取り扱いについて厳しく定められ、これに違反すると罰せられる。
沿革
銃砲・刀剣類の所持規制は明治時代から行われ、「銃砲火薬類取締法」(明治43年法律第53号)において、銃砲類の市販製造は政府への登録制とし許可無く所持することが禁止されていた。また、刀剣類についても廃刀令、帯刀禁止令(明治9年太政官布告第38号)により大礼服着用者・軍人・警察官以外の帯刀は禁止されていた。
銃砲刀剣類所持等取締法は、第二次世界大戦後、日本軍の解体と武装解除を徹底するため、GHQの指示を受けて定められた1946年のポツダム勅令の一つ、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第300号)により銃砲等の所持を禁じたことを直接の嚆矢とする。
当初はこのように軍事上の目的であったが、戦後急増した暴力団とその構成員による銃器犯罪や銃器を用いた対立抗争事件の頻発により、この法律は治安の回復と犯罪抑止に大きな役割を果たすこととなった。その取り締まり対象は、銃器本体の所持から輸入、譲渡し・譲受け、部品や実包の輸入・所持・受け渡し、銃砲の発射へと順次拡大して、銃器犯罪に対処している。
内容
- 総則
- 定義
- 「銃砲」とは、拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃をいう。ただし、ここでいう空気銃とは、圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう(2条1項)。
- 「刀剣類」とは、刃渡り15cm以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5cm以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフをいう。ただし、ここでいう飛び出しナイフには、一般の飛び出しナイフのうち、刃渡り5.5cm以下で、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であってみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で1cmの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものは含まれない(2条2項)。
- 定義
- 銃砲又は刀剣類の所持の許可に関する規定
- 所持の禁止
- 法令に基づき職務のため所持する場合などを除き、原則として銃砲・刀剣類の所持は禁じられる。
- 許可
- 許可の基準
- 都道府県公安委員会は、次の者に銃砲・刀剣類の所持を許可してはならない。
- 18歳未満の者(一部の銃砲については14歳未満の者)
- 精神障害又は発作による意識障害をもたらし、その他銃砲又は刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものにかかっている者
- アルコール、麻薬、大麻、アヘン又は覚せい剤の中毒者
- 自己の行為の是非を判別し、又はその判別に従って行動する能力がなく、又は著しく低い者
- 住居の定まらない者
- 許可を取り消された日や、この法律によって処罰された日から起算して五年を経過していない者など
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 射撃練習場、射撃指導員、射撃練習に関する規定
- 所持の禁止
- 古式銃砲及び刀剣類の登録、刀剣類の製作の承認に関する規定
- 雑則
- 譲渡の制限
- 発見及び拾得の届出
- 授受・運搬・携帯の禁止又は制限
- 準空気銃の所持の禁止
- 刃体の長さが6cmをこえる刃物の携帯の禁止
- 模造拳銃の所持の禁止
- 販売目的の模擬銃器の所持の禁止
- 模造刀剣類の携帯の禁止
- 銃砲刀剣類等の一時保管
- その他銃砲または刀剣類の仮領置に関する規制等
- 罰則
拳銃に関する罰則
- 拳銃等の発射 - 無期又は3年以上の有期懲役
- 拳銃本体に関して
- 拳銃等の輸入 - 3年以上の有期懲役
- 拳銃等の輸入(営利目的) - 無期若しくは5年以上の有期懲役、又は1000万円以下の罰金併科
- 拳銃等の所持 - 1年以上10年以下の懲役
- 加重所持 - 3年以上の有期懲役
- 拳銃等の譲渡し等 - 1年以上10年以下の懲役
- 拳銃等の譲渡し等(営利目的) - 3年以上の有期懲役、又は500万円以下の罰金併科
- 拳銃等の輸入予備 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 輸入資金提供等 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 拳銃等の譲渡し等の周旋 - 3年以下の懲役
- 部品に関して
- 拳銃部品の輸入 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 拳銃部品の所持 - 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 拳銃部品の譲渡し等 - 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 拳銃部品の譲渡し等の周旋 - 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
- 拳銃実包に関して
- 拳銃実包の輸入 - 7年以下の懲役又は200万円以下の罰金
- 拳銃実包の輸入(営利目的) - 10年以下の懲役、又は300万円以下の罰金併科
- 拳銃実包の所持 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 拳銃実包の譲渡し、譲受け - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 拳銃実包の譲渡し、譲受け(営利目的) - 7年以下の懲役、又は200万円以下の罰金併科
- 拳銃実包の譲渡し、譲受けの周旋 - 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
2007年12月30日以降の罰則
2007年11月30日改正銃刀法が公布され、罰則が強化される。主な内容は以下のとおり
- 団体の行為としての拳銃等発射罪 - 無期若しくは5年以上の有期懲役、又は3000万円以下の罰金併科
- 拳銃等営利輸入罪の罰金の上限が3000万円に引き上げ
- 拳銃等複数所持罪の新設 - 1年以上15年以下の懲役
刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止
第22条に「業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。」と規定され、これに違反した者には、第31条の18第3号により2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることとなっている。
第22条ただし書で、刃体の長さが8センチメートル以下の刃物で携帯が認められるものとして、施行令第9条に
- 刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なもの以外のはさみ
- 折りたたみ式のナイフであって、刃体の幅が1.5センチメートルを、刃体の厚みが0.25センチメートルをそれぞれ超えず、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの
- 法第22条の内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが8センチメートル以下のくだものナイフであって、刃体の厚みが0.15センチメートルをこえず、かつ、刃体の先端部が丸みを帯びているもの
- 法第22条の内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが7センチメートル以下の切出しであって、刃体の幅が2センチメートルを、刃体の厚みが0.2センチメートルをそれぞれ超えないもの
が定められている。いわゆる市販のカッターナイフは、製品により新品状態で刃渡り8ないし9センチ程度あり、かつ22条但し書き及び施行令第9条にいう「携帯が認められるもの」には含まれないため、「業務その他正当な理由による」ことなく携帯しているばあい、第22条に抵触するので注意が必要である[1][2]。詳細はカッターナイフ#法的問題も参照。
なお、軽犯罪法第1条第2号に「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」について、拘留または科料に処せられる事となっている。
銃砲刀剣類等の一時保管等(第24条の2)
ここでいう「銃砲刀剣類類」とは、「銃砲」、「刀剣類」、第21条の3で規定する「準空気銃」及び第22条で規定する「刃物」をさす(第5条の2第2項第2号)。第1項及び第2項に規定する警察官の権限は、銃砲刀剣類等による危害を予防するため必要な最小の限度において用いるべきであって、いやしくもその乱用にわたるようなことがあってはならないと第4項で注意規定がおかれている。 なお、本条に基づく検査を拒んだことによる罰則は設けられていない。
検査(第1項)
警察官は、銃砲刀剣類等を携帯し、又は運搬していると疑うに足りる相当な理由のある者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合においては、銃砲刀剣類等であると疑われる物を提示させ、又はそれが隠されていると疑われる物を開示させて調べることができる。
警察官による一時保管(第2項)
警察官は、銃砲刀剣類等を携帯し、又は運搬している者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合において、その危害を防止するため必要があるときは、これを提出させて一時保管することができる。
身分証明書の携帯提示義務(第3項、第24条第3項準用)
警察官は、銃砲刀剣類等の所持の検査及び保管をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、これを提示しなければならない。
一時保管した銃砲刀剣類等の処理
一時保管した警察官は、銃砲刀剣類等を所轄警察署長に引渡さなければならない(第5項)。所轄警察署長は、一時保管を始めた日から起算して5日以内に所持が禁止されている場合を除き本人に返還しなければならない。ただし、本人に返還することが危害防止のため不適当であると認められる場合においては、本人の親族又はこれに代わるべき者に返還することができる(第6項)。
問題点
遊戯銃規制の不備とその対策
銃器愛好家によって、規制内容が現状と合わなくなっていると指摘される。中でも特徴的なのが、弾丸を発射するタイプの遊戯銃に関する点である。この法律が制定された当時、弾丸を発射する遊戯銃は銀玉鉄砲程度しかなく、エアソフトガンのような高い威力(といっても玩具として成立するレベルではあるが)と命中精度を持ったものは想定外であった。そのため、遊戯銃の威力に関する規制が十分に機能していないという問題があった(有害玩具参照)。具体的には、威力を危険なレベルまで増大させるカスタムパーツの販売が野放し状態となっていた。
2006年3月7日、威力を極端に増加させたエアソフトガンによる犯罪に対処すべく(規制に乗り出した発端は、威力増大が施された改造銃を用いて鉄製の弾を走行中の車両のガラスに撃ち込む等の器物損壊事案が頻発した事による)、警察庁は気温35度以下の環境で、銃口から1m離れた位置での威力が3.5J/cm2以上のものを「準空気銃」として所持を禁止する旨の規定を新設するための銃刀法改正案を提出し、5月24日に公布、8月21日から半年間を猶予期間とし2007年2月21日に施行された。
この基準では威力を単位面積あたりの運動エネルギーとしており、面積として、弾丸を前から3mm後ろの部分の断面積を用いる。これは6mmBB弾を使用する機種の場合は0.989J未満、8mmBB弾の場合は1.64J未満のものが合法なエアソフトガンとなる計算である。
この値はASGK、JASG双方の自主規制値をやや上回るため、威力を増大させていなければ、これらの自主規制団体に加盟しているメーカーのエアソフトガンは合法となると思われるが、実際には自主規制団体に加盟しているメーカーですら自主規制を守っていないこともあり、全機種にわたる安全宣言を出したメーカーと、要改修機種を発表したメーカーに分かれた。対象となるエアソフトガンには、2007年2月20日までに威力低下を行う必要があった。現在は既に改正規定が施行されているので、適正威力でない遊戯銃は警察に届け出るか自身で修復困難なまで破壊処分、または廃棄しなければならない。
威力制限に対し法的根拠が生まれ、それまでグレーゾーンに位置していたエアソフトガンの法的に危うい位置づけが解消されること、悪質なパワーアップに対する抑止力となることが期待されている。
だが、後者に関しては疑問視する声もあり、ネットオークションでは改正施行後も大幅な威力増大を目的としたパーツが出回っている。
また、銃創学的には弾丸が人体への侵徹効果を持つのは12.8J/cm2から(BB弾に換算すると3.6J)といわれているため、3.6J以上の改造が不可能な構造をエアソフトガンに義務付ける方が改造銃による危険防止には実効的だという意見もある。
この改正に対応し、メーカーでは規制値を上回る恐れのある製品の威力調整を、各自主規制団体では改正銃刀法に適合した商品であることを表すラベルを発行している(ASGK・JASG・メーカーが威力低下及び破壊処分を行う必要があると記した遊戯銃以外は、改正前の銃刀法適合のラベルが貼られていても問題はない)。またASGKでは、ユーザーサイドでの威力測定のための安価な簡易弾速計を販売している。
脚注
- ↑ 2005年(平成17年)10月13日東京都内のUFJ銀行のATMコーナー付近で不審者がいるという通報があり警察官が現場に行き男性に職務質問をしたところ、カッターナイフを所持していたということで銃刀法違反で逮捕した事例がある。国会議事録平成17年10月25日第163回参議院財政金融委員会3号(政府参考人和田康敬)発言者番号274
- ↑ オウム真理教関連事件の捜査において、刃渡り5センチのカッターナイフが車内にあったとして軽犯罪法違反(報道によれば銃刀法違反)で逮捕した事例がある。国会議事録平成7年6月8日第132回参議院法務委員会10号(三石久江)発言者番号165。