Vz 61
テンプレート:Infobox Vz 61別名「スコーピオン(SCORPION)」は、チェコスロバキアのチェスカー・ズブロヨフカ国営会社(チェコ兵器廠国営会社、チェコ語:Česká zbrojovka, n.p.:ČZ、1992年民営化)で開発された短機関銃である。
Vz 61とは、チェコ語で Vzor 61 (61年式)の略で、正式名称はSamopal vzor 61(61年式短機関銃)と言う。チェコスロバキア軍にて1961年に制式採用された事に由来する。
目次
解説
冷戦時代最中に戦車兵、軍用トラック運転手、通信兵などの自衛・護身用制式サブマシンガンとしてČZ社がCz-447の後任で開発した。
本銃の最も特筆すべきところは、その「小ささ」である。全長は27cmと、6-7インチクラスの.45口径拳銃の全長ほどの大きさしかなく、サブマシンガンとしては最も小型の部類に入り、専用の旅行用洗面用具入れ風のポーチに収まってしまうほどである。むしろ、そのサイズとメカニズムから「マシンピストル」と呼ばれる銃に近いとも言える。「スコーピオン」の愛称は、本銃が、付属のストック(銃床)を折り畳む際、前方に回転して畳み込むため、その容姿が蠍のそれに似ているとして名づけられたものである。
ČZ社は、その銃器開発に実績があり、本銃も小型サブマシンガンゆえのアイデア満載の銃になっている。先に述べたストックの折り畳み方もその一例である。他に、このストックを折り畳む際、フロントサイトカバーをストック固定具と兼用する機能や、マガジンの固定が他の銃に例を見ないほど堅固であり、そのおかげでマガジン自体がフォアグリップ(前部固定補助グリップ)の役目を果たすようになっていること、さらには小型サブマシンガンながら安全装置を兼ねたレバーによってボルトの後退速度を調整し、その発射速度を変更できるという驚異的なメカニズムを持つことが挙げられる。
左側グリップ上に配置されたセレクターは、ČZ社製アサルトライフルVz 58の影響を受けた独特な配置を採用しており、セーフティー(0の刻印がされている)を中間に、前に押すと「フルオート」(20の刻印)、後ろに引くと「セミオート」(1の刻印)となる。この配置はVz 58では右側にあったのを左側に置き換えたもので、このため右手親指で操作できるようになっている。
使用弾薬は.32ACP弾と、近年主流の9x19mmパラベラム弾に比べると若干非力ではあるが、それゆえに小型化でき、フルオートでもコントロールし易いという利点もある。後に技術の進歩で、.380ACP弾モデル(Vz.64)や9x18mmマカロフ弾モデル(Vz.65)が登場する。さらに、非力な.32ACP弾を疑問視する意見が出て、9mmパラベラム弾仕様のVz.68も開発された。
元来、前述のように戦車兵の護身用として開発された銃であるが、その利便性ゆえにソ連のKGBや特殊部隊スペツナズ、また、共産系テロリストなどにも愛用され、西側にも脅威とみなされた。イタリアのアルド・モーロ元首相が、「赤い旅団」構成員により、本銃にて殺害されている。また、朝鮮民主主義人民共和国の工作員が使用しているといわれる。
チェコが西側と関係を持つようになってからは西側でも人気を博し、警察での採用が行われた事例も存在する。現在でもアメリカでは法律による規制の関係もあり、フルオート機能が排除されたセミオートピストルモデルがある。
なお、チェコスロバキア国内での生産は1975年に一度終了したが、ユーゴスラビアではライセンス生産が続けられている。また、1989年のチェコスロバキア解体により国営工場だったČZ社は民営化し、銃器市場への商品展開をする一方、近年多発する対テロ戦術やCQBにおける小型軽量なVz.61の有用性に目をつけ、各種改良をした上でVz.61・Vz.82(旧Vz.65)・Vz.83(旧Vz.64)・Vz.85(旧Vz.68)を再生産している。
現在、チェコではNATO加盟で使用弾薬を9mmパラベラム弾に統一する動きが進んでおり、Vz85が使用されているが、チェコの特殊部隊はドイツH&KのMP5やMP7A1を使用している。IDET2009(チェコのディフェンス・ショー)でCZ社はVz61に代わる次世代サブマシンガンとしてスコーピオン EVO3を発表した。
バリエーション
7.65mm×17 (.32ACP)
9mm×17 (.380ACP)
- Vz.64
- Vz.83(Vz.64の現行モデル)
9mm×18 (9mm Makarov)
- Vz.65
- Vz.82(チェコ軍1982年制式)
9mm×19 (9mm Parabellum)
- Vz.68(固定式ストックモデル)
- Vz.85(Vz.68の改良型モデル)
- SA 391(輸出向け・軍用モデル)
- SA 91(民間向け・セミオートオンリーピストル)
特殊な例
東ドイツの秘密警察であるシュタージが、本銃をブリーフケースの中に仕込んだ物を少数生産していた。同様の運用例は同時期の西ドイツのH&K MP5にも存在するが、東ドイツの場合は消音器が取り付けられていることなどから、要人の身辺警備などでは無く暗殺を目的とした物であったと推察される[1]。
登場作品
映画
- 『アウトレイジ』
- 『ヴァイラス』
- 『バイオハザードV リトリビューション』
- 『マトリックス』
漫画・アニメ
- 『DEATH NOTE』
- 『Mr.Clice』
- メインアームとして使用。『MIAMI FLIGHT 2001』からはフォアグリップやドットサイト、クリアマガジンを備えたオリジナルカスタムとなった。
- 『エリアの騎士』
- テロリストが使用。
- 高城 百合子が使用。
- 『ゴルゴ13』
- 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
- 本庁配置係の巻に登場。
- 『ルパン三世』
- 『戦闘メカ ザブングル』
- サンドラットの最年少メンバー、チルが使用。
- 『新ゲッターロボ』
- 神隼人率いる革命組織メンバーが所持。
- 大和ゆらが使用。
- エアガンが登場。
- 単行本4巻に登場。
- 単行本1巻に登場。
- 『ザ・ゴリラ』
- 敵キャラの殺し屋が使用。主人公はMP5Kコッファーを使用して対抗。
- 暁美ほむらが使用。
ゲーム
- 「スコーピオン」という名称で登場。サブマシンガンの中で、唯一走りながら射撃ができる。
- 「KLOBB」という名称で登場。
- 『バイオハザード5』
- 『メタルギアソリッド3』
- GRUのヴォルギン大佐配下のスペツナズが用いる武器の1つで、バイク兵やフライングプラットフォーム兵の標準装備である。また、スペツナズきっての精鋭部隊である山猫部隊でも一部の隊員が装備。また、主人公ネイキッド・スネークも現地調達した物を使用。ソ連製のレーザーサイトが追加され、小口径弾を用いるのでM16やAK-47といったアサルトライフルと異なり、フルオート射撃時にも銃口の向きがブレないので、精密射撃に適している。