地域おこし

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地域おこし(ちいきおこし)とは、地方自治体などの地域が、衰えた経済力や賑やかさを向上させるために行う「活動」・「意識」のこと。

町おこし」、「街おこし」、「まちおこし」、地域振興(ちいきしんこう)、地域活性化とも呼ばれる。地域おこしと表現することにより、地元市町村、住民、商工会、農協、漁協など地元の団体やそこに住む人々の主体性が強調される傾向がある。ほぼ同義語に、「地域づくり」がある。また、住みよい地域を形成していうための「まちづくり」も行われる。いずれも語感の固さを避けるため、「地域」以外はひらがな表記されることが多い。

地域おこしを目的として「B級グルメ」などの名物を作りイベントを行うケースが多く見られるが、手法と結果も様々である[1]

概要

日本では1960年代以降の重化学工業を主軸とした工業化に成功した一部の地域を除き、地方では人口流出がみられ、労働力を必要とした大都市圏(特に道府県庁所在地政令指定都市および近接する地域)に産業人口が集中し、地方の町村では、以下のような過疎化の悪循環が深刻になった[2]

  1. 雇用がない
  2. 近代的な産業と娯楽が県庁所在地などの都市部にのみ集中する
  3. 都市部へ労働力人口が流出
  4. 郡部での地元産業が高齢化で衰退
  5. さらに人口流出が加速し、郡部がいっそう過疎化する、悪循環に陥る

農山漁村では、戦後の過剰人口から都市部へ労働力人口が流出し、山村では燃料革命とも呼ばれる需要の激減、品質が悪いが安い外国産材の流入により急速に衰退した。

日本の経済において「地方の過疎」が語られる事がある(->日本の経済#首都の過密と地方の過疎を参照)。中心部の都市機能の衰退、郊外化、ドーナツ化に加え、大規模小売店やショッピングモールの郊外への進出で、周辺地域の小売店が経営の危機を迎えてしまい、寂れてしまった商店街が増えたりして、店じまいした店舗がかつての駅前商店街に軒を連ねて、シャッター通りなどの寂れた雰囲気が余計に客足を遠ざける一因となっている[3][4]

工業化に成功した地方においても、二度にわたる石油危機や急速な円高、安さを武器にしたアジア諸国の追い上げにより、製造業の空洞化減少がみられ、雇用の喪失や低賃金化に見舞われている。

こうした人口減少により、産業や地域活動の担い手が不足した。さらには、地元に伝わる伝統工芸伝統芸能踊りといった伝統的な文化活動の担い手や後継者不足も顕著になり、中には後継者不足から、文献すら満足に保存継承されず消失してしまう地方文化もある。

このような問題を解決するため、基幹産業の衰退や他地域との交通・雇用・利便性格差の拡大で、人口が流出して地域の産業や住民層が空洞化してしまった後の経済的な建て直しや人口回復などが必要となるが、そのための活動が地域おこしである。

主体

地域おこしは行政(地方自治体)が主体のものもあれば、民間の企業・団体が主体のもの、あるいは産官民に学を加えた共同型のものなど様々な様式が見られ、地域に関連した人たちの共同作業で遂行される傾向も見られる。NPOなど新たな組織も現れている。

なお2011年7月9日に大分県佐伯市で開催された「国道326号・10号沿線活性化シンポジウム」において、観光カリスマ山田桂一郎[5]は「行政に頼ってはダメ」としたうえで、観光客には新たに開発し売り出した「商品」などではなく、地域のライフスタイル(地域の人々の暮らし)からえり抜いたものに価値を認めてもらう必要性があることを述べている[6]。なお山田は同シンポジウムにおいて東九州自動車道が開通し、国道326号国道10号沿線の佐伯市豊後大野市延岡市で地域住民が何もしなければ観光客が吸い取られるだけになる危惧と、同地域にはすでに十分な素材・価値(観光資源)があり、住民がその価値を認めて客を細分化し取り込んでいくことが重要である旨を述べている[7]

地域おこし活動の手法

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以下のようなさまざまな試みが地方自治体や各種団体・組織で行われているが、どこにでも有効な決定的な策というものがあるわけではない。その地域の特色や立地、人口や産業の状況を判断し、独自性のある地域おこし施策の計画・実施が望まれる。かつての新産業都市リゾート開発、ニューメディアなど中央省庁の推進策に乗って特定の分野・領域に飛びつくケースも多いが、その成功例は多くない。成功したケースにおいては、立地、時代背景、推進したリーダー、関係団体の協力、組織化などに恵まれたケースが多く、そうした要因を考慮せず成功事例をそのまま真似しただけでは地域色が出しきれず失敗に終わることもある。

誤った固定観念

以下は、地域おこしを語る際によく言われる言葉であり、条件に恵まれて成功したケースもあるが、成功事例を表面上真似しただけで、実情を把握せずにこうした固定観念にとらわれて地域おこしを行うと、政策を誤りかえって地域が衰退する場合もある[8]

新しい手法

特区
2002年には行政改革により、従来の法規制の一部を緩和できる構造改革特別区域が制定できるようになったことから、全国各地で様々な「特区」が生まれつつあり、これらの特区内における様々な活動に、地域振興の期待が寄せられている。
詳細は構造改革特別区域を参照のこと。
地域ブランド化
一般に「地域ブランド」とも呼ばれる「地域団体商標」が2006年4月の改正商標法によって要件が緩和されたことで、「地域ブランド」による「地域おこし」が注目されている。これらでは従来地場産品の一般名称として利用されていた呼称を「商標」とすることで、他の地域で製造された類似品に同名称を用いられないですむ排他性もあり、類似品を廃することで地域的な産業の育成にも期待がもたれている。
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脚注

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関連項目

外部リンク

  • 東京都八王子市 「食」によるまちおこしの必要性(八王子ラーメンが利用されている)
  • 過疎化と地域経済
  • 遠いが価値、巡れば納得 過疎地で輝く新観光名所 日本経済新聞 「地方都市の中心市街地は地盤沈下が止まらない」
  • 街が変わり、共同体が減る 「過疎化、少子高齢化、そして都市のドーナツ化現象」
  • インバウンド業界トップインタビュー 観光カリスマ 山田桂一郎
  • 「国道326号・10号沿線活性化シンポジウム」0982.tv記事(2011年12月13日閲覧)
  • 「活性化連携が鍵-東九州道開通後見据えシンポジウム」夕刊デイリーWebヘッドラインニュース
  • 『ニッポンの地域力』 藻谷浩介 日本経済新聞出版 2007年9月