総合車両製作所新津事業所
テンプレート:車両基地 総合車両製作所新津事業所(そうごうしゃりょうせいさくしょ にいつじぎょうしょ)は、新潟県新潟市秋葉区南町にある総合車両製作所(J-TREC)の鉄道車両製造工場である。
概要
前身は1994年(平成6年)10月、東日本旅客鉄道(JR東日本)が当時の新津市に所在した新津車両所(にいつしゃりょうしょ)を改組して発足させた新津車両製作所(にいつしゃりょうせいさくしょ、英称:Niitsu Rolling Stock Plant)で、JR東日本新潟支社が所管していたが、JR東日本は新津車両製作所の事業・資産等を2014年(平成26年)4月1日付でJR東日本傘下のJ-TRECへ会社分割により譲渡し、現在の体制となった。
鉄道事業者の傘下にある日本の鉄道車両メーカーとしては、前掲のJR東日本傘下のJ-TRECのほか、近畿日本鉄道と西日本旅客鉄道(JR西日本)が出資する近畿車輛、東海旅客鉄道(JR東海)が出資する日本車輌製造、阪急阪神ホールディングス傘下のアルナ車両の例がある。
一方、鉄道事業者が直営する車両製造工場は西武鉄道の西武所沢車両工場が1999年(平成11年)に車両製造を終了して以降、この新津車両製作所が日本国内唯一となっていた。JR東日本では、車両の調達コスト抑制と車両生産の技術向上を自社生産の目的として掲げてきた[1]が、JR東日本が2012年(平成24年)4月2日、東京急行電鉄から東急車輛製造の鉄道車両事業を譲受してJ-TRECを発足させ[2][3][4]、さらに車両製造の体制をJ-TRECへ一本化するため前掲の会社分割を実施した[5]ことにより、鉄道事業者直営の鉄道車両製造工場は日本から姿を消した。
新津事業所で整備された車両に記される略号は、NiiTsu から取った「NT」である。
沿革
日本国有鉄道新津工場[6]にその歴史が始まる。同工場は鉄道省時代の1941年(昭和16年)1月に開設され、貨車などの新造を行ったこともあったが、基本的に修繕・保守拠点としての役割を果たしていた。
JRグループ発足後、JR東日本は新津工場を改組して新津車両所とし、国鉄時代より引き続き鉄道車両の改造・修繕・保守を中心に業務が行われていたが、1994年(平成6年)10月、車両の計画から設計、製造、運用、保守、廃車後のリサイクルに至る「車両トータルマネジメントの実現」を目標に、新津車両所を電車の新造工場に改組転換し、当時の東急車輛製造(現在のJ-TREC横浜事業所)からの技術供与により電車の製造を開始した。設立当初は東急車輛製造で製造している車両を当所でも生産する方式だったが、技術力の強化を目的に209系950番台(のちにE231系900番台へ改番)では設計段階から東急車輛製造と共同で製造を手掛けた。
なお、東日本トランスポーテック[7]に製造工程の一部を委託している。
素材となるステンレス板を加工するところから生産を行い、台車も当所で製造している。またCAD・CAMやロボットを活用した効率性の高い生産を行っており、稼働日の生産量は1日1両、年間生産能力は250両におよぶ。
さらに、当所とJ-TREC横浜事業所、JR東日本東京・横浜・八王子・大宮・千葉の各支社、東京総合車両センター・長野総合車両センターとは専用回線による情報ネットワークが構築されており、社内各部門とネットワーク環境下で設計情報などを共有しながら設計・製造を行うことが可能である。
2012年(平成24年)3月1日現在の累計生産両数は、4,019両である。2013年(平成25年)2月7日には製造車両数4,000両を達成した[8]。
JR所管時にこの工場で落成した車両の車内ステッカーに表記されている「新津車両製作所」の文字は、JR東日本初代会長・山下勇の筆がそのまま用いられている。
2008年(平成20年)10月にNHK教育テレビジョンで放送された『あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑』において、当所で働く社員の仕事が紹介された。また、2009年(平成21年)8月4日にNHK総合テレビジョンおよびNHKワールド・プレミアムで放送された『生中継 ふるさと一番!』でも当所が紹介された。
2013年(平成25年)12月18日、JR東日本の取締役会において、当所の車両製造事業とそれに係る資産や負債、権利及び義務(ただし当所でのJR東日本従業員とJR東日本との雇用契約を除く)をJ-TRECに譲渡し、車両製造の一元化を図ることが決議された[5][9]。
車両製作所へ転換する以前の車両新造
転換前は車両の改造・修繕が主な業務であった新津車両所であるが、例外的に107系の製造も行っていた。これは新津車両製作所の発足に先駆けて社員の技術向上を目的としたもので、以後の基礎となっているものも多い。
その後、当時東急車輛製造横浜製作所(現在のJ-TREC横浜事業所)の近くに立地していた大船工場では205系500番台、901系、209系、E217系のそれぞれ一部車両の製造を手掛けており、当所の発足に至っている。
製造車両
1995年(平成7年)5月から製造された209系の浦和電車区第36編成(クハ209-37以下10両で組成)が竣工第1号の車両である。車両工場として操業を開始して以来、主に首都圏で使用する新系列車両のうち、通勤形・一般形電車を製造している。
また、JR東日本の車両以外にもE231系を基本とした相模鉄道10000系と東京都交通局(都営地下鉄)新宿線用10-300形や、E233系を基本とした相模鉄道11000系、小田急電鉄4000形の一部の製造も担当している。なお、新幹線車両や在来線特急用車両の生産実績はない。
完成後JR東日本の車両は信越本線新津 - 新潟間で数往復の試運転(公式試運転)を実施する。この公式試運転実施日を落成日としている。
車両輸送
落成した車両は最寄りの新津駅からJR東日本の車両の場合、専用の装備を施したJR東日本所有のEF64形1000番台(1030 - 1032号機)またはEF81形0番台(134・140・141・151号機)の牽引により配給列車扱いで配置区所へ輸送される。自社の車両を自社の機関車で輸送するため、鉄道車両メーカーなどが日本貨物鉄道(JR貨物)を利用する甲種輸送とは異なる。
また、JR東日本以外の車両(相鉄10000系や都営10-300形など)や本所で製造した車両へ新造時に組み込む2階建てグリーン車(後述)はJR貨物による甲種輸送扱いの貨物列車として輸送される。
JR東日本向け
209系・E217系・E231系・E233系・E531系を製造。また2014年より、新潟地区向けのE129系の製造を開始する予定[10]。
なおE217系・E231系・E233系・E531系の2階建てグリーン車は当所では製造していない。車体構造が異なるので製造ラインを別に用意しなければならず、生産効率が下がるためである。
他事業者向け
東京都交通局 10-300形 - 10-450編成 - 10-470編成の中間車18両(3編成)と10-480編成の10両化用中間車[11](2両)を製造。
小田急電鉄 2代目4000形 - 4056編成の全車両(10両)と4063編成のうち6両を製造。
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:ウィキ座標2段度分秒- ↑ 【レポート】日本で唯一の鉄道会社直営車両生産工場「新津車両製作所」に潜入 - マイコミジャーナル 2008年10月23日
- ↑ テンプレート:PDFlink
- ↑ テンプレート:PDFlink
- ↑ 。東急車両では事業譲受前、鉄道車両の同事業会社の商号を「新東急車輛株式会社」としていた。
- ↑ 5.0 5.1 テンプレート:PDFlink - JR東日本 2013年12月18日
- ↑ 旧国鉄新津工場 - 新潟市秋葉区HP
- ↑ 2012年(平成24年)4月1日に新潟交通機械の機械設備部門に係わる事業をJR東日本メカトロニクス(JREM)に、車両部門に係わる事業を東日本トランスポーテックにそれぞれ移管・統合し、新潟交通機械より継承。テンプレート:PDFlink
- ↑ 鉄道車両の生産台数が4000両に JR東日本新津車両製作所 - 新潟日報 2013年2月7日
- ↑ JR東日本、新津車両製作所をJ-TRECに譲渡…車両製造部門を一元化 - Response. 2013年12月18日
- ↑ “新津生まれ”車両県内デビューへ、新潟日報、2013年7月3日付
- ↑ 東京都交通局10-300形増備車の甲種輸送交友社『鉄道ファン』railf.jp。