相鉄10000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記 テンプレート:鉄道車両

ファイル:Sotetsu10000 Inside.jpg
相鉄10000系車内
JR東日本E231系とモケットの色が異なる
ファイル:Soutetu10000.jpg
ピーコックグリーンとサフランイエローを用いた旧色編成(2007年3月16日、上星川駅)

相鉄10000系電車(そうてつ10000けいでんしゃ)は、2002年平成14年)2月24日に営業運転を開始した相模鉄道通勤形電車

本項では特に個々の編成について記す必要がある場合は、簡略化のために横浜側の先頭車(1号車)のクハ10700形の番号を指して、「〜F」(Formation = 編成)と呼ぶことによって各編成を表すことにする。以下留意されたい(相鉄では10701×10のように横浜側の先頭車の番号×編成内の車両数で編成を表すのが公式とされる)。

概要

本系列は、製造から30年近く経過し老朽化が進む2100系電車新6000系電車5000系電車および旧7000系電車の置き換えを目的に投入された。

本系列の大きな特徴としては、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE231系電車と共通設計となったことが挙げられる。前面のデザインなど細かい設備を除いて、ほぼそのままE231系の設備を導入した。

車両の製造は東急車輛製造を主に、一部の車両をJR東日本の新津車両製作所が担当している。

車体

前述のように、本系列はほとんどがE231系電車と同一であり、以下の車内設備とともに相鉄で特に目を引く設備を中心に列挙、解説する。その他の設備については、『JR東日本E231系電車』の項目を参照されたい。

車両は各車両20m長の車体に片側4つの両開きドアを備える通勤型の車体である。相鉄ではそれまで、車体の素材にはアルミニウム合金を主体に使ってきたが、初めてステンレス鋼を用いた。前面部分は繊維強化プラスチック(FRP)を用いて、ステンレスでは困難な造形を形成している。前面デザインはこれまでの相鉄電車とは異なって「非貫通形」であり、急行灯も設置されておらず、なおかつE231系のものとも異なる独自のデザインが採用されている。

種別・行先表示器はLED式である。車体側面はE231系とほぼ同一であり、帯の色と配置以外には目立った相違点がない。導入当初の帯色は新6000系電車のイメージを引き継いだ配色で、上部はピーコックグリーン、下部はサフランイエローラインとなっていたが、2006年のCI導入に伴い他の系列と共に統一カラーへ変更され、現在は11000系電車と同様の配色になっている。また、導入当初は現在のものと異なる相鉄初の英文ローマ字表記ロゴ(エンブレム)も付加されていた。

帯色、ロゴデザインの変更については「#更新工事」も参照

屋根上に集中型冷房装置を各車両に1基ずつと、一部の車両にはパンタグラフを搭載する。パンタグラフはすべてシングルアーム型である。

車内設備

内装は基本的にE231系と同一であり、おもに在来車との違う点を記述する。

座席は全てロングシートであり、相鉄で初めて片持ち式バケットシートが採用された。生地の色は赤紫系(優先席は青色)。座席には握り棒が設置されている。つり革は三角形(おむすび形)が採用された。

窓は色のついたガラスが採用され、紫外線をカットすることによりカーテンは廃止された。また、相鉄の特徴であったパワーウィンドウの採用は見送り、すべて手動での開閉となっている。なお車両端部の一部の窓は開閉不能であり、その旨の表示ステッカーが貼ってある。相鉄では初採用となる、全車連結部に傾斜式戸閉装置の貫通扉を設置された。

客用ドア上部には路線図とともに、1段表示仕様のLED式の車内案内表示装置が設置されており、「行き先」・「次の停車駅」・「乗換案内」を流している。後期の編成ではスクロール表示となり、また英語表記が追加されている。なお、8000系や9000系にも同様のものが設置されているが、これら2系列では「文字による広告」や「マナー喚起」も流れる。初期編成のドアエンジンは戸挟み安全装置付き電気スクリュー軸駆動式を使用している。車内の放送については当初車掌の肉声によるものだけであったが、2008年夏より自動放送が導入されており、「行き先」・「停車駅」・「車内でのお願い」などが放送されている。

車両連結面に設置されている貫通扉の窓ガラスには、相鉄のロゴ(「SOTETSU」)が印刷されたステッカーが貼付されている(11000系電車にも貼付。9000系以前の系列にはなし)。本系列の貫通扉のガラス部分は従来のものよりも大きい。

運転機器・走行設備

E231系と同様にTIMS (Train Information Management System) と称される列車情報管理システムを相鉄の車両で初めて搭載している。機器自体は床下に、運転席にはこれのモニタが設置されている。

マスターコントローラーは相鉄初のワンハンドルタイプで左手だけで操作する。また、各種メーター類についてはE231系ではグラスコックピット仕様と呼ばれる「速度計」・「電圧計」や「ブレーキ圧力計」などの運転に必要な情報が液晶にまとめて表示されるという運転台を一部に採用したが、これについては本系列にフィードバックされず、本系列は全車両がアナログの指針式メーターを採用している。また、車掌スイッチが他形式に合わせて鎖錠スイッチが設置されている点が異なっている。乗務員室と客室の仕切り扉の窓ガラスの形状は四角型で開閉が可能な構造とされている。その部分にも透明ガラスである点ではE231系と異なる。遮光幕はE231系と同じく中央大窓のみ設置されている。

VVVFインバータ装置は、E231系通勤タイプで使われる三菱電機IPM-IGBT素子を採用しており、9000系までのGTO素子と比べて発車・停止時の磁励音は低減された。モーターは出力が95KWのものを電動車1両につき4つ搭載している。本系列の10両編成には単独電動車(1M車)が存在しており、電動車 (M) と付随車 (T) の比率(MT比)は1:1となっている。

ブレーキ指令伝達方式は電気指令式である。これは在来の一部車両が搭載する電磁直通ブレーキとは互換性がないため、非常時に両者を連結することに備え、ブレーキ指令読み替え装置を本系列の先頭車に搭載する。また、初期の編成はブレーキプログラムを交換することで純電気ブレーキ対応に改造されており、10705F以降の編成は当初から純電気ブレーキ対応である。

台車はE231系のボルスタレス台車と同一仕様で、形式は相鉄を意味する「ST」を先頭に付与した。駆動装置も5000系から長らく使われてきた直角カルダン式を取りやめ、初のTDカルダン式とされた。電動空気圧縮機 (CP) についても同系列と同一のスクリュー式で、相鉄では初採用である。

保安装置

相鉄の車両としては初めてEB装置が設置された。このほかにTE装置も搭載する。ATSや列車無線は相鉄型のものが設置された。なお、現在相鉄では全線でJR式のATSやデジタル無線に交換が進んでいる(後述)。本系列では最後に投入された10708Fでは落成時より運転室真上の屋根の上にJR式の無線アンテナを取り付ける準備工事が施されている。 2011年4月頃から、主にいずみ野線内で日中に8両編成を使用してデジタル無線の試験が行われた。

形式詳細

本系列で見られる形式およびその役割を記す。

  • モハ10100形…中間電動車、モハ10200形とユニットを組む。VVVFインバータ装置搭載
  • モハ10200形…中間電動車
  • モハ10300形…中間単独電動車、VVVFインバータ装置搭載
  • クハ10500形…海老名・湘南台側制御車
  • サハ10600形…中間付随車
  • クハ10700形…横浜側制御車

車両番号の付与方法は、従来車と同一である。

編成

横浜方面(1号車)

  • 10両編成(10701F・10702F・10708F) - 前述したが、単独電動車モハ10300形が組み込まれる(表記「M3」)。
  テンプレート:TrainDirection
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
形式 クハ10700
(Tc2)
モハ10200
(M2)
モハ10100
(M1)
サハ10600
(T1)
モハ10300
(M3)
サハ10600
(T2)
サハ10600
(T1)
モハ10200
(M2)
モハ10100
(M1)
クハ10500
(Tc1)
  • 8両編成(10703F - 10707F)
  テンプレート:TrainDirection
号車 1 2 3 4 5 6 7 8
形式 クハ10700
(Tc2)
モハ10200
(M2)
モハ10100
(M1)
サハ10600
(T2)
サハ10600
(T1)
モハ10200
(M2)
モハ10100
(M1)
クハ10500
(Tc1)

主制御装置を搭載する車両(車両番号の下3桁が100番台)の車両は従来車では電動車ユニットの横浜側に連結されていたが、本系列では海老名・湘南台側に連結される。

パンタグラフは同系列と同じシングルアーム式のPS33B形で、モハ10100形とモハ10300形にのみに搭載され、従来系列の電動車は全車にパンタグラフが搭載されていたのとは異なる。搭載位置は車両の横浜側であり、アームの開く向きが従来車と逆である。なお、4次車以降は形式が東洋電機製のPT-7103E形に変更されており、後の11000系でも同一のものが採用された。

在籍数

2001年(平成13年)度から2004年(平成16年)度まで毎年増備が続けられ、2008年(平成20年)7月現在、10両編成3本(30両)と8両編成5本(40両)の計70両が在籍する。2002年(平成14年)からの3年間は8両編成のみの製造となり、そのまま製造終了の予定であったが、2006年(平成18年)度は8000系8707Fが事故で廃車されたことによる10両編成運用の不足補充分として、2001年度以来5年ぶりに10両編成が1本(10両)製造された。

車体装飾・ラッピング

かつて相鉄ではGreenBoxという、広告貸切列車を用意していたが、現在は運行されていない。その代わり本系列は編成を借り切っての車体のラッピングに度々利用されている。以下に主なラッピングとその期間を示す。

  • 横浜港開港150周年記念事業」関連
    • 第1弾「横濱はじめて物語号」 - 10702Fが2006年5月から1年間充当。
    • 第2弾「走る横濱写真館」 - 10708Fが2007年6月から1年間充当。
    • 第4弾「横浜開港150トレイン 〜ようこそ ヒルサイド 相鉄線へ〜」 - 10701Fが2009年6月から5ヶ月間充当。
  • 「走るウルトラヒーロー号」 - 10708Fが2013年4月27日から7月30日まで充当。
  • 「帰ってきたウルトラヒーロー号」 - 10708Fが2014年4月30日から充当。

このほかに一般のラッピング車両同様に企業や沿線の施設のラッピングが施されたことがある。なお、2008年6月から運行開始した第3弾の「走れ!みんなの横浜号」は本系列ではなく、新7000系7754Fが充当されている。

改造工事

ファイル:Sotetsu-10000.JPG
エンブレムが貼付されていた頃の10000系(2004年8月25日、二俣川駅)
ファイル:SOTETSU1000OLD.JPG
10000系旧色側面(2009年6月22日、かしわ台駅)

以下の改造工事が行われている。

車体

  • 登場時は、新たにデザインされた“SOTETSU”のロゴステッカーが前面に、“SOTETSU Series 10000”のロゴステッカーが側面の運転台側に貼られていたが、2006年のCI導入に伴い、前面・側面ともに相鉄グループロゴに貼り替えられ[1]、全車のロゴデザインが統一された。

帯色

  • CI導入により制定されたグループカラー「相鉄ブルー」と「相鉄オレンジ」に変更。

走行設備

  • 初期の一部編成のブレーキ装置を純電気ブレーキ対応にプログラムを変更。

車内設備

  • 自動放送装置の設置。
  • 車両連結面の貫通扉ガラス面に”SOTETSU”のロゴマークステッカーを貼付。
  • 車内照明のLED化。2013年度は3編成が、2014年度は1編成が改造予定である。[2][3]

保安装置

  • 他系列と同じく、搭載しているATSと列車無線を相鉄型からJR型に更新。従来のATS表示灯部分にATS-P表示灯を設置し、相鉄型ATS表示機は運転台中央付近に仮設、乗務員室仕切側の機器箱は新調し大型化している。

運用

本系列は他形式と共通運用を組んでおり、8両編成と10両編成で運用が分けられている。

8両編成は「各停」を中心としているが、一部の運用で「快速」、「急行」、「特急」も運行している。

10両編成は「特急」・「急行」・「快速」を中心としているが、一部の運用で「各停」も運行している。

導入に関して

第4編成 (10704F) から第7編成 (10707F) までは、車両メーカーからの直接購入ではなくJLL(日本型レバレッジドリース)によるリース方式が採用され、三井住友系のリース会社よりリースされている。

  • 10701F - 10703F・10708F:車両メーカーより直接購入
  • 10704F:エスエムエルシー・エリダヌス有限会社
  • 10705F:エスエムエルシー・パヴォ有限会社
  • 10706F・10707F:エスエムエルシー・グルス有限会社

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:相模鉄道の車両
  1. CI導入後に落成した10708Fは当初から相鉄グループロゴが貼付されている。
  2. [1]
  3. [2]