高校教師 (1993年のテレビドラマ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テンプレート:Sidebar with collapsible lists高校教師』(こうこうきょうし)は、1993年1月8日より3月19日まで毎週金曜日22:00 - 22:54に、TBS系列の「金曜ドラマ」枠で放送されていた日本のテレビドラマ。脚本は野島伸司。主演は真田広之桜井幸子

同年に東宝系で映画版が公開され、2003年には同名タイトルの続編が制作、放映された。

本稿ではこのうち1993年のテレビドラマと、映画版について述べる。

概要

教師と生徒の恋愛同性愛強姦近親相姦自殺など、当時に問題となっていた「社会的タブー」を真正面から扱った作品として、非常に話題になった。「登場人物らの背景に何があるのか」・「最終回の結末はどうなったのか」など、サスペンスの要素を織り込んだことも、それに拍車をかけた。

野島伸司より「近親相姦」をテーマとした作品が提案されたが、当初プロデューサーらは嫌悪感を抱いていた。しかし、野島の「ギリシャ神話のような作品を作りたい」という言葉に感銘を受け、直接的な性的描写を抑えた、繊細で透明感のある作品づくりを目指した。なお本作では、真田広之演じる主人公の教師・羽村隆夫と婚約者の三沢千秋、羽村と彼を慕う教育実習生・田辺里佳との大人同士を除いてキスシーンがなく、全てそれを連想させるだけにとどめた演出になっている。

テレビドラマとしては珍しく、ドラマ撮影前に「シナリオ」が全て完成していた。これにより出演者たちは、登場人物の「運命や世界観」などを完全に理解して演技することができたことに加え、きめ細かな裏設定を実現することができ、伏線を演技で表現できたという。野島作品の中では唯一、この作品のシナリオだけ「ラストの展開の手直し」が行われた。

ヒロイン役の二宮繭は当初、観月ありさを予定していたが、台本の内容に賛同を得られなかったため、桜井幸子に変更された。また、ヒロインの親友・相沢直子の役も何人かの女優に出演拒否され、持田真樹が担当した。相沢直子に強姦する教師・藤村知樹の役を演じた京本政樹はそれまで『必殺仕事人V』など、時代劇俳優としてのイメージが強かったが本作で狂気じみた役どころを演じ、そのイメージを一変させた。

作中で、繭の「私このお菓子好き」というセリフとともに、ブルボンのエリーゼ[1](スティック状のウェハースの中にチョコレートが入ったお菓子)が映されたため、当時ヒットした。

高校のロケ地は、日本基督教短期大学(一部シーンでは宗教団体の施設を利用している)である。また、最終回に登場した青海川駅[2]に、一時期ではあるがロケ地巡りに来た番組視聴者の来客が増加した。

放送終了から8年半後の2001年(平成13年)9月19日には、全話+特典映像などが収録されたDVD-BOXが販売された(ポニーキャニオン・PCBX-50260)。

ストーリー

第1話 「禁断の愛と知らずに」
大学院助手から不本意ながら、女子高教師になった羽村隆夫。3学期の始業式の朝、キセル容疑で捕まった女生徒の二宮繭を助けたことから信頼を得る。帰宅する羽村を尾行して部屋に上がり込む繭だったが、羽村の婚約者の三沢千秋が来訪し、慌てて逃げ帰る。しかし繭はある日、千秋が見知らぬ男とホテルに入るのを目撃してしまう。
第2話 「嘆きの天使」
毎朝、羽村の下駄箱に「助けて」という手紙が入っているが、誰の仕業かわからない。バスケットボール部顧問になった羽村を慕って、繭も入部してくる。繭の親友の直子は藤村に強姦され、その上、その様子をビデオカメラに撮られてしまう。羽村の婚約者である千秋に会った繭は、羽村との結婚は打算だと聞かされ、怒りのあまり彼女をエスカレーターから突き落としてしまう。
第3話 「同性愛」
同性愛者であるバスケットボール部キャプテン佐伯麻美は、繭と親しくする羽村を様々な手で陥れようとする。レイプされた直子は元気なフリで登校するが、録画テープをネタにされて藤村から脅迫される。一方、千秋を病室に見舞った羽村は樋口と千秋の抱擁シーンを目撃し、婚約者に裏切られていたことに気づく。
第4話 「僕のために泣いてくれた」
羽村の麻美への強姦未遂の噂が広まるが、繭だけは羽村をかばう。嫉妬に狂った麻美は、硫酸を羽村にかけようとするが、かばった繭にかかる。羽村は千秋から愛されていないことを聞き、婚約を解消する。さらに小沢教授から、研究室には二度と戻れないという真相を知らされる。傷ついた羽村は繭と動物園に訪れるが、感情が抑え切れなくなり繭の前で号泣するのだった。
第5話 「衝撃の一夜」
羽村の兄が故郷からやって来て、婚約破棄したことから兄弟喧嘩になる。自分を見守ってくれる繭に、羽村は愛情を抱き始めていた。鎌倉の海に行くが時間を気にする羽村に腹を立てる繭は、羽村の腕時計を奪い、海に投げ捨て、「帰らない」と言い張る。最終電車もなくなり、二人は鎌倉の旅館に泊まることになった。
第6話 「別れのバレンタイン」
羽村との無断外泊で、停学処分を受けた繭。羽村のアパートにやって来た繭の父・二宮耕介は、密告したのは自分だと告げて忠告する。繭の将来を考え距離を置こうと決意した羽村は、バレンタインデーに一方的に別れを切り出すのだった。
第7話 「狂った果実」
羽村に別れを告げられたショックから、盛り場を遊び歩くようになる繭。そんなある日繭は強姦されそうになるが、風俗嬢の亜弓に助けられる。一方、直子は妊娠していることが発覚したため、人工妊娠中絶手術をする。亜弓の自宅に泊まった繭は、翌朝自殺した亜弓を発見するのだった。
第8話 「隠された絆」
溝ができてしまった羽村と繭。そんな中で教習生の里佳が羽村にアプローチする。里佳は繭へのライバル意識から、彼女にカンニングの濡れ衣を着せる。
羽村は、下駄箱に「助けて」の手紙を入れる繭を目撃する。そして二宮家を訪ねた彼は、父と娘の信じがたい関係を目撃した。
第9話 「禁断の愛を越えて」
繭は、直子が強姦される様子を録画したビデオを見てしまう。繭は藤村のロッカーからマスターテープを盗みだし、新庄の机の上に置く。直子の腫れ上がった顔を見た新庄は、羽村の制止も聞かず藤村に殴りかかる。羽村はその新庄の言動に動かされ、繭を二宮家から連れ出すのだった。
第10話 「僕たちの失敗」
繭を自分のアパートに連れ去り、羽村はホテルに泊まることになる。連日ストーカーのように羽村の自宅に電話をかけ、アパートに侵入しようとする狂気じみた耕介。繭と父親との関係がどうしてもひっかかる羽村は、繭に思わずきつい言葉を吐いてしまう。繭と耕介が海外に行くことを知った羽村は、空港で耕介を刺してしまう。
最終話 「永遠の眠りの中で」
タクシーで自宅に戻った耕介は、2人を庇うため、自ら放火をしてしまう。羽村は繭に一緒に新潟に行こうと約束するが、翌朝一人で姿を消す。しかし、置き去りにしたはずの繭は、同じ特別急行列車にいた[3]。二人は普通列車の椅子に寄り添い合い、小指に赤い糸を結びつけて、静かに列車に揺られるのだった。

登場人物

主要人物

羽村 隆夫〈32〉
演 - 真田広之
主人公の高校教師。上司であり、婚約者の父でもある三沢教授の紹介で赴任。羽村は臨時のつもりで数カ月で研究室に戻るはずだったが、実は教授にとって面倒な助手であった羽村を研究室から体よく追い出す口実であり、研究室へは復帰できないことが後に露見する。担当教科は生物で、一時期はバスケットボール部の顧問もしていた。時に孤独な一面を持ち、繊細で温厚、そして良識的な性格であったが、二宮繭との出会いで変化していく。
二宮 繭〈17〉
演 - 桜井幸子
高校二年生のヒロイン。一見、明るく自由奔放な性格だが、陰のある少女。初対面時から羽村に付きまとい、突発的な行動も見られる。相沢直子以外に友人はおらず、クラスでは半ば孤立している。母が亡くなる数年前から、父親からの倒錯的な溺愛に悩む。

日向女子高校

新庄 徹〈33〉
演 - 赤井英和
羽村の同僚で、担当は保健体育。剣道部の顧問をしている。生徒から息子を負傷させられた過去が元で、生徒から恐れられるような態度を取るようになったが、根は温厚で思いやりのある性格。離婚した妻との間で、息子の親権を争っている。
藤村 知樹〈32〉
演 - 京本政樹
羽村の同僚で、担当教科は英語。テニス部の顧問をしている。端整なルックスで生徒からはアイドル的存在だが裏では直子をレイプし、録画したビデオをネタに関係を強要するという異常性を持つ。のちに改心し、2003年の続編にも登場する。
坂入主任
演 - 金田明夫
学年主任。厳格な教育者を装いながら根は俗物的であり、教育実習生との歓迎会ではセクハラじみた言動で羽目を外す。
教頭
演 - 小宮健吾
典型的な自己保身主義者。
宮原 志乃
演 - 山下容莉枝
羽村の同僚で、繭の担任。独身ということもあり、赴任当初、羽村に若干の興味を抱いた様子だが、異性トラブルなどを持ち込んだことから、次第に軽蔑するようになる。
田辺 里佳
演 - 若林志穂
物語中盤に登場した教育実習生。羽村に恋愛感情を抱き、繭に宣戦布告するが、負けを認めて去っていく。
相沢 直子〈17〉
演 - 持田真樹
繭の同級生で親友。スナックを経営する母と二人暮らし。元々は藤村のファンだったが、藤村からレイプされ妊娠。その後彼からレイプの様子を撮影したビデオをネタに関係を強要され、一人で悩みを抱えていたが、新庄との接触で心を開いていき、助けを求めるようになる。底抜けに明るい性格だが、繭と新庄父子以外には心を開かない一面もある。
佐伯 麻美〈18〉
演 - 中村栄美子
バスケットボール部のキャプテンで、下級生からの人気が高い。繭に対して同性愛的な好意を抱き、バスケットボール部の顧問となった羽村を罠に嵌めようとするが失敗。親の転勤を理由に転校した。
女子生徒
演 - 加藤貴子
3年生の生徒で、少々柄が悪め。羽村に近づく繭が面白くなく、教室に乗り込んで罵倒するが、返り討ちに遭ってしまう。

その他

二宮 耕介〈48〉
演 - 峰岸徹
繭の父親。著名な彫刻家で莫大な資産も抱えるが、病魔に冒され余命幾許もない状態。二年前に妻を亡くして以来、娘にすがり束縛しようとする。
新庄 貴広
演 - 森田洸輔
新庄の息子で小学生。新庄の生徒により、足に障害を負ってしまった。離婚した母親が起こした親権の調停によって、父親と離れて暮らすことになるが、自力で戻って来た。直子に懐いている。
羽村 和人
演 - 三浦浩一
羽村の兄で、田舎で農業を営んでいる。羽村のために大学の授業料なども面倒をみていた。自らの境遇と弟とのギャップにコンプレックスを抱いていたが、羽村と喧嘩の末に和解した。
三沢 祐蔵
演 - 小坂一也
高名な大学教授で、羽村の上司。娘との縁談・日向女子高校での教職を勧めたが、それは羽村の論文を盗作したことの口封じ、研究室からの追放の為であった。冷淡な性格で、娘に対して愛情など抱いていないと公言。
三沢 千秋〈24〉
演 - 渡辺典子
三沢教授の娘で、保育園で保育士をしている。明るい性格だが、打算的な面も見られる。父の薦めで羽村と婚約するが樋口と浮気。現場を目撃した繭を呼び出し、弁解した直後にエスカレーターから突き落とされる。のちに婚約破棄となる。父親はわがままに育ってしまった娘に手を焼いているらしい。父に認められたいという思いもある様子。
樋口 尚樹〈32〉
演 - 黒田アーサー
羽村とは研究室の同僚。羽村の存在を知りながら千秋と付き合ったり、冷淡な言動を取ることもあり、基本的に軟派な性格。
玉田 亜弓
演 - 広田玲央名(現:広田レオナ
繭が男に襲われそうになったところを助けた女性。好きな男と一緒に田舎から上京してきて以前は一般的なOLをやっていたが、憧れていた東京での生活にギャップを抱き水商売をするようになったという。誕生日を彼氏に伝えていたが来なかったため、繭と2人でささやかな誕生日を祝ったのち、浴室で自殺してしまう。

エンディングの解釈

作中、羽村によるモノローグが「過去形」言葉となっていることから、過去の出来事を振り返っていることがうかがえる。しかし、最終話におけるラストシーンのモノローグでのみ「僕は今…」と「現在形」で語る。

最終話のラストシーンについては、下記のようにさまざまな解釈がなされている。

  • 心中説 (最も一般的な解釈とされる)
  • 自殺説 (羽村のみ死亡し、走馬灯を見ている)
  • 居眠り説 (駆け落ち or 心中にいく途中)
  • 羽村の空想
  • 繭の幻影・亡霊説(羽村は生きており、繭は死亡している?)…など。

また死亡したとしても、二人がどのようにして命を絶ったのかについても不明であるため、謎の残るラストとなっている。だが、最終話のサブタイトルが「永遠の眠りの中で」であることから死亡したとみられ、羽村役の真田広之は放送終了後に出演したトーク番組で続編のオファーがあったことを紹介した際、「死んだはずの人間が生きていたという話はおかしい。見てくれた人にも失礼」という趣旨の説明をし、オファーを断ったことを明かしており演じた真田も羽村は死亡したと解釈している。

羽村の夢・空想説、繭の幻影・亡霊説については、知っているはずも間に合うはずもない羽村の乗っている特急列車に、突如として繭が現れることが理由である[3]。また、心中説については当日繭が起きたのは朝刊が届くころの時間だったのに対し、特急電車が駅を出るのは正午ごろだったため、電車には間に合ったものの青海川駅からのった電車の車内で心中(ラストで小指に赤い糸を付けた繭の手が亡くなっているかのようにぶら下がること、駅員が声をかけても起きなかったことから)したという可能性が理由である。

なお野島伸司は、以下のようなコメントをしている。 テンプレート:Cquote

スタッフ

  • 脚本 - 野島伸司
  • 音楽 - 千住明
  • 演出 - 鴨下信一吉田健森山享、小池唯一
  • 主題歌 - 森田童子ぼくたちの失敗
    スタッフクレジットは第4話まではオープニングで流れていたが第5話以降はエンディングで流れるようになった。
    この曲は旧作だが、この番組で大ヒットとなった。これ以前のドラマでは売れ線の曲がメインであり、昔の曲を使うことはほとんどされていなかったが、このヒットを契機にしてリバイバルブームが起こった。
  • 挿入歌 - 森田童子
    • 「男のくせに泣いてくれた」(第4話エンディング)
    • 「G線上にひとり」(第5話エンディング)
    • 「ぼくが君の思い出になってあげよう」(第7話エンディング)
    • 「君と淋しい風になる」(第8話エンディング)
    • 「君は変わっちゃたネ」(第9話オープニング)
  • プロデューサー - 伊藤一尋

放送日程

各話 放送日 サブタイトル 演出 視聴率
第1話 1月テンプレート:08日 禁断の愛と知らずに 鴨下信一 20.4%
第2話 1月15日 嘆きの天使 テンプレート:Color
第3話 1月22日 同性愛 吉田健 15.8%
第4話 1月29日 僕のために泣いてくれた 17.0%
第5話 2月テンプレート:05日 衝撃の一夜 森山享 19.5%
第6話 2月12日 別れのバレンタイン 吉田健 17.6%
第7話 2月19日 狂った果実 22.0%
第8話 2月26日 隠された絆 森山享 25.8%
第9話 3月テンプレート:05日 禁断の愛を越えて 小池唯一 25.8%
第10話 3月12日 ぼくたちの失敗 吉田健 28.3%
最終話 3月19日 永遠の眠りの中で テンプレート:Color
平均視聴率 21.9%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)

映画版

テンプレート:Infobox Film サブタイトルは「もうひとつの繭の物語」。テレビドラマの好評をうけ、高校教師と女生徒との道ならぬ恋愛を映画化した。ヒロインの名が「繭」であるという点以外は、テレビドラマとのつながりはない。

ヒロイン柏木繭に抜擢された遠山景織子は、本作の演技が高く評価され、日本アカデミー賞ブルーリボン賞を始めとする主要な新人賞を総なめにした。

ロケーション地は武蔵丘短期大学

キャスト

スタッフ

  • 監督 - 吉田健
  • 脚本 - 野島伸司
  • 原作 - 野島伸司
  • 製作総指揮 - 田澤正稔、増田久雄
  • 企画プロデューサー - 伊藤一尋
  • 製作 - 古谷昭綱
  • プロデューサー - 濱名一哉、佐倉寛二郎
  • 撮影監督 - 高間賢治
  • 美術 - 金田克美
  • 音楽 - 千住明
  • 主題歌 - 森田童子「たとえばぼくが死んだら」
  • 挿入歌 - 森田童子「ぼくたちの失敗」
  • 録音 - 瀬川徹夫
  • 照明 - 上保正道
  • 編集 - 川島章正
  • 助監督 - 崎田憲一
  • スクリプター - 川野恵美
  • スチール - 石川正勝、沢田和廣
  • キャメラオペレーター - 戸澤潤一

脚注

  1. 番組スポンサーの商品。本社所在地が野島の出身地である新潟県柏崎市に所在。なお、1996年には桜井幸子が同商品のCMイメージキャラクターを務めている。
  2. 脚本担当の野島の出身地である新潟県柏崎市にある。
  3. 3.0 3.1 青海川駅で乗り降りできる(定期)列車は普通のみである。ちなみに最後の場面で二人が乗車している鉄道車両は、特急列車には通常使わない。

外部リンク

テンプレート:前後番組

テンプレート:TBS金曜ドラマ (1989年以降) テンプレート:リダイレクトの所属カテゴリ