那須烏山市

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ファイル:Nasukarasuyama city center area Aerial photograph.1974.jpg
那須烏山市中心部(旧烏山町)周辺の空中写真。
1974年撮影の6枚を合成作成。国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成。

那須烏山市(なすからすやまし)は、日本の一つ。栃木県の東部にある。宇都宮市への通勤率は13.7%(平成22年国勢調査)。

概要

人口は約3万人で県東部地域の政治、経済、行政の拠点都市。那珂川県立自然公園に位置し、那珂川荒川の清流、八溝山系に属する緑豊かな里山が織り成す景観に恵まれている。国の重要無形民俗文化財に指定されている「山あげ祭」や龍門の滝、温泉など歴史文化・観光資源が豊富な地域である。2005年平成17年)10月1日那須郡烏山町と同郡南那須町新設合併により発足した。2011年3月11日の東日本大震災では、震度6弱の揺れを観測し、土砂災害などの大きな被害があった。

地理

那須烏山市は、栃木県の中東部、八溝山地の西麓、塩那丘陵の南端、那珂川の中流域に位置する。市域には那珂川支流の荒川江川が流れ、市内向田で那珂川に合流する。旧烏山町市街地は那珂川が成す右岸河岸段丘にある。

県庁所在地である宇都宮市より北東へ30-35kmほど、JR烏山線の列車で約50 - 60分の位置にあり、宇都宮都市圏に属する。

  • 山:八溝山地、塩那丘陵
  • 河川:那珂川、荒川、江川(以上、那珂川水系)、小貝川(以上、利根川水系)
  • 湖沼:

地名の由来

  • 応永年間、沢村五郎資重が、稲積城(那珂川の東側にあった)から城を移築する際、当初、那珂川の東側の山へ築城しようと用意をしていた。そのとき一羽の烏が飛来し、金の弊束(へいそく)を咥え、那珂川の西側の一番高い山の頂上にその弊束を落としたことから、それを見た資重は「烏は熊野権現の使いというから権現様のお告げではないか」と、那珂川の西側の山に城を築いた。それ以来、その城を烏山城ということになった。この話は昔から伝わる伝説で、そこから「烏山」という名がでてきたといわれている(烏山に伝わる民話「烏山の民話」からの要約)。
  • 那須記では烏山城に因む地名とされている。もともと、この土地は8世紀末から『坂主』その後『酒主』と書かれてきた。一方で那珂川沿岸の丘陵には群鳥が棲む草叢があり『烏山』と呼ばれていた。そこへ築城した沢村(那須)資重が烏山城と名付け、地名も烏山としたと云われている。読み(音)からの推察では「川原(カワラ)」「洲(ス)」「山(ヤマ)」の転訛説がある[1]

隣接する自治体

気候

那須烏山市の気候は典型的な太平洋側気候である。海から離れた内陸部に位置するため日較差、年較差が比較的大きく、内陸性気候の特徴が見られる。

冬季はからっ風が吹き降水量が少なく乾燥し、12 - 2月の降水量は年間降水量(平年値1,300mm程度)の1割にも満たない。日内の最低気温は氷点下に達し、特に天気が良い日の朝は放射冷却の影響を強く受け-5度以下になることもあるが、昼間は最高気温が10度以上に達し寒い日でも5度程度まで上がる。

春季から夏季、秋季にかけては降水量が多く湿潤し、特に夏季から秋季にかけて(5 - 10月)の降水量は年間降水量(平年値1,300mm程度)の7 - 8割に達する。

ケッペンの気候区分は、気象庁烏山観測所2009年2月23日まで観測、市内愛宕台字道陸神)の過去22年間の気象観測平年値を基にすると温暖湿潤気候(最寒月の平均気温が-3.0℃以上18℃以下、最暖月の平均気温が22℃以上、基準詳細は温暖湿潤気候#条件を参照)に区分される。

烏山(愛宕台字道陸神)の平均気温、平均最高気温、平均最低気温と降水量</br>(平年値::1979年 - 2000年22年間の平均)[2]
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均気温( 1.7 2.3 5.6 11.3 15.8 19.2 22.6 24.3 20.5 14.7 8.9 4.0 12.6
平均最高気温( 7.9 8.4 11.5 17.4 21.4 23.6 26.9 28.9 24.9 19.9 14.9 10.5 18.0
平均最低気温( -3.4 -2.8 0.4 5.5 10.7 15.5 19.3 20.8 17.0 10.3 3.8 1.3 8.0
降水量(mm 29.1 47.9 92.9 104.1 138.5 150.1 158.7 169.4 215.0 120.9 68.7 25.4 1320.8

以下に示すのは現在の市内測候所である気象庁那須烏山観測所(2009年2月24日から観測開始、市内森田字小塙前)の2010年の各月平均値データである。

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歴史

鎌倉時代から江戸時代まで

  • 1213年 - 1218年建保年間) 那須十郎が越前国より紙漉き職人を招き、程村紙(ほどむらし=厚手の和紙、程村は現那須烏山市下境地区にあった地名に由来、和紙伝来の起源は諸説ある)を創製。程村紙(烏山和紙ともいう)は国選択の無形文化財であり、今日でも地元学校の卒業証書等には透かし入りの程村紙が使用されている。
  • 1418年応永25年) 沢村五郎資重が稲積城から烏山城址(寿亀山:現在の那須烏山市城山)に烏山城を築いたのがこの町の始まりである。
  • 1560年永禄3年) 領内に疫病が流行、時の烏山城主・那須資胤(すけたね)が八雲神社に病魔退散を祈願。祭礼に際し、奉納余興を行う。今に伝わる山あげ祭が始まる。
  • 1590年天正19年) 成田氏長が、武蔵国忍(現在の埼玉県行田市)から2万石で入封し烏山藩が立藩、以後領主は次々と替わることになる。
  • 1600年慶長5年)大田原氏の一族大田原増清により交代寄合として、現那須烏山市森田地区に森田陣屋が築かれた。
  • 1725年享保10年)10月 大久保常春烏山藩に2万石(1728年(享保13年)に1万石加増し3万石となる)で入封し、その後1869年明治2年)の版籍奉還まで8代続く。本領のほか相模国にも飛地領を配し、相模国厚木村(現在の神奈川県厚木市の一部)は烏山藩(大久保氏)の支配となり、同所にも役所が置かれた(厚木陣屋)。
  • 1836年天保7年) 烏山藩の借財は34,000両余に達し(『相模原市史』)、窮状に陥る。翌1837年(天保8年)、二宮尊徳を招聘、天性寺境内にはお救い小屋が設置され、延べ1万余人が救済されるものの藩の復興はままならなかったという。

明治時代以降那須烏山市誕生まで

1954年(昭和29年)3月31日 烏山町と境村、向田村、七合村が合併し、新・烏山町となる。
  • 旧南那須町
1954年(昭和29年)6月1日 下江川村と荒川村が合併し、南那須村となる。
1971年(昭和46年)9月1日 町制施行。
  • 那須烏山市発足
2005年平成17年)10月1日 那須郡烏山町と同郡南那須町の新設合併により発足。
  • 南那須地区広域合併構想の経緯
南那須地区(旧烏山町、旧南那須町、旧小川町、旧馬頭町の4町)では、古来から経済的・地域的なつながりが深いことから、平成の大合併にあわせて地区合併協議会を設置した。一度は合併で合意し、公募により「那須南市」の新市名も決定された。しかしながら、市役所庁舎の建設計画などで対立が顕在化し、2004年(平成16年)10月30日に4町合併協議会は解散、広域合併構想は頓挫した。2005年に旧小川町と旧馬頭町が合併し那珂川町が発足し、旧烏山町と旧南那須町が合併し那須烏山市が発足した。
※4町合併後の新市名称として、「なかがわ市」「なか川市」「那珂川市」「那須那珂市」「那須みなみ市」「那須南市」「那南市」「みどり市」「八溝市」「やみぞ市」「那須烏山市」「那須みどり市」「みどり野市」「鮎川市」「那須やみぞ市」の15点が候補としてあがっていた。

那須烏山市発足以降

行政区域変遷

  • 変遷の年表
  • 市制・町村制以前の変遷表
  • 市制・町村制以後の変遷表

行政

  • 那須烏山市長
氏名 就任 退任 備考
1 大谷範雄 2005年(平成17年)11月7日[5] 現職 合併前の南那須町長

※ 2005年10月1日の新市発足から市長選挙までの間、旧烏山町長の福田弘平が市長職務執行者を務めた。

人口

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経済

歴史的にみて、栃木県東部の経済的な拠点であった。近年は交通網の整備が進み宇都宮市さくら市などに進出している郊外型店舗、市内の事業活動低迷により斜陽の傾向にある。那珂川中流域の要衝としての観光資源に重きをなしている。第1次産業が盛んである。

地域

町名一覧

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烏山地域

烏山地区
  • 旭(あさひ)1-2丁目
  • 愛宕台(あたごだい)
  • 表(おもて)
  • 金井(かない)1-2丁目
  • 城東(じょうとう)
  • 城山(しろやま)
  • 中央(ちゅうおう)1-3丁目
  • 初音(はつね)
  • 南(みなみ)1-2丁目
向田地区
  • 落合(おちあい)
  • 神長(かなが)
  • 滝(たき)
  • 野上(のがみ)
  • 向田(むかだ)
境地区
  • 大木須(おおぎす)
  • 大沢(おおさわ)
  • 上境(かみざかい)
  • 小木須(こぎす)
  • 小原沢(こはらざわ)
  • 下境(しもざかい)
  • 宮原(みやはら)
  • 横枕(よこまくら)
七合地区
  • 大桶(おおけ)
  • 興野(きょうの)
  • 白久(しらく)
  • 滝田(たきた)
  • 中山(なかやま)
  • 谷浅見(やあざみ)

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南那須地域

荒川地区
  • 岩子(いわこ)
  • 宇井(うい)
  • 大金(おおがね)
  • 大里(おおさと)
  • 小倉(おぐら)
  • 鍛冶ケ澤(かじがさわ)
  • 鴻野山(こうのやま)
  • 小河原(こがわら)
  • 小白井(こじろい)
  • 小塙(こばな)
  • 曲畑(そりはた)
  • 高瀬(たかせ)
  • 田野倉(たのくら)
  • 東原(とうばら)
  • 福岡(ふくおか)
  • 曲田(まがつた)
  • 森田(もりた)
  • 八ケ代(やかしろ)
下江川地区
  • 上川井(かみかわい)
  • 熊田(くまだ)
  • 三箇(さんが)
  • 志鳥(しとり)
  • 下川井(しもかわい)
  • 月次(つきなみ)
  • 藤田(ふじた)
  • 南大和久(みなみおおわぐ)

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教育

高等学校

中学校

小学校

  • 那須烏山市立烏山小学校
  • 那須烏山市立興野小学校
  • 那須烏山市立境小学校
  • 那須烏山市立七合小学校
  • 那須烏山市立荒川小学校
  • 那須烏山市立江川小学校

幼稚園・保育園

  • 幼稚園
    • 烏山みどり幼稚園
    • 聖マリア幼稚園
  • 保育園・保育所
    • 烏山保育園
    • 宮原保育園
    • 七合保育園
    • 境保育園
    • すくすく保育園(旧 向田保育園)
    • 小木須保育園
    • にこにこ保育園
    • 学童保育げんきっ子クラブ荒川
    • 学童保育げんきっ子クラブ江川

かつて存在した学校

  • 栃木県立烏山女子高等学校(2010年旧烏山高校と統合・新烏山高校へ)
  • 那須烏山市立境中学校(2008年烏山中学校へ統合)
  • 那須烏山市立七合中学校(2012年烏山中学校へ統合)
  • 那須烏山市立野上小学校(2007年烏山小学校へ統合)
  • 那須烏山市立向田小学校(2007年烏山小学校へ統合)
  • 那須烏山市立東小学校(2008年境小学校へ統合)
  • 那須烏山市立興野小学校(2009年七合小学校へ統合)

郵便

郵便番号は「321-06xx」(烏山地区)、「321-05xx」(南那須地区)が該当する。集配局は市内全域が烏山郵便局の管轄となる。

郵便局

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  • 烏山郵便局(07007)
  • 南那須郵便局(07120)
  • 下江川郵便局(07144)
  • 七合郵便局(07152)
  • 小木須郵便局(07174)
  • 向田郵便局(07221)
  • 烏山仲町郵便局(07271)

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  • 志鳥簡易郵便局(07704)
  • 宮原簡易郵便局(07711)
  • 藤田簡易郵便局(07719)
  • 下境簡易郵便局(07722)
  • 興野簡易郵便局(07727)
  • 神長簡易郵便局(07730)
  • 南那須八ケ代簡易郵便局(07736)
  • 南那須三箇簡易郵便局(07740)

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電話番号

市内地域が烏山MAの管轄となり、市外局番は「0287」。収容局は以下の2ビルが該当し、市内局番は以下の通り。

  • 栃木烏山局:80、82、83、84
  • 南那須局:88

交通

鉄道

中心となる駅:烏山駅

バス路線

  • 那須烏山市営バス:JR烏山駅を運行拠点とし、市内各地域を連絡。一部路線は市貝町との共同運行。各路線の詳細については左記記事を参照。
  • 那珂川町コミュニティバス

この他、東野交通の宇都宮東武・烏山線、さくら市営バスが市内域に乗り入れていたが現在は運行されていない。

道路

名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事

  • 烏山観光協会、南那須観光協会
  • 山あげ会館
  • 大金温泉
  • やまびこの湯からすやま
  • こぶしが丘温泉
  • 寿乃湯
  • 龍門の滝
  • 龍門ふるさと民芸館(龍門の滝に隣接。賽銭箱の前で手を合わせるとハイテク龍が目を覚ます)
  • 太平寺(龍門の滝の入口にある。開基嘉祥元年(848年慈覚大師川口松太郎の小説で有名になった蛇姫の墓がある)
  • 天性寺(織田信長の位牌、那須家六代の墓がある)
  • 泉渓寺‎(勅額の門がある)
  • こぶしが丘牧場
  • やな(那珂川・矢沢のやなひのきやのやな、荒川・一ツ石観光やな 森田城やななど)
  • 山あげ祭(毎年7月 第三 金土日)
  • 大金いかんべ祭(毎年8月)

出身有名人

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

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  1. 塙静夫著『とちぎの地名』(落合書店刊)
  2. 気象庁 烏山観測所の平年値
  3. 角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 9 栃木県』、角川書店、1984年 ISBN 4040010906より
  4. 日本加除出版株式会社編集部『全国市町村名変遷総覧』、日本加除出版、2006年、ISBN 4817813180より
  5. 『全国市町村要覧』平成23年版、第一法規, p. 129