永青文庫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

公益財団法人永青文庫(えいせいぶんこ)は、東京都文京区目白台にある、日本・東洋の古美術を中心とした美術館である。旧熊本藩細川家伝来の美術品、歴史資料や、16代当主細川護立の収集品などを収蔵し、展示、研究を行っている。理事長は18代当主の細川護煕(元内閣総理大臣)。

また、熊本市熊本城二の丸にある熊本県立美術館が「永青文庫展示室」を設け、永青文庫所蔵品の一部を年に数回入れ替えながら展示しているほか、東京国際空港第2旅客ターミナル内にある「ディスカバリーミュージアム」でも所蔵品の一部が企画を替えながら展示されている[1]

概要

永青文庫は目白台の閑静な住宅街のなかにあり、1950年(昭和25年)、第16代当主細川護立(1883年 - 1970年)によって設立された[2]。護立は旧侯爵貴族院議員で、国宝保存会会長などを務め、戦前・戦後の日本の文化財保護行政に多大な貢献をしている。「美術の殿様」と言われ、美術品収集家としても著名であった。

文庫の所在地は細川家の屋敷跡であり、建物は昭和時代初期に細川家の事務所として建てられたものである。文庫名の「永青」は細川家の菩提寺である正伝永源院(建仁寺塔頭)の「永」と、細川藤孝の居城・青龍寺城の「青」から採られている。

一般公開されるようになったのは、当主が第17代細川護貞(もりさだ)になった1972年(昭和47年)からである[2]。貴重な国文学の古書籍も所蔵され、一部が汲古書院より、影印本『細川家永青文庫叢刊』で出版された。

指定文化財

ファイル:Kuroki Neko by Hishida Shunso.jpg
黒き猫 菱田春草筆(熊本県立美術館に寄託)
ファイル:Nobunagakan.jpg
織田信長自筆書状 (釈文)おりかみ被見候 いよいよ働之事候 無油断馳走候へく候 働手からにて候 かしく 十月二日 与一郎殿

国宝

  • 太刀 銘豊後国行平作(古今伝授の太刀
  • 短刀 無銘正宗(名物庖丁正宗)
  • 短刀 銘則重(日本一則重)
  • 刀 金象嵌銘光忠 光徳(花押)生駒讃岐守所持(生駒光忠)
  • 柏木兎螺鈿鞍(かしわみみずく らでん くら)
  • 時雨螺鈿鞍
  • 金銀錯狩猟文鏡(中国・戦国時代
  • 金彩鳥獣雲文銅盤(中国・前漢~後漢時代)

重要文化財

絵画
  • 絹本著色細川澄元像 狩野元信
  • 紙本著色長谷雄草紙
  • 紙本著色洋人奏楽図 六曲屏風(熊本県立美術館寄託
  • 紙本墨画芦雁図(伝宮本武蔵筆) 六曲屏風(熊本県立美術館寄託)
  • 紙本墨画鵜図 宮本武蔵筆(熊本県立美術館寄託)
  • 紙本墨画紅梅鳩図 宮本武蔵筆(熊本県立美術館寄託)
  • 紙本著色落葉図 菱田春草筆 六曲屏風 1909年(熊本県立美術館寄託)
  • 絹本著色黒き猫図 菱田春草筆 1910年(熊本県立美術館寄託)
  • 髪 小林古径筆 絹本著色 1931年(熊本県立美術館寄託)
彫刻
  • 石造如来坐像(中国・
  • 石造菩薩半跏像(中国・北魏
  • 銅造如来坐像 台座に元嘉十四年五月一日韓謙造像の銘がある(中国・劉宋
陶磁
  • 宋白地黒掻落牡丹文瓶(そう しろじくろかきおとし ぼたんもん へい)
  • 唐三彩花文大盤
  • 唐三彩花文盤
刀剣武具
  • 太刀 銘守家
  • 破扇散鐔 無銘林又七
  • 春日野図鐔 銘城州伏見住金家
  • 毘沙門天図鐔 銘城州伏見住金家
  • 牟礼高松図鐔 銘利寿(花押)
  • 白糸威褄取鎧 兜付(しろいとおどしつまどり よろい かぶとつき)
書跡
古文書
  • 細川家文書(266通)11巻、23幅、2冊、180通、附:文書箱4合(熊本大学附属図書館寄託)
考古資料
  • 銀胡人像 1箇・銀杯 3口 伝中国河南省洛陽金村出土
  • 嵌珠金銀錯斜格子文壺(かんしゅきんぎんさく しゃこうしもん こ)
歴史資料


県指定文化財

絵画
  • 領内名勝図巻(りょうないめいしょうずかん)
    • 江戸中期の寛政5年(1793)ごろに、細川藩の絵師数名によって描かれた、肥後細川藩を中心とする名勝の絵巻物。一部、日向(宮崎)の物も描かれている。写真が無かった時代に、九州地方の名勝を描いたものは少なく、美術品としての価値だけでなく、当時の地方状況を示す手がかりとしても大変貴重な史料ともなっている。

現在は、財団法人永青文庫所蔵で、現在熊本県立美術館に寄託されている。藩主が、矢部手永(現在の山都町)を狩りで訪れた際に、「五老ヶ滝」や「聖滝(ひじりだき)」などの見事さに心を打たれ、有名な領内の名勝を絵師に描かせて、東京の屋敷で諸大名に披露したという。

近年の文献

  • 図録『永青文庫 細川家の名宝』(MIHO MUSEUM、2002年)
  • 図録『細川家の至宝 -珠玉の永青文庫コレクション』 東京国立博物館平成館で2010年春開催。
  • 『美に生きた細川護立の眼』 (細川護煕編、求龍堂、2010年6月)、ISBN 978-4-7630-1001-8
  • 『細川家の700年 永青文庫の至宝』(芸術新潮編集部編、新潮社[とんぼの本]、2008年)、ISBN 978-4-10-602180-0

脚注

テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:Coord
  1. ミュージアムについて(ディスカバリーミュージアム公式サイト)に「永青文庫の常設企画展として開設」と記されている。
  2. 2.0 2.1 テンプレート:Citation