新たな形態の銀行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

新たな形態の銀行(あらたなけいたいのぎんこう)とは、都市銀行地方銀行信託銀行など従来の伝統的な銀行にはない業務を行う銀行を指す、金融庁の分類用語である。

2000年9月26日に事業免許を取得し10月12日に営業を開始した「ジャパンネット銀行」開業以降に設立された銀行に多い。

概要

第二日本承継銀行を除き、いずれも実店舗数を最低限に抑え(基本的には対面窓口のない、組織上だけの預金口座のある本店営業部のみ)、入出金業務は提携先・出資元銀行や郵便局コンビニエンスストアなどの現金自動預け払い機(ATM)やインターネットバンキングを利用している。また、維持経費のかかる預金通帳は発行されず、インターネットバンキングで明細を表示するほか、利用明細書を別途郵送することで代替している場合が多い。こうした手法によって運営コストを低くすることで、従来型の銀行に比べて、各種手数料の安さや預金金利の高さなどに優位性をもたせるなどの特徴を持つ。

業態としては以下のようなものがあり、この他「整理回収機構」も新たな形態の銀行として扱われている。また金融庁の分類では、かつての長期信用銀行である「新生銀行」と「あおぞら銀行」、外国銀行の日本法人である「シティバンク銀行」も、新たな形態の銀行が分類される「その他」の区分に含まれている。

  • インターネット専業銀行
  • 商業施設との連携を主体にする銀行
  • 中小企業への融資を主体にする銀行
  • 破綻した銀行の業務を一時的に引き継ぐ事を主体にする銀行

2013年現在、後掲のインターネット専業銀行のうち、ソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行以外の銀行は日本銀行国庫金取扱業務を行っていないため、既存の都市銀行や地方銀行、信用金庫などの従来型金融機関と異なり、確定申告による国税の還付や、国家公務員給与の受取、年金雇用保険などの公的機関からの振込用口座には利用できない[1]。インターネット専業銀行以外の銀行で、国庫金の取扱がない金融機関も同様である。

インターネット専業銀行

インターネット専業銀行は、利用者に対し直接現金や証券証書類の受け払いを行う実店舗を原則的に設置せず、営業上必要な拠点のみを設置し、電話やインターネットを介した取引に特化した銀行。略してインターネット銀行ネット銀行とも言う。

実店舗が少なく預金通帳も発行されないため、取り引きはネットバンキングで行う。キャッシュカードATMで取り引きできるところもある。実店舗が少ないため人件費や店舗運営コストが小さく、「手数料が安い、預金金利が高い」などの特徴がある。

テンプレート:Main

現在営業中のネット銀行

2011年11月現在、日本で営業しているのは以下の銀行である。(統一金融機関コード順)

新規参入の動向

楽天

楽天はサイト利用者向けにネット銀行開業を予定しており、その前段階として2007年7月23日東京都民銀行楽天支店(楽天バンク@TTB)を開業し[2]、それを下地として開業を計画していた(当初、東京都民銀行楽天支店は2006年開店予定だったが、延び延びになっていた)。
2008年に入り、楽天がイーバンク銀行と資本提携を行うこととなり、同行が新規に発行する第三者割当の優先株を楽天が引き受けることになり、同年9月30日付で社長を含む一部経営陣も楽天の役員から起用されたことから[3]、今後の動向が流動化する可能性が指摘された。
そして同年11月14日付で東京都民銀行楽天支店の新規口座開設を停止し、2009年2月23日付で既存の口座を閉鎖し、それまでに口座解約・解約予約を行っていない顧客およびその預金については、イーバンク銀行へ移管することになった。これに伴い、東京都民銀行楽天支店は廃店となり、東京都民銀行と楽天との提携も解除となった。その後、正式にイーバンク銀行が楽天グループの一員となり、2010年5月4日には「楽天銀行」に改称した[4][5]

ヤフー

あおぞら信託銀行との提携により、同行の業態転換を含めたネット専業銀行を共同で立ち上げる方向で業務提携をしていた時期があったが[6][7]2006年には解消している。
後に、ジャパンネット銀行の発行株の約半数をヤフーが引き受けることになり(現在は、ヤフーが優先株を含めて発行済み全株式の40%を取得済み。議決権ベースでは2位だが、普通株の保有数では3位以下の大株主と大差ない。なお、三井住友銀行は普通株のみで発行済み株式の40%を保有し、議決権ベース上の筆頭株主である)[8]、2006年の時点で、ジャパンネット銀行を子会社とする金融持株会社を設立し、その筆頭株主となる方向で話が進んでいたが[9]、その後については現時点で進展がない。

大和証券グループ本社

2009年10月23日大和証券グループ本社インターネット専業銀行の設立構想を発表し、翌2010年3月2日に、準備会社・大和ネットバンク設立準備株式会社を、同年4月1日付で、大和証Gの100%子会社、資本金300百万円で設立することを明らかにした。銀行免許を取得次第だが、2011年以降をめどに開業を目指しているとしていた。その後、2011年4月4日、金融庁による予備審査が終了したことに伴い、大和ネットバンク設立準備の商号を株式会社大和ネクスト銀行へ改称し、同年5月13日付で、一般向けサービス開業にこぎつけた[10]

フルキャストホールディングス

2005年7月25日付で、フルキャストホールディングス(当時は、持株会社化する前のフルキャスト旧法人)の完全子会社として、銀行設立準備会社「株式会社フルキャストパートナーズ」を設立を発表し、若年層向けの個人向けサービスや中小企業・ベンチャー企業向け融資を主力とした銀行設立の構想を発表し、2006年をめどに開業を目指していた。
業態としてはインターネット専業銀行とする日本振興銀行新銀行東京のような中小企業融資主体銀行の中間に位置するものを構想していた。開業に当たり、銀行法上の主要株主は持たず、フルキャストグループとのパートナー企業によるコンソシアム型で株主を集める方針としてきたが、2006年1月23日付で、既存の銀行の収益回復などの要因もあり、予定した銀行の収益基盤の確立に不確実性が増したことと、個人向け事業については当時のフルキャストファイナンスの事業によってある程度カバー可能であったことを理由に、結果的には頓挫し、すでに貸金業を営んでおり個人向けの事業についてはその予定の一部に重複する事業を手がける、フルキャストファイナンス(後のフォーメイト)へ金融関連の業務を一本化することになった。
このため、2006年6月1日付で、フルキャストパートナーズは、実体ある事業のないまま設立から1年もたたない段階でフルキャストファイナンスへ吸収合併されている。その後、フルキャストホールディングス傘下から離れ、債権もフルキャストグループ外に売却されたフォーメイトは、2010年6月破産宣告を受け経営破綻をしている。

LDH

2005年に、西京銀行と当時のライブドア(現・LDH)による、西京ライブドア銀行(仮称)の設立構想が明らかにされたが、いわゆるライブドアショックに加え、双方に不祥事や赤字決算などの要因が生じたため、2006年に、準備会社設立の解消が発表された[11]

テンプレート:Main

商業施設との連携を主体にする銀行

中小企業への融資を主体にする銀行

中小企業への融資を主体にする銀行は、一般の銀行より広く中小企業融資を推進し、中小企業の事業展開や新事業開発を支援する事を企図した銀行。2013年現在、新銀行東京のみが存在する。

破綻した銀行の業務を一時的に引き継ぐ事を主体にする銀行

脚注

  1. ジャパンネット銀行のFAQ集に国庫金や公金の取り扱いができない旨の記載がある。ソニー銀行については、国庫金振込お取り扱い開始のお知らせ (2004年8月2日)を参照。楽天銀行については、国庫金振込の取り扱い(年金、国家公務員給与等の受け取り)開始のお知らせ (2012年7月2日)を参照。住信SBIネット銀行については、国庫金当座振込事務取扱開始のお知らせ (2013年1月15日 )を参照。
  2. 東京都民銀行「楽天支店」開設について - 株式会社東京都民銀行 楽天株式会社 2007年7月18日
  3. 楽天とイーバンク銀行の資本・業務提携について - 楽天株式会社 2008年9月4日
  4. 楽天、イーバンク銀行の名称を「楽天銀行」に変更へ 『ロイターニュース』 2009年6月4日
  5. イーバンク銀行、「楽天銀行」に名称変更へ 『J-castニュース』 2009年6月5日
  6. あおぞら銀行とヤフーのインターネットバンキング業務について - 株式会社あおぞら銀行 ヤフー株式会社 2006年2月23日
  7. 47NEWS ネット銀行業に来年参入へ ヤフー、顧客拡大目指す 『共同通信』 2005年1月20日
  8. 47NEWS ヤフーが最大300億円出資 三井住友、ネット金融提携 『共同通信』 2006年3月30日
  9. ヤフーと三井住友銀行グループの資本提携を伴う業務提携について - ヤフー株式会社 株式会社ジャパンネット銀行 株式会社三井住友銀行 2006年6月29日
  10. 大和証G、5月にネット銀行「大和ネクスト銀行」の営業開始 『ロイターニュース』 2011年4月5日
  11. 47NEWS 西京銀とのネット銀行断念 ライブドア、事件の影響で 『共同通信』 2006年3月29日

関連項目