君の名は

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テンプレート:Sidebar with collapsible lists君の名は』(きみのなは)は、日本の昭和期に放送されたラジオドラマである。映画化、テレビドラマ化、舞台化もされている。

概要

脚本家菊田一夫の代表作。1952年ラジオドラマで放送され、多大な人気を獲得した。「番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消える」といわれるほどであったという(ただし、この銭湯でのエピソードは、「アメリカでの事実[1]を基にして、松竹の宣伝部が作った虚構である」という説も根強い[2])。

ラジオドラマの人気を受けて松竹映画化されると、大ヒットを記録した。氏家真知子のストールの巻き方が「真知子巻き」と呼ばれて女性の間で流行した。これは、主演の岸惠子が北海道での撮影の合間に、現地のあまりの寒さに横浜で購入して持参していた私物のストールを肩からぐるりと一周させて耳や頭をくるんでいたことによる。この姿はカメラが回っている時にも使われることになり、「真知子巻き」が誕生した。(真知子と春樹が出会い、再会した数寄屋橋のシーンでしていたとされるが、それは間違いである。)

真知子と春樹が再会しそうになる(半年ごとの数寄屋橋での待ち合わせなど)が、不都合が起きてなかなか会うことができない。この「会えそうで会えない」という事態が何度も繰り返された。これは後の恋愛ドラマでもよく見られる描写(演出)であり、本作はこのパターンの典型にして古典となっている。

あらすじ

第二次大戦東京大空襲[3]の夜。焼夷弾が降り注ぐ中、たまたま一緒になった見知らぬ男女、氏家真知子後宮春樹は助け合って戦火の中を逃げ惑ううちに、命辛々銀座数寄屋橋までたどり着く。一夜が明けて二人はここでようやくお互いの無事を確認する。お互いに生きていたら半年後の11月23日、それがだめならまた半年後にこの橋で会おうと約束し、お互いの名も知らぬまま別れた。やがて、2人は戦後の渦に巻き込まれ、お互いに数寄屋橋で相手を待つも再会がかなわず、やっと会えた時は真知子はすでに明日嫁に行くという身であった。しかし、夫との生活に悩む真知子、そんな彼女を気にかける春樹、2人をめぐるさまざまな人々の間で、運命はさらなる展開を迎えていく。

NHKラジオ連続放送劇

放送期間は、昭和27年(1952)4月10日-29年(1954)4月8日。毎週木曜8時から9時までの30分放送。

番組の冒頭で「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」という来宮良子のナレーションが流れる。当時のラジオドラマは生放送だったため、劇中のBGMは音楽の古関裕而ハモンドオルガンを毎回即興で演奏していた。

キャスト

主題歌

映画とレコードは織井茂子によって吹き込まれている。

映画

テンプレート:Infobox Film 全3部。大ヒットし、通し上映では6時間を超えることから総集編も製作された。3部作の総観客動員数は約3000万人(1作平均1000万人)である。

君の名は(第一部)

1953年9月15日に公開された。2億5,047万円の配給収入をあげ、1953年度の配給収入ランキング第2位である。(1位は同名第二部)

スタッフ

キャスト

主題歌

「君の名は」 「君いとしき人よ」

協賛

テンプレート:Infobox Film

君の名は(第二部)

1953年12月1日に公開された。3億2万円の配給収入をあげ、1953年度の配給収入ランキング第1位である。1993年製作の台湾映画多桑」で主人公が映画を見る描写で本作の冒頭部分が使用されている。

スタッフ

キャスト

主題歌

「花のいのちは」 「黒百合の歌」

協賛

テンプレート:Infobox Film

君の名は(第三部)

1954年4月27日に公開された。3億3,015万円の配給収入をあげ、1954年度の配給収入ランキング第1位である。松竹は54年度のゴールデンウィークに本作で勝負をかけたが、ライバルの東宝は「七人の侍(4月26日公開)」を公開している。

スタッフ

キャスト

主題歌

「君は遥かな」「忘れ得ぬ人」「数寄屋橋エレジー」「綾の歌」

協賛

主題歌・挿入歌

  • 「君の名は」(歌:織井茂子
  • 「黒百合の歌」(歌:織井茂子)
  • 「忘れ得ぬ人」(歌:伊藤久男
  • 「数寄屋橋エレジー」(歌:伊藤久男)
  • 「君は遥かな」(歌:佐田啓二、織井茂子)
  • 「綾の歌」(歌:淡島千景)
  • ほか

「君の名は」に関する歌の作詞・作曲は、すべて菊田一夫古関裕而のコンビによる。

舞台

宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧を参照。

テレビドラマ

2012年現在、テレビでは4度ドラマ化されている。

1962年版

1962年10月2日から1963年10月13日まで、フジテレビ系列で放映。放送時間は火曜21:00 - 21:30だったが、1963年4月14日以降は日曜20:30 - 21:00に変更された。

テンプレート:前後番組 テンプレート:フジテレビ火曜9時枠の連続ドラマ

1966年版

1966年5月23日から1967年1月28日まで、日本テレビ系列の毎週月曜 - 土曜の13:00 - 13:15の時間枠で放映。全216回。

テンプレート:前後番組

1976年版

1976年10月1日から12月24日まで、NETテレビ(現・テレビ朝日)系列の毎週金曜21時枠で放映。全13回。

テンプレート:前後番組

1991年版(NHK連続テレビ小説)

テンプレート:基礎情報 テレビ番組

1991年4月1日から1992年4月4日まで、NHK連続テレビ小説30周年記念作品(第46作)として放送された(連続テレビ小説では、1983年度の『おしん』以来の1年間放送)。

解説

年々視聴率が下降を続けていた連続テレビ小説のテコ入れとして、75年以前の原点に戻り放送期間を1年間とした。千葉県野田市に1億円をかけ数寄屋橋のオープンセットを造るなど、異例の予算が組まれた。原作は一世を風靡した作品でありそのため前評判は大変高く、視聴率が50%を超えるのではないかともいわれていた。

しかし、最高視聴率34.6% 、期間平均視聴率29.1%(1991〜92年の記録。関東地区、ビデオリサーチ調べ)[4] とも、本ドラマ終了時点での当時の歴代最低を記録した。

なお、第五部の舞台は、長崎県島原市の予定だったが、雲仙普賢岳の噴火により中止となり、舞台は、静岡県西伊豆に変更された。

構成

  • 第一部:第1 - 12週(第1 - 72回)(第1部は、…編というものはなかった)
  • 第二部:「結婚編」:第13 - 19週(第73 - 114回)
  • 第三部:「旅立ち・北海道編」:第20 - 25週(第115 - 150回)
  • 第四部:「愛ふたたび・志摩編」:第26 - 34週(第151 - 204回)
  • 第五部:「愛のゆくえ・対決編」:第35 - 39週(第205 - 234回)
  • 第六部:「それからの二人・夫婦編」:第40 - 52週(第235 - 312回)

スタッフ

  • 原作:菊田一夫
  • 脚本:井沢満、横光晃、宮村優子、星川泰子、小林政広
  • 音楽:池辺晋一郎
  • 語り:八千草薫
  • 演奏:東京コンサーツ
  • 題字:篠田桃紅
  • 考証:松平誠
  • 考証協力:天野隆子
  • アイヌ民俗関連監修:萱野茂
  • 所作指導:鈴木宗卓
  • 医事指導:雨宮昭
  • 方言指導:佐渡稔、山國成男、谷津勲、山中篤、岡部雅郎
  • 撮影協力:三重県志摩郡阿児町千葉県野田市新潟県佐渡静岡県西伊豆北海道美幌町、同弟子屈町
  • 制作:石井愼、松本守正
  • 美術:藤井俊樹、岡本忠士、矢野隆士
  • 技術:沖中正悦、渡部浩和、原滋
  • 音響効果:田中正男、太田岳二、矢島清
  • 撮影:中村和夫、川崎一彦、安田熙男
  • 音声:篠根正継、谷島一樹、
  • 照明:大地祥嗣、高橋伴幸、* 記録·編集:田中美砂、高室晃三郎、岡部敦子、上田裕里子
  • 演出:原嶋邦明、宮沢俊樹、伊豫田静弘、諏訪部章夫、長沖渉、一井久司、吉川幸司、松本順、三井智一、若泉久朗、吉田雅夫、林可奈子
  • 主題歌: 君の名は

作詞:菊田一夫 作曲:古関裕而 歌:石川さゆり

  • 挿入歌:黒百合の歌

作詞: 菊田一夫 作曲: 古関裕而 歌:藤野ひろ子

キャスト

  • 氏家(→浜口→後宮)真知子(ヒロイン):鈴木京香
  • 後宮春樹(空襲で真知子を助けた男):倉田てつを
東京(浜口家)
  • 浜口勝則(真知子の夫):布施博
  • 浜口徳枝(勝則の母・真知子の姑):加藤治子
その他 東京の住人
  • 小野瀬綾(真知子・春樹の友人 佐渡出身):いしだあゆみ
  • 本間定彦(真知子・春樹の友人 佐渡出身 北国文学 天天教の布教):古舘伊知郎
  • 美村蘭子(夜の女):佐藤友美
  • 美村礼治(蘭子の夫、戦争によって記憶喪失に):小坂一也
  • 美村千枝子(美村夫妻の娘、戦争によって行方不明に、志摩内野家での名は里子):小川京子→川田美香
  • あさ(夜の女):伊藤嘉奈子
  • 石上梢(夜の女):河合美智子
  • 加瀬田修造(元陸軍少将):橋爪功
  • 加瀬田岸枝(修造の妻・曙荘の管理人):中原ひとみ
  • 加瀬田和子(加瀬田夫妻の娘)羽田美智子
  • 田上うらら子(天天教の教祖):益田愛子
  • 富士子(天天教の信者、おかま):うえだ峻
  • 岩間(副島)伝次(闇市でならしたヤクザ):宍戸開
  • マリー(夜の女・蘭子のライバル):伊佐山ひろ子
  • 永橋(勝則の上司):加藤武
  • 永橋清子(永橋の妻):高田敏江
  • 深野柳子(下町の長家の大家):樹木希林
  • 叶哲司(長屋の住人、畳屋):でんでん   
  • 住職(真知子・春樹の結婚式を行う寺の住職):鈴木清順
  • 多比良良作(定彦の仕事仲間)、税務署職員::蟹江敬三
  • 木村五郎(大学受験生。下宿し勉強中):八百坂圭祐→大沢樹生
  • 真知子の父(東京大空襲で死去・勘次の弟):冨田浩太郎
  • 真知子の母(東京大空襲で死去):泉よし子
清宮家(東京
北海道 美幌弟子屈
新潟・佐渡
  • 野添絹子(定彦の友・勘次の不倫相手):早乙女愛
  • 角倉勘次(真知子の叔父・角勘の主):宍戸錠
  • 角倉信枝(真知子の叔母・角勘の女将):佐々木すみ江
  • 米夫(角勘の従業員):井上康
  • 捨松(角勘の従業員);中野英雄
  • スミ代(捨松の妻):山家千花
  • 忠公(角勘の従業員):三井善忠
三重県・志摩
  • 西崎(→後宮→水沢)悠起枝(春樹の姉):田中好子
  • 水沢謙吾(悠起枝の友人):平田満
  • 戸村(→水沢)奈美(海女·謙吾の妻 後に行方不明に):杉本彩
  • 水沢フサ(謙吾の母):小林トシ江
  • 西崎(悠起枝の義父):森山周一郎
  • 長島龍伍(密輸組織のボス):鶴田忍
  • 善吉(長島の溜り酒場店主):横山あきお
  • 海渡琴乃(志摩で店を営む):伊藤友乃
  • 西野彰一(里子の義父):柾木卓
  • 西野珠子(里子の義母、長島龍伍の姉):内田藍子
  • 草薙(小学校校長、住職):岡部雅郎
  • 柴山晴男(小学校教諭):伊沢勉
  • 前野(元長島の手下):小澤寛
愛知・名古屋
  • 尾田登美子(那古野旅館·女将):山田昌
  • 天馬徹太郎(浪漫タイムス編集長):金田龍之介
  • 菅谷三千代(天馬の元妻):たかべしげこ
  • 菅谷博史(三千代と天馬の子・現在は巣鴨留置所で生活):美木良介
その他(脇役出演)
協力

ラジオ復刻版

NHK放送開始80周年記念特別番組『もっと身近に もっと世界へ NHK80』(2005年3月19日から22日)の一環として、「復刻ラジオドラマ」として放送された。放送日時は19日 - 21日の連日21:05ごろ - 21:55 (JST) 。NHKのライブラリーに保管されている音源や台本を参考にしている。

出演は田中美里萩原聖人他。ナレーションは、映画版で主人公の氏家真知子を演じた岸恵子が担当した。

NHK総合テレビでは、「君の名は&冬のソナタ 今夜純愛をあなたに…」の特集を組み、その中でラジオドラマの収録風景を放送している。放送日は3月20日 (JST) 。司会は小野文惠アナウンサーだった。

数寄屋橋の撤去

1964年東京オリンピックを控えての開発ラッシュの際、皇居外堀を埋めて高速道路が作られることになり、数寄屋橋も撤去された。今は数寄屋橋交差点わきにある数寄屋橋公園に、原作者の菊田一夫の筆による「数寄屋橋 此処に ありき」との小さな石碑が残されている。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:前後番組

テンプレート:NHK朝の連続テレビ小説
  1. アメリカでは、「ラジオの人気番組の放送時間にあわせ、女性ファンが炊事や入浴を止めたために水道の使用量が減った」というエピソードが存在する。
  2. 日本経済新聞2007年5月31日編集手帳によると、松竹の重役であった野口鶴吉が宣伝用に広めたのだという。
  3. 「東京大空襲」は一般的に3月10日のものを表すが、この空襲は5月26日の23日から続いた東京全滅の最後の空襲で、銀座、麹町、が爆撃され、東京駅もこの時焼失した。春樹と真知子は銀座通りから数寄屋橋へ逃げ、ここで初めて言葉を交わした
  4. ビデオリサーチ NHK朝の連続テレビ小説 過去の視聴率データ