佐藤勝

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テンプレート:Otheruseslist テンプレート:Infobox Musician 佐藤 勝(さとう まさる、1928年5月29日 - 1999年12月5日)は、日本の作曲家

国立音楽大学を卒業後、映画音楽家を志して作曲家の早坂文雄に弟子入りする。また、同じ北海道出身の作曲家・伊福部昭の作品にも大きな影響を受けた[1]。早坂の死去により未完となった黒澤明監督作品『生きものの記録』の音楽を遺稿をもとに完成させ、それ以来黒澤作品の常連作曲家となる。他にも石原裕次郎主演作品、東宝特撮SF作品、五社英雄監督作品など、日本映画を代表する数々の映画音楽を手がけた。特に岡本喜八監督作品は9割近くを手がける不動のコンビぶりで数々の作品を残した。

略歴

作曲姿勢と制作エピソード

「映画音楽は映像・作劇に溶け込むことで、初めて効果を生み出せるもの」という信念に立ち[2]、「いかに曲を切るか」ということにこだわり、いわゆる「劇判」としての役割に徹することに努めていた。その一方で、映画音楽のサウンドトラック・アルバムが見直された1970年代後半になると、自作サントラを組曲に編曲したものをレコード用に書き下ろすことも多くなり、その代表が『あゝ野麦峠』『皇帝のいない八月』である。

黒澤明とは『赤ひげ』までコンビを組み、『蜘蛛巣城』では能楽を勉強してその要素を取り入れ、『隠し砦の三悪人』では軽快なマーチ「六郎太のテーマ」を作曲した。黒澤作品の音楽で最もよく知られる「ドーン、ドーン」という打楽器の音は、元々佐藤が作ったものであるが、『影武者』の池辺晋一郎、『』の武満徹ティンパニのみで表現したのに対し、佐藤のそれは和太鼓を交えるものであり、作品世界に奥行きを与えるものに仕上がっている。黒澤とは『影武者』のとき決裂したが、理由は黒澤の要望が「グリーグペールギュントそっくりに作ってくれ」というものであり「いかに天才でも名曲そっくりで、それを超える作品は作れない」と断ったために起きた軋轢だった。

特撮作品も手がけており、中でも『日本沈没』はその「滅亡と復活」をテーマにしたサントラが知られている。本編に流れるのはジャズ・シンフォニーを基調にしたものであるが、その用法においては東京壊滅のシーンに「復活のテーマ」をぶつけるなど、従来の常識とは異なった曲付けをしている。

戦争映画では東宝の8・15シリーズを手がけているが、『沖縄決戦』では離島の集団自決シーンにわざと明るい音楽をあてて、曲の基本は沖縄古来の五音音階に置くものの、三線など沖縄固有の楽器は用いず、オーケストラで演奏した。佐藤の戦争作品でもっとも有名で人気があるのは『日本海大海戦』の「日本海マーチ」であり、金管楽器と木管楽器が織り成す軽快な行進曲に男女混声合唱が加わるこの曲は、戦争音楽の傑作として知られている。

日本アカデミー賞の音楽部門は何度も受賞しており、中でも第1回の『幸福の黄色いハンカチ』は、叙情たっぷりに夫婦の愛を歌い上げる「勇作と光枝のテーマ」、ロードムービーにふさわしい軽快でリズミカルなサントラは佐藤の楽曲の代表といえる。

作曲手法については、まず脚本を読み、優れた脚本であれば、行間からすらすらと曲が聴こえてきて、悪い脚本だと何も聴こえず困ってしまったという。ラッシュは「何度も見ると印象が薄くなる」という理由で、1度だけ観て、そのときの印象を大切にして曲想を練り、監督との打ち合わせに望んだという。基本的にジャズが曲調の基礎にあったが、その枠にとらわれず、ときにはシンセサイザーを使うなど革新的な一面もあった。

映画音楽専門の作曲家として、生涯に300を超える作品に携わったが、映画を通して管弦楽の響きに親しんで欲しいという思いもあり、郷里の留萌市で映画音楽を中心としたコンサートを開いたこともある[2]

生涯、何かと軽く扱われる日本の映画音楽と日本映画界全体について憂慮し続け、テンプレート:要出典範囲

主な担当作品

映画

テレビ

佐藤作曲の同名主題歌(作詞:藤田敏雄、歌:ザ・ブロード・サイド・フォー)は、後に森田健作もカヴァーした。
なお、第1シリーズは、菊地俊輔が担当している。

歌謡曲

その他

ゴジラ FINAL WARS』では佐藤が過去に担当したゴジラ作品からの曲が使われているが、クレジットに名前は入っていない。

関連項目

  • 伊福部昭 - 同じ北海道出身の作曲家。ともに黒澤作品など、多くの東宝映画の音楽を手がけた。

脚注

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外部リンク

テンプレート:日本アカデミー賞最優秀音楽賞

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  1. 小林淳「佐藤勝 映画音楽に懸けた生涯 上」北海道新聞、2010年10月6日夕刊
  2. 2.0 2.1 小林淳「佐藤勝 映画音楽に懸けた生涯 下」北海道新聞、2010年10月7日夕刊