X1 (コンピュータ)

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パソコンテレビX1(エックスワン)は、シャープテレビ事業部が製造していたパソコンの名称である。型名はCZ-800シリーズ。

なお、シャープ電子機器事業部がMZシリーズを製造しており、社内的には、矢板(テレビ事業部)と大和郡山(電子機器事業部)の2つの部門で全く別の製品として展開した。

ファイル:Hu-BASIC X1.png
Hu-BASIC(スクリーンショット)
シャープX1用フロッピー版

X1シリーズ

X1の初代機は、1982年11月に発売された。

X1の発売当時、同社のパソコンにはMZシリーズがあった。X1はMZ-80系を設計していた部品事業部やミニコン、オフコンを設計していた情報システム事業部ではなく、栃木県矢板市テレビ事業部が企画した製品である。そのため、当時の一般的パソコンとは一線を画するものとなった。

テレビとの連携

「パソコンテレビ」と銘打ち、専用のディスプレイテレビまたはオプションのデジタルテロッパーと組み合わせることで、テレビ画面とパソコン画面の重ね合わせ(スーパーインポーズ)を実現。また、パソコンのサブ電源を切っていても(80C48省電力チップ制御により)、キーボードやプログラムからテレビのチャンネルや音量を操作できた。

キーコンビネーションによるテレビ操作(X1本体のサブ電源がオフでも操作可能)
同時押しの軸キー テンキー 動作
SHIFTキー 1~9キー テレビチャンネルの1~9に切り替え
/,*,-キー テレビチャンネルの11~12に切り替え
←及び→キー テレビチャンネルを昇順/降順に切り替え
↑及び↓キー テレビの音量調整(PSGなどの合成音声には無関係)
0キー 音声ミュート
+キー スーパーインポーズON
=キー スーパーインポーズOFF
,キー テレビ放送のみ表示

本体のIPL-ROM (Initial Program Loader) にテレビタイマーエディタがあり、チャンネル指定や曜日指定、毎時指定などテレビのオン/オフタイマーやチャンネルの切り替えを7件(隠し番号0番を含めると8件)までプログラムできる。これは本体前面の電源スイッチ(待機電力を要するサブ電源スイッチ)をオフにしていても(80C48省電力チップ制御により)動作した。

初代機は赤/白/銀の3色のカラーバリエーションが用意された。また、AV機器のように積み重ねて使用することを想定して本体、キーボード、ディスプレイテレビ、FDDやテロッパなどコンポーネントの横幅が39cmに統一されていた。このようなスタイリッシュなデザインは同時期のパソコンの中で一線を画すもので、シリーズを通して、毎回グッドデザイン賞を受賞している。X1Gでは本体縦置きも可能で、そのときは高さと専用ディスプレイの高さが一致するなど、純正の組み合わせでは統一したデザインになる。 なお、横幅については、一部オプションやX1Cシリーズ、X1G、X1twin、turboZ以降の専用ディスプレイTVは上記とは異なる。

ホビー用途の機能

同時期の汎用的なパソコンと異なり、基本仕様は前述のテレビとの連携も含め、ホビー要素に特化されたものとなっている。 画面モード640×200ドット・8色のグラフィック機能[1]だけではなく、多くの機種では、ROMで定義されているキャラクタセットが使われるテキスト画面は、そのフォントの書き換えタイミングに制限はあったものの、ソフトウェア的に再定義可能なPCGになっており、ピクセル単位で着色可能な8x8ピクセルで256種類のパターンが定義、表示可能になっていた。背景の上でキャラクタを動かすためには当時の競合製品では、ソフトウェア的に合成処理を必要としたが、X1の場合、PCGを背景に利用することにより、キャラクタのみを描画する演算のみで、合成した画面を生成できた。これによりカラフルな画面構成のソフトウェアが多く発売された。CRTC(画面描画LSI)は汎用のHD46505を使用していた。X1turboZIIおよびZIIIでは上位互換のMB89321Bが使用されている。

サウンド機能は、明確にホビー用途の機種以外は、標準装備されることが少なく存在してもオプションとされることの多かった時期に、3重和音8オクターブのPSG機能を標準で搭載していた他、アタリ規格ジョイスティックに類似したジョイスティックポートも搭載されていた。このジョイスティックポートは、アタリ規格では電源になっているところが信号の送受信に割り当てられており、このピンアサインの違いによって、電源を必要とする連射機能付きジョイスティックなどの利用には、別途電池などの電源を必要とした。 当時のパソコンはゲームをキーボードで操作しなければならないことが多かったが、X1を含め各社多くの機種は、複数キーの同時押しなどに不満が多かった。しかしX1では電波新聞社ゼビウス向けジョイスティックがセットになったパッケージがヒット商品となり、シャープ同様ファミコンの開発に深くかかわったハドソン(現・コナミデジタルエンタテインメント)がそのファミコンのコントローラーに使用感の近いものをX1向けに発売するなど、数社からゲームコントローラーの発売に恵まれ、ゲーム用途としては比較的早期に成功したパソコンと言える。 CPU速度、解像度など、基本性能としては突出した性能を誇ったわけではなかったが、これらの要因や機能により、ホビー用途、特にゲームに強みを発揮した。

I/O空間の利用

Z80は設計上の構造により、一定の制限の元、8080では8ビットだったI/O空間を16ビットの空間として利用可能な、仕様外の仕様を持っていた。 X1シリーズでは、この仕様を利用し、メインメモリへバンク切り替えなどによってVRAMに割り当てる当時の一般的な実装ではなく、I/O空間に直接VRAMをマッピングした。 この実装は同じくZ80CPUを採用したSONYSMC-70SMC-777などでも用いられたが、直交性の低い当時のCISC CPUではI/O空間へのアドレス指定に煩雑な面が存在し、またメモリー空間と比較して読み書きに要するステート数が多いといったデメリットも存在した。

加えて、VRAMの配列が特殊な並びになっていることによるアドレス計算の煩雑さなどの都合から、グラフィックス制御そのものは扱いやすいとはいいがたかったが、サイクルスチール回路の導入や、独立したテキストVRAM回路の設計などシステム速度の足を引っ張らない工夫がされていた。 また、同じパターンが書き込まれてしまうため、実質画面クリアのみにしか利用できないものの、全3プレーン同時アクセスも可能になっている。 メインメモリー空間のバンク切り替えを用いることなく、常に64KBのメインメモリー空間と48KBのVRAM空間にアクセス可能なメリットがあったほか、PCGの活用によって、そのグラフィックス処理そのものを軽減することも可能であった。また、初代X1と同世代であるPC-8801ではテキストVRAMをメインメモリに置き、DMACにより転送することからそのバス調停によるメモリアクセスウェイトが存在し、相対的にX1は、メインメモリのアクセスが高速でもあった。

クリーン設計とIPL-ROM

電源投入時最初にIPL (Initial Program Loader) が起動し、FDD、拡張ROMボード、CMTの順にブートを試みる。それらの応答がない場合(またはユーザー操作によるキャンセルにより)、メニュー画面に切り替わり、ブートするデバイス3つとテレビタイマーのエディタの計4つから選択する画面へと遷移する。 基本設計は同社のMZシリーズ同様、本体に直接ROMでシステムプログラムを直接を持たないクリーン設計となっている。MZとよく似た仕組みでありがなら、X1のIPLでは、リード時はROM、書き込み時はRAM空間にアクセスするようにし、IPLが直接読み込めるプログラムサイズがZ80のメインメモリのフルサイズである64KBを実現している。 初期の本体に標準搭載された二次記憶装置は、データレコーダのみであり、標準の構成では、当時の一般的なシステムであったBASICの起動まで数分を要するというデメリットがあったが、FDDとDISK-BASIC (CZ-8FB01) の利用や、拡張ボードとしてあらかじめBASICの書き込まれたROMを搭載したCZ-8RB01等の利用により、その時間を短縮することが可能であった。その場合でも、ROMの内容は直接メモリ空間にマッピングされるのではなく、IPLによってRAMに展開された。 本体内蔵のデータレコーダーの速度は2700bpsで、同時期の競合製品の2〜3倍という転送速度を誇り、同社MZシリーズの一部でに由来する電磁制御の可能なデッキはプログラムで頭出しができるなど高度な制御が可能になっている。これらの制御をテープベースでは行えない競合機種ではFD版のみで提供されたソフトが、X1ではデータレコーダの性能機能を生かし廉価なテープ版にて提供されることも多い傾向にあった。但し、フロッピーディスクと比較した場合、高速とは言いがたいシーケンシャルデバイスのテープ版のゲームが、FD版同様快適に遊べるかどうかは別問題であり、テープ版ではデータを減らすために、仕様が異なる実装のゲームもあった。 比較的初期のX1D(第3世代)に標準搭載された3インチフロッピーディスク[2]が国際的にも(8インチFDに代わり)大幅にシェアを伸ばした5インチFDに押され、X1D及び外付け3インチFDDは廃止、X1turboの登場時に5インチFDDを採用するといった紆余曲折や、純正FDDの価格が高価だったことなどの要因があり、FDによるソフトウェア資産が出そろうのを遅らせ、カセットテープとFDで分散、あるいは両方の媒体で提供されることとなった。 一方、同社のMZシリーズでは(X1Dと同規格の)3インチFDDがオプション販売され、MZ-1500に内蔵でQD(クイックディスク、MZ-700では外付け)も提供された。のちのMZ-2500には3.5インチFDDを標準搭載し、記録メディアが統一されず、こちらもほぼ同様の現象としてFDによるソフトウェア資産の定着を遅らせた。

リセットボタン

X1turbo発売以前のX1シリーズには、NMIリセットボタンのみしか装備されていなかった。NMI (Non Maskable Interrupt) リセットは、Z80CPUが強制割り込みをプッシュスイッチにより物理的に受け付け、特定のアドレスへジャンプするもので、ホットリセットを行う目的がある。X1ではそれを積極的にリセットスイッチとして利用した。しかし、ジャンプ先アドレスはZ80の仕様として0x0066番地で固定されており、市販のソフトウェアでNMIリセットを行うと、リセットを想定していないソフトウェアではフリーズしてしまうなど意図しない動作を起こす。これを逆手に取り、NMIリセットのジャンプ先に故意に裏技となるものを仕込んでおくゲームも見られた。

X1turbo及びX1Fより、IPLリセットボタンが追加された。このボタンは電源投入時とほぼ同じ挙動をさせ、IPLを呼び出す再起動用のリセットボタンである。その動作上リセット時に明示的にメモリがクリアされたりすることは無いため、起動時に利用されない空間のメモリについては保持されている。

その他基本仕様

CPUにはZ80A(クロック4MHz)を採用し、割り込みは強力なモード2を使用していた。ただし内部割込みはキー入力のみでタイマ割り込みなどはなかった。

またサブCPUとして80C49を搭載し、キーボード内の80C48との通信やデータレコーダの制御などに使用していた。シリアル通信を使用したことに関連し設計上キーマトリクスの取得ができず、Shiftなどを除きキーボードの同時押しを検知することは不可能だった。キーボード分離型では接続コネクタに3.5mmの3極ミニフォーンプラグを使用していた。

添付のBASICは、シャープとハドソンの共同開発による Hu-BASIC (CZ-8CB01/8RB01/8FB01 V1.0)。当時の水準では柔軟な記述を許容するなど、扱いやすく高機能なものだった。しかし、塗りつぶしなど一部の描画ルーチンの最適化が甘かったためグラフィック描画の遅さが目立ち、またテープ (8CB01) から起動する必要があったことと相まって「X1は遅い」という誤解を招くこととなった。ただし、塗りつぶし処理以外は当時の水準程度またはそれ以上の性能を備えていた。

一方、X1Fとともに登場した NEW BASIC (V2.0) は、X1turbo開発時に得たノウハウをフィードバックし、グラフィック描画性能を大幅に向上させ、漢字も扱いやすくなっていた。そして、クリーン設計ゆえに、この新しいBASICは初代X1までさかのぼって使用が可能であり、これをもって「Xシリーズは5年間その基本設計を変えない(互換性を維持し、製品を販売する)」とする販売姿勢の証左とされた。

X1シリーズは、モデルチェンジを重ねつつも、基本仕様はオプションの標準装備化を進めた程度で上位互換性を保ち、オプションを追加しさえすれば、初代機のX1でも長期間現役機として使用することができた。しかし、初代発売の2年後(1984年11月)に上位互換のX1turboが発売され、1987年後半頃には新規発売されるソフトウェア、とくにゲームはturboシリーズのみ対応のものが大半になった。このように、実際の市場動向としては、初代のX1(あるいはX1シリーズ)が5年間完全に現役でいられたわけでも、コンシューマーゲーム機のように単一プラットフォームとして機能していたわけでもない。

X1シリーズの系譜

X1(CZ-800C/1982年11月)
X1の初代機。X1C・D の発売時に「マニアタイプ」あるいは「スタンダードタイプ」という愛称が付けられた。本体色はローズレッド (R)、スノーホワイト (W)、メタリックシルバー (S) の3色。グラフィックRAM (G-RAM) はオプション。価格は155,000円。ちなみに本体+専用ディスプレイテレビ+G-RAMで合計30万円の設定だった。G-RAMはこの機種のみオプション扱いで、以降の機種は全て標準装備。また、拡張I/Oポートもオプションだった。
X1C(CZ-801C/1983年10月)
本体・キーボード一体型で、プロッタプリンターが内蔵可能。拡張I/Oポートは専用バスに接続するタイプの外付けオプションが用意された。愛称「アクティブタイプ」。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格119,800円。
X1D(CZ-802C/1983年10月)
3インチFDD1基を搭載した機種。後に発売されたX1専用データレコーダーを接続しても本体から(頭出し制御などの)コントロールすることが出来ず、テープ版ソフトウェアの使用に支障を来たした。キーボードはマニアタイプと同様で、カセットコントロールキーが廃されている点のみ異なる。愛称「プロフェッショナルタイプ」。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格198,000円。
X1Cs(CZ-803C/1984年7月)
X1Cのプロッタプリンタ用スペースに拡張用I/Oポートを2基内蔵したもの。本体色はローズレッド、シルバーメタリックの2色。価格119,800円。
X1Ck(CZ-804C/1984年7月)
X1Csに漢字ROMを搭載したもの。価格139,800円。
X1F(1985年7月)
turbo開発時のノウハウをフィードバックした NEW BASIC (CZ-8CB01/8FB01 V2.0) を搭載。これ以降、FDD搭載モデルには漢字ROM(第一水準)が標準装備された。turboと同タイプの薄型キーボードになった。デザイン等は微妙に異なる。本体色はローズレッド (R)、オフィスグレー (E) の2色。turbo発売以降初のX1であり、従来のNMIリセットボタンの他、turboと同じIPLリセットボタンが装備された。
  • model10 (CZ-811C) : データレコーダー内蔵。価格89,800円。
  • model20 (CZ-812C) : 5インチ (2D) FDD×1基内蔵、オプションでもう1基増設が可能。なお、ローズレッドのFDDインジケータの色は緑。外付け用FDDインターフェース搭載。価格139,800円。
X1G(1986年7月)
縦置き可能な筐体を採用。本体色はブラック (B) とオフィスグレー (E) の2色。ファミコンと同タイプのX1ロゴ付き十字型ジョイカードを同梱。キーボードがこれまでのメカニカル方式からメンブレン方式へ。
デジタルテロッパー内蔵のX1turboシリーズ以外では初めて、ビデオ出力端子を装備。
  • model10 (CZ-820C) : データレコーダー内蔵。価格69,800円。
  • model30 (CZ-822C) : 5インチ (2D) FDD×2基内蔵。X1F model20にあった外付け用FDDインターフェースが省かれる。価格118,000円
X1 twin(CZ-830C/1987年12月)
「X1シリーズ5年目の回答」。日本電気ホームエレクトロニクスハドソン(現・コナミデジタルエンタテインメント)が共同開発し、PCエンジンとして発売した「HE-SYSTEM」を内蔵したハイブリッド機。5インチ (2D) FDD×1基搭載。本体色はブラック (BK) のみ。価格99,800円。本体前面にX1twinとエンボス加工。キーボードのロゴもこれまではX1ロゴのみだったのに対し、X1twinのロゴが金文字プリントがされている。X1シリーズの最終機種となる。ちなみに、X1部分とHE-SYSTEM部分は同時に起動でき、専用ディスプレイテレビを使用するとスーパーインポーズで重ね合わせて画面を見ることができた。なお、テラドライブと違いX1部分とHE-SYSTEM部分は相互のアクセスや連携が一切できない仕組みとなっており、電源とビデオ出力を共有したのみの中途半端な機種と受け止められた。

X1C以降、C, D, F, Gと連番のようになっているが、Eは抜けている。なお、turbo発売時の、Oh!MZには、X1Es,X1Ekなる性能強化機種の噂情報が載っている。この記事に関係して混乱を避けるためにEを飛ばしたか、あるいはturbo自体が「E」にあたる可能性もある。

非公式モデル

X1R(1984年)
X1Dをベースにハドソンが高速化改造したもの。一般向けに市販や改造サービスが提供された形跡はないが、マイコンショウ'84での展示や雑誌で紹介されたことがある。
CPUをZ80Hに換装し、メモリを高速なSRAMに交換するなどにより倍速の8MHzで駆動していた。
テープの読み込み等のソフトウェアでタイミング制御している部分は非互換となっていた。
「X1R」のエンブレムが取り付けられていたが、Rの文字はSKYLINE GT-Rを思わせる赤いものだった。
ボディカラーはそれまでのカラーバリエーションには存在しない黒だった。
X1DX(1985年12月)
X1Dに外付けカセットレコーダ (CZ-8RL1) を接続して、電磁メカコントロールできるように祝一平が改良を加えてOh!MZの記事としたもの。
X1DII(1986年2月)
X1Dに5インチFDドライブを接続して、市販ソフトを使用できるように祝一平が改良を加えてOh!MZの記事としたもの。

X1turboシリーズ

X1turbo(エックスワン ターボ)は、X1の上位機種として1984年10月に発売された。

X1シリーズとソフトウェア・ハードウェアともモード切替を必要としない完全上位互換を維持しながら、機能の改善、並びに拡張が行なわれ、Z80ファミリのCTCDMASIOが揃って搭載されていた。

赤、シルバー、ホワイトを基調に展開されてきた同シリーズであるが、1985年11月に登場したX1turbo IIにはX1発売3周年の特別限定色として黒色が設定され、それが好評であったため、この機種以降は黒色がX1/turboシリーズの標準色となった。

高い互換性を持つ上位機種であるX1turboは、下位機種のX1の性能が比較的優れたものだったことから、専用のソフトウェアがなかなか出揃わないというジレンマも抱えることとなった。また、X1twinに至るまでノーマルX1シリーズの販売は続き、末期になるとturbo専用が中心となったにもかかわらずノーマルX1が併売されるという新たなジレンマとなった。

パソコンとしての基本性能を下記の様に向上させてはいるが、ホビーマシンに重視されるオーディオ・ビジュアルの面での標準搭載による進化が他機種に比べ少なかった。X1turbo登場後、ライバル機がモデルチェンジを重ね、FM音源搭載や、その拡張による音響表現の強化やアナログRGB搭載による多色表示化を進める中で、X1シリーズでこれらが標準で搭載されるのはX1turboZ発売まで待たなければならなかった。これは、X1が発売当初からホビー指向で、オーディオ・ビジュアル面での基本性能が初めからある程度高かったことに甘んじた結果と言えるが、このことが、ホビー指向を強化してきた他機種に水をあけられる要因の一つとなっている。

従来機種からの拡張

表示機能の機能強化

X1turboシリーズでは、従来の表示モードに加え、640×400ドット・8色のグラフィック機能を搭載した。垂直400ライン表示が追加されたことで水平同期周波数は従来の15kHzに加え、24kHzモードが追加された。24kHz動作時は専用モニタに「ハイレゾモード」ランプが点灯する。また、24kHzモードの200ライン表示時も可能であった。ただし、その発色数から、本シリーズの出力はデジタルRGB出力のままであった。 ハードウェア制御のタイミングも改善され、垂直帰線期間にしかできなかったPCGなどへのフォントデータへのアクセスを水平帰線期間にも可能になった。 しかし、各プレーンに対し同時書き込みが可能な機能をX1から継承したものの、競合機種等の様に論理演算を伴った書き込みなどの描画支援をハードウェア的に持っておらず、競合機種に対してG-RAMに対する描画速度の点で大きく差を付けられることとなった。

漢字テキストVRAMの搭載

上記の24KHzモードのサポートと共に、ハードウェア的にROM上の日本語フォントをテキスト画面と同様に扱い、画面上に展開する漢字テキストVRAMを搭載、40×25行の高速漢字表示を実現した。グラフィックス画面にソフトウェアでフォントを展開、合成する処理に比べ、キャラクタコードの書き込みのみで、日本語表示が可能であったため、8ビット機でありながら16ビットパソコンにも比肩しうる日本語処理を可能にしていた[3]。この実装は構造上、CG-ROMにフォントを持っていなければならないという制限があり、初期は、JIS第1水準漢字ROMのみが搭載されていたが、JIS第2水準漢字ROMの発売を経て、こちらも標準搭載されるようになった。

機能の改善

キーボード横にスライドスイッチが設けられ、「A/Bモード」切り替えが追加された。Aモードは従来互換の物で、Bモードはカナ入力がJIS配列から50音配列となるほか、マニュアルには記載されていないが、従来不可能だった同時キー入力が可能となっている。

また、タイマなどの割り込み要因を増加させ、DMAの追加によって、CPU自体の仕事量を軽減し、VRAMやFDDへのアクセスが並行して出来るようになった。

メモリについても、Z80の制限である64KBを超える空間を取り扱うため、バンクメモリがサポートされた。しかし、グラフィックスVRAMは、I/O空間に据え置かれたため、メモリ空間に置かれることのメリットであるアドレッシングモードの豊富さ、自由度、アクセス速度は享受できないという制限は同様であった。

BIOS ROMの搭載

X1シリーズはクリーン設計の基、本体にBIOSを持たず、起動時にIPLによって読み込まれるようになっていた。シャープはIPLによって読み込まれるBIOSをIOCSと呼んでいたが、X1turboシリーズでは本体にローレベルな処理を定義したBIOS ROMを搭載し、呼称もBIOSに改められた。IOCSとBIOSに完全な互換性はなく、BIOSコールを使用するアプリケーションはX1turboシリーズ専用となる。

なお、これによりturbo BASICではIPL・BIOSのワークエリアが拡張されたため、BASICと機械語を併用したプログラムでは機械語部分のアドレスがこのワークエリアにかかるものがturbo BASIC上では動かない。その場合は従来のBASICを起動した上で動作させる。

X1turboシリーズの系譜

X1turbo(1984年10月)
X1turboの初代機。本体色はローズレッドとオフィスグレーの2色で、いずれもFDD・電源ボタンとその周辺はブラック。専用ディスプレイテレビ(リモコン付き)は200ラインと400ラインの自動切換え機能を世界で初めて搭載。
  • model10 (CZ-850C) : データレコーダーを内蔵しカセット版のturboBASIC付属。グラフィックRAMはmodel30の半分48KBでオプション (CZ-8BGR2) で拡張できる。価格168,000円。
  • model20 (CZ-851C) : 5インチ (2D) FDD×1基内蔵。価格248,000円。
  • model30 (CZ-852C) : 5インチ (2D) FDD×2基内蔵。価格278,000円。
    • model10は、当時のライバル機、PC-8801mkII model10に対抗するため廉価化が図られ、model20/30に比べて各種インターフェース(RS-232Cやマウス)、グラフィックRAMやデジタルテロッパなどが削減されている。FDDインターフェースまで撤去されていた。
X1turbo model40(CZ-862C/1985年7月)
X1turbo model30からテレビ制御関係の機能を削除してコストダウンを図ったビジネス仕様機。本体色はオフィスグレーのみで、FDD・電源ボタンとその周辺も同色となった。システムユーザー辞書同梱。価格258,000円。
X1turbo II(CZ-856C/1985年11月)
X1turbo model30と同仕様の廉価モデル。本体色は限定色のブラックとオフィスグレーの2色。本体背面インターフェースの配置がturboと微妙に異なる。また,スピーカーの位置が本体下部から本体左側面へ移された。日本語百科ワードパワーとターボ博士レキシコンを同梱。価格178,000円。turbo II用第二水準漢字ROM同時発売。
X1turbo III(CZ-870C/1986年11月)
turbo IIのFDDを2HD / 2D両対応に変更したモデル。本体前面のデザイン変更(turboZと同じ)。JIS第2水準漢字ROM搭載。本体色はブラックとオフィスグレーの2色。システムユーザー辞書を同梱。FDDのインジケーターランプは2Dモード時がこれまでと同じ赤、2HDモード時がグリーンだった。価格168,000円。

X1turboZシリーズ

1986年12月には、わずか1カ月前に登場した turbo III にAV機能を強化したX1の最上位シリーズであるX1turboZ(エックスワン ターボ ゼット)がX68000と、同時に発表された。これ以降turboシリーズはturboZシリーズに集約されることとなった。

強化された表現機能

従来デジタル出力のみであった表示機能は、4096色同時表示可能なグラフィック機能とアナログRGBパレット(コネクタはD-Sub15ピン)、ハードウェアスクロール、ビデオキャプチャやモザイク機能などを追加した。但し、他の機種がマスキング、同時コピー等ALUの搭載により処理そのものの軽減を周辺チップによってはかったのに対し、turboZでもそれらの仕組みは導入されず、多色描画が可能である反面、4096色モードでは1ピクセルの描画に実に12回ものアクセスが必要という処理量の増加が見られた。デジタイズされた画像の表示など、用途によっては表現力の向上があったものの、動きを要するような処理には多色モードは利用しにくい状況を作った。

サウンドはオプションであったステレオ8チャンネルのFM音源であるYM2151を標準搭載。入力クロックはチップ規定の値ではなく、CPUクロックと同じ4MHzが使われているため、チップの本来の設計とは若干異なる波形を生成する。従来機種では内蔵音源であるPSGとのミキシングがサポートされていなかったが、本機で内蔵されることにより、標準状態でミキシングされた出力を得られるようになった。

これらの機能は、BASICも専用のZ-BASICが別途用意され、BASICからも利用が可能になった。このBASICは、X1turboZ II 以降に標準装備されている。

マウスを標準装備。turboZシリーズによって標準搭載されたFM音源やアナログRGBは、後発だっただけに、いくつかの点で競合する他機種よりカタログスペック上は優れていた。しかし、こうしたAV機能の進化が他機種に比べて遅れ気味だったこと、CPUクロックが据え置きであり、処理を軽減する仕組みが導入されなかったこと等により、その機能をフルに使った専用アプリケーションはほぼ発売されなかった。また他機種より優れていたがゆえに互換性が低い問題があった。これはソフトウェア移植の障害となり、移植されてもそれらの機能が十分活用されないことにもなった。FM音源は一部ゲームなどでステレオ化移植などがされていたが、アナログRGBに関しては対応ソフトはほとんどなく、1987年後半ぐらいから一部のゲームがZシリーズで実行するとアナログパレットを使用してアナログ化するなど、パッケージやマニュアルに記載されていないがこっそりと対応している。

しかし、X1がturboZとなり、いかに機能改善を図ろうとも、X68000の圧倒的性能の前には存在感が霞んでしまった。X1turboZ専用ソフトはほとんど発売されないまま、X1シリーズの流れはX68000シリーズへ継承されていった。 また、MZ、PC-88シリーズなどがCPUの演算処理速度を機能の強化と共に上げていった事と対照的に、最終機まで、CPUはZ80の4MHzのまま据え置かれたことも、相対的なシリーズの衰退を招いた側面も否めない。

X1turboZシリーズの系譜

X1turboZ(CZ-880C/1986年12月)
turboZ初代機。本体色はブラック (B) とオフィスグレー (E) の2色。価格218,000円。当初、専用ディスプレイTVはX68000兼用のCZ-600Dだったが、後にCZ-880Dが発売。
X1turboZ II(CZ-881C-BK/1987年12月)
turboZに拡張RAM 64KBを追加した機種。これまで本体同梱の専用ソフト上でしか扱えなかったZのAV機能がBASIC上で制御可能にしたNew Z-BASIC (CZ-8FB03) を同梱。New Z-BASICは拡張RAM同梱でturbo/Z用のオプションとしても発売された(turboでもFM音源ボードがBASIC上で制御可能)。FM音源とPSGのミキシングつまみが廃止され、単一のボリュームつまみで両音源の音量調節をする仕様となる。本体色はブラックのみ。価格178,000円。
X1turboZ III(CZ-888C-BK/1988年12月)
X1/turbo/turboZ全シリーズ通じての最終機種。カタログスペック上はturboZ IIから外付用FDD、デジタルRGBディスプレイ、専用データレコーダ端子が廃されて廉価になった機種となっている。本体色はブラックのみ。価格169,800円。ただし、実装部品はVRAMの容量が倍になっているなど、ドキュメントや仕様表にない機能の違いも見られる。

脚注

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関連項目

実質の後継シリーズ。互換性はない。
基本設計に影響を受けている同社の別部署の展開したシリーズ。
活用例、情報などが掲載された、SHARPユーザをメインの対象とした雑誌。創刊時の誌名はOh!mz。特集記事で本シリーズの型番からOh!CZという記事がかかれたこともある。
テンプレート:シャープ
  1. 初代X1のみ、G-VRAMはオプション
  2. 日立製作所、日立マクセル、松下電器産業が開発した純国産規格。Compact Floppy Diskとも。外見的特徴としては、長方形でジャケットの内側に保護用のシャッターがある。
  3. 同様の仕組みを持つ機種は8Bit機では多くなく、MZ-2500など一部に限られた