黄鉄鉱
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黄鉄鉱(おうてっこう、pyrite、パイライト)は硫化鉱物の一種。
概要
鉄と硫黄からなり、化学組成はFeS2で表される。理想的な質量比は、硫黄53.4%、鉄46.6%である。
英名である「パイライト」は、ギリシャ語の「火」を意味する「pyr」に由来する。これは、黄鉄鉱をハンマーなどで叩くと火花を散らすことから名付けられた。
色は真鍮色で金属光沢を持つ。条痕色は緑黒色。外見は黄銅鉱と似るが、条痕色により区別できる。その淡黄色の色調により金と間違えられることが多いことから、「愚者の黄金」(fool's gold:1872年初出)とも呼ばれる。
硬度は6-6.5、比重は4.95-5.10。鉄よりも硬いということでも知られ、硫化鉱物としては硬い。ハンマーなどで叩くと火花が飛び散る。しかし湿気には弱く、非常に脆くなる。風化などの原因で表面が酸化分解されて褐鉄鉱などに変化しやすく、特に黄鉄鉱の結晶の形をそのまま残して褐鉄鉱となっているものは「武石(ぶせき)」、あるいは「升石(ますいし)」と呼ばれる。
用途・加工法
様々な鉱山で産出されるありふれた鉱物ではあるが、現在のところ工業的価値は極めて低い。
- 硫酸の原料として
- 以前は岡山県美咲町(旧柵原町)の柵原鉱山などで硫酸の原料として採掘されていたが、現在では石油から回収される硫黄から硫酸を製造する手法が主流となり、SX-EWで銅を回収する鉱山を除いて,黄鉄鉱を原料として用いることはなくなった。
- また、地下水と反応し硫酸を生成してしまうため、付近の河川が低pH化するとともに鉄の酸化に伴う析出で赤濁し大規模な汚染を引き起こすことがある(松尾鉱山)。
- 半導体として
- 方鉛鉱などと共に、半導体性があり、鉱石検波器として鉱石ラジオなどに使用されたことがある。近年テンプレート:いつでは高性能な薄膜太陽電池の材料としての利用が注目を集めており、工業的価値の見直しが進んでいる。
- アンモナイトパイライト
- アンモナイトの化石のなかに黄鉄鉱が結晶することがあり、これを特にアンモナイトパイライトと呼ぶ。アクセサリーとしてペンダントトップなどに用いる。
かつて日本国内で採掘していた鉱山
前述の岡山県柵原鉱山以外
など
黄鉄鉱グループ
- 黄鉄鉱(pyrite) : FeS2
- ハウエル鉱(hauerite) : MnS2
- ベース鉱(vaesite) : NiS2
- カチエル鉱(cattierite) : CoS2
- ラウラ鉱(laurite) : RuS2
- エルリッチマン鉱(erlichmanite) : OsS2
- ビラマニン鉱(villamaninite) : (Cu,Ni,Co,Fe)S2
- 福地鉱(fukuchilite) : Cu3FeS8
- 砒白金鉱(sperrylite) : PtAs2
- 安金鉱(aurostibite) : AuSb2
- ザークナイト(dzharkenite) : FeSe2
- クルタ鉱(krutaite) : CuSe2
- トログタライト(trogtalite) : CoSe2
- ペンローゼ鉱(penroseite) : (Ni,Co,Cu)Se2
- ミッシンネライト(michenerite) : PdBiTe
- テスチビオパラダイト(testibiopalladite) : Pd(Sb,Te)Te
- ゲベルサイト(geversite) : Pt(Sb,Bi)2
- インシザワ鉱(insizwaite) : Pt(Bi,Sb)2
- マスロバイト(maslovite) : (Pt,Pd)(Bi,Te)2
参考文献
- 松原聰監修 『鉱物カラー図鑑』 ナツメ社、1999年、ISBN 4-8163-2693-6。
- 松原聰 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 学習研究社、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
- 国立天文台編 『理科年表 平成19年』 丸善、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
- 沼野忠之 「地下資源・鉱山の昔と今」『自然への想い 岡山 - 昔を探り、今を見つめて』 倉敷の自然をまもる会編、山陽新聞社、1993年、46-56頁、ISBN 4-88197-458-0。
関連項目
外部リンク
- Pyrite (mindat.org) テンプレート:En icon
- Pyrite Mineral Data (webmineral.com) テンプレート:En icon
- Pyriteグループ(地球資源論研究室)