黄銅
黄銅(おうどう、brass)は、銅Cu と亜鉛Zn の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮(しんちゅう)と呼ばれることも多い。
歴史
適度な強度、展延性を持つ扱いやすい合金として、約350年ほど前から広く利用されるようになった。青銅に比べて歴史が短いのは亜鉛の沸点が約900℃と低く、開放式の還元法では単体が得られなかったからである。 テンプレート:節stub
物性
最も一般的な黄銅は、銅65%、亜鉛35%のものである。また、銅と亜鉛の割合によって、物性がかわり、下記のようなものがあるJISでは銅合金として扱われ、材料記号は頭文字Cで始まる4桁記号で表される。
- C2600:七三黄銅(銅が約70%、亜鉛が約30%) イエローブラスとも言う。
- C2801:六四黄銅(銅が約60%、亜鉛が約40%) 黄金色に近い黄色を示す。
- C3604:快削黄銅(銅が57.0-61.0%、鉛が1.8-3.7%、鉄が0.50%以下、鉄+錫が1.0%以下、亜鉛は残部) 被削性を高めるために鉛Pb を添加している。
- C3771:鍛造用黄銅(銅が57.0-61.0%、鉛が1.0-2.5%、鉄+錫が1.0%以下、亜鉛は残部)
- C4600台:ネーバル(naval)黄銅(海軍黄銅とも言う) 錫(すず)Sn を添加し耐海水性を高めたもの。
- CAC201:黄銅鋳物1種
- 丹銅(たんどう):亜鉛が5~20%未満、赤みが強い。ゴールドブラスとも言う。
一般的に亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなり、少なくなるにつれて赤みを帯びる。亜鉛の割合が増すごとに硬度を増すが、同時に脆さも増すため、45%以上では実用に耐えない。
いずれの黄銅も展延性に優れており、よく冷間加工で使用される。適度な硬さと過度ではない展延性によって、旋盤やフライス盤などによる切削加工が容易でなおかつ価格もほどほどなので、微細な切削加工を要求される金属部品の材料としての使用頻度が高い[1]。
用途
前記の特性ゆえに、昔から精密機械や水洗便所の給水管や便器給水スパッド、理化学器械類や鉄道模型等の素材、弾薬の薬莢や金属模型などに広く使用されている。
日本では仏具、多くの金管楽器などに多用されている(金管楽器の別名であるブラス(brass)は黄銅の英名に由来している)。また、2014年現在までに日本で発行されている五円硬貨の素材としても使われている。
また、金に似た美しい黄色の光沢を放つことから金の代用品にもされ、poorman's gold(貧者の金)と呼ばれる。日本の時代劇において小道具として使われる偽の小判も真鍮製のものが多い。
日本では、黄銅の製法は18世紀、江戸時代になって普及したとされてきたが、2014年4月21日、12世紀の平安時代に作られたとされる写経に、黄銅が大量に使われていることが、奈良大学東野治之教授たちの調査で判明した[2]。亜鉛は比較的、低温で蒸発してしまうため、精錬が難しく、日本では江戸時代まで黄銅を作ることが出来なかったとされていたが[3]、既に12世紀には、黄銅は日本でも製造され、金の代用品とされていたことが新たに分かった[4]。
なお、エッチングして艦船模型に使用される場合もあるほか、市販されている金色の塗料の多くには黄銅の微粉末が使われている。ただし、塗料については、経年により黒く変色し輝きを失うことがあり、ラテックス類・生ゴムに塗ると黄銅の成分(銅と亜鉛)によりゴムを分解腐食させてしまう欠点がある。
脚注
参考文献
- 門間改三『機械材料』SI単位版,実教,1993年,ISBN 978-4-407-02328-2
関連項目
- 洋白(銅と亜鉛とニッケルの合金)
- 青銅(銅と錫の合金)
- 白銅(銅とニッケルの合金)
- セバ屑(銅含有量が65%、亜鉛含有量が35%位の板の新くず)
- コーペル屑(銅含有量が60%、亜鉛含有量が40%位の板の新くず)
- 脱亜鉛腐食