麻織物
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麻織物(あさおりもの)は、麻でできた織物。硬くて強く天然の光沢がある。肌触りが涼しげ(「シャリ感」と呼ばれる)なため夏用衣類などに使われるだけでなく古くは紀元前のエジプトにおいてはミイラの製造の際にも使用された。
芸術における使用例
また洋の東西を問わず絵画制作の際に支持体として使われていた。西洋では、テオフィルスの書には12世紀-13世紀頃までは板に馬や羊の皮を薄くなめしたものを貼り合わせ上に地塗りがされたことが書かれているが、14世紀頃にはすでに麻布が貼られるようなっていた。これは当時の破損した作品が修復された際の報告書などから確認できる。日本においても既に8世紀には国宝の薬師寺吉祥天像など仏画が(どうさ引きされた)麻布に描かれていることから、中国大陸ではもっと早い時代から使用されていたことが伺える。
1世紀頃のエジプトのファイユーム地方ではミイラの棺の顔の部分には麻布が貼られ、死者の生前の肖像描かれていた。そこにはきわめて興味深い絵画技術が使われていたために、発見当時からパリの芸術院など貴族階級のあいだで話題となった。18世紀になって出土したこの古代の肖像画はエンコスティックあるいはエンカウスティークと呼ばれる鑞を使った最古の高度な絵画技法であった。この技法の使用法は判然としないが、この技法を使える画家であり研究者の赤木範陸は特別な処方で水に溶けるようにした蝋を麻布上にしみ込ませ、優れた作品を発表している。