騎乗停止

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記 騎乗停止(きじょうていし、英語:suspension)とは競馬において反則を犯した騎手に対して与えられる制裁である。騎乗停止になる理由は様々であるが、危険度が高いなどのの場合には長期間の騎乗停止ということもあり得る。

本項では主に日本の事例を記述する。

中央競馬における騎乗停止の概要

日本中央競馬会競馬施行規程第10章第137条[1]を根拠とする。

中央競馬所属の騎手の場合には、競馬の開催は毎週土曜日日曜日に行われるのが原則であるため、例えば2日間の騎乗停止を科されると翌週の土曜日と日曜日の競馬には騎乗できない。また、平日に行われる地方競馬での地方馬と中央馬の交流競走も騎乗停止期間中は騎乗できず、また日本国外での騎乗も出来ない(騎乗停止中は海外遠征の届出が許可されないため)。競走中の事由による騎乗停止の場合、開催日4日間などの騎乗停止となるが、開催日4日間の騎乗停止の場合は「土・日~土・日」の期間が騎乗停止となるため、実質的に1週間は中央・地方・日本国外全ての競走に騎乗できない事になる。

また、同一騎手が同一競走、または同一開催週に複数回の騎乗停止規則に抵触する走行があった場合はその分期間が延長されてしまう。

その例として、吉田豊2009年5月10日に開催されたNHKマイルカップにおいて、サンカルロに騎乗したが、
  1. 第4コーナーで外側に斜行した際、アイアンルックの走行を妨害
  2. 直線走路でダイワプリベールの走行を妨害
という、同一競走において2度の走行妨害を行ったとして、同年5月16日から6月7日の合計開催日8日間(1開催相当 前者は5月24日まで、後者は5月25日からそれぞれ開催日4日間ずつの扱い)の騎乗停止を受けた。サンカルロは8位入線から18着降着となった。

1976年までは騎乗停止は次の競走から即刻適用されていたが、1977年以降は翌日からの騎乗停止とし、前日発売の競走に騎乗している場合は翌日の騎乗は可能としていた。さらに1994年からは騎乗停止をファンに広く伝えるために騎乗停止の開始日を翌週の土曜日からとした。ただし、粗暴な行為、あるいは油断騎乗(楽勝ペースでゴールに駆け抜けようとした際に追う動作を緩め、敢闘精神に著しく欠ける騎乗があった場合や不注意行為があった場合他)による騎乗停止は発覚の当日もしくは翌日からの適用となる場合がある。

なお、故意的に騎手を落とした場合、自ら競走を中止した場合、もしくは重大な不祥事(逮捕起訴)、並びに騎手としての注意義務の違反行為などがあった場合は、長期もしくは無期限の騎乗停止、最悪の場合は騎手免許剥奪となる。

基本的な騎乗停止期間

  • 2004年までは馬の癖などでの軽減、あるいは重過失や故意の落馬などによる増加はあったが、基本開催日6日間(適用期間の初日は上述の通り)の騎乗停止であった。
  • 2005年からこれが大幅に変更され、基本的な騎乗停止は制裁を受けた次週最初の開催日からの開催日4日間。馬の癖などによるものは同2日間。重過失や故意の落馬など悪質な場合は同6日(またはそれ以上)。
    • ただしごく軽微と判断したものは1日間のみとすることもある。
  • 2012年からは「馬の癖によるもの」の中で「予測が難しい急激な動き」や「大きく逃避して制御が難しい」ものについては戒告にとどめ、また不注意騎乗による走行妨害では「馬の動きが小さいなどの考慮すべき理由があると判断したもの」については騎乗停止2日間に短縮されることとなった[2]
  • 2013年度から降着・失格の制度見直しが行われ、降着・失格となるケースを減らすこととした。それまでは過失・妨害行為の程度と騎乗停止日数の関係が公式に示されていたが、2013年以降は、具体的にどのような行為によってどのような制裁が加えられるかが公式には明かされていない。1月20日には、新制度下で行われた重賞において初の騎乗停止処分が行われたが、それは従来であれば降着となるようなケースにおいて、降着をなくす代わりに騎乗停止日数を開催日2日分増やしただけのものであったため、マスコミからは悪質な騎乗に対する抑止効果が疑問視されている。[3]
  • また、ごく短期間(3か月以内)に同じ不注意・悪質走行を繰り返した場合は、制裁をさらに加重する場合がある。

注意義務違反による騎乗停止

主な実例
2011年2月26日小倉競馬場第12競走で、メジロガストンに騎乗。決勝戦手前で先頭に立ったが、2完歩ほど追う動作を緩めて、馬上で立ち上がる状態となり、結果ショウナンスマイルの2着となった。このことが採決委員の審査により油断騎乗による注意義務違反とみなされたため、同2月27日から3月28日の30日間(開催日9日間相当)騎乗停止となった。本来騎乗停止は上記の通り、騎乗停止の対象となった競走が行われた次週の最初の開催日(この場合は3月5日)から適用されるところだが、油断騎乗による注意義務を怠ったとして、例外としてこの翌日の27日からの適用となった。[6]
本来は競馬開催前日から、調整室での外部第三者への連絡・接触が厳禁されているにもかかわらず、2013年6月28日に栗東トレーニングセンター調整室で携帯電話からTwitterで第三者と連絡を取り合っていたことがこれに違反したとして同7月6日から8月4日の30日間(開催日10日間相当)の騎乗停止を受けた。[7]
なお、本人は同6月8日の第10競走に体重調整ができずに他騎手へ乗り替わりとなり、2日間騎乗停止が科せられたが、翌2014年2月2日の第1競走で同様の状況が発生した為、加重制裁として30日間の騎乗停止処分を受けた。[8]
同騎手は4月12日に行われた福島競馬場の第4競走(障害走)にノエルキャロルで本来59㎏の負担重量での出走する予定が、体重調整に失敗し脱水症状にかかったため騎乗できず、他の騎手に乗り替わることになった。これを受けてJRAはその次週に当たる1819日の2日間騎乗停止(開催日同じ)とする制裁を行った[9]
ところが、騎乗停止明けの4月26日の同競馬場の第5競走(同上)において、オウケンウッドに本来60㎏の負担重量で出走する予定だったが、この時にもまた体重調整に失敗し、予定重量から0.5㎏重い60.5㎏で出走(10着)した。このことについてJRAでは加重制裁として翌4月27日から5月29日の30日間(開催日9日間相当)騎乗停止とする制裁を行った。これも本来であれば騎乗停止は対象となった競走が行われた次週の最初の開催日(同5月3日)から適用されるべきを短期間に同じ過ちを繰り返して行った重要な注意義務違反であることを重視した例外として、翌日の開催から適用したものである[10]

稀有な事例

  • 北村友一
2013年11月2日、京都競馬場第2競走終了後、検量裁決室内で粗暴な行為(具体的には、検量裁決室の机を持ち上げて倒したこと)を行ったため、これに対して7日間(開催日2日間)の騎乗停止が科された。北村はこの直前、騎乗した同競走における進路妨害によって騎乗停止の制裁を受けており、その期間(9日間、ただし開催日4日間)に追加する形となっている。[11]なお、暴力行為による騎乗停止は、1999年に吉田豊を木刀などで殴打した後藤浩輝に対して科されたものをはじめ過去に複数の事例があるが、人が被害を受けたわけでない暴力行為に対して騎乗停止が科されるのは初めてのことである。[12]

非行事例

2014年2月27日付けで、「日本中央競馬会競馬施行規定第147条[13]・第20号 競馬の公正確保についての業務上の注意義務を負う者としてふさわしくない非行のあった者」の違反行為に抵触したとして、裁定委員会の議定があるまでの間、騎乗停止とする処分を行った[14]
なお山崎はのちに、本人から騎手免許の返上申請が行われ、2014年3月19日付で騎手免許の取り消しが行われた。[15]

不服申し立て

日本中央競馬会競馬施行規程第10章第154条、第155条[1]に基づき、騎乗停止などの制裁を受けた騎手は、裁定委員会に不服申し立てを行うことができる。

中央・地方間の騎乗停止の相互適用

他の主催者から騎乗停止処分を受けた場合、所属している主催者からも騎乗停止の処分が下されることがある(中央競馬の場合、日本中央競馬会競馬施行規程第147条17号、18号[1])。主催者毎に開催日数が異なることと、騎乗停止の処罰の基準が異なるため、要因が同じでも騎乗停止期間が異なる場合がある。なお、騎乗停止期間は、すでに出馬投票が終了して騎乗が決定している競走がある場合、そのまま騎乗することとなり、騎乗停止期間の開始が、翌開催日からに持ち越される。

日本国外の競馬で騎乗停止を受けた場合

日本国外で騎乗停止が課された場合であっても、騎手の国籍に関係なく騎乗停止が課される(JRAの騎手の場合には、日本中央競馬会競馬施行規程第147条18号が適用)。日本国外の関係機関から日本中央競馬会 (JRA) または地方競馬全国協会 (NAR) への報告により騎乗停止の日数が決定される。JRAの騎手では、福永祐一騎手が2002年12月15日に行われた香港カップエイシンプレストンで出走した際、外側に斜行したため12月16日から実効4日間の騎乗停止処分を受けた。これに伴い、JRAは12月16日以降の最初の開催日である12月21日から4日間の騎乗停止処分を行った。ただし、騎乗停止処分後も引き続き日本国外で騎乗する場合には、日本国外で騎乗停止を消化すれば、JRAならびに地方競馬の各主催者での追加の処分は行われない。

イギリスでは動物愛護の観念からレース中に馬に対してを叩くのは7回までという決まりがある。それ以上叩いた場合には4日程度の騎乗停止が課される。テンプレート:要出典範囲。日本人騎手では、武豊騎手がゼンノロブロイで出走したインターナショナルステークスで、上記の処分を受けている。この時、武は引き続き海外遠征を行っており、騎乗停止処分を消化したためJRAでの処分は行われなかった。2009年シャーガーカップに出場した内田博幸騎手も同様の処分を受け、こちらは8月22日から8月30日まで開催4日間JRAでの騎乗停止処分を受けた。

香港では2004-2005シーズン(香港は開催周期が日本と異なる)より騎乗停止延期制度が導入された。テンプレート:要出典範囲そこで、大レース直前に騎乗停止を受けた場合には、裁定委員の裁量により延期をすることができるようになった。これにより、大レースでの騎乗が確実に行われるため、騎手や馬主にはメリットとなる。その代わり、テンプレート:要出典範囲2006年12月に行われたインターナショナルジョッキーズチャンピオンシップに参加した武豊が落馬事故の原因となったため6日間の騎乗停止処分を受けたが、直後の香港マイル香港カップ、や2週後の有馬記念3レースの騎乗を控えていたために、裁定委員の裁量により、有馬記念翌日の12月25日からの執行に延期された。[16]。なお、2011年12月に行われた香港スプリントに参加した池添謙一がケアレスライディング(進路妨害)により3日間の騎乗停止処分を受けたが、JRAでの騎乗停止処分を消化した期間である12月26日(有馬記念翌日)から1月4日まで[17]はJRA主催のレースは行われない。池添に地方・国外競走の予定は無かったため、実効0日の処分を受けた例がある。

テンプレート:要出典範囲

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

テンプレート:参照方法

関連項目

テンプレート:Keiba-stub
  1. 1.0 1.1 1.2 日本中央競馬会競馬施行規程 - JRAホームページ、2013年1月30日閲覧
  2. 走行妨害における騎手制裁の見直しについて - JRA公式サイト 2011年12月8日
  3. 【甘辛戦記】降着めぐる「新ルール」で大トラブル - ZAKZAK、2013年1月22日閲覧
  4. 2013年6月16日サンケイスポーツ「北村友一騎手が2日間の騎乗停止」(同6月30日閲覧)
  5. 2013年6月29日日刊スポーツ「北村友一騎手が実効8日間の騎乗停止」(同6月30日閲覧)
  6. ゴール手前追わず…黛騎手「油断騎乗」で騎乗停止(スポーツニッポン2011年2月27日 同7月20日閲覧)
  7. 携帯電話使用で原田騎手に30日間騎乗停止(スポーツ報知2013年7月3日 同7月20日閲覧)
  8. 原田敬30日間の騎乗停止処分(日刊スポーツ2014年2月3日 同2月3日閲覧)
  9. エノン、四位が騎乗停止 体重調整失敗と内斜行(スポーツニッポン2014年4月13日 同4月29日閲覧)
  10. エノン また体重調整失敗、30日間の騎乗停止(スポーツニッポン2014年4月27日 同4月29日閲覧)
  11. 開催競馬場・今日の出来事、明日の取り消し・変更等 - JRA公式サイト、2013年11月3日閲覧
  12. 北村友、騎乗停止4日が6日に 裁決室で机倒し“W制裁” - スポーツ報知、2013年11月3日閲覧
  13. 「第138条・第1項の各号、及び第145条の各号のいずれか、または前条件に該当する場合を除き、次の各号のいずれかに該当する馬主調教師調教助手騎手・騎手候補者・厩務員に対して、期間を定めて、調教、もしくは騎乗を停止し、戒告し、または50万円以下の過怠金を課す」
  14. 山崎 亮誠騎手の騎乗停止について(2014年2月27日日本中央競馬会 2014年3月4日閲覧)
  15. JRA山崎騎手の免許取り消し 本人から申し出(2014年3月19日スポーツニッポン 同3月20日閲覧)
  16. 武豊騎手、6日間の騎乗停止 - netkeiba.com 2006年12月10日
  17. 池添 謙一騎手の騎乗停止処分について - JRA公式サイト 2011年12月15日