音楽療法

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音楽療法(おんがくりょうほう music therapy)は、音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる事を目的とする、健康法ないし代替医療 Alternative Medicine あるいは補完医療 Complementary Medicine(いずれも「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義され、現代的な意味での医療とは区別される)。歌唱や演奏を行う能動的音楽療法と音楽を聴くなどの受動的音楽療法の2つに分かれる。

音楽療法の歴史

創成期

宗教原始宗教自然崇拝など)の誕生と同時に音楽は生まれ、儀式や呪術に用いられた。これにより人びとの精神を鼓舞したり一種のトランス状態憑依)を引き起こしたりする。

ユダヤキリスト教の賛歌などにおいても音楽は用いられ、これも信仰を深め、精神的な豊かさを深耕することにより現代にも引き継がれている。

治療効果も古くから知られ、ダビデサウルうつ病を竪琴で治したとされる(旧約聖書『サムエル記』上16.14–23)。サウル王が「悪い霊」におびえたため、家来たちはサウル王に言った。「ねがはくはわれらの主汝のまへにつかふる臣僕に命じて善く琴を鼓く者一人を求めしめよ神よりきたれる惡鬼汝に臨む時彼手をもて琴を鼓て汝いゆることをえん(第一サムエル16:16)」この家来らの進言によりサウル王はダビデを呼んだ。こうしてダビデはサウルに仕え、竪琴を弾いた。「神より出たる惡鬼サウルに臨めるときダビデ琴を執り手をもてこれを弾にサウル慰さみて愈え惡鬼かれをはなる(第一サムエル16:23)」(文語訳聖書

発展期

第二次世界大戦により大量の傷病兵を出した米国は野戦病院において音楽を流し、ないし演奏してみたところ兵士の治癒が早まった。その後米国を中心として音楽による治療効果が立証される(ディーサンズ (Diserens) ら)。

現在

各地で高齢者ケア、引きこもり児童のケアなどの現場で活発に活動が展開されており、岐阜県音楽療法研究所を嚆矢として自治体、大学でそのための研修、研究機関を設けるところも出てきたテンプレート:要出典。公的機関の認定として奈良市・岐阜県・兵庫県が独自の市及び県認定音楽療法士という資格を出している。現在の主流は日本音楽療法学会認定の音楽療法士MT、Music Therapist)という資格である。

また、X JAPANYOSHIKIは、自身の不眠症の治療をきっかけに、ライフワークとしてコロンビア大学の医学博士・加藤友朗と共同で音楽療法の研究も進めているテンプレート:要出典

対象

高齢者、発達障害者、身体障害者、不登校児、幼児、薬物乱用者、高次脳機能障害者、他。

関連文献

  • ジュリエット・アルヴァン,山松質文・堀真一郎訳『自閉症児のための音楽療法』(音楽之友社、1982/01)
  • ジュリエット・アルヴァン,桜林仁・貫行子共訳『音楽療法』(音楽之友社、1969) 
  • 『子どもの豊かな世界と音楽療法―障害児の遊び&コミュニケーション』加藤 博之/明治図書 ISBN 978-4180587223
  • 『子どもの世界をよみとく音楽療法―特別支援教育の発達的視点を踏まえて』加藤 博之/明治図書ISBN 978-4180584208
  • 『知的障害のある子どもへの音楽療法―子どもを生き生きさせる音楽の力』遠山文吉/明治図書ISBN 978-4186178166
  • 『音楽療法の基礎』村井 靖児/音楽之友社 ISBN 978-4276122888
  • 『標準 音楽療法入門〈上〉理論編 』日野原 重明 ISBN 978-4393934470
  • 『標準 音楽療法入門〈下〉実践編 』日野原 重明 ISBN 978-4393934487
  • ドナルド・ミッシェル,ジョーゼフ・ピンソン共著,清野美佐緒・瀬尾史穂共訳『音楽療法の原理と実践』(音楽之友社、2007/09)ISBN 978-4276122505

外部リンク

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