電球形蛍光灯
電球形蛍光灯(でんきゅうがたけいこうとう、同音異字:電球型蛍光灯とは白熱電球のソケットに装着して使用できる蛍光灯である。
蛍光灯器具同様のインバータ点灯回路と小型の蛍光灯を曲げたものを一体化し、白熱電球用口金を備えてそのまま白熱電球器具で使用できる形状にしたものが一般的である。白熱電球と同じE26・E17口金や灯屋形状に合わせた製品であり、簡単に置き換えられる。
同じルーメンの白熱電球と比較して、低消費電力を長所とする。よって地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素の排出量削減に、間接的に貢献することになる。2013年現在、白熱電球機器の利用台数は、家庭用・産業用ともに用途・数とも多大であるため、白熱電球からの置き換えによる二酸化炭素排出削減効果は非常に大きいとされ、日本では置き換えが国策[1]として推進されている。しかし、より低消費電力で白熱電球に近い性能のLED電球との競合関係が発生したことや、蛍光灯がもつ仕様により、白熱電球から簡単に置き換えられない場合があり、その普及については発売開始から30年が経過した今でも、予測が難しいものとなっている。
目次
歴史
第一次石油ショックを受け、1973年に「ワット・マイザー」という高効率蛍光管を発明したエドワード・ハマー(en)が率いるゼネラル・エレクトリックの開発チームが1976年に二重螺旋構造の電球形蛍光灯を発明したとされる。しかし製造工程に必要な巨額の投資が見送られ、商品化されなかった。
その後、1980年7月に東芝が世界初の電球形蛍光灯を発売した[2]。1984年には密閉形ガラスグローブ、電子点灯回路を組み込んで軽量化した商品を発売した。それからも従来の白熱電球と同様に使用できるよう、明るさの向上、コンパクト化が図られ、より軽量なインバータによる点灯回路を採用した方式も商品化された。特にE17口金を持つミニタイプでは、マイクロチップ化した電子回路を口金部分に収納したことで、形状が従来の白熱電球とほぼ同一になり、重量も約60gになっている。2013年現在では、インバーター部分を小型化して、電球の様に根本まで発光するタイプや、広配光タイプなど、さまざまなタイプの電球形蛍光灯が出回っている。
なお、白熱電球からの置き換えに関する世界的動向については、後述の「白熱電球からの切り替えを促す動き」の項を参照。
水俣条約が規定する「30W以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ」に該当するため、水銀封入量が5mgを超えるものは2020年以降の製造、販売、輸出入が禁止される。
利点と欠点、それに関わる情勢
白熱電球から交換した場合の利点
- 発光効率は15ルーメン/Wの白熱電球に対して60-70ルーメン/Wであり、同じルーメンでは1/6と低消費電力である。
- 白熱電球(寿命1000 - 2000時間程度)と比べて長寿命である。(2013年発売のもので寿命は6000 - 13000時間)。
- 白熱電球は暖色のみだが、電球色(暖色)、昼光色、昼白色といった3種類の色調が主流商品であり、ユーザーの用途や好みに応じて選ぶことができる。
- 白熱電球が寿命を迎えたときは、発光体であるフェラメントが焼き切れ、一気に消灯するのに対し、電球形蛍光灯はチカチカ明滅するなど、一気に消灯することが少ないので、特に夜に寿命を迎えたときに、光源は確保され、暗闇による転倒などが防止できる。
- (ただし、回路の故障による過電流など、寿命の迎え方によっては、一気に消灯することもある)
白熱電球から交換した場合の欠点
- 白熱電球が100円程度で売られている事に比べ、電球形蛍光灯は400円以上と高価で、後述する特殊な機器に装着して使うものは更に高価である。但し、利点である低消費電力から生じる電気料金の削減と寿命の長さにより、購入・電気料金・交換にかかる合計費用は電球形蛍光灯の方が安価である。交換回数も少なくて済む。
- 点灯までに少し時間がかかる。また点灯直後は暗く、本来のルーメンに達するまで時間(5~10分)が必要[3]。気温が低いほど、本来のルーメンに達するまで時間がかかる[4]。
- 頻繁に点滅を繰り返す使用は、寿命が低下する原因となり、本来のルーメンに達する時間を確保できない場合も多い[5]。前者の問題対策として、電源投入時に即点灯せずに0.5秒ほどの電極予熱時間を確保することによって点滅による消耗を抑えているものが多いが、完全な解決策ではなく、後者のルーメン不足は蛍光灯の原理的な問題であるため、解消できない。
- 白熱電球に比べ、インバーター回路の内蔵と、発光部分の体積確保が必要であるため、サイズが若干長大であり、ダウンライトから発光部分の先端がはみ出たりする事もある。特にスパイラルタイプでないD形は顕著に長い。(折り曲げ回数を増やすなどして、白熱電球と同サイズまでコンパクト化したものもある)
- 調光機能付き機器・密閉型機器・断熱形機器・人感センサー付き機器には、電球形蛍光灯が電子回路(インバーター)を内蔵しているため、それぞれの機器に対応したインバーターを内蔵した「電球形蛍光灯」が必要となり、一般のものより、高価である。
- 人体や環境に対して有害な物質である水銀[6]が含まれており、2013年現在、代替の物質がない[7]。
白熱電球からの切り替えを促す動き
地球温暖化問題と絡み、電力消費量を抑える観点から電力消費量が大きく製品寿命が短いという欠点を持つ白熱電球の生産・販売を今後一切せず、電力消費量が小さく長寿命である電球形蛍光灯やLED電球への切り替えをメーカーおよび消費者に促す動きが世界的に広がっている。特に米国、フランス、オーストラリアでは白熱電球の生産と販売を今後テンプレート:いつ法律で禁止することが決まっている。日本においては、国策として経済産業省と環境省が白熱電球の生産と販売を終了して電球形蛍光灯とLED電球のみを生産することを電機メーカー各社に要請していく旨を2007年11月に申し合わせている。 また2008年4月には東芝ライテックが2010年度をめどに(日本国内の大手電機メーカーでは初めて)白熱電球生産・販売の完全終了を決定、2010年3月17日に生産を終了した。パナソニック(旧・松下電器産業)も、その後を追うようにして白熱電球の生産は困難・特殊用途への対応だけに限定することとして点滅耐性を高めた電球形蛍光灯の生産量を増やす方針を発表した[8]。 2012年6月には環境省が、再度関係業界に対して要請をおこなっているが、白熱電球の製造販売を禁止する法律は制定されていない[9]。
種類
形状による違い
- CFL-Incand-bulbs.jpg
A形(左)と白熱電球(右)
- CompactFluorescentLightBulb.jpg
D形(初期のスパイラル形状)
- Fluorescent Lamp.jpg
D形(当初の形状)
- Compact fluorescent globe.jpg
G形(当初の形状)
- Compact fluorescent flood.jpg
R形
ここでは、日本工業規格(JIS) C7710に基づく分類としてガラス球部分の形状種別を示す。
- A形 一般電球形状
- D形 発光管露出形状
- G形 ボール電球形状
- T形 円筒型電球形状
- R形 レフ形
A型、D形、G型は当初直管を複数つなげたもの、あるいはU字型に折り曲げたものを使用していたが、のちに管を螺旋(らせん)状に巻いたスパイラル式のものが主流となった。このスパイラル形状も、当初は「巻き」の前に点灯回路収納部からしばらく垂直に立ち上がっていたが、やがて直線の部分が短く改良され、ついには立ち上がりから螺旋状のものも登場した。より長くより細い発光管をコンパクトに巻き上げることで、ルーメンを維持しつつ消費電力を抑えられるためである。
G形は当初は点灯回路収納部の縁に厚みがあり、ボールとの境目の段差が大きかったが、灯具によって干渉するため縁の厚みが薄く改良されていっている。
1998年に登場したT形(砲弾のような長い形状のグローブをもつタイプ)は高所での交換がしやすい形状として開発されたものであるが、密閉型器具だと蓋が閉まらないという欠点があったため、2013年現在ではあまり売られていない。
その他に口金で分類できる。まず、白熱電球で多く用いられているE26口金タイプが登場した。その後E17口金タイプも登場したが、当初はE17口金の白熱電球より蛍光灯部分のサイズが大きく、器具によっては物理的に使用できなかった。しかし、2013年現在では白熱電球とほぼ同等の大きさのものが主流となり、この問題は解消されている。
電球型やボール型蛍光灯は内部にU字型やスパイラル型などの発光管を内蔵し、それぞれの形状のカバーを被せている。そのため、単純に明るさを求めるならば発光管が露出したタイプの方が上である。